アフリカ
南部アフリカ開発共同体(Southern African Development Community:
SADC)
令和6年5月21日
1 概要
(1)設立経緯・目的
1980年、南部アフリカ諸国がアパルトヘイト体制下の南アフリカ旧政権の経済的支配から脱却することを目的として、前身である「南部アフリカ開発調整会議(Southern African Development Coordination Conference: SADCC)」が発足。南アフリカがアパルトヘイトを撤廃した後、1992年に現在の「南部アフリカ開発共同体(Southern African Development Community:SADC)」に改称。1994年には南アフリカも加盟した。南部アフリカ諸国の人々の貧困削減及び生活向上のため、域内の開発、平和・安全保障、経済成長の達成を目的とし、経済統合・共同市場の創設及び紛争解決・予防等に向けた活動を行っている。
(2)加盟国
南部アフリカの16か国:アンゴラ、ボツワナ、コモロ、コンゴ(民)、エスワティニ、レソト、マダガスカル、マラウイ、モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、セーシェル、南アフリカ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ(英語名ABC順(SADCで使われているプロトコル順))
(3)議長国
1年ごとの輪番制。首脳会議(8月)にて交代する。現議長、前議長、次期議長の3者からなるトロイカ制を組み、SADC全体を取り仕切る。
【最近のSADC議長国】 | ||
2024 - 2025 | ジンバブエ | エマソン・ダンブゾ・ムナンガグワ大統領 |
2023 - 2024 | アンゴラ | ジョアン・マヌエル・ゴンサルヴェス・ロウレンソ大統領 |
2022 - 2023 | コンゴ(民) | フェリックス・アントワン・チセケディ・チロンボ大統領 |
2021 - 2022 | マラウイ | ラザルス・マッカーシー・チャクウェラ大統領 |
2020 - 2021 | モザンビーク | フィリッペ・ジャシント・ニュシ大統領 |
(4)機構
- 首脳会議:SADCの最高意思決定機関。年1回(通常8月)議長国にて開催。
- 閣僚会議:外交担当または経済開発担当大臣が参加。議長国等にて年2回開催。
- 政治・防衛・安全保障機構(オーガン):南部アフリカ地域の平和、連帯、安全保障を強化することを目的として1996年に設立。SADC議長とは別にオーガン議長を置き、1年ごとの輪番制により、首脳会議(8月)にて交代。現議長、前議長、次期議長の3者からなるトロイカ制を組み、平和、連帯、安全保障問題を取り仕切る。最終的な意思決定はSADC首脳会合により行われる。
【最近のオーガン議長国】 | ||
2024 - 2025 | タンザニア | サミア・スルフ・ハッサン大統領 |
2023 - 2024 | ザンビア | ハカインデ・ヒチレマ大統領 |
2022 - 2023 | ナミビア | ナンゴロ・ムブンバ大統領 |
- 事務局:ボツワナの首都ハボローネに置かれている。総計300名弱のスタッフが勤務。
【最近の事務局長】 | ||
2021 - | ボツワナ | エリアス・ムペディ・マホシ事務局長 |
2013 - 2021 | タンザニア | ステルゴメナ・ローレンス・タックス事務局長 |
(5)近年の主要な活動
- 2001年、アフリカ連合(AU)の「アフリカ開発のためのパートナーシップ(NEPAD)」を踏まえ、2005年から2020年までの地域統合の実施枠組を定めた地域指標戦略開発計画(RISDP)を作成。RISDPにおいて、域内の自由貿易圏の創設、関税同盟、共同市場、通貨同盟及び共通通貨の導入等を通じた経済統合スケジュールを設定。
- 2008年、「SADC貿易議定書」に基づき、自由貿易圏を創設し、SADC域内の関税の85%撤廃を達成。
- 2008年、アフリカ連合(AU)のアフリカ待機軍の下にSADC旅団を創設し、地域平和維持活動に参加。
- 2012年、「SADC貿易議定書」に基づき、センシティブ品目の関税の段階的引き下げプロセスが完了し、関税自由化を達成。
- 2012年、地域インフラ開発マスタープラン(RIDMP)を発表。
- 2014年、レソトにおける政治・治安情勢を踏まえ、SADCファシリテーター及び政治・防衛・安全保障に関する監視団の派遣を決定。
