アルゼンチン共和国
アルゼンチン共和国(Argentine Republic)
基礎データ


一般事情
1 面積
278万平方キロメートル(我が国の約7.5倍)
2 人口
約4,554万人(2023年、世銀)
3 首都
ブエノスアイレス(Buenos Aires)
4 民族
欧州系(スペイン、イタリア)97%、先住民系3%
5 言語
スペイン語
6 宗教
カトリック等
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1816年 | 独立 |
1946年 | ペロン政権の成立 |
1973年 | 軍部介入など変遷の後再度ペロン大統領が就任 |
1976年 | クーデターにより軍事政権成立 |
1982年4月~6月 | フォークランド(マルビーナス)諸島紛争 |
1983年12月 | アルフォンシン大統領就任(民政移管) |
1989年7月 | メネム大統領就任 |
1995年7月 | メネム大統領再度就任 |
1999年12月 | デ・ラ・ルア大統領就任 |
2002年1月 | ドゥアルデ大統領就任 |
2003年5月 | キルチネル大統領就任 |
2007年12月 | クリスティーナ・フェルナンデス大統領就任 |
2011年12月 | クリスティーナ・フェルナンデス大統領再任 |
2015年12月 | マクリ大統領就任 |
2019年12月 | アルベルト・フェルナンデス大統領就任 |
2023年12月 | ハビエル・ミレイ大統領就任 |
政治体制・内政
1 政体
立憲共和制
2 元首
ハビエル・ミレイ大統領(2023年12月10日から任期4年、1回限りの連続再選可)
3 議会
二院制(上院72議席(任期6年)、下院257議席(任期4年)。上院議長は副大統領が兼任。)
4 政府
- (1)首相名
- 首相職なし
- (2)外相名
- ヘラルド・ウェルテイン
5 内政
第二次大戦後、軍政が断続的に続いていたが、1982年の英国とのフォークランド(マルビーナス)諸島紛争での敗北により軍部が退陣し、1983年のアルフォンシン政権(急進党)成立により民政へ移管。同政権は経済運営に失敗し、社会的混乱を招いて失脚。
1989~1999年(二期)のメネム政権(ペロン党)は、自由開放経済政策を推進し、当初は高い成長率を達成するも、政権後半は経済成長が減速、財政が悪化し、汚職疑惑も顕在化してデモ、ストライキが頻発する等、政権支持率が低迷。
1999年12月にデ・ラ・ルア政権(急進党)が発足するも、2001年11月の経済・金融危機に端を発した社会騒擾により同年末に任期半ばで退陣。この後、ロドリゲス・サア、ドゥアルデ暫定政権が発足(いずれもペロン党)。
2003年4月に繰り上げ実施された大統領選挙の結果、同年5月に発足したキルチネル政権(ペロン党)は、未曾有の経済社会危機後の国民の結束もあり、力強いリーダーシップを発揮し、経済及び社会的安定の回復を実現。
2007年10月の大統領選挙では、キルチネル大統領の夫人であるクリスティーナ・フェルナンデス上院議員(ペロン党)が政策の継承を主張して当選(選挙で選ばれた初の女性大統領)、2011年10月の大統領選挙でも前年に急逝したキルチネル元大統領の意思を引き継ぐとして再選。
2015年11月の大統領選挙(アルゼンチン史上初の決選投票)で「変革」を訴えて当選した中道右派のマクリ候補(共和国提案党)は、自由開放経済政策を推進したが、2018年前半、50年に一度とも言われる干ばつの発生による農業部門の大幅生産減、アルゼンチン・ペソ急落等の課題に直面し、2019年10月の大統領選挙に再出馬するも敗北。
2019年12月に発足したアルベルト・フェルナンデス政権(ペロン党。副大統領はクリスティーナ・フェルナンデス元大統領)は、前政権の政権運営を行き過ぎた自由主義と批判し、新型コロナウイルスや大干ばつに直面しながらも、国内各セクターとの対話、平等な発展と弱者保護に基づく施策に取り組んだ。
