I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
15-2 海外邦人の安全確保・危機管理体制の強化
海外邦人安全課長 齋籐法雄
邦人テロ対策室長 山内弘志
平成18年5月
施策の目標
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海外邦人の安全確保のための広報・啓発及び援護体制の更なる強化
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施策の位置付け
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- 平成17年度、平成18年度共に重点外交政策の第一の柱として、海外邦人の安全確保、大規模緊急事態への対応の必要性に言及あり。
- 第159回国会施政方針演説及び第164回国会外交演説で、海外邦人の安全確保及び大規模緊急事態への対応策の重要性に言及あり。
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施策の概要
(10行以内)
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(1) 海外邦人の安全対策・危機管理の強化
情報収集・発信の強化により安全意識啓発、安全対策の促進。
(2) 在外公館援護体制の更なる強化
在外公館の危機管理、緊急事態体制を強化すると共に、業務のアウトソーシング化等を進め、援護実施体制の効率化、強化を図る。
(3) 海外邦人の安全対策に向けた多様な取組
関係団体等との協力関係を強化し、安全対策の連携を図る。
(4) 緊急事態対応の強化
大規模緊急事態発生に際して、迅速かつ確実に対応し、効果的な邦人援護・支援を可能とするシステム、体制の整備及び拡充。
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【施策の必要性】
国民の安全と安心の確保は政府の最優先課題であり、海外における国民の生命・財産を守るための努力は外務省の最重要任務の一つである。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
海外における国民の安全をより確実なものとするためには、第一に、国民一人一人が多様化する海外での危険を正確に認識し、「自分の身は自分で守る」意識をもって予防策を講じることが重要である。このため国民が海外の常時変化し、多様化する危険を的確に察知し安全対策を講じられるよう、渡航先の治安・テロ等に関連する最新情報をこまめに提供することが不可欠であり、このための情報収集・分析及び発信体制の強化を図ることが必要である。第二に、安全対策を講じたにも拘わらず、不測の事件・事故等のトラブルに遭遇した国民に対して、時間・場所に関係なく、必要かつ十分な支援を、迅速かつ確実に行いうる本省及び在外公館の体制並びに支援のための基盤の整備・強化が必要である。特に、平成16年末に発生したスマトラ沖大地震・インド洋津波のような大規模緊急事態に際し、いかなる被害にも速やかに機動的に支援を展開しうる人的、物的整備が求められている。
【施策の効率性】(3行以内)
多様化する危険に応じて、上質な情報、的確な支援を提供するため、在外及び本省の人的・物的資源を効果的かつ効率的に展開し得る体制の整理及び強化、また業務の一部アウトソーシング化、内外の関係団体との連携・協力の強化を図ることは目的に合致している。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
388,674 |
357,233 |
(注)本省分予算 内訳:海外邦人安全課 |
201,715 |
184,196 |
邦人テロ対策室 |
186,959 |
173,037 |
単位:千円
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
56 |
57 |
(注)本省分職員数 内訳:海外邦人安全課 |
41 |
42 |
邦人テロ対策室 |
15 |
15 |
単位:人
【外部要因】
(1)平成17年における日本人海外渡航者は年間1700万人(国民の8人に1人)、在留邦人は100万人に達するなど、海外に渡航・滞在する日本人は増加する一方、海外において事件・事故等のトラブルに遭遇する邦人も増加しており、現有体制では対応はますます困難になっている。また、邦人援護は、それぞれのケースの背景・環境、また邦人のニーズが異なることから、ケース毎に、また一人一人の状況に応じたきめ細やかな対応が必要であり、画一的な対応では困難になっている。
