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1.アジア欧州会合第7回外相会合(FMM7)は、町村信孝日本国外務大臣の議長の下、2005年5月6日及び7日、日本の京都において開催された。
2.今日の世界において、今や人口の約40%、GDPの約50%、貿易の約60%を占めるASEM参加国間の協力は、国際社会が直面する主要なグローバルな課題に取り組む上で、重要性を増している。こうした認識に基づき、また、ASEMプロセスを再活性化するためにハノイでの第5回アジア欧州会合(ASEM5)で与えられた首脳からの指示に基づき、外相は、「グローバルな課題についてのアジア・欧州間の対話の深化」というテーマの下、多国間主義の強化、持続可能な開発、文化・文明間対話を含む共通の関心事項について、活発かつ有益な議論を行った。
3.外相は、グローバルな課題に対処するためのASEMを通じたアジアと欧州の協力を強化する決意を京都において表明し、「グローバルな課題に対処するためのアジア・欧州パートナーシップ」を歓迎した。外相は、ASEMの活動を以下に述べる分野に集中することの重要性を認識し、また、ASEM5において採択された課題に留意し、他のASEM閣僚会合が責任を有する各分野においても同様に集中した議論を行うよう促した。
4. 外相は、新たなクローバルな課題と脅威に効果的に取り組むため、多国間主義、及び国際連合が中心的な役割を果たす、公正、正当かつルールに基づく国際秩序に対するコミットメントを確認した。外相は、9月の国連ミレニアム宣言に関する首脳会合の成功を確保すべく最大限の努力を払い、国連改革を支持するとのコミットメントを改めて表明した。外相は、国連事務総長報告「より大きな自由を求めて」において言及された改革の多様な側面につき、包括的かつ集中的に議論することの必要性に同意した。この文脈で、外相は、 ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて貢献するとの決意を再確認し、国連システムの代表性、透明性及び実効性を強化し拡充するため、総会及び安全保障理事会を含む国連の主要機関の改革の必要性を強調した。外相は、平和構築委員会についての勧告、並びに人道的な改革及び国連の人権機関・制度について現在行われている議論に関心を持って留意した。
5. 外相は、拡散を防止するための国連安保理決議第1540号に従って、大量破壊兵器(WMD)及びその運搬手段と関連物質・技術の削減及び拡散防止のための努力を強化することの重要性を改めて表明した。このため、外相は、特に、強化された輸出管理制度を含む、軍縮及び不拡散分野における条約及び規範の普遍化及び国内実施の促進の必要性を強調し、また、ニューヨークで開催されている2005年NPT運用検討会議の成功を確保するため最善の努力を払うことを決意した。
6. 外相は、すべての国に対し緊急の課題として、12の対テロ関連国際条約及び議定書すべてへの加入、批准及び実施、並びに関連する国連安保理決議の実施を呼びかけた。外相は、核によるテロリズム行為の防止に関する国際条約が4月に採択されたことを歓迎し、第60回国連総会終了前に包括テロ防止条約の交渉を妥結することへの強い支持を表明した。外相は、2004年10月にベルリンで開催されたテロ対策に関するASEMセミナーを認識し、また、2005年9月にインドネシアで開催される次回セミナーに期待しつつ、テロと闘い、この分野で支援を必要とする国のテロ対処能力の向上をさらに促進する必要性を強調した。外相は、すべてのテロ対策措置は、国際法、特に国際的な人権法、難民法、及び人道法を十分に尊重して採択及び実施されなくてはならないことに留意した。外相は、関連国際基準及び条約の完全な実施を確保することにより、資金洗浄及びテロ資金対策に努力を結集することにつき、意を新たにした。
7. 2005年4月18日から25日までバンコクで開催された第11回国連犯罪防止会議の成果の重要性を認識し、外相は、国連の国際組織犯罪防止条約及び腐敗防止条約、麻薬関連条約をはじめとする、国際組織犯罪に関連する条約の締結、並びにこれらの条約の厳格な遵守へのコミットメントを強調した。外相は、ASEM参加国による、人身取引、特に女性と児童の取引防止のための努力を強調した。外相は、組織犯罪と闘うために、法執行及び司法機関の能力構築への支援を要する国に対して、必要な支援を行うことの重要性を強調した。アジアと欧州間の海上交通路に対する脅威を軽減することの重要性を認識し、外相は、海上保安及び海上運送の安全を確保するため、沿岸国の能力構築支援を含む協力を強化する必要性を強調した。外相は、非合法小型武器(SALW)の取引防止のための協力の促進、特に、合意されたスケジュールに基づく非合法小型武器の時宜にかなった、確実な特定と追跡のための国際文書の採択に向けてのコミットメントを確認した。
8. 多国間主義の強化に関連し、外相は、以下について意見交換を行った。
9. 外相は、環境及びエネルギー安全保障を含む、人間中心の持続可能な開発の必要性につき議論した。