2023年12月、決選投票を経て、自由至上主義的政策を掲げるミレイ政権(自由の前進党)が発足。小さな政府(緊縮財政、規制緩和、自由貿易等)を目指し、また、ショック療法的な経済・財政改革に取り組んでいる。
外交・国防
1 外交基本方針
- 西側諸国との連携を重視。
- 通商面からアジア地域との関係強化を重視。
- 米国および中国との間で一定のバランスを取った外交。
- 南米南部共同市場(メルコスール)の戦略的同盟の強化。
- 国連やG20といったマルチ外交を推進。
- フォークランド(マルビーナス)諸島の主権の主張を継続。
2 軍事力(ミリタリーバランス2024)
- (1)国防支出
- 29.4億ドル
- (2)兵役
- 志願制(1994年12月に徴兵制度廃止)
- (3)兵力
- 陸軍42,800人、海軍16,400人、空軍12,900人
経済(単位 米ドル)
1 主要産業
- 農牧業
- (油糧種子、穀物、牛肉)
- 工業
- (食品加工、自動車)
2 GDP(名目)
6,461億ドル(2023年、世銀)
3 一人当たりGDP(名目)
14,188ドル(2023年、世銀)
4 経済成長率(実質GDP)
-1.6%(2023年、世銀)
5 物価上昇率
229.8%(2024年、IMF)
6 失業率
8.2%(2024年、IMF)
7 総貿易額(2024年、アルゼンチン国家統計局)
- (1)輸出
- 797億ドル
- (2)輸入
- 608億ドル
8 主要貿易品
- (1)輸出
- 農畜産物加工品(大豆油かす、大豆油、ワイン等)、牛肉、穀物(とうもろこし、小麦、大豆等)、自動車及び同部品、貴金属(金等)、燃料(原油等)、水産物等
- (2)輸入
- 自動車及び同部品、燃料(ガス、軽油等)、医療用品、電子機器・機械類及び同部品、農業資材(除草剤、肥料等)等
9 主要貿易相手国・地域(2024年、アルゼンチン国家統計局)
- (1)輸出
- ブラジル、EU、米国、中国、チリ
- (2)輸入
- ブラジル、中国、EU、米国、パラグアイ
10 通貨
ペソ
11 対外債務
2,860億ドル(2023年、アルゼンチン国家統計局)
12 経済概要
1990年代には、兌換制(1ドル=1ペソの固定相場)の下で、自由開放経済政策を促進。この結果、ハイパーインフレの収束、投資の増加により、高い成長率を達成。しかし、1999年1月のブラジル金融危機の影響もあり、次第に景気が低迷し、2001年後半には金融不安が金融危機や全般的な経済危機に転化。政府は対外債務の支払い停止(デフォルト)、兌換制の放棄(自由変動相場制への移行)を行った。
デフォルト後、アルゼンチン政府は、2005年と2010年に75%の元本削減を内容とする民間債務再編を強行し、約92%の債権者が債券交換に応じた(新債券保有者)。
マクリ政権発足後、2001年のデフォルト以降初めて国際金融市場に復帰し、外貨取引規制の撤廃等の開放自由経済政策が推進されたが、2018年2月以降、米国の長期金利上昇、長年の財政・経常赤字等の要因により、自国通貨(ペソ)の価値が米ドル等主要通貨に対し急速に減価し、財政・金融面で困難な状況に陥り、IMFに支援を要請せざるを得ない状況に陥った。その後、フェルナンデス政権は、2020年8月にほぼすべての債権者と債務再編に合意。2022年3月にはIMFとの間で約450億ドルの債務再編で合意したほか、10月にはパリクラブと同じく債務再編に合意した。2023年12月に発足したミレイ政権は、自由至上主義的政策を掲げ、小さな政府(緊縮財政、規制緩和、自由貿易等)を目指し、また、ショック療法的な経済・財政改革に取り組んでいる。
経済協力
1 日本の援助実績(政府開発援助(ODA)国別データブック 2023)
- (1)有償資金協力(2022年度まで、E/Nベース) 81.50億円
- (2)無償資金協力(2022年度まで、E/Nベース) 69.34億円
- (3)技術協力実績(2022年度まで、JICAベース) 512.28億円
2 主要援助国
- (1)スペイン(16.03)
- (2)フランス(13.53)
- (3)ドイツ(11.92)
- (4)日本(8.83)
