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第1回アジア協力対話(ACD)首脳会合
における風間外務大臣政務官ステートメント
平成24年10月16日
(英語版)
冒頭
- サバーハ首長のリーダーシップの下,ACDの下では初めてとなる首脳会合を開催するクウェート政府の尽力と温かいもてなしに感謝。
- 昨年3月の東日本大震災から1年半。我が国は着実に復興の歩みを進めている。ACDメンバー国を含む世界各地から惜しみなく寄せられた温かい支援と励ましに対し,日本国民を代表して改めて感謝。特にクウェートからは500万バレルの原油の無償供与に加え,サバーハ首長訪日時に追加支援をいただいた。クウェートからの数々の温かい支援に改めて感謝。
ACD
- ACDはユニークで特徴のある地域協力の枠組み。メンバー国は,東,東南,南,西,中央アジアに広がっており,その宗教的・文化的バックグラウンドは多様性に富んでいる。メンバー国の人口及びGDPは,それぞれ全世界の約60%と30%を占めており,世界経済の先行きが不透明な中でも,メンバー国の多くは高い経済成長を維持している。
- このようなACDの特徴を生かしつつ,対話や協力を進めることは,メンバー国間の相互理解を深め,アジアの持続的な発展の基盤を提供することに貢献する。我が国としても,ACDの下での協力に積極的に貢献し,環境教育及び法制度整備支援の分野のプライム・ムーバーとして数々のプロジェクトを実施してきている。
- 他方,先月のNYでの外相朝食会においては,いくつかの国から,我々が直面する新たな状況や課題に対処するためには,ACDの協力の分野や方法を見直す必要もあるとの指摘があったと認識。この観点からは,クウェート及びタイからACDのメカニズムに関して提言を作成するための作業部会を開催するとの提案があったことを歓迎。首脳会合においては,同部会での将来の作業に適切な指針が与えられるよう,このような点についても議論が深まることを期待。
- 本日は,我々が共有する課題の中でも,特に食料安全保障,エネルギー安全保障,MDGs,社会文化交流に焦点を絞って言及したい。
食料安全保障
- 世界人口が2050年には93億人に達するとされる中で,食料安全保障は我々の最重要課題の一つ。現在,食料の国際市場価格が高騰しているが,世界的食料危機を引き起こさないようにするためには,冷静かつ適切な対応が必要であり,まずは農業貿易・投資へ悪影響を及ぼす新たな障壁を設けないことを確認し,安定的な貿易システムを維持することが重要。
- 食料価格乱高下に対応する上で,政策協調や市場の透明性向上や緊急事態に対する備えが重要。我が国としては,APEC「アジア太平洋食料安全保障情報プラットフォーム」を今春より運用を開始するとともに,G20が立ち上げた「農業市場情報システム」(AMIS)や,その「迅速対応フォーラム」に貢献することで,アジアの食料価格の安定化につなげていきたいと考えている。
- 中長期的には,世界の各地域において農業生産の増大及び生産性の向上が必要不可欠。我が国は,農林水産業分野における世界第二位のODA拠出国として引き続き努力すると同時に,農業生産拡大に向けた民間投資促進のため,投資受入れ国,小農を含めた現地の人々及び投資家の三者の利益を調和・最大化する「責任ある農業投資原則」を推進。現在,国際機関において同原則の実用化に向けた取り組みを行っており,我が国も世銀のパイロットプロジェクトを支援している。
エネルギー安全保障
- 鉱物資源の安定供給,エネルギー価格の安定化,市場の透明性の確保は,アジア経済のみならず,世界経済の発展に必要不可欠。
- そのために,各国が責任ある対応・地域の一員としての貢献をしていくことが重要。我が国としては,我が国が誇る省エネに関する高い技術力の普及を通じ,アジアにおけるエネルギー安全保障に貢献していく。
- 限りある資源を有効的に活用するため,アジア諸国が主体的に資源・エネルギーに関する国際的な枠組に積極的に関わっていくことが重要。例えば,緊急時対応への取組を含め「国際エネルギー機関(IEA)」とアジア諸国との間の連携強化や,再生可能エネルギーの利用及び促進を進める「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」,責任ある石油・ガス・鉱物資源等への開発に資する「採取産業透明性イニシアティブ(EITI)」といった国際的な枠組へのアジア諸国の参加を促したい。
MDGs・ポストMDGs
- MDGs達成に向けた取組の加速化と2015年以降の開発目標の在り方(ポストMDGs)に関する議論は,国際社会における極めて大きなイシュー。
- ポストMDGsでは,現行MDGsの経験と教訓に基づき,これまでの国際社会の変化を踏まえた枠組みとすべき。すなわち,簡潔かつ理解が容易で測定可能という現行MDGsの強みを活かしつつ,人間の安全保障を基礎として,成長と雇用,格差是正,防災・強靭性,エネルギー安全保障を含む持続可能性といった諸課題にも対処し,より質の高い貧困削減を目指すことが重要。
- ACDの各国は,これらの課題に対しそれぞれが持つ経験・教訓を共有し,ポストMDGsの策定に向けた議論に貢献できる。また,南南協力や官民連携など様々なパートナーシップを活用し開発努力を促進できる。
- MDGsの達成に向けた取組の加速化に加えて,ポストMDGsの策定に向けた議論においてもADC各国で協力していきたい。我が国も引き続き貢献していく。
文化交流
- アジア各国が有する多様で豊かな文化や宗教について,相互理解を促進することは,地域の安定的な発展にとって不可欠。そのような観点から,我が国は,文化交流,特に若者の交流や文明間の対話に多大な努力を払ってきた。
(イスラム世界)
- 例えば我が国は,2002年から2010年まで「日本とイスラム世界との文明間対話」として,2011年以降は「日本とイスラム世界との未来への対話」(略称:「未来対話」)(The Dialogue for the Future between Japan and the Islamic World)という形で,イスラム世界との対話セミナーを開催してきた【参考1】。
- 本年12月には,「持続可能な共生社会を築くための地域協力の推進」というテーマのもと,「未来対話」最終回となる第3回セミナーを東京で開催予定。
- 持続可能な技術に関する産業界の経験,若者の人材育成や社会に対する貢献のあり方,日本とイスラム世界との新たなパートナーシップ等について,双方の有識者や未来を担う青年等が対話・議論し,提言をまとめる予定。
(東・東南・南西アジア)
- また,我が国は,2007年から2012年半ばまでに,「21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYS)」の下,東アジア,東南アジア,南西アジア等の青少年4万人以上を我が国に招へいし,相互理解を促進するためのプログラムを実施。本年は,「キズナ強化プロジェクト」の下,同地域から9,000人の青少年を招へい予定である。
(中央アジア)
- さらに,中央アジアとの関係では,我が国は,中央アジアの独立以来,留学生や若手行政官の受け入れを通じて国造りのための人材育成に意を用いてきた。また,中央アジア3か国に設置された「日本人材開発センター」は,ビジネス・コース,日本語教育,相互理解促進の3本柱を中心とする事業を展開し,我が国との交流拠点としての機能を果たしている。
結語
- 最後に,アフガニスタンが新たにACDに参加することを歓迎したい。
- 首脳会合の開催やアフガニスタンの新規参加といったモメンタムを得て,ACDの下における協力が更に発展することを期待。