政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ第19回会合議事録
1.日時
2.場所
3.出席者
(有識者)(五十音順)
添谷 芳秀 慶応義塾大学法学部教授
中西 寛 京都大学大学院教授
山田 治徳 早稲田大学大学院教授
(外務省)
細野考査・政策評価官,中村考査・政策評価官室首席事務官,森総合外交政策局政策企画室首席事務官,田村官房総務課課長補佐,石川会計課総務室課長補佐ほか
4.議題
(2)平成25年度外務省政策評価事前分析表
(3)その他
5.会合経過
(1)平成25年度外務省政策評価
【外務省】
今回は目標管理型の政策評価制度の下での二回目の評価になる。今回の評価書作成において,改善に努めた点は次のとおりである。
まず,施策の効果をより客観的に把握するため,年度目標をできる限り検証可能な内容とするよう努めた。
2点目は,外交政策は定量的に評価することが難しい面があるため,できる限り数値指標を使用するようには努めているが,定性的な評価が重要となる。その中でも「有効性」の評価の充実に努め,測定指標に示された実績が目標達成に向けてどのように貢献したかを明らかにするように努めた。
3点目は,PDCAサイクルに沿って,評価結果を次の政策に繋げていく観点から,昨年「課題」と「方針」に分けていた欄を,「課題と今後の方針」として一つの欄にまとめ,課題と今後の方針の間に一体性を持たせるようにし,その中で,課題ごとに今後の方針を示すように努めた。
【有識者】
検証可能性を高めるよう努めたのは,重要であり,評価したい。
その他の観点では,例えば複数の省庁にまたがる施策については,外務省であるからこそできることをより明確にできると良いのではないか。例えば,経済分野において,個別の業界を所掌する国内官庁と全体を見る外務省とでは交渉スタンスが異なることもあろうが,外務省ならではの視点を評価書において提示できると有益と考える。国内的利益と外交的利益というのは必ずしも一致しない中,外交上の利益を明確に記述すると良い。
【有識者】
PDCAサイクルという言葉が,官民の様々な場で取り上げられている。外務省も基本的には予算要求プロセスを前提として政策評価を動かしていると思うので,PDCAサイクルに載せやすいのではないか。概算要求の段階から評価を回す形が定着すれば評価システムも意義が高まる。最近のように,政権が頻繁に交代する中では,交代後の新しい政策課題を評価しようとしても,無理が出てくる面がある。概算要求で何を要求し,どの程度認められ,執行した結果どのような成果があったのかという流れの中で評価できれば望ましく、そのようにすれば,特に外務省の仕事のように「効率性」の評価が難しいところで,意味が出てくるのではないか。
また,数値目標の活用は,一般論としては良いとしても,無理に使うと逆にマイナス面が大きい。ある特定の数値を達成するか否かで,成果を測ることだけにこだわると、その数値だけが独り歩きしてしまい,結果的に政策効果としてはプラスにならない危険がある。数値目標をどのように活用するかは,実体や内容をよく踏まえて判断すべきである。
【外務省】
外交政策はそもそも多面的なものであり,数値指標はその中の一面だけを捉えることになりがちであり,特定の数値指標だけで評価することは難しい場合が多い。こうした制約の中で,適当な数値指標があれば,出来るだけ活用していくという考えである。
【有識者】
目標そのものを数値で示すことは難しいであろうが,評価の中で数値指標を効果的に使うことは推奨できる。
【外務省】
外交の場合は,その効果を数値のみで測れない場合が多いのは上述のとおりであるほか,相手もあり,保秘の観点から目標や効果を明示して評価することができない場合が少なくないなどの制約もある。
予算との関連では,最近政策評価と,予算を伴う事業についての見直しを行っている行政事業レビューとの連携の強化に向けた動きがある。
【有識者】
今回の改善の意図や趣旨は,自分にもよく伝わってくるものがある。評価書の形式に慣れてきたこともあるが,全体的に分かりやすくなってきた印象がある。ただ,今回努力されているという点の中で,各達成手段がどのように目標を達成するのかという説明についてはまだ弱いものがあるだろう。
【外務省】
効果の測定方法について更に御示唆等を頂ければ有難い。
【有識者】
