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立命館大学 新日中友好21世紀委員会共催シンポジウム
「未来を切り開く日中関係」

平成18年3月

(写真)
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 3月25日、立命館大学及び新日中友好21世紀委員会共催シンポジウム「未来を切り開く日中関係」が開催されたところ、概要以下のとおり(京都に所在する大学より6名の学生がパネルに参加し、新日中友好21世紀委員会(以下、「委員会」)のメンバーと議論を行った。)。

  1. 冒頭、長田立命館大学総長より、中国の大学との協力や、「中国大学管理運営幹部特別研修」、孔子学院設立等の立命館大学の日中関係への貢献を紹介しつつ、挨拶がなされた。次いで、鄭必堅中国側座長より、日本の戦後の平和的発展を評価するとともに、中国も平和的発展を目指すこと、日中関係の発展のためには、両国青年が共同で参加・協力することが必要であることなどを指摘しつつ、新日中友好21世紀委員会について説明を行った。
  2. 国分委員より、委員会の今次会合において、日本側が「和解と協調のロードマップ」案を中国側に示し、会合では、日中両国でお互いの魅力が何なのかを見直し、いいところを伸ばしていくべきとの認識に達したことを紹介しつつ、このシンポジウムのコンセプトもここに置きたい旨説明した。これを受けて、参加している学生から提言や質問が出されたところ、ポイントは以下のとおり。

    ●大学院に入って初めて中国の留学生と触れ合った。最初は戸惑ったが、むしろ、大学院に入るまで中国についてネガティブな印象をもっていたことに気づいた。特にメディアからの情報を無批判に受け入れてきたと思う。多くの中国人に直接会って交流することが重要。

    ●省エネや環境保全などは最も協力しやすい分野であるが、メディアからはほとんど対立の面ばかりが報道される。もっと日中の間の協力という側面を報道すべき。

    ●文化面(芸能面)での交流も大きな影響があるのではないか。

    ●中国は調和社会の構築にあたり、日本の見本をもっと研究すべき。日本も戦後の平和発展の経験・実績をもっと中国に紹介し、中国の現状をもっと歴史的、未来的な見地に立ってみるべき。

    ●エネルギーについては競争より、需要国としての協力を深めるべき。

    ●両国はもっと歴史的・未来的視点にたって付き合うべき(日本の一部から出る反中的言動は、留学生にとっては心が痛むものであり、止めてもらいたい。また、中国側も、自身が多大な犠牲を被ったにも関わらず「以徳報怨」の行動をとっていることを世界に示し、靖国神社などに対する対応については日本の政治家の判断に委ねるべき)。

    ●留学生は日本の外交資源であり、日中青年間の交流・理解を深めるべき。

    ●留学によって、中国文化の奥深さを知るとともに、日本文化の良さも再発見。「自分の文化を愛する気持ち」は人類共通であり、民間レベルの交流は相互理解を深めることができる。

    ●日中間の国民感情の問題については、先入観をなくしていくことが重要。

    ●若い世代に焦点を当てた文化交流活動を提案(特に小学校・中学校の交流活動、互いの国に在留する若者同士の地域に根ざした活動、大学生を主体とした短期の交流プログラム等)。

    ●日本企業独特のマネジメント・システムは、中国でも応用する価値があり、グローバルな企業文化と現地の施策との調和がとれた現地化を行うべき。特に中国で活動する日本企業の人事制度については、中国人のニーズを知る必要あり。研修制度とそれに結びついた明確な評価システム及び透明かつ実行可能な昇進制度の構築を提案。

    ●中国人の留学生の友人の話を聞くと、教育、特に歴史教育が大きな影響。中国と日本の歴史教科書を読み比べたら、事実関係で食い違いが多かった。また、戦後の日本の民主的・平和的な発展についての記述が不足。歴史の共同研究を行うべき。若者レベルにおいても歴史について対話する機会を設けるべき。

    ●日中双方のメディアは、お互いに一面的に意見・情報を発信するのみであるが、メディアを通じた若者の対話の場を作るべき。

    ●先進国が発展途上国に対して環境対策を一方的に要請するのは不公平。日中間の環境対策技術の交流によって人と人の対話、政府間の対話が生まれることも期待できるし、中国の公害を削減することは、日中双方にメリット。政府として企業の環境対策のための基金を設立し、環境対策が優秀な企業に補助金を出す等、より高い技術を供与するインセンティブを生み出すような枠組みを構築することが必要。

