アフリカ
チャド共和国(Republic of Chad)
基礎データ


一般事情
1 面積
128.4万平方キロメートル(日本の約3.4倍)
2 人口
1,718万人(2021年、世銀)
3 首都
ウンジャメナ(N'Djamena)
4 民族
サラ、チャド・アラブ、マヨ・ケビ、カネム・ボルヌ等
5 言語
仏語、アラビア語(共に公用語)、部族語130以上
6 宗教
イスラム教(52%)、キリスト教(44%)他
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
16世紀 | ボルヌー王国 |
1910年 | 仏領赤道アフリカ・チャド州 |
1960年8月 | 仏から独立 |
1962年4月 | トンバルバイ大統領が就任、南北対立顕在化 |
1975年4月 | クーデター、最高軍事評議会(議長マルーム将軍)発足 |
1978年8月 | マルーム将軍とハブレ反政府組織「チャド民族解放戦線(FROLINAT)」代表が統一政府樹立。マルーム大統領が就任 |
1979年3月 | 統一政府崩壊、ウェディ議長の暫定国家評議会発足 |
1979年4月 | シャワ暫定国民連合政府大統領就任 |
1979年11月 | ウェディ暫定国民連合政府大統領就任 |
1980年10月 | リビアが内戦介入(翌年、リビア軍撤退、アフリカ統一機構(OAU)平和維持軍派遣) |
1982年6月 | ハブレ率いる北部軍隊(FAN)が首都を制圧、臨時国家評議会発足 |
1982年10月 | ハブレ大統領が就任 |
1983年7月 | リビア地上正規軍介入(反政府勢力を支援) |
1987年9月 | チャド・リビア停戦協定(OAU調停) |
1990年12月 | デビー・イトゥノ元軍司令官首都制圧、国家評議会組織 |
1991年3月 | 国民憲章採択、デビー・イトゥノ大統領就任 |
1996年7月 | 複数政党制の下、デビー・イトゥノ大統領再任 |
1997年1月-2月 | 国民議会議員選挙実施 |
2001年5月 | 大統領選挙、デビー・イトゥノ大統領3選 |
2004年5月 | 憲法改正により、大統領再選回数制限を撤廃 |
2006年5月 | 大統領選挙、デビー・イトゥノ大統領4選 |
2011年4月 | 大統領選挙、デビー・イトゥノ大統領5選 |
2016年4月 | 大統領選挙、デビー・イトゥノ大統領6選 |
2018年4月 | 新憲法発布(首相職廃止、大統領任期5年、大統領再選回数1回まで) |
2020年12月 | 新憲法発布(副大統領職創設、上院設置) |
2021年4月 | 反政府武装勢力との交戦での負傷が原因でデビー・イトゥノ大統領逝去 |
2021年4月 | マハマト・イドリス・デビー・イトゥノ中将率いる軍事移行評議会設置 |
2021年10月 | 国民議会を解散し、移行期間に立法府の機能を果たす国家移行評議会を設置 |
2022年10月 | マハマト・イドリス・デビー・イトゥノ暫定大統領就任、移行期間を最大2年間延長することを決定 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
マハマト・イドリス・デビー・イトゥノ(MAHAMAT IDRISS DEBY ITNO)暫定大統領・共和国大統領・国家元首
3 議会
国家移行評議会(構成員197名)
4 政府(移行政府)
- (1)首相 サレー・ケブザボ(SALEH KEBZABO)首相、移行政府代表
- (2)外相 マハマト・サレー・アナディフ(MAHAMAT SALEH ANNADIF)外務・在外チャド人・国際協力大臣
5 内政
独立後、南部キリスト教勢力中心の政府に北部イスラム勢力が反発。1980年代は北部勢力が政権を有するも北部勢力間抗争により情勢が不安定化。1989年、仏の支援を受けハブレ元軍司令官が全土掌握。1990年、スーダン等の支援を受け、クーデターによりデビー・イトゥノ元軍司令官が大統領就任、30年を超える長期政権を維持していたものの、2021年4月、反政府武装勢力(FACT)との交戦での負傷が原因で逝去。同月、デビー・イトゥノ前大統領の子息である、マハマト・イドリス・デビー・イトゥノ中将(当時)を議長とする軍事移行評議会(CMT)を設置。18か月の移行期間を経て、包括的国民対話を行った上で自由で民主的な選挙を実施予定であり、大統領選挙では軍事移行評議会のメンバーは候補者とならないことが表明された。しかしながら、2022年9 月に包括的国民対話が行われ、移行期間の最大2年間の延長や、暫定大統領が大統領選挙にも立候補できることを決定。同年10月、マハマト・イドリス・デビー・イトゥノ軍事移行評議会議長は、暫定大統領に就任し、移行期間の最大2年間の延長を決定。
政情不安定な周囲国からチャド内政への影響、周囲国に潜伏するチャド反政府組織による国内への侵入が懸念される。また、2015年2月以降、イスラム系過激派組織「ボコ・ハラム」の影響により、チャド湖流域の難民・人道状況が悪化している。
外交・国防
1 外交基本方針
デビー・イトゥノ前政権は発足時より非同盟・反新植民地主義を表明し、仏等西側諸国と友好関係を増進。現在のマハマト・イドリス・デビー・イトゥノ暫定大統領も、基本的に前政権時代の外交路線を継続。
1962年、台湾と国交樹立。1972年、中国と国交樹立。1997年、台湾と国交再開。2006年8月、中国と国交再開。
2 軍事力(ミリタリーバランス2021年版)
- (1)予算 2.69億ドル(2020年)
- (2)兵役 徴兵制度
- (3)兵力 33,250人(陸軍27,500人、空軍350人、共和国警護隊5,400人)
経済(単位 米ドル)
1 主要産業
農業(綿花)、牧畜業、原油生産
2 GDP
117.8億ドル(2021年、世銀)
3 一人当たりGNI
