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新日中友好21世紀委員会第3回会合(概要)
(グローバルな視野―国交正常化40年の回顧,日中関係の中長期的展望)

平成23年10月25日

 10月23日から25日にかけて,新日中友好21世紀委員会第3回会合が北京及び長沙にて開催されたところ,概要は以下のとおり。

1.議題

(1)今次会合の主題

 グローバルな視野―国交正常化40年の回顧,日中関係の中長期的展望

(2)各セッションの議題

第1セッション

 日中国交正常化40年来の両国関係発展の経験と教訓を総括し,これを契機として,文化,メディア,学術,環境等幅広い分野で如何に両国関係を発展させるかにつき重点的に討議する。

第2セッション

 グローバル及び地域の視野で中長期的な日中関係を見通し,計画する。

第3セッション

 政治・安全面における相互信頼の増進について。

2.開幕式:両座長による基調発言

(1)唐家璇座長:

  • 新日中友好21世紀委員会は,強固な信頼に裏打ちされた活発な議論を通じて,日中関係に貢献してきた。来年は日中国交正常化40周年を迎える。様々な困難をくぐり抜けてきた両国であるが,これからも未来に向けて不断に関係を強化していく必要がある。
  • 日中関係の発展は,両国国民ならず,地域ひいては世界にとっても偉大なる貢献となってきた。過去の経験を総括すれば,4つのことが指摘できる。(1)大所高所から物事を眺めてこそ,正しい発展の方向性を保つことができる,(2)相互に協力を行い,win-winの関係を構築してこそ,弛まず前進することができる,(3)友好を伝承してこそ,絶えずレベルアップしていくことができる,(4)重大で敏感な問題を適切に処理してこそ,順調に進展することができる。
  • 日中関係をこれからも長期的に安定して発展させていくためには,2つのプロジェクトと5つの協力を重点的に進めていくべきだと私は考える。2つのプロジェクトとは,1)政治的相互信頼の増進,2)国民感情の改善,5つの協力とは,(1)グリーン・エコノミーに関する協力,(2)防災・復興分野での協力,(3)アジア太平洋の地域協力,(4)グローバルな課題に対する共同対処,(5)海洋上の実務に関する協力,である。
  • 日中関係は,一つの転換期にある。いま,我々が何をなすかということは,我々の子孫に対して,或いはこの地域に住む人々の未来に対して,非常に大きな影響がある。彼らの期待に背かない役割を,現代の我々は果たしていくべきである。

(2)西室座長:

  • 日中両国は,アジア太平洋地域及び世界の平和,安定,発展に大きな影響力を有し,厳粛な責任を負っているとの認識で一致。「戦略的互恵関係」の包括的推進は,地域・国際社会にも大きな利益をもたらす。両国国民及び世界は,戦略的互恵関係の具体的な中身に注目。震災を受けた協力,経済関係の深化,文化・人的交流の推進,海洋に関する協力,国際的課題における協調等々,幅広い分野で包括的な関係を構築していくことが必要。
  • 日中関係を長期に安定的に発展させるため,国民感情の改善が必須。次世代を担う青少年をはじめ,国民各層での幅広い分野での意思疎通が重要。来年の日中国交正常化40周年を大いに活用し,あらゆる交流を拡大すべく,様々なアイディアを出し合うべき。
  • 緊密であればこそ,時として摩擦が生じることも否めない日中関係において,大局的かつグローバルな観点から具体的な協力を進めていくためには,新たな知恵と創造性が求められる。日中関係を多面的に捉え,多様な人々が各自の観点から自由に発言していくことで,新たな発見がもたらされることを,過去の会合の経験は示している。

3.議論のポイント

(1)第1セッション

  • ハイレベル往来の勢いを維持すべきである。ここ数年,幾つかの問題の先鋭化に伴い,ハイレベルの接触が容易でなくなる事態に何度か陥ってきた。両国首脳間及び国民間での絶対的な信頼関係の欠如故に,些末な問題に全体が影響される事態を憂慮。
  • 過去においても幾つかの敏感な問題によって「日中関係」という船が傾くことがあったが,両国関係の重要性に対する認識から,「いずれ戻るだろう」との楽観が双方に存在し,事実,船はいずれ元通りに戻るということを繰り返してきた。そのような復元力の持続性が,いま問われている。
  • できる限り多くの双方の国民が,実際に交流に参加する機会を得て,一過性の交流ではなく,持続性のある,息の長い交流を続けていくことが重要。また,双方において政治的意志と資金と動員し,学校という触媒などの具体的なルートも拡充して,青少年交流の拡大を絶えずはかっていくべき。2012年頃から,21世紀生まれの若者達が社会に加わる。
  • 地方自治体同士の交流を幅広く推進すべき。友好提携関係を有する全ての双方の自治体において,来年,日中国交正常化40周年の記念活動を行う等,大胆な発想で議論したい。双方から友好提携の経験を持ち寄って,グッドプラクティスを共有することも一案。
  • 芸術や文化は,国家ではなく国民の財産であり,人類の財産。それ故に,政治的な制約等を加えるべきではない。学問の自由,言論・表現の自由,そして,インターネットを活用した国民による発信による情報交流の在り方は,グローバルな視野で日中関係を推進していく上でも,避けて通れない重要な問題。
  • 相互認識の形成にメディアが圧倒的に大きな役割を果たしていることは,世論調査の結果から見ても明白。双方の市民の生活に近い,市民感覚に馴染む報道が必要。また,科学的に,事実に基づいて議論を行い,検討を加えるということが,最も根本的な原則であるべきであり,そのためにメディアなりインターネットなりが活用されることが必要。