10. 外相は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及び京都議定書が、気候変動への取り組みにおける国際協力のための効果的な枠組みと規則を確立したと改めて表明した。外相は、京都議定書の発効を歓迎しつつ、締約国に対し、責任を履行し京都メカニズムを有効に活用することを奨励するとともに、未だ京都議定書を締結していない国々に対し、早期に締結するよう促した。外相は、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力の原則に従い、効果的で、費用対効果が高く、適切な国際的対応を達成すべく、京都議定書及び2012年より後の枠組みに可能な限り幅広い諸国の参加を確保する必要性を表明した。外相は、2012年より後の行動に関する協議を早急に開始する必要性、及び将来の枠組みに関する交渉を開始するために次回の気候変動枠組条約締約国会議(COP11)において2012年より後の枠組みに関する議論を進める必要性を強調した。
11. 外相は、よりクリーンで効率的な技術の開発は、経済成長と環境保全のバランスの改善に寄与するとの確信を表明した。外相は、東京で開催された3R(廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用)イニシアティブ閣僚会合に留意しつつ、循環型社会の構築に向け、ライフサイクルを通じて環境への影響の少ない新たな製品やサービスの提供への重要な転換を含め、より持続可能な生産・消費形態を達成すべく努力することを決意した。
12. 外相は、違法伐採が環境破壊及び気候体系にもたらす影響につき特に留意し、生産国・消費国双方に対し違法伐採を防ぐ努力の強化を呼びかけた。外相はまた、森林火災予防のための協力の必要性に留意した。外相は、海洋環境の保護を強化し、海洋資源の持続的利用を推進することの重要性を認識した。
13. 外相は、継続する石油価格の高騰が世界経済の成長に与える影響につき懸念を表明した。エネルギー需要が特にアジアにおいて高まることを予期しつつ、外相は、省エネ、エネルギー効率の向上、また原子力を選択肢の一つとしている国々においては原子力を含めた代替エネルギーのより広範な利用を通じ、エネルギー安全保障を強化することが特に重要であることを認識した。
14. 外相は、MDGs及びヨハネスブルグ実施計画に含まれる目標を達成する上で、本会合で成功裡に示されたように、アジア・欧州間における更なる対話と協力の余地があるとの認識を共有した。貿易と投資による自立した成長を通じたアジアの経済発展の成功にかんがみ、外相は、伝統的ドナー国からの継続的支援とともに、新興ドナー国を含めた南南協力の重要性を強調した。これに関連し、外相は、2005年4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ首脳会議の成果を歓迎した。MDGsを達成するプロセスに新たな弾みを与える2005年国連ミレニアム宣言に関する首脳会合の重要性も強調された。外相は、WTOドーハ開発アジェンダ交渉を成功裡に終結させるとのコミットメントを改めて表明し、2005年12月の香港閣僚会合が十分にバランスのとれた野心的成果を達成することの重要性を強調した。
15. 持続可能な開発を確保するため、外相は、自然災害、HIV/エイズを含む感染症、貧困、紛争といった様々な脅威から人々を保護し、人々がこれらの脅威に対処するための能力を与える必要性につき議論した。外相は、人々が生命を脅かす様々な脅威と闘い、これらに成功裡に対処することを可能にするための人的、制度的能力構築における協力の重要性を強調した。開発における教育の決定的に重要な役割を強調しつつ、外相は、国連持続可能な開発のための教育の10年を実施する決意を再確認した。外相は、津波被災国に対するアジア・欧州の国々及び人々からの支援を歓迎した。外相は、災害発生後の前例のない世界的連帯の波及を評価し、各国の優先事項に従い、また関係国連機関の調整の下で、地域早期警戒システムを確立するイニシアティブを歓迎した。
16. 文化の多様性の尊重及び文化遺産保護の重要性を強調しつつ、外相は、文化・文明間の更なる対話を促進する意思を再確認した。これに関連し、ASEM青少年スポーツ大会(2005年6月2-8日、バンコク)、第2回ASEM文化と文明に関する会合(2005年6月7-8日、パリ)、ASEM異なる信仰間の対話(2005年7月21-22日、バリ)につき特に言及が行われた。外相はまた、ユネスコ(UNESCO)で交渉中の文化多様性に関する条約の成功裡の策定に寄与する意図を表明した。
17. 文化分野におけるアジア欧州財団(ASEF)の貢献を評価しつつ、外相は、ASEFの活動のASEMの優先事項とのより緊密な整合性、及びASEFの健全な予算・組織運営の重要性を強調した。
18. ASEM5における首脳からの付託に従い、外相は、実質的協力分野、ASEMの機構体系の効率性向上、将来のメンバーシップ拡大というASEMの将来に関する議論を行った(別添参照)。この関連で、外相は、ASEM6への寄与としてASEMの10年に関する批評的研究を実施するとのフィンランド及び日本のイニシアティブを歓迎し、承認した。
19. 外相は、以下の新たなイニシアティブを歓迎し、承認した。
20. ASEM5における議論のフォローアップとして、外相は、労働と雇用問題に関する閣僚会合を開催するとの提案を歓迎した。
21. 外相は、第8回外相会合を2007年に欧州で開催することに合意した。外相は、2006年にフィンランドで開催されるASEM6への期待を表明し、2008年にASEM7を開催するとの中国の申し出を歓迎した。
日本、京都
2005年5月7日
別添:ASEMの将来に関する議論の概要