外務省独立行政法人評価委員会

平成25年9月9日

1 日時
平成25年8月22日(木曜日)15時45分から17時05分

2 出席者
(委員)
井口武雄委員長,門脇英晴委員長代理,建畠晢国際交流基金分科会長,青山伸一委員,上野田鶴子委員,上子秋生委員,小松浩委員,手納美枝委員,都丸潤子委員,榛木恵子委員,山影進委員,吉田和浩委員,吉本光宏委員,出雲明子専門委員
(外務省)
越川官房長,梅田国際協力局長,斎木国際文化交流審議官,細野考査・政策評価官,鈴木国際協力局政策課長,岸守広報文化外交戦略課首席事務官他
(国際交流基金)
櫻井理事,柄総務部長,下山経理部長,小島総務部企画・評価課長他
(国際協力機構,以下JICA)
渡邉理事,植澤総務部長,加用財務部長,山田企画部長,新井人事部次長他

3 議題
(1)国際交流基金の平成24年度財務諸表に関する意見について
(2)国際交流基金の平成24年度の業務実績に関する評価
(3)JICAの平成24年度の業務実績に関する評価
(4)国際交流基金の役員給与規程の改正について
(5)独立行政法人改革をめぐる議論について
(6)外務省独立行政法人評価委員会役員の改選について

4 議事概要
(1)冒頭,井口委員長から,開会の辞に続き,委員の出席が定足数を満たし会議が成立していることを確認した。続いて,越川外務省官房長から挨拶があった後,井口委員長が議題について確認を行い,委員各位の了承を得た。

(2)国際交流基金の平成24年度財務諸表に関する意見について,国際交流基金分科会での決定に従い,評価委員会から外務大臣に対し,財務諸表の承認に異存なしとの意見書を提出することで一致した。(なお,JICAの財務諸表については,7月17日付で評価委員会から「承認に異存なし」との意見書を外務大臣に提出済み。)

(3)国際交流基金の平成24年度の業務実績に関する評価について,建畠国際交流基金分科会長から,以下のとおり分科会での議論の結果について報告がなされ,分科会でのとりまとめのとおり決定された。

(以下,建畠分科会長による分科会報告)

  • 25の小項目の評定について,分科会の結論は,「ロ評定」が,「地域・国別事業方針の策定と方針に基づく事業の実施」「多様な日本の文化及び芸術の海外への紹介」「文化芸術分野における国際貢献」「日本語の国際化の更なる推進のための基盤・環境の整備」「各国・地域の状況に応じた事業の実施」「知的交流の促進」「震災後に高まった日本に対する関心・理解を深める事業,震災の経験と教訓を国際社会と共有する事業の実施」及び「施設・設備の整備・運営」の8項目,「ハ評定」が14項目,基金に該当しない項目が3項目であった。
  • 19の中項目の評定について,分科会の結論は,「ロ評定」が,「地域・国別事業方針による事業の実施」「文化芸術交流事業の推進及び支援」「海外日本語教育,学習の推進及び支援」「海外日本研究・知的交流の促進」「東日本大震災からの復興に資する事業の実施」及び「施設・設備の整備・運営」の6項目,「ハ評定」が10項目,該当しない項目が3項目であった。
  • 総合評価の主なポイントは,次のとおり。

(全般的評価)

  • 平成24年度は,第3期中期目標期間の初年度であるが,中期計画に掲げた各事業分野の実施事項や業務運営の効率化に関する事項等,総じて順調な取り組みがなされたと評価できる。
  • 基金の活動の3本柱である文化芸術交流,日本語教育,日本研究・知的交流の各分野において,外交政策を踏まえた地域・国別事業方針に基づいて着実に事業を実施していると評価する。
  • 特に,海外における日本語教育の拡充については,教育ツールの開発,ウェブコンテンツの制作等の基盤・環境の整備に取り組むとともに,日本語教育に従事する人材の育成や各国・地域の日本語教育拠点ネットワークの拡大等を通じて,海外における日本語教育の拡充を着実に進めており,計画を上回り優れた実績をあげていると高く評価することができる。
  • また,文化芸術交流において,共同作業や共同制作によって,より深い日本文化の理解と相互交流に取り組んだ点は,国際交流基金のこれまでの実績と新たな創意工夫に基づいた取組として高く評価する。

(今後考慮が必要な事項)