- (5)米国(5.49)
(2021年、OECD/DAC、百万ドル)
二国間関係
1 概況
1898年2月に外交関係樹立。日本とアルゼンチンは、日系人の存在(約6万5千人)もあり伝統的に友好協力関係を維持してきている。1980年代にはフォークランド(マルビーナス)諸島紛争や累積債務問題等の政治的経済的混乱により、日本との関係は若干停滞気味となったが、メネム政権発足後は、アルゼンチンの政治経済情勢が急速に好転したこともあり、二国間関係の緊密化が進んだ。日アルゼンチン外交関係樹立100周年の1998年には、人物交流も活発化し両国で各種記念事業が実施された。また、2014年1月30日から2月2日にかけて、秋篠宮同妃両殿下が「日本国政府とアルゼンチン共和国政府との間の移住協定」発効50周年の機会にアルゼンチンを御訪問。2016年には安倍総理大臣が、現職の総理大臣として57年ぶりにアルゼンチンを公式訪問、2017年にはアルゼンチンの大統領としては19年ぶりにマクリ大統領が日本を公式訪問(公式実務訪問賓客)した。さらに、両国外交関係樹立120周年を迎えた2018年の12月には、G20ブエノスアイレス・サミットに出席するため安倍総理大臣がアルゼンチンを再訪し、マクリ大統領と懇談した後、外交関係樹立120周年閉幕式に出席した。翌2019年6月には、マクリ大統領がG20大阪サミット出席のため再訪日し、2016年~2019年は、日アルゼンチンの長い歴史の中でも、両国首脳が4年間連続で相互訪問するという歴史的な4年間となった。
2 経済関係
(1)対アルゼンチン貿易
- ア 貿易額(2024年 財務省「貿易統計」)
-
- 輸出
- 1,422億円
- 輸入
- 759億円
- イ 主要品目
-
- 輸出
- 自動車部品、原動機、自動車、有機化合物等
- 輸入
- 魚介類、アルミニウム及び同合金、果実、こうりゃん(飼料用)、炭酸リチウム等
3 在留邦人数
10,528名(2024年、外務省「海外在留邦人数調査統計」)
4 在日当該国人数
3,350名(2023年、法務省「在留外国人統計」)
5 要人往来
年 | 要人名 |
---|---|
1959年 | 岸総理大臣 |
1966年 | 椎名外務大臣 |
1967年 | 皇太子同妃両殿下 |
1970年 | 愛知外務大臣 |
1979年、1981年 | 園田外務大臣 |
1983年 | 徳永前参院議長(特派大使) |
1989年 | 小渕前官房長官(特派大使) |
1990年 | 土屋参議院議長(上院議長招待) |
1991年 | 高円宮同妃両殿下 |
1992年 | 竹下元総理大臣 |
1994年 | 河野外務大臣 |
1995年 | 水野清元建設大臣(特派大使) |
1997年 | 天皇皇后両陛下 |
1998年 | 秋篠宮同妃両殿下 |
1999年 | 谷川元法務大臣(特派大使) |
2003年 | 衛藤元防衛庁長官(特派大使) |
2004年 | 有馬政務代表 小池環境大臣(COP10) 小野寺外務大臣政務官(COP10) |
2006年 | 扇参議院議長 |
2007年 | 松岡農林水産大臣、菅総務大臣、尾身元財務大臣(特派大使) |
2008年 | 高円宮妃殿下 |
2009年 | 西村外務大臣政務官、増田元総務大臣(総理大臣特使) |
2011年 | 山花外務大臣政務官(FEALAC) 菅元総理大臣(特派大使) |
2013年 | 若林外務大臣政務官 高円宮妃殿下 下村文部科学大臣(IOC総会) 森元総理大臣(IOC総会) 若林外務大臣政務官(IOC総会) 岸田外務大臣(IOC総会) 安倍総理大臣(IOC総会) 彬子女王殿下 |
2014年 | 秋篠宮同妃両殿下、櫻田文部科学副大臣、土屋厚生労働副大臣 |
2015年 | 西村国土交通副大臣 小泉農林水産副大臣 鳩山邦夫衆議院議員(特派大使) |
2016年 | 黄川田外務大臣政務官 水落文部科学副大臣 安倍総理大臣 |
2017年 | 薗浦外務副大臣 山本内閣府特命担当大臣(規制改革) 世耕経済産業大臣、岡本外務大臣政務官、野中農林水産政務官 |
