アジア

 12月26日及び27日、日中歴史共同研究(日本側座長:北岡伸一東京大学教授、中国側座長:歩平中国社会科学院近代史研究所所長。委員リスト。)第1回会合が、中国社会科学院(北京)において開催され、全体会合及び分科会が行われた。また、会合終了後、双方委員は李肇星外交部長を表敬した。

I. 日程

日付 内容
12月26日(火曜日) 16時00分-16時30分 開幕式(プレスに公開)
16時30分-19時00分 全体会合
19時30分-21時00分 中国側委員主催夕食会
12月27日(水曜日) 9時00分-12時00分 全体会合
13時00分-15時00分 分科会
15時15分-16時00分 閉幕式
16時45分-17時15分 北岡・日本側座長による記者会見
17時30分-18時00分 李肇星外交部長表敬

II. 第1回会合概要

1 開幕式

  1. 歩平・中国側座長の挨拶概要
     歴史問題は、東アジアの国家関係の重要な障碍の一つ。戦後日本には戦争責任を受け入れず、侵略戦争という歴史事実すら否定する言行が見られる。これは被害国民の感情を害し、歴史問題が解決されない原因。共同研究では、こうした障碍を打破し、日中間の政治文書の基本原則を共に守っていくべき。
     歴史認識の相違は、相互交流と相互理解を通じて縮小可能。世界平和の擁護、侵略戦争反対といった普遍的意義が前提。共通の歴史認識はまず、歴史的事実をともに確認することを基礎に確立されるべき。我々は各方面の歴史的資料の収集をできるだけきちんと行い、不確かなものは排除して真実を残し、分析・研究することにより、一般に意思疎通、交流の基盤を提供すべき。
  2. 北岡伸一・日本側座長の挨拶概要
     第一に、共通の歴史認識を持つことは困難であるが、日中間には行き過ぎた違いがあり、これを何とかして縮めていけないだろうか。事実に基づき対話すれば、それほど難しくない。我が国はかつて中国に軍隊を送り込み、多くの中国人が犠牲になったが、日本国内でこれを否定する人はいない。歴史認識を無理矢理一致させなくても、かなりの整理が可能ではないか。
     第二に、日中関係が如何に重要であるかということ。少子高齢化、資源・エネルギー、環境等日中が協力して取り組めることは多い。その入口において歴史問題で行き詰まってはならず、政治が本来やるべき現在、未来のことに取り組めるよう、歴史共同研究を役立てていきたい。
     第三に、胡錦濤主席が国民党の抗日戦争における役割を評価したことに注目。中国でも様々な歴史認識が評価され、安倍総理訪中でも互いの平和的発展を評価した。このように歴史を全体として見ていくことが重要である。
     第四に、研究者として新しい資料や研究には大いに興味がある。孔子の発言にも「これを知る者はこれを好む者にしかず、これを好む者はこれを楽しむ者にしかず」とあるように、「知の地平線」を広げるべく、楽しみたい。

2 全体会合

 まずはお互いの理解を深めるため、初日は、委員それぞれの研究史、どのような問題をどのように研究してきたかについて紹介。二日目は、これからの研究をどう進めるか、如何なるテーマを取り上げるかについて議論した。

  1. 共同研究の主旨
     両国座長は、共同研究の主旨は、1)日中間の3つの政治文書の原則に基づき、歴史を直視し未来へ向かうとの精神をもって、2)日中二千年余りの交流に関する歴史、近代の不幸な歴史、戦後60年の日中関係の発展に関する歴史について共同研究を行い、3)これを通じて歴史に対する客観的認識を深め、相互理解を増進し、4)2008年の日中平和友好条約締結30周年に成果の発表を目指すことである旨、改めて確認した。
  2. 共同研究の範囲、議題
     取り扱う範囲、議題の設定について、率直かつ広範に意見交換が行われた。各分科会の研究テーマについては、引き続き行われる分科会において自由討論を行うこととされたが、具体的には次回会合において決定することとした。
  3. 今後の作業スケジュール
     2008年に成果をとりまとめることを念頭に、今後の作業スケジュールについて意見交換が行われ、次回会合は2007年3月18日から21日に2日程度、日本で開催することで合意。その後の全体会合は、第3回を2007年12月頃に、第4回(最終回)全体会合を2008年6月に開催し、この間、分科会を適宜開催することで合意した。なお、分科会については、それぞれ必要に応じて、適宜、研究協力者を委託することとなった。

3 分科会

 「古代・中近世史」と「近現代史」の分科会に分かれ、それぞれ議題、研究テーマの決め方等に関し、自由討論が行われた。「古代・中近世史」、「近現代史」ともに、具体的な研究テーマについては、次回の分科会で決めていくことにした。
 なお、「近現代史」については、まずは両国の研究の現状のレビューから始めることとし、1)戦時より前、すなわち近代の始まりから昭和の初め頃までの時期、2)満州事変から終戦までの時期、そして、3)戦後の3つの時期区分に分けて、色々な問題を議論していくことで一致した。

4 閉幕式

 まず、それぞれの分科会における議論の概要につき、それぞれ報告があった。引き続き、次回会合を、全体会合と分科会をあわせ、3月18日から21日までの間の2日程度、日本において開催することを決定するとともに、今次会合で日中双方の委員間で合意に至った事項について改めて確認した。

III. 李肇星外交部長表敬

  1. 李肇星外交部長より、日本側委員に対して以下のとおり述べた。
    1. 日中双方の委員の来訪を歓迎。本件は10月の安倍総理訪中の際に首脳間で合意し、11月に麻生大臣とその実施枠組みについて一致したもの。今般、第一回会議が開催されたことは喜ばしい。相互理解の増進に向けた委員各位の貢献に感謝。
    2. 両国は、友好往来二千年の歴史に続き、近代の不幸な歴史も有しているが、両国間の歴史は両国にとり重荷となってはならず、友好協力関係発展の原動力となるべき。来年は国交正常化35周年を迎えるが、この記念すべき年に、この共同研究が両国関係を一層高い次元へと導くことを期待。歴史事実に対する客観的認識を深め、相互理解を増進して欲しい。
  2. 日本側委員を代表して、北岡座長より以下のとおり述べた。
    1. 日本と中国には協力して取り組むべきことが多い。少子高齢化、資源・エネルギー、環境といった分野では、日中が協力してやっていくことが必要。政治がこうした本来の仕事、すなわち現在と未来のことに取り組む上で、この共同研究が役に立つことを期待。
    2. 二日間にわたり率直な議論を重ね、当初予定していたよりも良いスタートが切れたものと満足。最終的に2008年に成果を示せるよう、全員で努力していきたい。
アジアへ戻る