アジア

世界地図 アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ

青年交流:アジア欧州ヤングリーダーズシンポジウム

平成9年3月

【第1回アジア・欧州ヤングリーダーズシンポジウム】

アジア欧州ヤングリーダーズシンポジウム

総括
閉会式における宮崎からのメッセージ(仮訳)

1997年3月12日(水曜日)
  1. 議長、柳井外務審議官、ヤングリーダーの皆様並びにご出席の皆様

  2. 宮崎で開催されました本シンポジウムは、日本外務省と新しく設立されたアジア欧州財団(ASEF)により共催されました。外務省がこのシンポジウムのシニア・パートナーで、ASEFがジュニア・パートナーといったところでしょうか。私は、柳井外務審議官から約20分でこのシンポジウムの概要をまとめるように要請を受けました。私は、7つの分科会全てを覗き、7名の議長の報告書に目を通しておりますが、それでも恐らくこのシンポジウムを正しく評価することはできないのではないかと思います。ですから、このことについて予め皆様にお許しを頂くようにお願いしておかなければなりません。
  3. まず始めに、宮崎県知事及び宮崎市民の皆様に対し、この地でのシンポジウム開催をお引き受け頂き御礼を申し上げます。環境は美しく、快適。参加者は、ゴルフをされる方々を除いては全員、ここでの開催を幸せに思っております。ゴルフをされる方々は、主催者はサディストだと感じていらっしゃることでしょう。そうでなければ、どうしてこのように美しいゴルフコースのある場所で会議を開催し、かつ昼間ゴルフをする時間を組み入れないのでしょうか。何といっても実際、我々、東南アジア諸国の者は、ゴルフコースで(ある会合の中の)最高のディスカッションが行われることがしばしばあることを知っています。
  4. 我々は、日本政府、特に橋本総理に対して、第1回アジア欧州ヤングリーダーズシンポジウムを開催するイニシアティブをとってくださったことに対し御礼の言葉を申し上げなければなりません。カールソン前首相が基調講演の中でご指摘になったように、このシンポジウムが重要な理由は3つあります。我々の任務のうちの一つが21世紀への架け橋を造ることであるならば、そのプロセスに若い橋作りとなる人々を加えるのは当然のことです。なぜなら、彼らこそが21世紀のリーダーなのですから。ヤングリーダーは、年をとったリーダーたちよりも、自由で、よりクリエイティブで、かつ新しい考え方への受容性が高いものなのです。このシンポジウムは一度きりの催しではありません。来年オーストリアで開催するプロセスがもう始まっています。そして、その後も必ずやその他のASEM諸国で開催されることでしょう。
  5. この2日間、アジアと欧州からの110名のヤングリーダーが宮崎に集まりました。彼らは両大陸の25カ国から来訪し、バックグラウンドも様々であります。しかし、彼らはほとんど即座に互いの信頼関係を築き、グループはクラブ活動的な雰囲気を持ちました。分科会ならびにブレインストーミング・セッションにおいて、ヤングリーダー達が率直かつ真剣なる討議を、互いへの敬意の念と学び合いの精神を持って平等を重んずる雰囲気の中、展開するのを目にしました。これがまさに主催者が求めたものであります。もし他に何も成し遂げることができなかったとしても、私は宮崎でのこのシンポジウムは成功であると主張するでありましょう。なぜならその過程が成功したのですから、マーシャル・マクルーハンの引用を捩って、「過程はメッセージである」のですから。しかしながら、ヤングリーダー達は私の期待をはるかに超えたことを成し遂げました。彼らは意見を収斂し幾組かの結論と勧告をまとめるに至ったのです。
  6. 私は、それらを「宮崎メッセージ」と(私なりに)呼ぶものへと昇華させようと思います。ではその宮崎からのメッセージとは何でありましょうか。
  7. 第1に、ヤングリーダー達は、韓昇洲元韓国外務部長官が基調講演の中で述べた意見に同意しました。つまりそれは、「一年前バンコックにおいて開催された第一回アジア欧州首脳会合は、欧州がアジアを再発見し、豊かで平和な世界におけるパートナーとして認識したということであり、アジアにとっては、ASEMはこれらの欧州の意思表示を受け入れ、欧州をアジアの開発及び安全保障の主要な柱として認めることであった。」
  8. 第2に、ヤングリーダー達は、「ASEMは欧州にとっての欧米関係、あるいは(東)アジアにとっての米国との関係の犠牲の上に成立するものでもなければ、成立させるべきものでもない」という韓元長官の指摘についても意見の一致を見ました。逆にASEMは、世界の3つの経済の中心、すなわちアメリカ合衆国、西ヨーロッパそして東アジアを結ぶ三角形の第3番目の辺なのです。ASEMの精神とは三者相互協力の精神なのです。