(2)事件・事故は突発的で予見し難く、また、各国・地域により文化、慣習、法令等が異なり、更に治安・テロ等各国情勢の動向に左右される部分も多いことから、統一的かつ確実な安全対策の策定には限界がある。特に、平成16年12月26日のスマトラ沖大地震・インド洋津波被害のように、大規模かつ緊急な安否確認及び被害者援護・家族対応を必要とする等想定を超える大規模緊急事態の発生の可能性がある。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
国民の安全と安心の確保は政府の最優先課題であり、重点政策であることから、進捗状況につき、通常の評価を行う。
【評価の切り口】
海外邦人の海外対策、危機管理体制の強化の進捗状況
(1)安全対策・危機管理意識の醸成・強化状況
(2)海外邦人援護・危機管理体制の強化状況
(3)大規模緊急事態対応の強化状況
【目標の達成状況(評価)】
(1)安全対策・危機管理意識の醸成・強化
海外安全キャンペーン、危機管理セミナー等を実施し、国民に安全対策の必要性を訴えると共に、安全確保のためのきめ細やかな情報提供に尽力した。平成17年度には、危険情報の改訂が305回、スポット情報の発出が487回、安全対策基礎データが200国・地域において改訂され、電話相談の件数、ホームページへのアクセス(4,148万1,760件)なども含め、総合的に勘案すると、国民の安全対策・危機管理意識の醸成・強化に効果あったと判断される。具体的には以下のとおり(詳細は事務事業シート参照)。
(イ)平成17年7月1日~7月31日まで、夏の休暇シーズンに合わせ、「海外安全キャンペーン」を実施し、一般国民に対して、海外における安全対策の重要性を訴えた。
(ロ)テロ・誘拐等への対応を含む、危機管理意識の向上のため、海外9か所、国内5か所の内外において企業関係者・一般法人向けに危機管理セミナーを実施した。
(ハ)海外安全ホームページ、メールマガジン、各種パンフレットなどを通じて、治安、犯罪、テロ、自然災害、感染症などに関する多様な情報のきめ細やかな発信に努めた。
(ニ)海外安全相談センターにおいて、平成17年度で9,370件の電話相談に対応した。
(ホ)政府広報を通じて、海外安全対策に関する広報・啓発を実施するよう働きかけた
(各種媒体により合計13件)。
(へ)海外安全対策に関する意識調査(内閣府実施平成17年度「外交に関する世論調査」)における国民意識の向上
- 「海外での日本人の保護や支援のあり方」(平成3年より平成13年まで隔年、平成14年からは毎年調査)に関する調査を実施しているが、平成17年度調査では、「個人または派遣元企業・団体が各自の責任で対応すべきである」が前年の9.4%から過去最高の10.2%に増加するとともに、「できるだけ、個人または派遣元企業・団体が各自の責任で対応すべきであるが、できないところは政府や大使館・総領事館が保護や支援をすべきだ」が前年の39.0%から40.6%に増加し、結果、「個人または派遣元企業・団体の責任を重視する」の合計が50.8%と平成3年の調査開始以降初めて過半数を超えた。
- 一方、「個人または派遣元企業・団体が各自の責任で対応できるような場合であっても、政府や大使館・総領事館が積極的に保護や支援をすべきだ」は、前年の22.2%から21.1%へ4年連続して減少するとともに、「いかなる場合であっても政府や大使館・総領事館が保護や支援をすべきだ」も前年の24.5%から23.4%へ4年連続して減少した。
(2)海外邦人援護・危機管理体制の強化に向けた多様な取組
平成17年度においては、休館時の緊急電話対応サービスの拡充、緊急事態マニュアル等の更新、内外関係団体・機関との連携・協力の推進、多様なトラブルに巻き込まれた邦人への援護体制の強化などの取組等を踏まえ、総合的に勘案すると、海外邦人の援護・危機管理体制の強化に向けて進展があったと判断される。それぞれの具体的な取組の内容は以下のとおり(詳細は事務事業シートを参照。)。
(イ) 平成17年の援護実績は、1万5,955件(前年比0.4%増)、1万9,503人(前年比10.8%増)であった。
(ロ)24時間対応体制強化に向け、平成17年度においては、休館時の緊急電話対応サービス導入公館を9公館追加導入し、40公館に拡充した。
(ハ)平成17年度においては87の在外公館が緊急事態対応マニュアルを更新した。
(ニ)内外の関係団体・機関との連携・協力の推進
- 日本企業・在留邦人団体と外務省(在外公館)との間の情報共有及び連携・協力の強化を図るため、平成17年度においては、海外安全対策連絡協議会(海外)を317回、海外安全官民協力会議(本邦)本会合を1回及び幹事会を5回開催した。
- 外国治安関係機関と外務本省・在外公館と我が国企業関係者との連携・協力関係を強化するため、平成17年度には、タイ、中国及び中南米諸国から治安担当者を招聘し、総合的な情報交換を行うと共に、海外進出企業関係者との交流等を図った。
