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日本国とアルメニア共和国との
友好とパートナーシップの更なる深化に関する共同声明
平成24年6月6日
(英語版)
セルジ・サルグシャン・アルメニア共和国大統領は,日本国政府の招待により,2012年6月5日から7日までの日程で日本国を公式に訪問し,野田佳彦日本国総理大臣と会談した。
野田佳彦日本国総理大臣とセルジ・サルグシャン・アルメニア共和国大統領(以下「双方」という)は,
1992年9月7日の外交関係樹立以来,日本国とアルメニア共和国との間で長期的かつ広範囲に及ぶ友好関係が発展してきたことに満足を表し,
両国が2001年12月19日の日本国とアルメニア共和国との共同声明に従い,相互の尊重,信頼,対等なパートナーシップ並びに相互の独立,主権及び領土保全に対する支持の精神で二国間関係を構築してきたことを確認し,
外交関係樹立20周年となる記念すべき本年に行われたセルジ・サルグシャン・アルメニア大統領の訪日が両国の友好とパートナーシップを更に深化させることを確信し,
アジアとヨーロッパとの結節点に位置するコーカサス地方の平和と安定を保つことは重要であるとの認識を共有しつつ,
次のとおり共同声明を発表した。
I.二国間関係全般
- 双方は,両国間に存在する友好の絆と相互の信頼を再確認し,外交関係樹立20周年となる本年を契機として,政治,経済,文化等の分野において両国の友好とパートナーシップをより高い段階に引き上げていくことで認識が一致した。
- 双方は,ハイレベルを含む様々なレベルにおける両国間の相互訪問や政治対話が進展していることに満足を表明し,両国関係を発展させる有益かつ効果的な方途として,政治対話を一層促進する意図を表明した。
- 双方は,日本国外務省とアルメニア共和国外務省との間の協力に関する覚書が署名されることを歓迎した。この覚書は,二国間関係及び地域的・国際的な諸問題について幅広く両国間の政策を協議し,相互の関心分野における協調を図ることを含む。
- 双方は,議会間交流の促進が両国関係の発展に大きく貢献することを認識しつつ,特に,日・アルメニア議員連盟及びアルメニア・日本議員連盟による議会間交流が更に強化されることへの希望を表明した。
- 双方は,自由,民主主義,基本的人権,法の支配,市場経済といった基本的価値観を共有するパートナーであることを再確認した。日本側は,アルメニアが独立以来,これらの諸価値の定着に向けて一貫して努力してきたことを評価した。アルメニア側は,日本側がインフラ整備,人材育成,地方開発及び社会セクター開発に重点を置いて,市場経済発展のためのアルメニアの努力を支援してきたことを高く評価した。
- 双方は,現地の大使館が両国の友好とパートナーシップの深化に果たす重要な役割を強調した。この点で,日本側は,東京におけるアルメニア大使館の開設を歓迎した。アルメニア側はまた,日本側が近い将来エレバンに自国の大使館を開設することへの期待を表明した。
- 日本側は,本年5月6日のアルメニア議会選挙に際し,「欧州安全保障協力機構/民主制度・人権事務所(OSCE/ODIHR)」国際選挙監視団に我が国監視要員を派遣した。日本側は,今次議会選挙がOSCE/ODIHRにより規定されたように競争的で活発かつ平和的なキャンペーンが行われたことに満足の意を表明した。
II 防災協力
- 日本側は,東日本大震災に際し,セルジ・サルグシャン大統領を始めとするアルメニア政府及び国民から示された弔意と支援に謝意を表明した。特に,日本側は,昨年5月に徳永外務大臣政務官がアルメニアを訪問した際,エレバンにおいてセルジ・サルグシャン大統領の臨席の下,震災被害者を追悼するためのミサが実施されたことに謝意を表明した。日本側は,早期に迅速かつ効率的な復興を達成する決意を表明した。
- 双方は,1988年のアルメニア大地震及び2011年の東日本大震災における相互の支援,特に,建設機械供与,日本国際緊急援助隊の派遣及び緊急援助隊の提供,そして,アルメニアによる義援金の提供をそれぞれ感謝と共に想起した。双方は,防災対策の分野での協力を更に強化していくことで一致した。双方は,2010年1月,国際協力機構(JICA)がエレバンで防災セミナーを実施したこと及び今般「地震リスク評価・防災計画策定プロジェクト」の中間報告を発表したことを歓迎した。
