ブルネイ・ダルサラーム国

最近のブルネイ情勢と日・ブルネイ関係

令和元年6月21日

1 内政

  • (1)マレー主義,イスラム国教,王政擁護」を掲げる立憲君主制(国王は世襲制)。1967年10月5日に即位したハサナル・ボルキア現国王(第29代スルタン)は,1984年の独立と同時に,首相,財務相及び内相を兼務し,現在も首相,財務・経済相,国防相及び外相を兼務しており,政治権力を集中的に掌握している。また,スルタンである国王は宗教的権威でもある。
  • (2)国王は,1984年の独立直後に任命制の立法評議会を停止し,立法権も掌握してきたが,2004年9月,独立後初めて立法評議会を開いた。2006年3月から例年3月に立法評議会が開催されてきているが,予算審議等を行うにとどまっている。また,同評議会では,2004年9月に国王の機能と議会の構成等に関する憲法改正が行われ,同評議会の議員の一部を選挙で選出することが規定された(従来は全ての議員が国王により任命。)。2011年3月には立法評議会の解散を受け,初めて一部議員の選挙が実施された。
  • (3)2005年5月には17年ぶりの大幅な内閣改造が行われ,ビラ皇太子が首相府上級相に就任したほか,高齢の有力大臣を罷免し,若手の人材を起用する等,内閣の刷新が図られた。2015年10月には独立5度目となる内閣改造が行われ,国王自身が外務貿易相(当時)を兼任することとなり,更に国王の権限が増大した。2018年1月30日,内閣の任期(5年間)を半分以上残したタイミングで,国王は大幅な内閣改造を行った。
  • (4)豊富な石油・天然ガス収入により,一人当たりの国民の所得水準が高く,社会福祉も充実していること等を背景に,政治・経済情勢は安定している。
  • (5)2014年5月から段階的に導入されたシャリア刑法が,2019年4月3日に完全施行に至った。これに対して欧米諸国を中心とする国際社会の批判が集中すると,5月5日,国王自らテレビ放送を通じてスピーチを行い,死刑のモラトリアムを継続することや,拷問等禁止条約を批准することに言及した。

2 外交

  • (1)東南アジア諸国連合(ASEAN)の第6番目のメンバー(1984年加盟)であり,小国としての安全保障,近隣諸国との歴史的結び付き等の理由から,ASEANの結束の維持及び強化を外交政策の柱としている。2013年には,ASEAN議長国を務め,2015年から3年間,ASEANの対日調整国を務めた。国連,英連邦,イスラム諸国会議機構(OIC),非同盟諸国会議等に加盟。アジア太平洋経済協力会議(APEC),ASEAN地域フォーラム(ARF),アジア欧州会合(ASEM)のメンバーでもある。
  • (2)ブルネイ政府は大使館・総領事館及び国際機関への代表部として41公館を設置。27か国がブルネイに大使館を設置。2005年8月,外務省が外務貿易省に改称され,産業・一次資源省(現:一次資源・観光省)の国際関係・貿易局管轄部分が移管された。さらに2018年9月には外務貿易省が担っていた貿易部分を財務省に移管し,外務貿易省を外務省に,財務省を財務・経済省に名称変更する省庁改編が行われた。

3 国防

  • (1)ブルネイの国防は,ブルネイ国軍約8,400人(志願制。陸軍:約5,800人,海軍:約1,300人,空軍:約1,300人。)が担っている。
  • (2)また,日本,英国,米国,豪州,NZ,シンガポール,マレーシア,インドネシア,パキスタン等と共同訓練を行ってきている。

