アジア

世界地図 アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ

新たな時代の日中関係を築く
~日中友好21世紀委員会第3回会議を振り返って~

新日中友好21世紀委員会
中国側座長 鄭必堅

 7月30日から31日にかけて、日中友好21世紀委員会の委員が中国の「常春の町」と呼ばれる雲南省昆明市に集まり、第3回会合を開催した。双方は、「挑戦をチャンスとし、日中関係の改善と発展を促進する」とのテーマで、日中関係の現状と直面している突出した問題につき、率直、実務的かつ突っ込んだ話し合いを行った。今回の会議は少なくとも以下の点につき、共通の認識に達したと考えている。

 第一に、日中関係の現状は、両国が未来志向で、相互に信頼しあった利益をもたらし合う関係の構築に不利な影響を与えている。そして、両国が重要な影響力を持つ国家として、共にこの地域の繁栄と発展をもたらすことにもマイナスである。双方は智慧を出し合い、共に困難を克服するために努力し、両国関係、特に政治的関係を早期に正常な発展の軌道に戻さなければならない。

 第二に、現在、日中の政治関係は困難に直面しているが、このような時にこそ、双方は力強くお互いの間の友好交流と実務協力を強化しなければならない。今回の会議は「挑戦をチャンスとし、両国関係の改善と発展を促進する」をテーマとしており、最も重要な着眼点はすなわち、両国の経済、文化、教育、科学技術等その他の分野の実務的協力を促進することであり、すなわち、両国国民の間、特に青少年の間の様々な交流を活性化させることにあった。これを基礎とし、理解を深め、誤解を減らし、両国の政治関係の改善のために有利な条件を整える必要がある。

 第三に、現在の国際情勢において、マスメディアの役割は益々重要になっている。両国は体制及び国情は異なるものの、マスメディアの果たす役割は等しく重要である。情報化の時代の背景の中で、如何にインターネットの影響に対応するのか、双方は新たな課題を重視し、解決方法を探らなければならない。両国政府は、マスメディアが適切な役割を発揮するよう導き、両国国民が客観的かつ正確に相手を理解し、認識し、理性的かつ善意に相手国の発展及び変化を捉えるよう努力しなければならない。これは両国国民の感情的な対立を抑制することにつながり、両国の国民感情悪化の傾向を徐々に転換させることに寄与する。

 第四に、時代とともに進み、創造する精神で、本委員会の仕事を更に改善し、強化する必要がある。本委員会は旺盛な生命力という重要な条件を有している。本会議において、双方の委員は皆、今後の本委員会の作業につき独創性のある提案を行った。これは、各委員の本委員会に対する情熱と責任感を示すものである。双方の座長の協議を経て、会議において、本委員会に「日中関係の中長期的展望に関する研究を行う小グループ」及び「文化交流の小グループ」が設立され、それぞれに指定された委員が参加し、様々な形式の研究及び交流活動を行い、両国政府に報告書を提出することとなった。

 当然、日中双方の委員の間には、意見の食い違いもある。例えば、靖国神社という日中関係全体の難題に関し、双方の認識には一定の食い違いが存在する。同時に、中国の発展に対し、また日本の変化に対しても、双方の委員はそれぞれの考えを持っており、考えが異なる。一部の問題につき意見が食い違うのは正常なことであり、そうであるからこそ、我々双方の委員は同じテーブルに着き率直な意見交換を行っているのである。もし、意見の食い違いもなく、論争もなければ、委員会は存在する意義を無くしてしまう。当然、委員会の使命として、論争のために論争するという状態ではなく、重要なのは論争を通じて、客観的な事実に合致した、我々双方の利益に合致した回答を見つけることであり、これこそが、我々が良く口にする「真理は論じるほど明らかになる」ということである。

 現在、日中関係は改善と発展のチャンスに恵まれているが、厳しい挑戦にも直面している。如何に挑戦をチャンスに変え、新たな時代の日中関係を築くのか。私は以下の3つの点を申し上げたい。

 第一に、日中関係に存在する問題をどのように考えるか。私は、日中関係が直面している問題は、発展のプロセスの中で生じた問題であり、双方は前向きな視点でこれを認識し、前向きな方法で解決していくべきである。現在、日中関係は確かに政治的な困難に直面しているが、これは、国交正常化の頃の状況とは比べることはできない。当時、あんなにも大きな困難をも解決したのだ。我々に現在の困難を解決できない理由など何もない。日中関係は30年余りの発展を経て、お互いの間の協力はすでに様々な分野に浸透し、深く根付いている。同時に、日中両国は共に変化しており、世界全体も変化している。消極的な、後ろ向きな方法で問題を解決することはできず、協力を強化し、交流を拡大するとの方法で、問題の解決を促進する必要がある。我々は、両国関係の前向きな面を拡大することことが必要なのである。このようにすれば、マイナスの面は益々相対的に縮小されていき、両国関係が良い方向に向かうことに寄与する。