(ホ)民間危機管理会社の知見を活用しつつ、領事担当官の危機管理能力を向上させると共に、本省との意思疎通を向上させるために、ロンドンにおいて危機管理要員研修等を実施(平成17年度は13名が参加した)。
(ヘ)海外における多様化する危機に対応するため、精神科顧問医及び遠隔地における邦人援護協力者の確保に努めた。
(3)大規模緊急事態対応の強化
平成17年度においては、安否確認システムの整備・拡充などの取組を踏まえ、総合的に勘案すると、大規模緊急事態への対応の強化に向けて、進展があったと判断される。
本件に関するさらなる取組の強化のため、平成17年度の経験を踏まえ、平成18年度の定員要求、予算要求にも反映させている(詳細は事務事業シートを参照)。
【評価の結果(目標の達成状況)】
「目標の達成に向けて相当な進展があった。」
(理由)上述したとおり、平成17年度においては、それぞれの分野で進展があり、全体としては相当な進展があったと考える。平成16年12月26日に発生したスマトラ沖大地震及びインド洋津波の未曾有の悲惨な被害に関する国民の記憶は鮮明であり、大規模災害に対する危機意識と安全策の必要性に関する認識及び国民世論が高まったことは、取組の後押しになった。また、本件災害の経験を踏まえ、これまでの取組を見直し、短期、中・長期的な取組に向けた計画策定が進展した結果、既存の枠組みでの工夫による体制強化、将来的な予算要求、定員要求に確実に反映することができた。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)
既存の資源の効率化のためのアウトソーシング、ネットワーク作り等の推進及び大規模緊急事態への対応は、平成17年度ではまだその緒に就いたばかりであり、今後更に具体的な事業の実現、拡大が課題である。
政策への反映
【一般的な方針】
2007年問題等平成18年には高年齢層の潜在的な海外渡航人口が増加すること、及び想定以上の規模の自然災害、混乱する国際・地域情勢を背景とするテロ等大規模緊急事態の多発傾向を受け、継続的かつ早急な海外邦人安全対策・体制の強化を図る必要がある。
【事務事業の扱い】
- 海外邦人の安全対策・危機管理体制の強化
→今のまま継続
- 在外公館援護体制の更なる強化
→今のまま継続
- 海外邦人の安全対策に向けた多様な取組
→今のまま継続
- 緊急事態対応の強化
→拡充強化
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
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予算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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-
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○
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【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
河野毅 政策大学院大学助教授
(1) 海外邦人の安全確保・危機管理体制の強化は、今後20年を見据えた上での組織と機動能力の強化が極めて必要な分野である。国内から海外へ旅行または海外に在住する邦人は増加するばかりで、これは工業・商業・観光業などあらゆる産業が国境を越えて進むグローバル化(自由化)することの産物であり、止めることはできない。同時に、24時間休みなく発生する海外における不慮の事故や、テロ、感染症など国境を越える問題にまで巻き込まれる邦人も今後増加し続ける。このような不可避な現実を見据え、いかに外務省が万全の体制をもって海外邦人をあらゆる側面から保護するかが厳しく問われている。
このような中で、海外邦人安全課及び邦人テロ対策室は、こうした多様化する海外での危機に対応し、海外における邦人の安全確保及びそのための危機管理を担当する唯一とも言える国内行政機関として、その役割が期待される。
(2) 邦人保護の重要さは「最優先課題」として外務省では十分に理解されている。また国民に対する啓発活動と、信頼できる海外情勢情報提供の機会も過去に比べ確実に拡大している。このような活動を拡大し、ホームページを通じた情報アクセスと情報検索、さらに情報内容の理解の安易さを追求するべきである。また、邦人数が多数在住している地域においては、現地の日本人会等と緊密に連携し、災害・暴動時に遮断されないような邦人保護の連絡システムを構築しておくことが今後の危機管理活動に有用であろう。さらに、国境を越える問題については、海外だけの問題ではないために、国内治安機関、厚生担当関係省庁、地方自治体、学校との危険認識の共有が重要である。特に将来を担う児童生徒に対しては、国際教育の一環として海外の安全について理解を促すことは国民意識の向上という目的のためには長期的に効率のいい投資であろう。この観点から、海外邦人安全課及び邦人テロ対策室の自己評価の内容は概ね妥当と考える。