- 2015年、SADC-EAC-COMESA三者間サミットを開催。同サミットは、広域自由貿易地域協定に署名。
- 2015年、「民主的選挙を管理するSADC原則とガイドラインの改訂版」を発行。以来、本ガイドライン第4.1条に従い、SADC加盟国への選挙監視団を派遣。
- 2021年、同年6月にエスワティニにて発生した暴動騒動の解決に向け、二度にわたりSADC調査団を派遣。
- 2021年、SADCモザンビークミッション(SAMIM)のマンデートを承認、モザンビーク北部カーボ・デルガード州にてテロ掃討活動に従事。2022年及び2023年には、現地の治安状況に鑑み、SAMIM活動の12か月間の延長を決定。2024年7月にミッション終了。
- 2023年、SADCコンゴ(民)ミッション(SAMIDRC)のマンデートを承認、12月に派遣開始。
2 日本との関係(注:肩書きはいずれも当時のもの)
1996~2003年 | JICA専門家派遣 | JICA専門家を地域開発計画アドバイザー等としてSADC事務局に派遣。 |
2004年8月 | 第1回日・SADC政策対話実施 | 2004年3月、日・タンザニア外相会談における日本・SADCハイレベル政策対話実施の合意を受け(当時タンザニアがSADC議長国)、同年8月、河野アフリカ審議官とSADC閣僚理事会議長等との間で政策対話を実施。 |
2009年3月 | 第2回日・SADC政策対話実施 | 2009年3月、TICAD閣僚級フォローアップ会合開催(ボツワナ)時に、御法川外務大臣政務官とファン・デル・メルヴェ南アフリカ外務副大臣(SADC議長国)とカホロSADC事務局次長他との間で政策対話を実施。 |
2009~2016年 | 南部アフリカ・フォーラム開催 | 2009年から2016年にかけて、毎日新聞の主催により「南部アフリカ・フォーラム」(後援:外務省、経済産業省、資源エネルギー庁、JICA、JETRO、JBIC、JOGMEC等)が計7回開催。 |
2010年11月 | カホロSADC事務局次長の訪日 | 2010年10月、カホロSADC事務局次長が松本剛明外務副大臣を表敬。 |
2011~2014年 | JICA専門家派遣 | JICA専門家をSADC事務局へ派遣。 |
2012年3月 | 第3回日・SADC政策対話実施 | 2012年3月、草賀アフリカ審議官とカホロSADC事務局次長他との間で政策対話を実施。 |
2012年3月 | 日・SADCインフラ投資セミナー実施 | 2012年3月、SADC事務局と共催で「日・SADCインフラ投資セミナー」を実施。 |
2012年4月 | 日・SADCパートナーシップに関する覚書締結 | 2012年4月、SADC事務局において、日・SADCパートナーシップに関する覚書の署名式を実施。 |
2013年6月 | 日・SADCインフラ投資セミナー | 2013年6月、SADC事務局と共催で「日・SADCインフラ投資セミナー」を開催。 |
2014年10月 | 第4回日・SADC政策対話実施 | 2014年10月、丸山アフリカ部長とモロンゴSADC事務局次長他との間で政策対話を実施。 |
2014~2016年 | JICA専門家派遣 | JICA専門家を南部アフリカ地域観光機構(RETOSA)に派遣。 |
2015年11月 | タックスSADC事務局長の訪日 | 2015年11月、タックスSADC事務局長が濱地外務大臣政務官を表敬。 |
2015~2020年 | JICA技術協力プロジェクト(森林保全分野) | 「南部アフリカ地域・持続可能な森林資源管理・保全プロジェクト」(JICA技術協力プロジェクト)を実施。 |
2016~2020年 | JICA専門家派遣 | JICA専門家をSADC開発銀行協会(SADC-DFRC)へ派遣。 |
2019年2月 | SADC-日本 ビジネス投資フォーラム | SADC加盟国駐日アフリカ大使館主催にて、「SADC-日本 ビジネス投資フォーラム」を開催。(共催:アフリカ開発銀行(AfDB)、日本貿易振興機構(JETRO)、一般財団法人海外投融資情報財団(JOI)、UNIDO東京事務所/後援:外務省、経済産業省、大阪府、大阪市、大阪商工会議所、公益社団法人関西経済連合会) |
2024年4月 | JICA技術協力プロジェクト(電力分野)に関するR/D署名 | 南部アフリカパワープール(SAPP)に加盟する12か国の電力公社及びSAPP事務局を対象に「南部アフリカパワープール促進のための広域連携強化プロジェクト」(JICA技術協力プロジェクト)の討議議事録(R/D)署名式を実施。 |