アルメニア共和国
アルメニア共和国(Republic of Armenia)
基礎データ
令和6年8月27日


一般事情
1 面積
2万9,800平方キロメートル(日本の約13分の1)
2 人口
280万人(2024年:国連人口基金)
3 首都
エレバン
4 民族
- アルメニア系(98.1%)、ヤズィディ系(1.1%)、ロシア系(0.5%)、アッシリア系(0.1%)、その他(0.3%)
- (2022年、アルメニア共和国国勢調査)
5 言語
公用語はアルメニア語(インド・ヨーロッパ語族に属し、独立の一語派をなす。独自の文字を持つ)
6 宗教
主としてキリスト教(東方諸教会系のアルメニア教会)。
アルメニアは、国家として、また民族としても、世界で最初に公式にキリスト教を受容した国(301年)。
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
前4~3世紀 | 東アルメニアにエルヴァンド朝成立 |
~前1世紀 | 西アルメニアにソフェネ成立 |
前190年~後10年頃 | アルタシェス朝古代アルメニア王国成立 |
1~5世紀 | アルサケス朝の支配、ローマとペルシアにより分割 |
301年 | アルサケス朝のトルダト3世、キリスト教に改宗 |
5~7世紀 | サーサーン朝ペルシアとビザンツ帝国による分割統治 |
652年 | アラブ勢力により征服 |
885年頃~1045年 | バグラト朝成立 |
11世紀 | セルジューク朝諸政権により征服 |
1050年頃~1375年 | キリキア(アナトリア南東部)にアルメニア系王朝 |
14~15世紀 | ティムール朝、カラ・コユンル朝、アク・コユンル朝による支配 |
16~18世紀 | オスマン朝とサファヴィー朝によるアルメニア争奪戦 |
1828年 | トルコマンチャーイ条約により東アルメニアがイランからロシアに割譲 |
1918年5月 | アルメニア共和国(第一共和国)成立 |
1920年 | アルメニア・ソビエト社会主義共和国成立 |
1922年 | ジョージア、アゼルバイジャンと共にザカフカス社会主義連邦ソビエト共和国を形成、ソ連邦結成に参加 |
1936年 | アルメニア・ソビエト社会主義共和国成立 |
1988年2月 | ナゴルノ・カラバフ帰属を巡るアゼルバイジャンとの抗争が表面化 |
1990年8月23日 | 共和国主権宣言 |
1991年9月21日 | 共和国独立宣言 |
1991年10月 | テル・ペトロシャン大統領就任 |
1994年5月 | ナゴルノ・カラバフ紛争に関しアゼルバイジャンと停戦協定締結 |
1998年3月 | ロベルト・コチャリャン大統領選出 |
2008年2月 | セルジ・サルグシャン大統領選出 |
2013年2月 | セルジ・サルグシャン大統領再選 |
2018年3月 | アルメン・サルキシャン大統領選出 |
2018年5月 | ニコル・パシニャン首相選出 |
2021年8月 | ニコル・パシニャン首相再任 |
2022年1月 | アルメン・サルキシャン大統領任期満了前辞職 |
2022年3月 | ヴァハン・ハチャトゥリャン大統領選出 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
ヴァハン・ハチャトゥリャン大統領(任期7年、2029年3月まで。)
3 議会
一院制(任期5年。最低総議席数101。前回選挙は2021年6月に行われ、107人を選出。)
4 政府
- (1)首相 ニコル・パシニャン
- (2)外相 アララト・ミルゾヤン
5 内政
- 1991年9月21日、共和国独立宣言。
- 1995年7月の議会選挙で与党勢力「共和国ブロック」が圧勝、同時に新憲法も国民投票で採択された。
- 1996年9月、新憲法の下で最初の大統領選挙が実施され、テル・ペトロシャン大統領が再選されたが、ナゴルノ・カラバフ問題をめぐる国内の批判により1998年2月に辞任。選挙の結果、1998年4月、前首相でナゴルノ・カラバフ出身のコチャリャン大統領が就任(2003年3月に再選)。