  • 一般管理費や人件費等の合理化努力は継続的に必要であるが,一方で,経費削減を進めるあまり,本来は国益に即して拡大・強化すべき取組や事業の縮小・先送り等の支障が出ることが懸念される。
  • 基金の文化芸術交流事業が海外に重点化されている現状において,基金が海外で展開している有意義な事業や基金が蓄積している情報を如何に日本国内に伝達するかが課題である。

(4)JICAの平成24年度の業務実績に関する評価について,上子JICA分科会長代理から以下のとおり分科会での議論の結果について報告がなされ,分科会でのとりまとめのとおり決定された。

(以下,上子分科会長代理による分科会報告)

  • 34の小項目の評定につき,分科会の結論は,「イ」が「平和の構築」,「国際社会におけるリーダーシップの発揮への貢献」の2項目,「ロ」が「貧困削減」,「持続的経済成長」,「事業マネジメントと構想力の強化」,「研究」,「技術協力,有償資金協力,無償資金協力」,「ボランティア」,「広報」,「NGO,民間企業等の多様な関係者との連携」,「契約の競争性・透明性の拡大」の9項目,「ハ」が19項目,対象外が4項目であった。
  • 19の中項目の評定につき,分科会の結論は,「イ」が「多様な関係者の『結節点』としての役割の強化」の1項目,「ロ」が「より戦略的な事業の実施」,「事業マネジメントと構想力・情報発信力の強化」,「事業実施に向けた取組」,「国民の理解と参加の促進」の4項目,「ハ」が11項目,対象外が3項目であった。
  • 総合評価の主なポイントは,次のとおり。

(全般的評価)

  • 平成24年度業務実績については,田中明彦新理事長の下,政府開発援助(ODA)大綱等で政府の重点課題に掲げられている「貧困削減」,「持続的経済成長」,「地球規模課題への対応」及び「平和の構築」に対する,技術協力,有償資金協力,無償資金協力を活用した包括的な支援,国内の多様な関係者との連携と国際社会におけるリーダーシップの発揮への貢献を通じた,多様な関係者との結節点としての役割の強化,事業の戦略性の向上に向けた取組により,戦略的かつ効果的なODAの実施をなし,高い成果を上げたと評価できる。
  • 「業務の質の向上」については,事業マネジメントと構想力・情報発信力の強化,事業実施に向けた取組,国民の理解と参加の促進,多様な関係者の「結節点」としての役割の強化,において優れた実績を挙げている。
  • 「業務運営の効率化」については,組織運営の機動性向上,適正かつ公正な組織・業務運営の実施,経費の効率化・給与水準の適正化等,保有資産の見直し,において取組が計画通り着実に進展していることを確認した。

(今後考慮が必要な事項)

  • 技術協力で有効性が実証されたモデルの全国展開のために必要となる取組の強化が望まれる。こうした取組を重ねることでプログラム・ベースド・アプローチ(PBA)や援助の有効性を高めるための国際的取組にも積極的に貢献・発信することを期待する。
  • 民間企業との連携を促進し,中小企業も含めた民間企業の有する技術や能力も踏まえつつ,マスタープランの策定から事業運営までを視野に入れた協力の展開を期待する。
  • プログラム・アプローチなどにも対応しうる実践力のある人材の育成については,相手国政府やドナーとの政策レベルの協議や新規案件形成への参画等を通じて行っていくことが期待される。
  • 若者の内向き志向の傾向が見られる中で,ボランティアの新規派遣の減少が今後も続くことのないよう,積極的な対策を講じることが求められる。また,新たな制度の導入に際しては,一定期間を経た上で効果のモニタリング等も必要と考えられる。
  • 地球ひろばについては,広尾から市ヶ谷への移転に伴い利用実績が前年度を下回っており,市民,NGO,企業,自治体等の多様な関係者が出会う場としての機能の強化や広報の推進等,引き続き利用の拡大に向けた取組が求められる。また,他の国内機関においても,上述の機能の強化に取り組み,引き続き利用者の増加及び拡大に期待する。
  • 経費の効率化には引き続き取り組むべきではあるが,そのことにより,JICA本来の事業に対し,マイナスの影響が生ずることのないようにすべきである。