効果の測定は,そもそも難しい課題である。政策評価法に言う行政府の一連の行為が国民の生活や,経済社会活動にもたらす効果が最終的には国民の満足といった形に帰着する流れがあるが,そうした最終成果を数値化することは難しく,その手前に発生する直接の一次的効果や中間成果をどのように捉えるのかが重要となる。
【外務省】
外務省においては現在5段階の評価区分を用いてできるだけ分かりやすい評価に努めている。今次評価書における各施策分の評価結果については現在調整中である。外務省の場合,地域外交,地球規模問題から広報・文化など様々な分野がある中で,いわゆる「横串」の統一感を確保することはなかなか難しい面がある。こうした評価の区分を類型できないかといった事や,毎年ではなく5年ごとなどに評価し,各年では数値指標のモニタリングを行い公表するといった形で評価作業を重点化することで評価の質を高められないかといった点が総務省において検討されている。
今後の議論にもよるが,新しい進展がみられた段階で,情報を共有させていただき、必要に応じて助言を頂戴できれば幸いである。
【有識者】
日中関係,日韓関係など重要な分野では,外交全体がどの程度進展したかは,外務省だけで評価できる話ではなく、官邸の政策や,関係する各省のとる措置も重要な影響を与える。そこまで幅が広くかつレベルの高い領域の話を1府省たる外務省の評価書の中で書くべきであろうか。いずれかの省の評価書で書かなければならないならば,外務省の評価書で書くことになるのだろうが,それは外務省の評価と同義には扱えない。例えば,首脳会談がなければ,往々にして進展がなかったと見られがちだが,外務省のコントロールを超える要素がある中,省としてできることで何をやってきたかは外務省の政策として評価されてしかるべきではないか。また,首脳や外相レベルの会談がなかなかもてないという場合,例えば大臣よりも下のレベルの話し合い等は必ずしも不可能ではなく,そのような努力の中に一定の成果が見出せるなら,まさに外務省の成果として書くことができるかもしれない。この辺りのさじ加減は難しいであろうが,官邸や他省庁の成果と外務省の成果をもう少し分けて評価することはできないものか。
【外務省】
御指摘のような形で外務省のみの成果を切り分けることはなかなか容易ではない面があろうかとは思う。外務省の場合,外部要因となる相手国の情況や立場や国際環境も考慮に入れた評価を行っている。外交の場合,そうした様々な要因に影響され,必ずしも自らが意図した結果が得られないことがある。それらについても外部要因として分析するよう努めている。
【有識者】
外交は,政府全体で負担すべきもので,その中心を支えるのが基幹省庁としての外務省の役割であろうが,外交政策の目標の達成度は本来政府全体の取組に照らして測るべきはずなのに,実際はそうした仕組みになっていない。内閣府や内閣官房の評価はどのようになっているのか。日本版NSC(国家安全保障会議)の創設なども言われる中,そこで設定される外交・防衛目標の執行となれば,外務省や,防衛省で,その測定基準を1つ追加するとしても,やはりNSC事務局が設置される内閣官房がその成果を問われる当局となるのではないか。日本版NSCができれば,内閣官房の評価をどうするかという課題が一層顕在化すると思う。ただし、それが通常の政策評価になじむかどうかという問題が別途存在する。
【外務省】
現状では、政策評価は府省ごとの縦割りとなっている面が強く,省庁横断的で,かつ安保など大がかりな話であっても,内閣官房や内閣府の下の政策体系として位置付けられてはいないと理解している。また現行の政策評価法では,評価の専担組織たる総務省が,省庁横断的なテーマについて必要に応じ評価するとの条項がある(第12条)。例えば,ODAや自殺防止などのテーマについてこれまで取り上げられてきているようである。
(2)平成25年度外務省政策評価事前分析表
【外務省】
事前分析表は,年度目標と達成手段を設定し,それらを踏まえた上で次年度の評価を行うためのものである,一方で前年度の評価を踏まえた目標を設定することが適当であるとの考慮から,評価書とりまとめのと連動したタイミングでのとりまとめとしている。
また,行政事業レビューと政策評価の連携強化の方針が出されたことを踏まえ,事前分析表の「達成手段」の欄に,行政事業レビューシートの事業名と事業番号を明記し,どの施策にどの事業が関連しているかを明らかにする形を今回の事前分析表から全府省が取り入れることとなった。但し,外務省の場合,例えば外交交渉のように必ずしも事業予算を伴わない達成手段もある。
【外務省】