4 経済

  • (1)豊富な石油・天然ガス生産により,安定した経済,高い所得水準を維持。また多額の海外資産を保有・運用してきている。
  • (2)他方,エネルギー資源への過度の依存から脱却すべく,数次にわたる「国家開発5か年計画」により経済の多様化を目指している。2008年1月,政府は長期的な国家ビジョンである「ワワサン・ブルネイ2035」,それを実現するための今後10年にわたる開発のための戦略と政策の枠組み「OSPD2007-2017」及び今後5年にわたる国家開発計画「RKN2007-2012」を発表。2012年から2017年までの第11回国家開発計画「RKN11」には,5年間で82億ブルネイ・ドルの予算が割り当てられている。
  • (3)石油生産は,1929年にセリアで始まり,現在は主にブルネイ・シェル石油会社(ブルネイ政府50%,シェル石油50%の出資)が生産・販売に当たっている。天然ガスについては,ブルネイLNG社(ブルネイ政府50%,シェル石油25%,三菱商事25%の出資)が生産・販売に当たっている。2017の原油生産量は1日当たり約11.3万バレル,天然ガスは約24.4boe(石油換算バレル)(出典「Brunei Darussalam Statistical Yearbook 2017」)。石油・天然ガス及び関連製品は,ブルネイの輸出総額の約89.6%を占めている(出典「Brunei Darussalam Statistical Yearbook 2017」)。
  • (4)2002年,ブルネイ政府は,外資の誘致による新たな産業の育成を目的としたブルネイ経済開発委員会(BEDB)を設立。また,経済多様化の観点から,(i)石油・天然ガスを単に生産・輸出するのではなく,石油・天然ガスを原料としてメタノールやアンモニアの製造等を行う石油「川下」産業の振興や,(ii)ムアラ島を巨大ハブ港湾として開発する事業計画等を策定してきている。
  • (5)日本企業が出資し,国際協力銀行(JBIC)が資金面で支援するメタノール事業については,2007年4月に天然ガスの供給契約の調印式が行われた。2008年2月に建設が始まったプラントは,2010年5月に完成し,国王出席の下,盛大に開所式が行われ,公式に操業を開始した。また,日本企業によるサプリメントや化粧品用のアスタキサンチン事業,油井管のねじ切り加工が行われているほか,2017年7月には,天然ガス液化プラントのプロセスで発生するガスを利用した水素サプライチェーン実証事業の本格着手が発表された。本実証事業により,2020年にはブルネイで調達した水素が日本に輸送される予定。このほか,ハラル食品分野における日本企業の活動等が見られる。

5 日本・ブルネイ関係

(1)外交関係の樹立

 日本はブルネイの独立後間もない1984年4月に外交関係を樹立。在ブルネイ日本大使館は1984年6月,在本邦ブルネイ大使館は1986年3月にそれぞれ開設された。2014年には,日・ブルネイ外交関係樹立30周年を迎え,良好な二国間関係を更に発展させた。

(2)活発な要人往来等

 ボルキア国王は,国賓招聘(1984年),大喪の礼出席(1989年2月),APEC大阪会合出席(1995年11月),日ASEAN特別首脳会議出席(2003年12月),日・ブルネイ経済連携協定(EPA)署名(2007年6月),APEC首脳会合出席(2010年11月),日・ASEAN特別首脳会議出席(2013年12月)等のため訪日。

 日本からは,常陸宮同妃両殿下が1996年9月に皇族として初めてブルネイを御訪問したほか,2004年9月に皇太子殿下(当時)がビラ皇太子の結婚式に御出席のためブルネイを御訪問した。また,2013年10月にASEAN関連首脳会議出席のため,安倍総理大臣がブルネイを訪問した。2017年10月には,天皇皇后両陛下(当時)が在京ブルネイ大使館を御訪問し,ボルキア国王即位50周年を祝して御記帳した。

 閣僚級の往来も活発に行われており,近年では,2018年2月に河野外務大臣が,内閣改造直後のブルネイを訪問し,エルワン第二外務貿易相と外相会談を行い,ハルビ第二国防相も同席した。またその機会に,ムアラ港に寄港中であった海上自衛隊外洋練習航海部隊を訪問した。ブルネイからは,2018年7月にエルワン第二外務貿易相が訪日し,河野外務大臣と外相会談を行い,良好な二国間関係を更に活発化させ,ブルネイの経済多角化などの分野において引き続き二国間で協力していくことや,地域の課題に対する連携を強化することを確認した。ブルネイからは,ほかにも,イシャム保健大臣,マット・スニー・エネルギー・産業大臣,アミン・リュー首相府大臣兼第二財務・経済大臣等の閣僚が訪日するなど,活発な要人往来が行われている。

