寄稿・インタビュー
岩屋外務大臣による Walf Quotidien 紙(セネガル)への寄稿(令和7年4月25日)及び Le Soleil 紙(セネガル)への寄稿(令和7年4月29日)「日本とセネガル:友人かつ戦略的パートナー」
外交関係樹立65周年を迎える長きにわたる友好関係
セネガルの独立65周年の記念の年に、日本の外務大臣としてセネガルを訪問でき大変嬉しく思います。日本はセネガル独立の年にいち早く外交関係を樹立し、既に65周年を迎えます。本年8月には第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)を日本で開催するところ、両国の関係を更に強化していきたいと考えています。
日・セネガルは戦略的に重要なパートナー
今回の訪問の第一の目的は、民主主義や法の支配といった価値と原則を共有する両国の「戦略的に重要なパートナー」関係の強化です。日・セネガル二国間関係の更なる強化に向けた取組に加え、サヘル地域をはじめとするアフリカの情勢、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応をはじめとするアジアの情勢、さらには国連安保理改革や気候変動対策といった地球規模の課題などについても議論したいと考えています。
ファイ大統領は、「セネガル2050」をはじめ、様々な野心的なプログラムを発表し、強いリーダーシップの下、それを実行しています。我が国は、セネガル政府による取組を評価し、パートナーとして人材育成を中心に「セネガル2050」に貢献していく考えです。
これまでも、我が国は長年にわたり、職業訓練を含む人材育成や教育、農業・漁業、インフラ、保健等の分野で協力してきました。その中のいくつかの例を紹介します。
人材育成
まず、日本の強みの1つである人材育成に関してです。セネガル日本職業訓練センター(CFPT)では、これまで7千名以上のエンジニアを育成してきました。また、CFPTは、これまで17か国から1000名以上の研修生を受け入れ、地域の人材育成拠点にもなっています。2022年のCFPT卒業生の就職率は約84%と聞いており、セネガル及び西アフリカの産業の自立的発展に貢献しています。昨年のCFPT設立40周年記念式典において、ソンコ首相から、魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教える日本の開発モデルはセネガルにとって模範となる旨の発言を頂いたことを、我が国は大変誇りに思っています。
また、我が国は、初等教育における理数科教育の質の向上や、医療人材の育成といった協力にも取り組んでおり、引き続きセネガルにおける人材育成に貢献していく考えです。
農業
農業分野では、米の自給達成に向けた包括的な稲作支援を行っています。具体的には、セネガル川流域の灌漑の中長期的な開発計画の策定、生産性・品質の向上、南部の天水稲作地域での稲作などに取り組んでいます。これらを通じて、国内のバリューチェーンを強化し、輸入による食料依存を減らし、セネガルの食料安全保障の強化に貢献したいと考えています。
カザマンス地方における地雷除去・復興
さらに、我が国の特色ある支援として、カザマンス地方における地雷除去や復興支援にも取り組んでいます。日本が有するノウハウの移転を通じて、セネガル地雷対策センター(CNAMS)の能力強化、セネガル自身による地雷除去や復興への協力を検討していきます。
貿易・投資の拡大
また、経済関係では、セネガル経済の競争力強化に向け、貿易・投資の拡大が、開発協力と同時に重要です。セネガルの日本企業拠点数は、2019年の16から2023年には24となり、5年間で50%増加しました。上述のCFPTでは、日本企業による機材供与や研修など、日本の官民によるサポートが行われています。このように、セネガルの産業競争力、バリューチェーン強化に向けた取組を進めていきます。
セネガルは、本年4月に開幕した大阪・関西万博に、セネガルにとって海外の万博において初となる独立パビリオンを設置して、「未来への交差点 セネガル」をテーマに、再生可能エネルギーと循環型経済を基盤とした持続可能で、公正な発展を目指すセネガルの取組に関する展示を行っています。この万博も呼び水に、日・セネガル間の貿易・投資が一層拡大することを期待します。そして、何より今回の私の訪問を通じて、より多くの日本企業にセネガルの魅力を伝える機会になることを願っています。
TICAD 9を通じた Co-creation
私の訪問の第二の目的は、本年8月に日本の横浜で開催するTICAD 9に向けて、協力を推進することです。日本が国連やアフリカ連合委員会(AUC)等と共催するTICADは、2023年に30周年を迎えました。これまでの成果を土台にしつつ、TICAD 9では、例えば、AI等のテクノロジー、デジタル医療、水素・アンモニアのエネルギー利用など、日本の革新的な技術や知見を活かしながら、日本とアフリカ双方の繁栄につながるような解決策を共に創り上げる機会としたいと考えています。
TICAD 9では、日・アフリカの将来を担う若者・女性にも焦点を当てます。2050年には世界の15~24歳の若者のうち、3人に1人をアフリカの若者が占めると予測されています。将来を担う人材育成、人的交流、文化・スポーツ交流を推進していきます。
スポーツと文化
その観点から、2026年10月に開幕するダカールユースオリンピックは、世界の若者がセネガルに集まる重要な機会です。我が国は、東京オリンピック・パラリンピックの経験を共有するとともに、柔道の施設整備等に協力していきます。この機会にスポーツを通じた交流が強化され、世界の多くの人々にセネガルの良さが伝わることを願っています。
また、文化面でも、2023年に、セネガルの作家モハメド・サール氏の「人類の深奥に秘められた記憶」が日本語に翻訳され、日本で評判になりました。これは一例ですが、両国の優れた才能を紹介し合い、理解を深めていくことを進めていければと思います。
今回のセネガル訪問、TICAD 9、大阪・関西万博、ダカールユースオリンピックなどを通して、日・セネガル関係及び日・アフリカ関係が新たな高みに押し上げられることを心から願い、私からセネガルの皆様へのメッセージの結びとします。