(英語原文はこちら)
2010年6月17日、菅直人日本国総理大臣とハーミド・カルザイ・アフガニスタン・イスラム共和国大統領は、二国間首脳会談を実施した。両首脳はアフガニスタン政府による諸課題への取組、今年、外交関係開設80周年にあたる二国間の関係の展望、日・アフガニスタン政策協議の設立につき協議した。今次会談は、カルザイ大統領の2002年、2003年、2006年における訪日、及び両国外相等を含む様々なレベルの要人の相互往来を通じて行われてきた両国の緊密な対話の一環である。
- アフガニスタン政権による諸課題への取組
カルザイ大統領は、治安、和平と再統合、良き統治、経済開発、地域協力について、アフガニスタンが様々な分野でこれまでに達成した成果と今後の計画について説明した。菅総理大臣は、カルザイ大統領の指導の下で進められている同国の努力、とりわけ同大統領による7月20日のカブール国際会議開催の提案を評価し支持した。菅総理大臣は、これらの取組が着実に実施されるよう要請した。両首脳は、カブール国際会議での成功裏な成果をあげることの重要性を強調した。 - 和解・再統合
カルザイ大統領は、アフガニスタンの安定と平和のためには、持続的な政治的和解の中心的要素として、暴力を放棄し和平プロセスに参加する者の再統合を実現させることが重要である点を強調した。カルザイ大統領は、また、最近の和平ジルガの成果を踏まえたアフガニスタンの和解・再統合プログラムの最新状況について説明した。菅総理大臣は、アフガニスタンの安定と復興を探求する上で政治的解決が重要であるとの観点から、和平ジルガの開催が和解に向けた重要な前進であると評価した。また、菅総理大臣は、再統合が地方における治安回復と開発のために重要であるとの認識を示すとともに、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)及び非合法武装集団の解体(DIAG)の主導国としての日本の実績と経験を活かし、日本が再統合プログラムの実施においても積極的に支援する用意がある旨表明した。 - 開発と復興に対する日本の支援
カルザイ大統領は、政治プロセス、治安(DDR、DIAG、警察支援等)、復興支援、人道支援といった鍵となる分野でのアフガニスタンの安定と復興に対する過去9年間にわたる日本の支援に対する謝意を改めて表明した。カルザイ大統領は、また、今後のアフガニスタンの情勢に応じて、2009年から概ね5年間で最大約50億ドル程度までの規模の支援を行うとの新たな支援パッケージの発表が、アフガニスタンの復興と開発への長期的な関与の証左であるとして深い謝意を表明した。カルザイ大統領はまた、今般、日本が日本のNGOを通じた人道支援事業に対して最大15億円の無償資金の供与を実施すると決定したことを歓迎した。
カルザイ大統領の今次訪日に際し、アフガニスタンの治安維持能力の向上、今後設立される再統合基金、コミュニティーの安定化、都市部・農村部双方における雇用創出のために、日本の支援パッケージを活用することについて、両国政府関係者は協議した。両首脳は、水管理を含む農業、運輸、エネルギー、カブール首都圏開発事業等の経済基盤整備事業における将来の協力について協議した。また双方は、日本の対アフガニスタン経済協力を、支援関係者の安全を確保しつつ、効果的に実施するために、第6回経済協力政策協議を7月に開催することとした。
菅総理大臣は、日本が、アフガニスタン政府を通じて供与される開発援助の流れを含め、アフガニスタン側の優先度に沿った支援を供与していくと表明した。この文脈において、カルザイ大統領は、アフガニスタン国家開発戦略(ANDS)の下での最近の優先順位付けに触れ、復興及び開発におけるオーナーシップ及び責任の向上に向け、アフガニスタン政府が腐敗に対する取組を一層強化していることや、説明責任、財政管理、アフガニスタンの関連省庁・機関の実施及び監督能力の改善のための更なる進展に向けた努力を説明した。菅総理大臣より、日本国民の税金が効果的に利用されるよう、良き統治のための取組を含め、しっかりと取り組むよう求めた。
両首脳は、アフガニスタン及び地域の経済開発のためには、特にアフガニスタン及び地域の経済開発のための地域経済協力会議(RECCA)を通じたアフガニスタンと近隣諸国との地域的協力が重要であることを確認した。 - 二国間関係の展望
両首脳は、奈良の正倉院の宝物に見られる両国の長い関係と交流の歴史と、経済及び文化・教育分野での協力を想起した。両首脳はまた、バーミヤン遺跡保存・修復事業のこれまでの成果を評価し、文化財の保護の分野での一層の協力推進の重要性を確認した。両首脳はさらに、農業と工学とにおいて奨学金を供与するという日本政府の継続的なコミットメント及び、特に高等学校教員の訪日招聘や研修を歓迎した。また、両首脳は、今後、文化・教育分野での人的交流や、貿易・投資面での二国間関係が発展することへの期待を表明した。 - 日・アフガニスタン政策協議の設立
両首脳は、アフガニスタンの諸課題への取組への支援、及び今後の二国間関係の拡大を追求するために、閣僚レベルを含む協議を継続的に実施することとした。これに関連し、高級事務レベルで議論を行う枠組として両外務省の間で「日・アフガニスタン政策協議」を設立することとした。