- 2008年2月の大統領選でコチャリャン大統領の路線を引き継ぐサルグシャン首相(当時)が当選。テル・ペトロシャン元大統領率いる野党勢力が抗議行動を起こし当局と衝突、死傷者が発生したのを受け非常事態宣言が発出されたが、その後事態は沈静化し、20日後に宣言は解除。
- 2013年2月、大統領選挙が行われ、サルグシャン大統領が再選(得票率58.64%)。
- 2015年、憲法改正が行われ、2018年の新大統領・首相選出をもって、実質的な行政権の大統領から首相への移行を決定。
- 2018年3月、サルグシャン大統領の任期満了に伴い、国民議会にて大統領選挙が行われ、アルメン・サルキシャン候補(共和党擁立)が選出された。4月9日大統領就任。
- 2018年4月、国民議会にて首相選挙が行われ、与党が擁立したセルジ・サルグシャン前大統領(共和党党首)が新首相に選出されたが、大規模デモを受け、同月に辞任。
- 2018年5月、国民議会にて首相再選挙が行われ、ニコル・パシニャン議員(「エルク・ブロック」所属)を選出。同日、首相就任。
- 2018年12月、パシニャン首相は国民議会の前倒し選挙を行い、与党ブロック「マイ・ステップ」が約7割の支持を得て圧勝した。
- 2021年6月、国民議会の前倒し選挙が実施され、パシニャン首相代行率いる現与党の市民契約党が得票率で単独過半数を獲得した。8月2日、第8回招集国民議会においてパシニャン首相が再任。
- 2022年1月、サルキシャン大統領が任期満了前に辞任。
- 2022年3月、国民議会にて大統領選挙が行われ、ヴァハン・ハチャトゥリャン大統領を選出。3月13日大統領就任。
外交・国防
1 外交基本方針
- 外交上の最大の課題はナゴルノ・カラバフ紛争(アゼルバイジャン領内でアルメニア系住民が居住するナゴルノ・カラバフをめぐるアルメニアとアゼルバイジャンの紛争)。1994年5月、ロシア及びOSCEの仲介により停戦が合意され、OSCEミンスク・グループ共同議長国である米・仏・露の仲介により問題解決に向けた努力が続けられてきた。2020年9月に軍事衝突が発生し、11月にロシアの仲介によりロシア、アゼルバイジャン、アルメニアの3か国首脳が停戦に合意。
- 2023年9月、アゼルバイジャンが軍事活動をナゴルノ・カラバフで実施。ナゴルノ・カラバフの全域がアゼルバイジャンの施政下に入り、同地域から約10万人の避難民がアルメニアに流入。同年12月、アルメニア首相府・アゼルバイジャン大統領府が平和条約を締結する意図を再確認する事などを盛り込んだ共同声明を発出した。
- 政治・経済・軍事的に結び付きの強いロシアとの関係はこれまで緊密であったが、2020年にナゴルノ・カラバフで発生したアゼルバイジャンとの軍事衝突において、ロシアは集団安全保障条約機構(CSTO)加盟国への支援を怠ったとして、アルメニア国内でロシアに対する感情が悪化。親欧米路線のパシニャン政権下では、欧米との関係強化が加速している。隣国ジョージア、イランとは良好な関係を維持。一方、アゼルバイジャンと兄弟国であるトルコとは対立関係にある。外交関係のないトルコとは2009年10月に「外交関係樹立に関する議定書」及び「二国間関係発展に関する議定書」を署名したが、批准されず、関係正常化の作業は進んでいなかった。その後、2022年1月及び2月に両国特使間、3月に両国外相間で関係正常化に向けた対話が行われている。
- 経済的にはロシアの他に欧米諸国、中東、アジアなど各地域諸国との均衡のとれた関係の発展をめざしており、欧米諸国との関係も緊密になってきている。
2 軍事力
- 総兵力42,900人(陸軍40,000人、空軍/防空軍(統合)1,100人、その他防空軍1,800人)、準兵力4,300人
- ロシア軍が駐留
- (ミリタリー・バランス2024)
経済
1 主要産業
農業、宝石加工(ダイヤモンド)、IT産業
2 GDP
242億米ドル(2023年:IMF推計値)
3 一人当たりGDP
8,153米ドル(2023年:IMF推計値)
4 経済(実質GDP)成長率
8.7%(2023年:IMF推計値)