2018年 | 鈴木東京オリンピック・パラリンピック担当大臣 木原財務副大臣(G20 財務大臣・中央銀行総裁会議) うえの財務副大臣(IDB総会) 簗国土交通大臣政務官(G20観光大臣会合) 河野外務大臣(G20外相会合) 武藤経済産業副大臣、岡本外務大臣政務官(G20エネルギー大臣会合) 野中農林水産大臣政務官(G20農業大臣会合) 坂井総務副大臣(G20デジタル経済大臣会合) とかしき環境副大臣(G20資源効率性対話等) 林文部科学大臣(G20教育大臣会合及びG20教育大臣・労働雇用大臣合同会合) 牧原厚生労働副大臣(G20教育・労働合同大臣会合及びG20労働雇用大臣会合) 中根外務副大臣(G20貿易・投資大臣会合) 平木経済産業大臣政務官(G20デジタル経済大臣会合、G20貿易・投資大臣会合) 安倍総理大臣、世耕経済産業大臣(G20ブエノスアイレス・サミット等) 麻生副総理兼財務大臣(G20 財務大臣・中央銀行総裁会議、G20ブエノスアイレス・サミット) |
2019年 | 山本幸三衆議院議員(特派大使) |
2021年 | 茂木外務大臣 |
2022年 | 武井外務副大臣(国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)総会) |
2023年 | 林外務大臣 山東昭子参議院議員(特派大使) |
年 | 要人名 |
---|---|
1961年 | フロンディシ大統領 |
1979年 | ビデラ大統領 |
1984年 | カプート外相(外務省賓客) |
1986年 | アルフォンシン大統領(国賓) |
1987年 | カプート外相 |
1988年 | プグリエッセ下院議長 |
1989年 | マルティネス副大統領(大喪の礼出席) カバーロ外相(以後、経済相時代を含め、1996年7月まで13回訪日) |
1990年 | メネム大統領(即位の礼出席) |
1991年 | ディ・テラ外相(外務省賓客) |
1993年 | ディ・テラ外相 メネム大統領(公式実務訪問賓客) |
1996年 | ディ・テラ外相(外務省賓客) |
1997年 | ルカウフ副大統領(参議院招待) |
1998年 | メネム大統領(国賓) |
2001年 | ジャバリーニ外相(外務省賓客) |
2003年 | ビエルサ外相(外務省賓客) |
2005年 | ゴンサレス厚生環境相 ラバーニャ経済相(IDB沖縄総会) メイヤー観光長官(万博賓客) |
2008年 | ノファル投資庁長官、サラス通信庁長官、バラニャオ科技相 |
2009年 | バラニャオ科技相 |
2010年 | タイアナ外相 |
2011年 | ティメルマン外相 |
2012年 | バラニャオ科技相 マジョラル鉱業長官 コセンティーノ金融長官 |
2013年 | ジョルジ産業相 |
2014年 | バラニャオ科技相、マジョラル鉱業長官 |
2016年 | ミケティ副大統領、プロカチーニ投資庁総裁、マルコーラ外相、ディエトリッチ運輸相、ブルリッチ教育スポーツ相 |
2017年 | マクリ大統領(公式実務訪問賓客)、マルコーラ外相、カプート金融相、カブレラ工業相等 |
2018年 | エチェベレ農産業相、ロンバルディ公共メディアコンテンツ担当長官 |
2019年 | マクリ大統領、ドゥホブネ財務相、ペーニャ内閣府官房長官(G20大阪サミット) ミケティ副大統領(WAW!、即位の礼) フォリー外相(G20外務大臣会合) エチェベレ農産業相(G20農業大臣会合) |
2021年 | アロンド・スポーツ庁長官(東京オリンピック競技大会) |
2022年 | フィルムス科学・技術・イノベーション相(故安倍元総理大臣の国葬儀) |
2023年 | カフィエロ外務・通商・宗務相 |
2024年 | モンディーノ外務・通商・宗務相(外務省賓客) |
7 二国間条約・取極
- 1962年 査証免除取極
- 1963年 移住協定
- 1967年 友好通商航海条約
- 1976年 海運及び航空所得相互免除取極
- 1981年 技術協力協定、文化協定