640ドル(2021年、世銀)
4 経済成長率
-1.2%(2021年、世銀)
5 物価上昇率
-0.8%(2021年、世銀)
6 失業率
1.5%(2021年、世銀(ILO推計))
7 総貿易額
- (1)輸出 22.26億ドル(2021年、ITC)
- (2)輸入 7.42億ドル(2021年、ITC)
8 主要貿易品(2021年、ITC)
- (1)輸出 鉱物性燃料、種子、樹脂、綿等
- (2)輸入 機械類、電子機器、医療用品、衣料品等
9 主要貿易相手国(2021年、ITC推計)
- (1)輸出 ドイツ、フランス、中国、オランダ、トルコ
- (2)輸入 中国、フランス、インド、トルコ、米国
10 通貨
CFAフラン(中部アフリカ諸国中央銀行発行)
11 為替レート
1ユーロ=655.957CFAフラン(固定レート)
12 経済概況
チャドの国土の約3分の2は砂漠地帯。綿花と畜産業が中心であったが、南部の石油資源(埋蔵量約15億バレル、アフリカ第10位)の開発が進み、2003年、南部と隣国カメルーンのクリビ港間の石油パイプライン(全長1,070km)が開通し石油輸出が開始。産油量9.8万バレル。石油収入は国家財政の6割。一方、2014年下半期の国際石油価格の下落を受け、財政の悪化、マクロ経済の低迷が続く。経済成長率は、2021年は新型コロナウイルス感染症流行の影響を受け、マイナス成長となった。
脱石油依存・経済多角化が課題であり、チャド政府は農業・牧畜分野での投資誘致・経済成長を目指す。
2018年4月、IMFはチャド財政・経済立て直しのために拡大クレジットファシリティー(ECF)として3年間で3.1億ドルの融資を承認した。2022年11月、チャドは「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)後の債務措置に係る共通枠組み」において、債務措置について初の合意に達した。
経済協力(単位 億円)
1 日本の援助実績
- (1)有償資金協力(2021年度まで、EN(交換公文)ベース)なし
- (2)無償資金協力(2021年度まで、EN(交換公文)ベース)82.48億円
- (3)技術協力実績(2021年度まで、JICAベース)10.38億円
2 主要援助国(2020年)(百万ドル、支出純額)(OECD/DAC)
- (1)米国(88.32)
- (2)フランス(74.63)
- (3)ドイツ(39.92)
- (4)スイス(28.54)
- (5)カナダ(9.67)
二国間関係
1 政治関係
1960年8月、我が国はチャドを承認。在カメルーン大使館が兼轄。在京大使館はなし(在中国チャド大使館が兼轄)。2005年、東部アベシェにスーダン難民支援のためのJICAフィールドオフィスを開設するも、治安悪化により2006年末閉鎖。2013年5月、TICAD V出席のため、デビー・イトゥノ大統領(当時)がチャド大統領として初の訪日。2016年5月、同大統領(当時)は、伊勢志摩G7サミット・アウトリーチ会合出席のため再来日し、首脳会談を実施。2018年5月、佐藤外務副大臣(当時)は、現職政務としては初めてチャドを訪問し、デビー・イトゥノ大統領(当時)を表敬、シェリフ外相と会談を実施。
2 経済関係
(1)対日貿易
- (ア)貿易額(2021年 財務省貿易統計)
- 対日輸出 0.10億円
- 対日輸入 3.42億円
- (イ)主要品目
- 対日輸出 植物性原材料等
- 対日輸入 機械類及び輸送用機器、医薬品、電気機器等
(2)進出日本企業
なし(2023年2月現在)
3 文化関係
なし
4 在留邦人数
4人(2023年2月現在)
5 在日当該国人数
3人(2022年6月現在)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
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2005年11月 | 西川公也衆議院議員、木村太郎衆議院議員、宇野治衆議院議員、松浪健太衆議院議員(日・AU友好議員連盟中部アフリカ訪問団) |
2018年5月 | 佐藤正久外務副大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1976年11月 | カムーゲ外相及びドゴイ経済計画・運輸相 |
1981年12月 | ファショ運輸・公共相 |
1989年2月 | イッサ・アバス大使(在北京)(大喪の礼) |
1990年11月 | ドノ・ヌガルドゥム国務相(即位の礼) |
1993年10月 | イブニ・ウマール計画協力相(TICAD) |
1998年10月 | マハマト・サレー・アナディフ外相(TICAD II) |
2001年12月 | マハマト・サレー・アナディフ外相(TICAD閣僚会合) |
2003年9月 | ハッサン計画開発協力相(TICAD III) |
2005年7月 | ヤマスム外務アフリカ統合相(外務省賓客) |
2013年6月 | デビー・イトゥノ大統領(TICAD V) |
2016年5月 | デビー・イトゥノ大統領(伊勢志摩G7サミット・アウトリーチ会合) |
2018年10月 | イッセイヌ・タイール・スグイミ経済・開発計画副大臣(TICAD閣僚会合) |
2019年8月 | イッサ・ドゥブラニュ経済・開発計画相(TICAD7) |
2019年10月 | アシュタ・サレー・ダマヌ外務・アフリカ統合・国際協力・在外国民副大臣(即位礼正殿の儀) |
2021年7月 | ルトゥアン・モハメド・ンドンガ・クリスチャン青年・スポーツ・企業促進大臣(2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会) |
7 二国間条約・取極
- 1964年11月24日 貿易取極(1965年1月1日発効)