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サルグシャン・アルメニア共和国大統領の訪日
(概要と評価)

平成24年6月11日

 サルグシャン・アルメニア共和国大統領は,6月5日~7日まで,我が国の招待(実務訪問賓客)により訪日したところ,訪問の概要及び評価は以下のとおり。

<ポイント>

 サルグシャン大統領の訪日に際し,「両国の友好とパートナーシップの更なる深化に関する共同声明」及び「両国外務省間の協力に関する覚書」が署名され,外交関係樹立20周年となる本年を両国の関係発展の契機とすべく,以下の成果を上げることができた。

  • 防災協力が「共同声明」の重要な柱として明記された。具体的には,
    • JICAによるエレバン市「地震リスク評価・防災計画策定プロジェクト」
    • 防災分野における人材育成のための専門家派遣
    • 本年7月の「世界防災閣僚会議in東北」,本年12月の「原子力安全に関する福島閣僚会議」へのアルメニアの参加
  • 野田総理より,東京電力福島原発事故から得られた知見と教訓を国際社会と共有する決意を表明したのに対し,サルグシャン大統領より,自国の原子力発電所の安全のため日本の経験に学んでいく旨発言があった。
  • 大統領の訪日に先立ち,日アルメニア友好議員連盟が設立され,今後,両国友好議員連盟を通じた両国議会間の交流を開始していくことになった。
  • 日本の国連安保理常任理事国入りへの支持,また,様々な国際機関選挙を含む国際場裡における協力を確認することができた。
  • カスピ海のエネルギー・物流の輸送回廊であるコーカサス地方の平和と安定の鍵を握るアルメニアに対し,ナゴルノ・カラバフ問題の平和的解決に向けた働きかけを行った。

1.日程

 6月5日(火曜日),被災地(仙台)訪問。6日(水曜日)午前,横路衆議院議長と会談。同日午後,野田総理との首脳会談,両首脳による共同声明(骨子別添)への署名に続き,総理主催夕食会開催。7日(午前),天皇陛下御会見。同日夕刻,衛藤衆議院副議長主催夕食会開催。

 また,大統領に同行して訪日したナルバンジャン外相は,6日(水曜日)午後,岡田副総理を表敬,7日(木曜日)夕刻,玄葉外務大臣と外務省間協力覚書への署名に続き,外相会談を実施。

2.首脳会談の概要

 (会談後,「友好とパートナーシップのさらなる深化に関する共同声明」に署名)

1.二国間関係一般

 野田総理より,両国外交関係樹立20周年を迎える記念すべき年に行われる今回の訪日を更なる両国発展の契機としたい旨発言。

 サルグシャン大統領より,寛仁親王殿下の薨去に弔意を表明。また,昨年の東日本大震災に対するお見舞いの言葉と共に,1988年のアルメニア大地震に際しての日本からの支援に対する謝意を表明。更に,同大統領より,在アルメニア日本国大使館の開設を要請。

2.防災協力

 野田総理より,JICAによるエレバン市「地震リスク評価・防災計画策定プロジェクト」の中間報告発表を歓迎し,今後もアルメニアへの防災協力を行う旨表明。また,東京電力福島原発事故から得られた知見と教訓を国際社会と共有する日本の決意を表明し「原子力安全に対する福島閣僚会議」(本年12月開催)にアルメニアを招待。

 サルグシャン大統領より,アルメニアの原子力発電所の安全のため,日本の経験に学んでいきたい,「福島閣僚会議」には必ずアルメニアからも参加する旨発言。

3.経済協力

 野田総理より,アルメニアの市場経済発展への支援を今後とも継続する旨,また,現在実施している「地方産品と地方ブランドの開発プロジェクト」の下で同国の地域・産業振興が促進されることへの期待を表明。

 サルグシャン大統領より,特にエレバンのコジェネレーション火力複合発電所建設に言及して日本の経済協力に謝意を表明。今後とも,防災の他にも,エネルギー,農業,中小企業といった分野で協力を進めていきたい旨発言。また,日本企業の進出に対する希望も表明。

4.国際情勢

 野田総理より,北朝鮮の人権状況問題の解決及び同国によるミサイル発射や核実験等の挑発行為の防止,拉致問題解決の重要性を強調。アルメニア側の理解と協力を要請。

 サルグシャン大統領より,この地域の平和と安全の確保のための日本の立場を支持する旨発言。

 また,同大統領より,コーカサス地域情勢についての説明があり,野田総理より,ナゴルノ・カラバフ紛争について対話を通じて平和的解決に向けた努力を継続することを期待する日本としてもそのために協力していきたい旨発言。

3.ナルバンジャン外相の岡田副総理表敬

1.二国間関係

 ナルバンジャン外相より,2009年の同外相による訪日以降,日・アルメニア関係が活発化していることにつき満足の意を表明。また,同外相より,在アルメニア日本大使館の開設を要望。また,日・アルメニア議会間交流を活発化したい旨表明。