 2018年8月にシンガポールで開催されたASEAN関連外相会議の際にも,河野外務大臣がエルワン大臣との間で,河野外務大臣にとって就任以来5回目となる日・ブルネイ外相会談を行い,2015年から3年間に亘り,ASEANの対日調整国を務めたブルネイの貢献及び協力に謝意を表明した。2019年4月には薗浦総理補佐官,5月には石井国土交通大臣がブルネイを訪問した。

(3)エネルギー分野を始めとする緊密な経済関係

  • (ア)日本は,長年にわたりブルネイ最大の貿易相手国(2017年には輸出額全体の29.2%が対日輸出(出典「Brunei Darussalam Statistical Yearbook 2017」)。ブルネイから日本への輸出のほとんどが石油・天然ガス(99.4%,(出典「Brunei Darussalam Statistical Yearbook 2017」))。日本からブルネイへの主な輸出品目は,輸送用機器及び部品。
  • (イ)ブルネイ・シェル石油会社は,1969年に日本への原油輸出を開始。また,1972年には,ブルネイ液化天然ガス会社(BLNG)が日本へのLNG輸出を開始。現在,ブルネイのLNGの輸出総量の約6割が日本向け(出典「Brunei Darussalam Statistical Yearbook 2017」)であり,ブルネイ産LNGは日本のLNG総輸入量の約5%(2016年財務省貿易統計)を占める(オーストラリア,マレーシア,カタール,ロシア,インドネシア,アラブ首長国連邦に次いで第7位)など,ブルネイは日本へのエネルギー資源の安定供給の面からも重要な国となっている。
  • (ウ)ブルネイに進出している日系企業数は15社(2018年10月現在)。ブルネイ在留の邦人数は170人(2018年10月現在)。

(4)日・ブルネイ経済連携協定(EPA)

 2005年12月,マレーシア(クアラルンプール)で行われた東アジア首脳会議(EAS)に際しての小泉総理(当時)とボルキア国王との首脳会談において,日・ブルネイ間の経済連携協定(EPA)交渉立ち上げに向けた準備協議の開始に合意。その後,2006年5月にカタールで行われた日・ブルネイ外相会談において正式交渉の開始が合意された。交渉は,同年6月から11月にかけての3回の会合を経て,同年12月に大筋合意に達した。2007年3月に第4回会合が行われた後,2007年6月,訪日したボルキア国王と安倍総理(当時)との間で日・ブルネイ経済連携協定の署名が行われた。2008年7月1日,外交上の公文の交換が行われ,同年7月31日に効力が発生した。

 また,日本とASEAN全体が締結している日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定は,2009年1月にブルネイとの間で効力が発生した。

(5)査免取極,航空協定及び租税協定

 1986年6月には,観光等を目的とした14日以内の滞在に関し,両国の査証取得を不要とする査免取極が発効した。

 1993年11月,両国の間で定期航空路線を開設・運営することを目的とした航空協定が締結され,1994年12月からロイヤル・ブルネイ航空が関西国際空港に週2便乗り入れていたが,1998年10月から運行を停止。2019年3月15日,ロイヤル・ブルネイ航空は,首都バンダル・スリ・ブガワンー成田間の直行便を就航させた。2007年11月には,二重課税の回避や租税当局間の協力を定める租税協定の締結交渉が開始され,2009年1月に署名され,同年12月に効力が発生した。

(6)東日本大震災に際しての支援

 東日本大震災後,ブルネイからは,政府による100万米ドルの義援金のほか,民間からも義援金372,458ブルネイ・ドル(2012年1月時点,約2,384万円),寄せ書き等のメッセージが寄せられた。

(7)文化交流

 2007年12月から始まった「21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYS)」及び2013年7月から始まった「JENESYS2.0」や内閣府「東南アジア青年の船」事業等を通して,将来の日・ブルネイ関係を担う青少年交流が行われている。バドミントンに代表されるスポーツ交流は両国関係促進にとって重要であり,また,2018年4月にブルネイ柔道連盟が発足し,ブルネイで柔道が着実に普及しつつある。加えて,在ブルネイ日本大使館がブルネイ教育省及びブルネイ大学と連携し,「日本語能力試験」「日本語弁論大会」が毎年開催されており,日本語を通じた交流も行われている。

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