在ブルキナファソ日本国大使の公邸料理人をしている青井和明さんは今年28歳,フランスのニースにあるビストロやパリの高級レストラン「タイユバン」でフランス料理を修業し,日本に戻ってからは日本橋の「きく家はなれ」で和食をまかされていました。まじめで,とてもしっかりしている好青年です。
私たち夫婦が面接した際の決め言葉は「食材の少ないアフリカでいかに工夫して料理ができるか試したい」という言葉でした。当時,息子から借りた『大使閣下の料理人』という漫画を数巻読んでいましたが,まさにその漫画の主人公・大沢公のような雰囲気を漂わせていたものです。
青井さんは私と共にブルキナファソに来て早3年余りになりますが,その間,当地にいる外交団夫人から自分の開催する食事会の料理を作ってほしいと何度も誘いがかかりました。残念ながら,その都度,私が主催する食事会の日と重なったりして,彼女たちの希望には添えませんでしたが,一度公邸で食事したことのある人は,青井さんの味が忘れられないようです。
当地の最高級ホテルの仏人ゼネラルマネージャーを公邸に招いて食事したことがありますが,同ホテルのレストランでも食せない味だと絶賛し,何度も招待してほしいとお願いされました。何しろ,ブルキナファソで唯一の本格的な和食が食べられるのが,我が公邸だからです。
そんな折,昨年の12月でしたが,ネストリーヌ・サンガレ女性地位向上大臣から,近く「第一回ブルキナファソ食い道楽祭り」を開催するので,日本に是非協力してほしいと頼まれました。私は青井さんを思い浮かべ,格好の和食紹介の機会になると思い,即座に了承しました。
本番は今年1月末でしたが,3日間の祭りの間,事前に大使館員が撮影・制作した青井さんによる太巻きやだし巻き卵の調理手順のビデオをテレビモニターで放映して,日本食のレクチャーを実施するとともに,その受講者等を対象に,昼と夜の2回,青井さんが実際にデモンストレーションを行い,そこで作った太巻きや炊きこみご飯のおにぎり,だし巻き卵の試食品を提供しました。
初日のオープニングには,大統領夫人,首相夫妻,諸閣僚,政府高官が日本のブースを訪れ,青井さんの調理の様子を興味深げに見学し,試食をして舌鼓を打っていました。3日間を通じて一般市民を含め,約1千人が日本ブースを訪れ試食したことになります。
会場のブースは調理環境が整っておらず,気温は高く,しかも短時間で大勢の人に試食してもらう必要がありましたので,本格的和食を提供できなかったのが惜しまれますが,普段口にすることのない日本料理を味わう機会を得て,ブルキナファソの人々が非常に喜んだのは言うまでもありません。
在ブルキナファソ大使 杉浦 勉