(2)第2セッション

  • 日本の高齢化はここ十数年で急速に進展。中国も,近い将来,日本と同じ経験をする。世界全体で見ても,アジアの高齢化問題は突出している。中長期の発展戦略の中に,高齢化対策を組み込んでいかなければならない。
  • 世界に存在する地域型FTAは,困難を乗り越えて成立してきた。東アジアにおけるFTAについても,地域一体化の推進についても,戦略的判断に基づく政治的意志が後押ししなければならない。相互信頼の欠如は,相互の地域政策に対する懐疑心につながる。永遠の敵や,永遠の味方など存在せず,永遠にあり続けるのは,共通の利益。
  • 日中協力の進展が,この地域の協力の推進に密接に関係している。この地域において,重要だが進展が少ない問題というのは,往々にして日中間で意見が一致しないことが多い。地域協力の推進に対する責任を,日中関係の中に明確に位置づけるべきである。できるところから,どんどん進めていくという発想を持つべき。
  • 中国とASEAN,そして日本との間で海洋の問題で摩擦が生じているが,国際的な規範に則って,アジア自身の手で協力や解決を模索してくべき。ナショナリズムが各国において問題となり得る。透明で体系的なシステムを構築し,不確実性を減じるべき。
  • 日米関係の強さの由来は,政府間の関係,同盟関係にもあるが,源泉は国民同士の信頼関係であり,それを支えているのは,多くの日本企業が米国に進出し,そこに根を張り,米国の地域社会の一員として成長してきたという実績。この観点から日中関係を見れば,まだ脆弱であると言わざるを得ない。着実に前に進んでいきたい。

(3)第3セッション

  • 日中双方が最も悪いシナリオを想定しあうことは,悪循環をもたらすばかり。相手側を正確に理解する努力が必要。戦略的信頼を構築できれば,その好影響は各所に現出する。客観的に冷静に,相手方の変化を観察すべき。この両国の,地域の安全保障における責任は変えようもない。
  • 政府からの情報,マスメディアからの情報,そして個人が発信する情報が錯綜している中では,受け取る情報が常に正しいものであるとは限らず,過激な意見,或いは間違った見解への急速な傾斜も発生しやすい。このような前提において正しい判断を下すためには,科学的なコミュニケーションに立脚すべき。
  • 政治的信頼を強化するために,理性的な思考が必要。民族主義の暴発を回避したい。両国国民の感情が正確に理解されるべき。知日派,知中派の増大に期待。歴史については,日本は過去を正しく認識し,中国はトラウマから脱却すべき。歴史共同研究等はこのために有益。
  • 海洋の安全保障について。東シナ海を平和と協力の海にするとの考え方には賛成。危険を防止する相互の連絡メカニズムを強化すべき。東シナ海のガス田については,日中国交正常化40周年である来年の協力を象徴する出来事となるような英断に期待。EAS等の場でも,アジア太平洋における海洋安全保障の問題について,日中含めた各国が率直な意見交換をすべき。
  • 中国の軍事力増強の問題については,中国の意図を他国が察しきれないところが問題となっている。各国からの情報交換の要請に,中国が積極的に反応することを期待。各国の軍事的プロフェッショナル同士の交流が有益であり,これを強化し活用すべき。非伝統的,広義の安保協力の重要性も増すばかりであり,災害対策などにおいて各国の軍事的組織が意思疎通と連携を強化することも極めて有益。

4.閉幕式:両座長による総括発言

(1)唐家璇座長:

  • 国交正常化40周年を前に開催された今次会合であったが,来年の1年のみならず,中長期,これからの40年における日中関係について議論することができた。その結果,幾つかの共通認識に達することができた。
  • 今次会合において双方委員は,日中国交正常化40周年の機会を適切に活用し,二国間,地域,国際社会の全ての側面において,全面的に日中関係を前進させていくことで一致を見た。より具体的には,(1)草の根の人々に目を向け,国民間の交流を推進すること,(2)戦略的観点から,政治的信頼を強化すること,(3)時代の潮流を把握し,グリーン・エコノミーやテクノロジーといった新たな分野でも協力を推進すること,(4)両国の社会経済状況を理解し,共通課題について共に考え,歩むこと,(5)日中韓及び地域の自由貿易体制を強化すること,(6)貿易・投資,資源・エネルギー等において日中が共同して対処する能力を開拓すること等において,認識が共有された。
  • 今次会合の成功のために尽力された双方の関係者に敬意と謝意を表したい。

(2)西室座長:

  • 双方の委員及び関係者,そして湖南省に深く感謝。共通の目的意識を持ち,「心の琴線に触れる議論」が活発になされた。
  • 第1セッションでは,幅広い分野での国民各層の交流を推進すべきとの意見で双方が一致。その背景には,往々にして,些末な問題によって全体の関係が影響されるという,日中関係の特殊な脆弱性への認識がある。これを克服するために,両国関係の裾野を広げることによって柔軟かつ強靱な関係を構築していくべきとの考え方が双方の委員にあった。
  • 第2セッションでは,高齢化,日中及び地域でのFTA,地域一体化の推進,海洋の問題への対処といった,この地域の構造や中長期的な方向性に関する議論が行われた。日中が連携することによって,この地域の協力を大きく推進することができる点について,双方の認識は一致した。
  • 第3セッションでは,日中両国の,地域の安全保障における責任は変えようもなく,日中が政治的信頼を構築できれば,その好影響は各所に現出するとの見方を双方が共有した。それを育んでいくためには,客観的に冷静に相手方の変化を観察し,相手側を正確に理解すること,両国国民の感情を正確に理解すること,理性的な思考を以て民族主義の暴発を回避することなどが必要であろうとの意見が多く出された。
  • 今次会合の成功を改めて共に祝福したい。双方関係者の努力に改めて敬意と謝意を表したい。
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