(3) ただし、このように多様化し尖鋭化する邦人保護と危機管理活動のための、現在の外務省の人的投資が果たして十分であるかは疑問が残るところがある。海外における情報収集、分析、整理、提供から始まり、実際に被害にあった邦人を保護するという通常業務の他、国民の啓発活動、国内外における関係機関との連携等を、緩急をつけて継続的に実施するためのさらなる人材の増員と高度な訓練が期待される。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
平成16年のスマトラ沖大地震・インド洋津波を教訓として、平成17年度には施策の中の重点として体制作りに取り組んだ結果の成果が定量的な形で記述されており、年度の評価として適切な形でまとめられている。
【事務事業の評価】
事務事業名:海外邦人の安全対策・危機管理の強化
事務事業の概要
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- 情報収集・発信の強化により安全意識の啓発
- セミナー、キャンペーン、講演会を通じた啓発事業の展開による安全対策、危機管理への国民・企業の取り組み促進
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有効性
(具体的成果)
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以下の事業を通じ、国民の安全意識を啓発し、安全対策、危機管理への国民・企業の努力を促進してきたところ、ホームページへのアクセス数、海外安全相談センターにおける相談の件数などを含め、総合的に勘案すれば、事業は有効であったと考えられる。
(1)危機管理セミナーの実施
テロ・誘拐等の危機への対応・管理啓発のため、内外各地において、企業の危機管理担当者や一般邦人向けに安全対策・危機管理に関するセミナー、講演会を実施し、危機管理に関する意識、危機への対応策等を啓発に努めた。
(参考)危機管理セミナー開催実績
海外:9か所(ブエノスアイレス、ボゴタ、カラカス、メキシコシティ、ジャカルタ、マニラ、上海、北京、タシケント) 国内:5か所(広島、福岡、名古屋、金沢、札幌)
(2)多様な情報のきめ細やかな発信
海外におけるテロ、騒擾、犯罪、治安、自然災害、感染症等の多様な情報を、内容、対象に配慮しつつ、危険情報、テロ概要、スポット情報、広域情報、安全対策基礎データに分類し、海外邦人の安全な渡航、滞在のための情報をきめ細やかに改訂の上、海外安全ホームページ、メールマガジン及び各種パンフレット等を通じて提供した。
(参考1)平成17年度内の主要情報発信数
- 危険情報(渡航先別総合的安全情報):201国・地域/305回改訂・発信
- スポット情報(渡航先別事件・事故速報):487回改訂・発信
- 安全対策基礎データ(滞在先の各種危険情報、渡航手続等):200国・地域
(参考2)海外安全ホームページアクセス件数:41,481,760回(月平均約346万回)
(3)海外安全キャンペーンの実施
平成17年7月1日~7月31日までの一か月間海外安全キンペーンとして、「自分の身は自分で守る」意識の啓発を実施した。
(4)海外安全相談業務の実施
海外安全相談センターにおいて、平成17年度で9,370件(月平均約780件)の電話照会(相談)に対応した。
(5)政府広報との連携
多角的な広報・啓発の一環として、政府広報を通じて、海外安全対策に関する広報・啓発を実施した。
(参考)平成17年度 政府広報
- 平成17年7月1日 政府広報オンライン(インターネット)
(若年層に対するテロ・誘拐に係わる海外安全対策)
7月2日 ニッポンNAVI(CNBCテレビ)
(海外安全対策一般(海外での注意点等))
7月17日 グッドモーニングジャパン(TBSラジオ)
(海外安全対策一般(海外旅行の心構え等))
7月23日 ニッポン早わかり(テレビ神奈川)
(海外安全対策一般(海外での典型的な手口等))
8月13日 ラジオ番組「中山秀征の愛してJAPAN」
(若年層対象のテロ・誘拐にかかる海外安全対策)
9月26日 政府広報オンライン(インターネット)
(ハリケーンカトリーナに係る安否照会について)
12月1日 政府広報オンライン(インターネット)
(海外安全対策一般(心構え、トラブル対処法等))
12月9日 「キク!みる!」(関西テレビ)
(海外安全対策一般)
12月14日 政府広報オンライン(インターネット)
(インドネシアのテロの脅威に関する注意喚起)
12月16日 政府広報テレビ番組「ご存じですか」
(海外旅行を楽しく安全に)
12月26日 政府広報ラジオ番組
(海外安全情報この一年)