    ●中国からの留学生を増やすことにより、技術供与を受ける側の技術力、コミュニケーション能力を高めることが可能。また、留学生交流は相互理解にも有益。

  3. これに対して、新日中友好21世紀委員会のパネリストより、以下のコメントがあった(◎は日本側委員、○は中国側委員)。

    ○環境問題面での協力は進めるべき。先進国が途上国に注文を付けると言う姿勢ではなく、お互いに協力していくという姿勢が重要。エネルギー問題も競争的に捉えがちであるが、むしろ協力していくことが重要。

    ○中国にとって省エネはまさに今この時期に行う必要がある。省エネに関する日本の経験は重要で、ゴミの分別などの人々の意識の問題も含め、日本の経験を紹介してもらいたい。

    ○メディアの話があったが、色々な事に対して、色々な見方がある。コミュニケーションが必要だ。

    ○日中間では、留学生の交換がさかんであるが、80年代に生まれた若者について最近発売された「城町画報」が特集を組んでいるが、この世代の若者は日本の若者と似ている部分が多い。普通の状況では、中国人、日本人という関係で付き合うが、そういった見方を止めて、ある問題について見方が違ったとしても、よく意思を疎通させ、人間としての共通性を見て考えるべき。

    ○日本も歴史を重荷とすることなく、国際主義の観点から周りの国を見れば、もっと軽く飛躍できるはず。宇宙船から見た地球には国境線はない。世界中の指導者にも宇宙から地球を見てもらいたい。

    ○自分は胡弓を通じて、小さい頃から国境を乗り越えてヒューマニズムの中で自由に考えることが出来てきた。これが、ソフトパワーの力だと思う。文化交流は、民族や国境、政治を超えた親和性と相互尊重をもたらす。日本と中国の文化はアジアの中で重要な枠割りを果たしている。

    ○自分の祖父の世代は日中戦争の記憶、父の世代は友好が形成された世代であり、自分たちの世代は善意を持つ友人と共に次世代、次々世代のために友好のムードを共有していく必要がある。

    ◎その国に行って初めて見えるものがある。現代社会においては、メディアとは何か、ジャーナリズムとは何かを把握すべきである。世界は多種な人々から成り立つ。共通の目的があれば、国境はないということを知ってもらいたい。

    ◎同じパターンの情報を受け続けるのではなく、若い時に刺激を受けるべき。学習には教科書やメディアから一方向的に学ぶ方法と他者との交流などから双方向的に学ぶ方法がある。社会、文化、政治、経済等の難題には答えはすぐに出ない。如何に双方向に学ぶかということが重要。

    ◎「政冷経熱」の状況に安閑していられない。国民感情まで悪くなり始めているのではないか。政治が国民感情と一緒にネガティブな側面に動き出したときは止められなくなる。太平洋戦争の例を見ても、経済的相互利益があったにもかかわらず、政治を止められなかった。道徳的な考え方をもって相手を評価するような流れにならないようにすべき。そのような流れを止めるのが「民」である。

    ●自分はむしろ歴史の重荷を感じるべきと考えている。歴史についてきちんと知らなければ、メディアから伝わってくる情報を鵜呑みにしてしまう。

    ●ポジティブな面から変えていくという考え方に賛意。人間の99%は同じで、文化や皮膚といった違いは1%に過ぎない。文化は感性で共有できる。

    ●日中共同の青年協力隊のような試みには自分も参加したい。また、新渡戸稲造の「武士道」を読んだが、中国人としてかつて理解できなかったことも理解できた。しかしこの本は台湾の友人から紹介されたものであった。日本人も中国人も自分自身の文化を掘り下げていくことも重要。

    ●中国にも反日サイトがあるが、日本にも反中サイトがある。自分の都合の良いことを一方的に学んでいるだけではなく双方向の学びが必要。テーゼとアンチテーゼがあった初めてジンテーゼがあるが、日中関係もかくあるべき。

    ●双方向の学習を実践していきたい。そのためにも、中国に実際に行ってみたい。

  4. その後、フロアからも質問を受け付けて議論が行われたところ、概要以下のとおり(フロアからの質問は▲。)。

    ▲(学生)自分は、2才から日本に来ている在日中国人として日本人に囲まれてきたが、中国に行けば日本に否定的な見方があり、日本にいれば中国という国にネガティブであるように相互の偏見を感じてきた。日中間のイメージを打開することが重要と考えるが、自分としてどのようにすれば良いか教えて頂きたい。