5 物価上昇率
2.0%(2023年:IMF推計値)
6 失業率
12.5%(2023年:IMF推計値)
7 貿易額
- (1)輸出 84.2億米ドル
- (2)輸入 123.1億米ドル
(2023年:アルメニア共和国国家統計局)
8 主要貿易品目
- (1)輸出 金、ダイヤモンド、通信用機器、宝飾品及び部品、銅鉱
- (2)輸入 金、自動車、通信用機器、ダイヤモンド、石油ガス類
(2023年:アルメニア共和国国家統計局)
9 主要貿易相手国
- (1)輸出 ロシア、UAE、中国(香港含む)、オランダ、イラク
- (2)輸入 ロシア、中国(香港含む)、ベトナム、米国、イラン
(2023年:アルメニア共和国国家統計局)
10 通貨
ドラム(Dram:1993年11月22日導入)(CIS統計委員会)
11 為替レート
1ドル=388.60ドラム(2024年4月26日現在:アルメニア中央銀行)
12 経済概況
- ソ連邦解体と体制転換の混乱に加え、アルメニア大地震、ナゴルノ・カラバフ紛争の影響等によりGDPは1992年(42%減)、1993年(9%減)と連続して激減したが、政府が早くから市場経済化に着手する中で、成長率は1994年にはプラスに転じ、2002年~2007年は毎年10%以上の高い水準で推移。2009年は世界経済危機の影響でマイナス成長(14%減)となったが、2010年には再びプラスに転じ(2.2%)、以降、概ね3~7%台の経済成長率を維持している。2020年は新型コロナ等の影響もあり-7.4%。2021年は、プラス成長に回復(5.7%)。
- 2003年2月にWTO正式加盟。
- アルメニアは、従来、欧州との経済連携強化を進めてきたが、2013年9月、サルグシャン大統領はこれまでの路線を一転させ、ロシアが主導する関税同盟への参加を表明。これを受け、EU側はアルメニアと検討していたDCFTA(「深化した包括的な自由貿易協定」)の仮署名を見送った。
- 2015年1月、ロシアが主導するユーラシア経済同盟(EAEU)に参加。
- 2017年11月、アルメニアとEUとの間の新枠組協定である「包括的かつ強化されたパートナーシップ協定」に署名。2021年3月に発効。
経済協力
1 日本の援助実績
- (1)有償資金協力 318.08億円(2021年度までの累計)
- (2)無償資金協力 97.29億円(2021年度までの累計/文化・草の根無償等を含む)
- (3)技術協力実績 47.88億円(2021年度までの累計)
((1)~(3)は、何れも交換公文ベース)
2 主要援助国
ドイツ、米国、フランス、スイス、オーストリア、日本
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2016年 | フランス 81.99 | ドイツ 43.80 | 米国 26.51 | スイス 7.30 | 日本 4.64 | 171.92 |
2017年 | ドイツ 95.65 | フランス 40.71 | 米国 27.19 | オーストリア 4.62 | 日本 4.21 | 182.36 |
2018年 | ドイツ 100.08 | 米国 28.36 | フランス 23.18 | オーストリア 2.98 | スイス 2.68 | 167.33 |
2019年 | ドイツ 85.55 | 米国 28.33 | 日本 16.56 | フランス 13.35 | スイス 4.73 | 161.62 |
2020年 | ドイツ 35.78 | 米国 32.40 | フランス 24.74 | スイス 5.13 | スウェーデン 4.68 | 113.92 |
(出典:OECD/DAC)
二国間関係
1 政治関係
- (1)国家承認日 1991年12月28日
- (2)外交関係開設日 1992年9月7日
- (3)在日アルメニア大使館開設 2010年7月13日
- (4)日本大使館開館 2015年1月1日
2 経済関係
- 日本の対アルメニア貿易(2023年:財務省貿易統計)