- 平成18年 3月10日 「キク!みる!」(関西テレビ)
(海外安全対策一般(海外旅行の心構え等))
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
海外安全キャンペーン、危機管理セミナー等を実施し、国民に安全対策の必要性を訴えると共に、安全確保のための情報提供に尽力した。このような努力を通じ、平成17年度には、危険情報の改訂が305回、スポット情報の発出が487回、安全対策基礎データが200国・地域において改訂され、電話相談の件数、海外安全ホームページへのアクセス(4,148万1,760件)なども含め、総合的に勘案すると、国民の安全対策・危機管理意識の醸成・強化に効果あったと判断される。このため、今後とも同様に、広報・啓発努力を継続する。
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事務事業名:在外公館援護体制の更なる強化
事務事業の概要
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在外公館の危機管理、緊急事態体制を強化すると共に、業務のアウトソーシング化等を進め、援護実施体制の効率化、強化を図る。
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有効性
(具体的成果)
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以下の事業を通じ、在外公館援護体制を強化すると共に、事務の効率化のためのアウトソーシングを進めた。こうした事業の実績などを総合的に勘案すれば、それぞれの事業は在外公館援護体制の強化に有効であったと考えられる。
(1)休館時緊急電話対応サービスの拡充
24時間対応体制強化に向け、休館時の緊急電話受付業務のアウトソーシング化を推進し、導入公館を平成16年度の31公館から9公館追加導入し、40公館まで拡充した。
(2)緊急事態マニュアル等の整備状況
在外公館の危機管理・緊急事態対応を強化すべく、在外公館に対し、訓令(電報)を発出し、緊急事態対応マニュアルの作成・更新を促した。平成17年度においては87の在外公館が緊急事態対応マニュアルを更新した。
(3)多様なトラブルに巻き込まれた邦人への援護体制の強化
- 平成17年において事件・事故等に巻き込まれた邦人に対しては、全在外公館において総件数で1万5,955件、また総援護人数では1万9,503人に対する援護を実施した。
- 海外で精神的障害を生じた邦人事案が増加していることに鑑み、拠点地域における精神科医との顧問契約を通じ、的確な支援の提供を図る。
- 在外公館所在地から遠方にあり、在外公館職員が即応し得ない遠隔地においては、邦人援護の初動が確保し得る協力者を確保することが不可欠となっていることから、協力者の発掘及び協力者に対する謝金の確保を図る。
(4)領事担当官を対象とする研修の実施 領事担当官が海外での多様な危機に的確に対応するための能力向上の目的として、平成17年度においては、10月24日から5日間、ロンドンにおいて「危機管理要員研修」を開催し、本省から3名、在外から10名が参加した。この他、平成17年9月12日から22日にかけて、中南米地域(メキシコシティ、ボゴタ、カラカス、ブエノスアイレス)において、また、平成18年2月27日から3月9日にかけて、アジア地域(ジャカルタ、マニラ、上海、北京、タシケント)において開催された危機管理セミナーにおいて、領事担当官研修を実施した。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
平成17年度においては、休館時の緊急電話対応サービスの拡充、緊急事態マニュアル等の更新等を進め、在外公館の邦人援護体制の強化に向けて進展があったと判断される。このため、今後とも、それぞれ事業における取組を継続する。
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事務事業名:海外邦人の安全対策に向けた多様な取組
事務事業の概要
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海外邦人安全対策に向け、内外の関係団体等との協力関係を強化し、安全対策上の連携(ネットワーク化)を図る |
有効性
(具体的成果)
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以下の事業を通じ、より確実な海外邦人の安全確保に向けて、在外公館の限りある体制を補完するため、内外関係団体・機関との連携・協力を推進した。こうした事業の実績などを総合的に勘案すれば、それぞれの事業は海外邦人の安全確保に向けた多様な取組に有効であったと考えられる。