(5)平成24年度業務実績評価作業の締めくくりにあたり,井口委員長から,「委員長所見」を作成した旨説明があり,委員から特段の意見はなかったため,原案どおり評価書の冒頭に付すこととなった。また,平成24年度業務実績評価の結果については,独立行政法人通則法第32条に従い,政策評価・独立行政法人評価委員会に通知すると共に外務省のホームページで公表する旨,説明があった。さらに,平成24年度の業務実績評価の結果がとりまとめられたことに対し,梅田国際協力局長,斎木国際文化交流審議官,櫻井国際交流基金理事及び渡邉JICA理事から,長期間にわたる評価作業に当たった委員各位の尽力に対する謝意を表明すると共に,各種指摘事項を踏まえ引き続き業務改善及び質の向上にしっかりと取り組みたい旨発言があった。

(6)国際交流基金の役員給与規程の改正について,独立行政法人通則法第53条の規定に基づく通知として,国際交流基金から,以下アのとおり説明があった。これに対し委員より,以下イのとおりコメントがあったが,評価委員会としては特段の意見はない旨決定した。

ア 国際交流基金役員給与規程の改正について(国際交流基金の説明)

  • 国際交流基金法において理事は3名以内と定められているが,平成23年10月以降,1名分の空席があった。広報戦略及び情報技術を活かした新規事業開拓の重要性が高まる中,主としてこの分野を担当する理事の人選を進めてきた結果,平成25年8月1日から非常勤理事として,広報,特にIT,ソーシャルメディアを通じた情報発信を担当する佐藤尚之理事が就任した。同理事はその経歴から,広報強化やITを活用した新規事業開拓を推進するにあたり,最適な人物であると考えている。
  • 新しい非常勤理事の着任にあたり,非常勤理事の手当月額を改正した。非常勤理事の手当月額は,常勤理事の本給月額を基に勤務実態に即した額としているが,従来,週3日の勤務を前提としていたのに対し,新しい非常勤理事は,週2日の勤務を前提をしていることから,今次改正を行ったものである。具体的には,非常勤理事の手当月額が常勤理事の本給月額の5分の3相当額だったものを,5分の2相当額に改正した。

イ 委員からのコメント(括弧内は独法側の回答)
今次改正は,勤務実態(日数)の変更に伴う改正であり,給与水準自体を実質的に改正する内容ではない。事務の簡素化の観点からも,非常勤理事の勤務実態の変更のみを理由に発生する給与の変更をその都度審議する意義はあまり感じられないので,給与規程自体を「非常勤理事の手当については,常勤理事の本給月額を基に勤務実態に即して算出し,決定する」という内容にしておく方が良いのではないか。(今後,検討していきたい。)

(7)独立行政法人制度改革をめぐる議論の現状等について,細野考査・政策評価官から概要を説明した。

(8)外務省独立行政法人評価委員会の役員改選に関連し,細野考査・政策評価官から,井口委員長,建畠国際交流基金分科会長,縣委員,及び上野委員が平成25年8月31日の現任期満了をもって連続5期10年在任となり,委員ご本人の意向を含め,今期をもって,退任予定である旨報告した。次期委員長(任期:平成25年9月1日から2年間)について,外務省独立行政法人評価委員会令第4条に従い,委員による互選を行った結果,門脇委員長代理が次期委員長に選出された。これに対し越川官房長及び各法人理事から,評価委員会発足時から10年間にもわたる関係委員の尽力に対し心からの謝意が述べられ,退任される委員からは,この間の活動を通じた所感と共に,各法人の益々の向上を期待する旨の挨拶があった。また,井口委員長からは,概要以下のとおり退任の挨拶があった。

  • 評価作業を通じ,外務省所管の2つの独立行政法人の現場及び本部の職員が,大変な誇りと高い自信をもって任務に取り組んでいることを実感したが,その実態が国民に十分伝わっていないもどかしさを感じた。また,評価委員会の役割のひとつが効率的な事業の促進にあることから,経費の削減に焦点が当たりがちであったが,無駄を省き経費を効率的に使用すること自体は極めて重要かつ不可欠である一方,そのことが事業の推進にマイナスの影響を与えては本末転倒である。経費削減を達成することに追われ,その先が思考停止に陥り質の向上が疎かになることがあってはならない。
  • 最後に,当評価委員会による評価が,各法人の事業の改善や組織改革に寄与してきたのであれば嬉しく思う。今後も門脇新委員長の下,新たな視点から法人の益々の向上に資する適切な評価が行われることを期待する。

(9)最後に,井口委員長から閉会を宣言した。

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