インターンが見た外務省

2011インターン実習レポート

北米局北米第二課・一橋大学法学部3年:江口 洋

1.実習内容

リサーチとプレゼン資料の作成

 インターン期間中にアメリカとカナダの政治経済関係をリサーチして,最終日に課内でプレゼンを行いました。北米自由貿易協定(NAFTA)により北米市場が一体化する一方で,アメリカとカナダの間では数多くのセクターで貿易摩擦が発生してきました。この二国が,なぜ,どのような過程を経て,メキシコを含めた自由貿易協定を締結するに至ったのでしょうか。NAFTAは構成国の三国のマクロ経済にどのような影響をもたらしたのでしょうか。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉テーブルからカナダがなぜアメリカによって排除されたのでしょうか。これらの問いから,アメリカとカナダの経済関係の間にある論点や争点を導き出しました。

 プレゼンでは課内の多くの方に聞いていただき,質疑応答では内容について課内の人と議論を行うなど実りある時間になりました。今後の参考にしていただけるようなリサーチを進めることができたことは大きな成果だったと思います。

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ホームページの更新

 2011年4月,松本外務大臣(当時)とクリントン国務長官の会談後,米倉経団連会長,ドナヒュー全米商工会議所会頭も同席して発足した「復興に関する日米官民パートナーシップ」が大きな進展を見せており,その進捗状況を紹介する英文説明用資料を更新しました。震災後多大な支援を行ってきたアメリカとのパートナーシップに基づく復興支援事業の数々を知って,アメリカとの間にある強固な同盟の存在を実感としてもてたのと同時に,ニューヨークの料理人たちによる炊き出し,レディーガガの訪日といったイベントにまで外務省北米第二課が関わっていることは驚きでした。何しろ,これまでは「北米第二課?日米構造協議,牛肉,FTA?」というイメージでしたから。

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来日要人のプロフィール作成

 カナダの経済人の来日を受けて,来日される方々のプロフィール作成をお手伝いさせていただきました。会談をより円滑に進めるために,カウンターパートがどのような人かを知るための資料作成です。一つの会談が決まるたびに,今回させていただいた略歴の調査をはじめ,そのほか種々の綿密な下準備が行われます。

2.感想

 北米第二課での三週間のインターンは大学生活の中でも最も刺激的で,貴重な経験となりました。インターン期間中にウィキリークスにアメリカの外交文書が流出し,首相が代わり,外務大臣が代わり,臨時国会が開かれるという,良くも悪くも恵まれた時期に外務省にいたなぁと思います。今話題の高速鉄道輸出を扱う事務官の方も私のデスクの向かいにいらっしゃいました。これらはテレビや新聞でも報じられるごく一般的な情報ですが,その裏で走り回っている人たちの,普段は決して見ることができない仕事や表情などをみることができたのはおもしろかったです。

 扱っている内容や仕事場を飛び交っている言葉は華やかで大きくても,普段の仕事の様子はどこにあるオフィスとも(多分)同じ。説明会でお話をしてくださる外務省員や実際に中を見たインターン生の誰もが語るように,華やかな外交の世界のイメージが支配的かもしれないが,現実には多くの人の地道な仕事が日本の外交を支えているということを実際に見て納得しました。

 ところで,私の大学での専攻は国際政治です。この分野では国と国の関係はパワーとパワーの関係であるとの語られ方が一般的です。しかし私がここで見たのはまぎれもなく「人と人の関係」でした。座談会で聞いた,「"We, Japan, think..."と国際社会の舞台で話すことの重み」「外国に出れば自分が『日本』そのものである」という言葉が印象的です。実際の社会での出来事を見る上ではパワーというユニットに依拠することで説明できることは多くあります。しかしその裏では,自分の思っていたよりもずっと多くの組織や人々が汗を流しながら走り回っているということを知りました。このことは,普段のニュースを見るにあたっても,これから大学で研究や分析を行うにあたっても,非常に有益にはたらくことと思います。

 またとない貴重な経験ができる機会を与えてくださった外務省の皆さん,そして特に北米第二課の皆さんにこの場を借りて感謝したいと思います。本当にありがとうございました。

3.課の方からのメッセージ

 かつては「摩擦」と形容されることが多かった日米経済関係も,現在はいかにして「協力」を深め,日米同盟を支える両国の強い経済を実現するかが課題となっています。カナダとの間ではEPA共同研究を進めており,日加経済関係が新たな次元に入る一歩手前の状況と言えます。北米第二課は,この重要な二カ国との多様な経済関係を取り扱っています。

 今回江口くんには,米国,カナダ両国と日本の今後の関係を考えるにあたって非常に重要な米加間の経済関係に関する詳細なリサーチ等を行ってもらい,当課の業務に直接に役立つ内容を残してもらいました。飲み会の席でのざっくばらんな交流を含め,「外務省で働くこと」の一端を垣間見てもらえたのではないかと思います。また,外交の最前線を知ることで,日本人としてなすべきことについて改めて考えを巡らせる機会になったとすれば幸いです。

(北米第二課 課長補佐 井上隼一)

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最終日のプレゼンを終えて,北米第二課の方々と。(筆者右から2番目)

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