- 輸出 32.50億円(建設用・鉱山用機械、自動車、精油・香料及び化粧品類、電気機器、ゴムタイヤ及びチューブ、等)
- 輸入 47.63億円(衣類、アルミニウム及び同合金、紙巻たばこ、バッグ類等)
3 文化関係
一般文化無償資金協力 8件 計4.5億円(2023年度まで)
草の根文化無償資金協力 8件 計0.65億円(2023年度まで)
計:5.15億円(2023年度まで)
最近の事例
- 一般文化無償資金協力(実施額)
- 2016年度 アルメニア公共テレビ局映像資料デジタル化機材整備計画(1.38億円)
- 2017年度 歴史文化遺産科学研究センター考古学資料修復・保存機材整備計画(6,970万円)
- 草の根文化無償資金協力(供与限度額)
- 2016年度 ロシア・アルメニア(スラヴォニク)大学日本語学習環境整備計画(374万円)
- 2021年度 アルメニア国立体育大学柔道・空手道場改修計画(984万円)
- 2022年度 アルメニア使徒教会付属博物館保存修復室機材整備計画(980万円)
- 2023年度 アラム・ハチャトゥリャン・コンサートホール音響及び録音設備改善計画(986万円)
4 在留邦人数
38人(2023年10月現在:外務省)
5 在日当該国人数
71人(2023年6月:法務省)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1999年10月 | コーカサス友好親善ミッション(中山太郎衆議院議員団長) |
2011年5月 | 徳永久志外務大臣政務官 |
2013年11月 | 牧野たかお外務大臣政務官 |
2015年1月 | 城内実外務副大臣 |
2016年8月 | 日・アルメニア友好議員連盟一行 (衛藤征士郎会長、松本剛明会長代行、鈴木俊一幹事長) |
2017年6月 | 滝沢求外務大臣政務官 |
2018年2月 | 堀井学外務大臣政務官 |
2018年9月 | 河野太郎外務大臣 |
2022年5月 | 本田太郎外務大臣政務官 |
2023年5月 | 吉川ゆうみ外務大臣政務官 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1992年10月 | バグラチャン副首相(旧ソ連邦支援東京会議) |
1999年2月 | ミカエリャン・エネルギー相 |
1999年8月 | オスカニャン外相 |
2001年6月 | オスカニャン外相(コーカサス三カ国展) |
2001年12月 | コチャリャン大統領(公式実務訪問) |
2005年6月 | マルガリャン首相(博覧会賓客) |
2009年11月 | ナルバンジャン外相(外務省賓客) |
2012年6月 | サルグシャン大統領(実務訪問賓客) |
2012年7月 | エリツァン非常事態相(世界防災閣僚会議 in 東北) |
2012年9月 | ガブリエリャン財相(IMF世界総会) |
2012年12月 | ガルスチャン天然資源省副大臣(原子力安全に関する福島閣僚会議) |
2012年12月 | サミュエルヤン文化省副大臣(文化庁招へい事業) |
2014年6月 | ファルマニャン対日友好議連会長、アルズマニャン外務副委員長 |
2015年5月 | シャルマザノフ・アルメニア国民議会副議長、ファルマニャン対日友好議員連盟会長、アルズマニャン外務副委員長 |
2016年12月 | ファルマニャン友好議員連盟会長 |
2017年1月 | サハキャン国民議会議長 |
2019年6月 | ナザリャン国民議会副議長(女性政治指導者(WPL)サミット) |
2019年10月 | サルキシャン大統領(即位の礼) |
2021年3月 | バダシャン法相(京都コングレス) |
2021年7月 | サルキシャン大統領(東京オリンピック競技大会開会式) |
2022年9月 | アルシャキャン国民議会副議長(故安倍元総理大臣国葬儀参列) |
7 二国間条約・取極
- 1996年6月 旧ソ連邦との間で結んだ条約の承継を確認
- 2005年6月 日・アルメニア技術協力協定署名
- 2018年2月 日・アルメニア投資協定署名(2019年5月発効)