(1)海外で活躍する民間の企業・団体と外務省(在外公館)との間で相互の情報・意見交換を深め、海外邦人の活動の環境・対策の整備・向上に向けて、海外においては、海外安全対策連絡協議会を199公館において設置し、平成17年度においては317回開催した。また、本邦においては海外安全官民協力会議を設置し、平成17年度においては、本会合を1回及び右実務者会合である幹事会を5回開催した。
(2)海外で邦人が事件・事故あるいはテロ・誘拐等のトラブルに巻き込まれないための対策及び巻き込まれた際の的確な支援の実施に向けて、在外公館と現地治安関係機関との連携・協力関係を強化するため、平成17年度において、タイ、中国及び中南米5か国(エクアドル、ベネズエラ、ペルー、メキシコ、コロンビア)から治安担当者を招聘し、我が国事情の理解及び海外進出企業関係者との交流等協力関係の増進を図った。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
平成17年度においては、内外関係団体・機関との連携・協力の推進に努め、多様なトラブルに巻き込まれた邦人への援護体制の強化に向けて進展があったと判断される。このため、それぞれの具体的な取組を今後とも継続する。
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事務事業名:緊急事態対応の強化
事務事業の概要
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大規模緊急事態発生に際して、迅速かつ確実に対応し、効果的な邦人援護・支援を可能とするシステム、体制の整備及び拡充。
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有効性
(具体的成果)
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以下の事業を通じ、緊急事態対応の強化を図ってきたところ、それぞれの事業の実績などを総合的に勘案すれば、それぞれの事業は緊急事態対応の強化に有効であったと考えられる。更に、スマトラ島沖大地震・インド洋津波への対応の経験を踏まえ、今までの事業を更に拡充・強化すべく、事業の見直しを行っている。
(1)安否確認システムの整備・拡充
- 平成16年12月26日に発生したスマトラ島沖大地震・インド洋津波への対応の経験を踏まえ、同様な大規模災害に際して、邦人及びその家族等からの安全確認の問い合わせに確実に、効率よく対応できるよう、本省と在外公館との間の連携と情報共有を目的に、WEBサイト上でオンライン安否情報確認システムを構築したところ、平成17年8月の米国南部のハリケーン被害に際しては、本省及び在米公館との間で安否照会及び確認情報が的確に共有・交換でき、安否確認に非常に役に立つ結果となった。
- 海外での大規模緊急事態に巻き込まれた際の安否確認は、在留届等を通じて行うことになるが、短期の個人旅行者については連絡先の把握が困難であり、また数も多いことから、既存の緊急連絡先に依らず災害関連情報を提供し、また本人と本邦家族との間で安否確認が円滑に行えることが重要であることから、右に向けた新たな取組を開始し、平成17年度では、平成18年度内に在留邦人及び渡航邦人の数も最大な米国における音声安否情報提供サービスを立ち上げられるよう予算要求に反映させた。
(2)大規模緊急事態対応要員・機材整備
- インド洋津波の経験を踏まえ、大規模緊急事態に際し、より迅速かつ確実な体制の立ち上げと適切な運営を可能とする知識と経験を有した担当官を養成・研修するための人員を配置すべく、平成18年度の定員要求に反映させた。
- 大規模緊急事態への即応体制の整備として、本省・拠点公館への資機材(通信機器、作業服、携帯歯型X線等)の配備及び遺体鑑定、心のケア等の専門家派遣等の新規体制構築計画を策定し、平成18年度予算要求に反映した。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
平成17年度においては、安否確認システムの整備・拡充などの取組を踏まえ、総合的に勘案すると、大規模緊急事態への対応の強化に向けて、進展があったと判断される。
しかしながら、かかる大規模緊急事態への対応は未だ緒に就いたばかりであり、今後更なる取組の強化のため、平成17年度の経験を踏まえ、平成18年度の定員要求、予算要求にも反映させる等一部見直しを行いつつ、拡充強化を行う必要がある。
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【評価をするにあたり使用した資料】
資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(
http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。