 岡田副総理より,今回の大統領訪日による両国関係の更なる発展への期待を表明し,両国の貿易経済関係の潜在性を掘り起こすため新大使と協力していきたい旨発言。

2.国際情勢

 ナルバンジャン外相より,アルメニア・トルコ間の国交正常化をめぐる交渉の現在の状況につき説明。また,双方は,イランによる核開発問題について,対話と交渉による平和的解決のため,それぞれが働きかけを継続していくことで一致。

4.日・アルメニア外相会談

 ナルバンジャン外相と玄葉大臣は,「両国外務省間の協力に関する覚書」に署名。引き続き外相会談を実施。

1.二国間関係

 玄葉大臣より,「外務省間の協力に関する覚書」を踏まえ両国関係を更に発展させていきたい旨発言。

 ナルバンジャン外相より,外交関係樹立20周年である本年行われたサルグシャン大統領の訪日を新たな出発点として両国関係を強化していきたい旨発言。更に,在アルメニア日本大使館の開設を要請。

2.防災協力

 玄葉大臣より,防災協力の重要性を指摘した上で「原子力安全福島閣僚会議」と「世界防災閣僚会議in東北」へのアルメニア閣僚の参加を要請。

 ナルバンジャン外相より,それらの会議にアルメニアからも参加する旨回答。

3.経済協力

 玄葉大臣より,アルメニアの発展はコーカサス地方全体の安定に資するとの観点から,同国の市場経済発展への支援を今後とも継続していく旨発言。

 ナルバンジャン外相より,外交関係樹立以来20年間,日本がアルメニアに対して行ってきた経済協力への謝意を改めて表明。

4.国際場裡における協力

 玄葉大臣より,日本の安保理常任理事国入りに対するアルメニアの支持,また,様々な国際機関選挙におけるアルメニアの支持に対する謝意を表明。

 ナルバンジャン外相より,日本の安保理常任理事国入りに対する支持を改めて表明。

5.国際情勢

 玄葉大臣より,北朝鮮による更なる挑発行為の防止に向けて国際社会が一致した対応をとることが必要であるとして,アルメニア側の理解と協力を要請。

 ナルバンジャン外相より,ナゴルノ・カラバフ紛争をはじめとするアルメニア外交の取り組みについて説明。

5.評価

 サルグシャン大統領の訪日に際しては,両首脳による「友好とパートナーシップの更なる深化に関する共同声明」及び両国外務大臣による「外務省間の協力に関する覚書」がそれぞれ署名され,外交関係樹立20周年となる本年を両国の更なる関係強化に向けた契機とすべく,以下の成果を上げることができた。

 なお,アルメニア側から,在アルメニア日本大使館の開設につき,首脳会談をはじめとするあらゆる場で繰り返し強い要請が行われた。直ちに現地に日本大使館を開設することは困難であるとしても,少なくともアルメニアを兼轄する在ロシア大使館を通じ,同国に対して従来以上にキメの細かい対応をとっていく必要がある。

1.防災協力の強化

  1. (1)防災協力が「共同声明」の重要な柱として明記され,以下の案件を含め,防災協力分野における両国の協力が進められることになった。今後これらを具体的にフォローアップしていくことが必要。
    • JICAによるエレバン市「地震リスク評価・防災計画策定プロジェクト」
    • 防災分野における人材育成のための専門家派遣の実施
    • 本年7月の「世界防災閣僚会議in東北」及び本年12月の「原子力安全に関する福島閣僚会議」へのアルメニアの出席
  2. (2)また,野田総理が東京電力福島原発事故から得られた知見と教訓を国際社会と共有する日本の決意を表明したのに対し,サルグシャン大統領より,自国の原子力発電所の安全のため,日本の経験に学んでいく旨発言があった。

2.両国友好議員連盟を通じた議会間交流の開始

 今次大統領訪日に先立ち,超党派の日・アルメニア友好議員連盟(会長:松本剛明衆議院議員)が発足。訪日時には,サルグシャン大統領と横路衆議院議長との会談及び衛藤衆議院副議長主催夕食会が行われた他,同大統領に同行したハルマニャン国民議会議員(アルメニア・日友好議員連盟を設立予定)と日・アルメニア友好議員連盟との接触により今後両国友好議員連盟を通じた議会間交流が開始されることになった。

3.国際場裡における協力の強化

 サルグシャン大統領より,国連安保理改革の早期実現と日本の国連安保理常任理事国入り及び様々な国際機関選挙でのアルメニアの支持を改めて確認することができた。また,北朝鮮問題への取り組みに関して,地域の平和と安全の確保のための日本の立場に対するアルメニア側の支持を得ることができた。

4.コーカサスの平和と安定への協力

 カスピ海からのエネルギー・物流の回廊であるコーカサス地方の平和と安定の鍵を握るアルメニアに対し,ナゴルノ・カラバフ問題について,アゼルバイジャンとの対話を通じて紛争の平和的解決に向けた努力を継続するよう働きかけを行った。

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