 第二に、日中関係の未来に自信を持たなければならない。現在、両国には一部後ろ向きな議論があり、日中関係の未来に悲観的で疑いの態度をとっていたり、一部の人の自信は揺らいでさえいる。これは望ましくない。私は、両国関係の発展が相対的に順調な時であっても、盲目的に楽観視してはならず、両国関係が困難に直面している時であっても、何をして良いか分からない、為す術がないという状況になってはならない。世界は矛盾に満ちており、世界の前進及び発展の促進は、すなわち挑戦的状況を転換し、矛盾を解決するプロセスであり、日中関係も例外ではない。我々は、日中友好関係を発展させることが、我々両国の基本的かつ長期的利益に合致し、両国の絶対多数の国民の希望にかなうものであると、一貫して信じている。現在、両国関係は敵対する戦争状態からはほど遠く、国交正常化前の状況と本質的に異なる。我々は友好国であり、両国は1998年に平和と発展のための友好協力パートナーシップ関係の樹立を宣言し、我々は日本を自分の友人でありパートナーであると考えている。この点については、少しの変更もない。従って、我々は日中友好の生命力を疑う理由は何もない。我々は一貫して日中関係の未来に対する自信にあふれ、これは少しも揺らぐことはなく、一時の困難で驚かされることもない。

 第三に、双方は両国の国民感情を心を込めて維持し、前向きな方向に導き、これを良い方向に発展させる責任がある。今年に入ってから、日中関係、特に両国の国民感情は厳しい試練に直面しており、そのうち最も突出しているのが、今年4月に中国国民が自発的に行った対日デモである。これはすでに過去のこととなったが、問題の根元は、我々に深く考えさせるものがある。これは我々に対し再度以下の警告を行うものである。国民感情は決して傷つけることはできない。双方、特に両国の政治家は大局に着目し、正しい行動を取り、早期に、両国の国民感情の対立が益々エスカレートしていくという悪循環を根本的に断ち切らなければならない。この点については、中国側の態度は前向きであり、誠意もあり、決意もある。今年4月、胡錦濤国家主席がジャカルタで小泉総理と会見した蔡、日中関係を改善し、発展させるための5つの主張を提起し、日中両国は平和的に共存し、世代に亘り友好的に共存し、互恵協力を行い、共に発展すべきであると強調し、新世紀における日中関係が一貫して堅持すべき原則と方向を明かにした。先般、胡錦濤国家主席は中国人民抗日戦争及び世界反ファシズム戦争勝利60周年記念大会におけるスピーチにおいて、再度この点を明確に強調した。同時に、中国の関係方面も多くの困難かつ緻密な作業を行い、国民の日本に対する認識と感情を前向きな方向に導こうとしている。率直に言って、問題を根本的に解決するには、双方の共通の努力が必要であり、鍵は、日本側が中国側の積極的な努力に対してプラスの反応と協力を行うことである。

 では、日中友好21世紀委員会の新たな時期における責任と使命は何だろうか。委員会は20世紀に成立した。私の理解によると、21世紀の日中友好は実際には世代に亘る友好である。鄧小平氏もかつて以下のように述べた。「我々は日中関係を更に遠い視点から考え、発展させなければならない。第一歩を21世紀に置き、更に22世紀、23世紀にまで発展させ、永遠に友好的に共存していかなければならない。この問題は、我々の間に存在する全ての他の問題の重要性を超えるものである。」中国の唐代の著名な政治家である魏征に以下のような名言がある。「木を求める者は必ずその根本を求め、遠い流れを求める者は必ずその源泉に当たる。」私はこの言葉ほど現在の日中関係に相応しい言葉はないと思う。いわゆる根本とは、すなわち日中の世代に亘る友好であり、この旗印をしっかりと掴むことは、すなわち要点を捉えることであり、我々両国の子孫、後世に亘る百年の計を把握したことになる。いわゆる源泉とは、すなわち利益であり、もしくは利益の合致するところと言っても良い。あなたの中に私がいて、私の中にあなたがいる、すなわち更に高いレベル、更に遠い視点から新たな利益の合致する点を見つけるということである。共通の利益を求め、拡大する有効な方法は、双方が意思疎通、交流、理解を増進することである。21世紀委員会はとどのつまり、以下の2つの仕事を行う必要がある。第一に、世代に亘る友好という旗印を掲げること。第二に、綱領を作ること。この綱領は、平和共存、世代に亘る友好、互恵協力、共通の発展である。これは、我々この世代の人間の責任である。我々には長期的かつ戦略的高さから両国関係の未来を把握することが求められている。21世紀委員会として、委員会の仕事は先見性、戦略性、包括性を示す必要がある。すなわち、我々は現状を立脚点とし、現実を結びつけるとともに、一時、一事に限ることなく、現実に存在する一部の具体的問題を超越して、高い視点から遠くを見つめ、両国関係の長期的発展の大きな勢いを把握し、両国関係の発展に対し長期的な展望を行うべきである。

 周恩来総理はかつてこのように述べた。日中関係は「2000年の友好、50年の対立である。」。我々は現実に挑戦と困難に直面しているが、我々が常に自分が担っている責任を意識し、「歴史を鑑とし、未来に向かう」との精神で、困難に立ち向かえば、我々は必ず21世紀の日中友好、協力、WIN・WINの新たな局面を開くことが出来ると信じている(外交フォーラム2005年11月号掲載)。

このページのトップへ戻る
目次へ戻る