行政事業レビューの現状について簡単に説明する。行政事業レビューでは各省庁の原則全ての事業についてレビュー・シートを作成し,事業の状況や資金の流れを公開している。自己点検するとともに,外部の有識者にも点検してもらい,その結果を予算の要求等に反映させている。
本年は4月~6月に各事業所管部局が作成したレビュー・シートの中間公表を7月に行ったところ。外務省ホームページで全ての事業(約300)のレビュー・シートを,公表している。
一部の事業は6月18日の公開プロセスで点検を受けた。今年度は3つの事業を選択し,それらにつき6名の有識者に議論していただき,ご意見を頂戴した。この模様はインターネットでライブ中継された。3事業のうち貧困農民支援及び「平和構築人材育成事業」については抜本的改善乃至改善という結論を頂き,「海外邦人安全に関する情報収集と官民連携」については現状維持としつつ,いくつか改善すべき点をご指摘いただいた。これらを含む多くの事業について,外部有識者のご意見を頂戴し,外務省としての事業の点検結果をとりまとめ,8月の末にレビュー・シートの最終公表を行う予定。合わせて予算の概算要求にレビューの結果を反映させることとしている。
【有識者】
行政事業レビューと政策評価の連携について,さらに説明願いたい。
【外務省】
経済成長と財政健全化の両立を目指す上で,いわゆるPDCAサイクルを徹底し,予算の費用対効果を高めていくことが重要だとされ,6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針について」では,各府省で政策評価と行政事業レビューの連携強化を図り一体的な取組を促進することが定められたほか,政策評価を形式的なものとせず,効率的に行うため,メリハリのある取組を進めるといったことも謳われており,この点を受けて上述の重点化といった検討が開始されていると思われる。
特に「経済再生,財政健全化に資する重要な対象分野」については,経済財政諮問会議がPDCAサイクルの実効性向上に関与するとされているが,どのような方法で関与していくか,重要な対象分野が何なのか,政府として特に重要な政策に掲げるとしている重要成果指標をどのように検証・フォローしていくかなどの点については今後の議論に委ねられている。
なお,各府省の事前分析表の達成手段欄に明記される行政事業に関しては,政策評価書と並んで当該事前分析表を公開しているホームページと,行政レビュー・シートを公開しているホームページの間でリンクを張り,国民からも参照しやすいように工夫が施される予定。
【有識者】
今後は統一的に融合させていく予定か。
【外務省】
本来,政策評価は大きな施策の括りで行う評価として,独自に開始されたもので,総務省が制度を主管しており,行革推進本部から発生した行政事業レビューとの融合という話は特に浮上していないと承知する。
【有識者】
100%達成するということがそもそも困難な政策がある中で、そのような成果にとどまるものには翌年から予算もつけないというのが正しいことなのかという点に注意が必要。例えば、外交政策の中でもパブリック・ディプロマシーは,そもそも評価のようなものにはそぐわない。こうした問題を踏まえず,他の分野ではやっているのに,ここだけ何故やらないのかといった議論はあってはならないだろう。
【有識者】
財政的に余裕がある時は政策評価を別にしても良かったが,財政の厳格化が必要とされる現在では,予算査定のサイクルに政策評価を載せるほかに,評価機能を機能させる良い方法はなかなかないだろう。
【外務省】
外交は予算で動いているものばかりではないので、予算との関係だけで政策全体の評価がそもそも行いにくいという面がある。
【有識者】
予算と連動する達成手段と,予算を伴わない達成手段を区別すれば,外務省の事前分析表はすっきりするのではないか。行政事業レビュー事業は予算プロセスと連動し,それなりに数値目標を設定し,評価するべきだろうが,一方で,そうでないものは別の基準で扱うべきだろう。概念的に区分するほうが,評価プロセスの趣旨が生きてくるのではないか。
【有識者】
説得力のある整理が必要であろう。例えば,英国ではパブリック・ディプロマシーは大切であるとのコンセンサスが国民の間にあり,数値指標をもとに単純に予算を削ることは多くの者が望んでいない。日本では,そのような認識が少ないのが現状で,単純化された誤った議論がなされないか懸念される。
【外務省】
様々な御示唆やご意見を頂き感謝。今後の検討材料とさせていただきたい。8月末までに政策評価書をとりまとめ,公表する予定。