  9. 第3に、アジアと欧州は大変豊かな文化と文明を誇る地域であります。文化とは何でありましょうか。文化とは(生きていく上での)活力なのです。文化は人間にアイデンティティーを与えます。個々人について、家庭、社会、自然環境、そして神への帰依に関する情報の枠組みを与えます。文化は、我々に人生の航路を進むための道徳的なコンパスと逆境に耐える力をもたらします。アジアと欧州の若い方々が、互いの言語や文化を学び、互いの地域において研究や実務に携わり、そして互いの家庭での生活を体験することは望ましいことです。これらを実現するためのあらゆる方途が(このシンポジウムで)議論されました。我々を触発し団結させるために、美術、音楽、舞踏、演劇、映画、文学、絵画、彫刻、写真等を(媒体に)用いるべきであることについても合意が得られました。
  10. 第4に、経済的発展と物理的な豊かさは、それ自体が最終的な目標とはならないことについても意見の一致をみました。それは、我々の生活の向上のための手段なのです。それは、我々によりよい生活をもたらすものです。欧州においては、生活の向上は、就中、失業を減らすことを意味します。アジアにおいては、貧困の撲滅と社会的・両性間の平等の増進を意味します。両地域において、生活の向上は清潔で健康的な環境で生活する権利をも意味します。
  11. 第5に、我々は、自由貿易の理念と実行に対する(我々の)信念とコミットメントとを再確認しました。世界貿易機関(WTO)への支持、シンガポールにおける閣僚会合の成果の履行、及びその実効性の強化につき合意しました。我々は、中国のWTOへの早期加盟を歓迎します。欧州とアジアにおける地域統合と自由化はWTOと両立すべきものであり、他地域への障壁の低減の進展に結びつくべきものであることについても合意が得られました。我々は、内向き志向をとるべきでないという(基調講演における)カールソン氏の考えに同意しました。
  12. 第6に、(我々は)バンコックでの首脳会合が解き放った(両地域間協力への)爆発的なエネルギーと熱意に感銘を受けました。この首脳会合の他にも、ASEM各国の外務、大蔵(財政金融担当)、貿易担当大臣は、既に会合を持ったか、或いは持つことになっています。民間部門、すなわちビジネス・フォーラムやビジネス関係者の会議はASEMプロセスの不可欠な要素です。約40のプロジェクトが実行されたか、或いは実行に移されつつあります。(このように、両地域間協力の)プロセスは、発展しつつあり、個々の要素が相互に緊密な関連を有するものなのです。来年のロンドンでの第2回ASEMにおいて承認されることになると思われるVision Groupが、そのプロセスに必要とされる一貫性と組織性を与えていくことになる協力の枠組みに結びつくことを希望するものです。
  13. 第7に、民間部門の役割、民間部門と政府の協力体制、及び企業活動の社会的責任について、大変深く議論されました。国際的な企業活動が、地元労働力の訓練とその技術の向上につき受入れ国と協力的であるべきとの点で意見の一致をみました。また、企業は、持続的な発展を達成するためにも政府と協力すべきであるということについても合意が得られました。
  14. 第8に、相互依存の世界にあって、欧州の安全保障とアジアの安全保障を切り離すことは不可能であるとの共通の理解が得られました。例えば、ボスニアやインドシナにおける地域紛争は、他の地域に直接的に影響を与えます。我々がこれから物事を考えていく際には、共通の安全保障ということについて考えていかなければなりません。アジアの人々は、欧州がアセアン地域フォーラムにおいて果たしている役割を歓迎しています。欧州の人々は、旧ユーゴースラビアにおける明石康氏が果たしたようなアジアの役割を歓迎しています。韓昇洲氏はサイプラスにおいて、私自身はバルト三国地域において、欧州における抗争、紛争の解決に努めてきました。我々は、また、国連等の国際機関の強化のために協力すること、及び、テロ、武器拡散、国際犯罪、麻薬、エイズ等がもたらす脅威に立ち向かうことに同意するものです。
  15. 第9に、アジアと欧州は、驚異的なマルチメディアを有効に活用することにおいて協力していかなければなりません。我々は、ネットシチズン(コンピューターネットワークで結ばれた人々)間の情報、知識、理解の連結を図るためサイバースペース(コンピューター上の仮想空間)を利用することができます。我々は、個々別々に、また共同で、情報ネットワーク、映像及びテレビ番組等を制作していくべきです。我々は、単に消費者であるのみならず供給者たらんとすべきです。
  16. 第10に、我々は、世界においてアジアと欧州以外の地域を無視することはできないとの(基調講演における)カールソン氏の考えに同意します。グローバリゼーションや情報技術、ジェット旅客機による移動によって(時間、距離が縮められ)、世界はアジア・欧州の隣人となりました。それゆえにアジアと欧州は、平和と秩序を維持し、あらゆる人々、特に後発発展途上国における経済発展の機会を拡充し、(世界)共有の資産を擁護し、環境を保全するために協力しなくてはなりません。一言で言えば、我々は、より良い世界の構築のために協力していかなくてはならないのです。

トミー・コー
アジア欧州財団
事務局長
1997年3月12日

このページのトップへ戻る
前のページへ戻る | 目次へ戻る