- 日本側は,防災分野における人材育成のため,JICAの技術協力の一環として,アルメニアへの日本からの専門家の派遣を含め,アルメニアに対する防災支援を更に促進していく意図を表明した。日本側はまた,アルメニア側が「世界防災閣僚会議in東北」に参加する意思を表明したことを歓迎した。
- 日本側は,福島第一原発の事故から得られた知見と教訓を国際社会と共有する決意を表明した。アルメニア側は,日本から得られた知見と教訓をも活かしつつ,アルメニアにおける原発の安全性向上に努めていく意思を表明した。この点で,日本側は,2012年12月に開催される原子力安全に関する福島閣僚会議へのアルメニア閣僚の出席に対する期待を表明した。アルメニア側はこの会議に参加する用意があることを表明した。
III 経済協力
- アルメニア側は,日本が,円借款,無償資金協力,技術協力の形態によりこれまで総額410億円に上る政府開発援助を供与してきたことを評価し,これらの日本の支援が市場経済化と貧困削減に取り組んできたアルメニアの努力に貢献したことを強調した。
- 日本側は,アルメニア共和国における地場産業の育成と中小企業の振興が同国の持続的な経済成長に資するとの認識に立ち,アルメニア共和国に対する技術協力「地方産品と地方ブランドの開発プロジェクト」を通じ,地域振興・産業振興を促進する意図を表明した。
IV 経済関係
- 双方は,両国の貿易・経済関係がその潜在力をいまだ十分には活用できていないことを指摘し,両国間の貿易・経済関係の促進に資する環境を整備する重要性を確認した。この点で,双方は,モスクワにおいてジェトロとジャパン・クラブが日本企業に対するアルメニア・ビジネスセミナーを開催したこと,また,在京アルメニア大使館が日本企業向けのセミナーを開催したことを評価した。双方は,引き続き両国の貿易・経済関係の強化に取り組んでいく意思を確認した。
- 双方は,特に,情報技術,地震対策,運輸,銀行,工業,商業及び観光等の分野において,互恵的な経済面での協力に移行するために好ましい環境を作ることが重要であることを強調した。
- 双方は,中小企業発展のための措置を含む金融,経済政策に関する情報と意見を交換することの重要性を確認した。
- 双方は,マネーロンダリング及びテロ資金供与に関する情報交換に関する協力を促進する意図を表明し,適切な文書が近い将来署名されることに向けた議論が進んでいることに満足をもって留意した。
V 文化・科学技術交流
- 双方は,科学技術,文化,観光等の様々な分野における相互交流を促進する意図を表明した。
- 双方は,外交関係樹立20周年を記念して様々な文化行事が行われることは両国国民の相互理解を更に促進するとの信念を共有した。
VI 国際場裡における協力
- 双方は,国際機関における協力と相互の支援を深化させ,かつ,強化していく必要性を強調した。
- 双方は,国連安保理改革の効率的かつ早期の実現に向けて努力する重要性を強調した。この点で,アルメニア側は,日本の国連安保理常任理事国入りに対する支持を改めて表明した。
- 双方は,北朝鮮によるミサイル発射を強く非難し,同国がいかなる追加的な挑発行為も行わないことを求めた2012年4月16日の国連安保理議長声明への支持を表明した。双方は北朝鮮に対し,関連する国連安保理諸決議及び2005年の六者会合共同声明における約束を遵守することを強く求めた。日本側は,拉致問題を解決することの重要性を強調し,アルメニア側は,日本側の立場に留意した。
- 双方は,ナゴルノ・カラバフに関するOSCEミンスク・グループの努力を評価し,最終的な解決は,国際法の諸原則と諸規範,国際連合憲章,ヘルシンキ最終文書,武力の不行使,領土的一体性並びに人民の平等な権利及び自決権に基づくべきとの確信を表明する。
野田佳彦
日本国総理大臣
セルジ・サルグシャン
アルメニア共和国大統領
2012年6月6日,東京にて