    ▲(学生)生の話し合いによって、偏見が崩れる。13億の中国人と交流するのは実際には現実的ではない。基本的な指針として、日中双方の国家間に対する認識が必要と考えるが、そのような議論は行われているのか。

    ▲(教員)日中両国が見つめ合うのではなく、世界の文脈の中でお互いの関係を考えていくことが重要。EU各国に出張する機会があったが、欧州における和解についてアジア人(特に若者)が学べることも大きいのではないか。

    ◎新日中友好21世紀委員会の今回の会合においても、日本側からエリゼ条約のようなものが可能か調査・研究することを提案した。

    ▲(留学生)日中間では相互理解が不十分であるが、同時にチャンネルも不十分ではないか。

    ◎偏見と先入観はどんなに取り除こうとしても取り除けない。したがって、偏見と先入観は絶対にあるという態度で臨むべき。

    ◎日本の社会にとけ込めないと言う話があった。日本社会は偏見や差別のある社会であり、差別を「楽しむ」つもりで乗り越えていくことを勧める。今の現代人は人と上手くやらなければならないとの脅迫観念にとらわれている。差別を「楽しむ」ことは、差別する気をなくさせる。

    ◎日本人の婚姻中20組に1組は国際結婚であり、一番多い相手は中国人。我々が思っている以上に日本社会は変化。どうやったら国際化できるか、コミュニケーションできるかということより、我々の足下から変わってきており、固定観念で日中関係やグローバル化について考えない方がよい。

    ○メディアが全面的に相手の国を取り上げるのは困難。昨年のデモに見られたように、なぜ日本嫌いなのかというのは、日本人に反対しているのではなく、日本の個別の指導者に反発しているのである。また、全国人民代表大会にせよ全国政治協商会議にせよ、出された提案の殆どが教育や環境問題といった国内問題。中国の発展は困難な状況にあり、中国に対する理解のために、メディアから伝えられる以外の中国も見て欲しい。

    ○もっと歴史を学びたいという学生の声に感動。自分に何が出来るかという質問については、まず足元から考えるべき。一人一人が日中関係を良くしていくという仕事に参加すれば、良い方向に向かう。

    ◎新日中友好21世紀委員会においても、ホームステイなど生活の土台のところまで入っていくような若者の交流が重要であると議論している。米国では日本への関心が薄れてはいるが、日本を好きになる米国人もたくさんいる。その理由の一つがJETプログラムであり、米国人に日本の地方に行き、お祭りにまで参加してもらっている。このような交流が重要である。

    ◎自分の文化を愛し、誇りを持つのが重要であり、それにより相手の文化に対して敬意を持てるというのは重要な出発点である。また、歴史は忘れられないが未来を築きたいというような発言が出てきたことも非常に嬉しい。

    ○中国のGDPは、世界で第三番目になり、日本に近づく。新しい隣人づきあいの中で、良いところを共有していきたい。個人で何が出来るかとの質問があったが、先程、中国の若者に関する記事を紹介したところ、日本の学生が中国人の若者は自分のようだと述べていた。まず、その記事を日本の学生に見てもらいたい。

    ▲(学生)本日の話を聞いて、自分自身の意識を変えていくことが重要であると考えた。自分は長く日本で育った中国人だが、中国の文化も好きだし、日本の文化も好きである。お互いにいいところを分かり合って欲しい。自分も中国人ながら、中国に留学しに行く。中国についてもっと知りたいと考えている。

  5. 引き続き、宋飛委員による二胡の演奏があり、最後に小林座長より概要以下の総括があった。

    (1)結局は人と人の関係が重要である。中国人であるとか学生であるとか、企業人であるとかを超えた人間と人間の相互理解をどうやって深めるが重要。地道であり、道は長い。しかし、理解を深める王道はそれしかないと考える。

    (2)企業は、現実・現場・現物が重要であると考えている。現実、現場、現物についての判断が重要であるが、この3つも突き詰めれば、結局は人と人との問題である。

    (3)新日中21世紀友好委員会でも、この二つについて努力したい。また、皆さんにも今の立場で努力し、日中関係の将来を切り開いてもらいたい。

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