寄稿・インタビュー
ナイジェリア訪問に際しての上川外務大臣のガーディアン紙への寄稿
ナイジェリアの皆様、昨年9月に外務大臣に就任して初めてのサブサハラ・アフリカ訪問として、今回ナイジェリアを訪問することができ嬉しく思います。
両国関係は1960年のナイジェリアの独立及びラゴスへの日本大使館設置に遡ります。この60年あまりで、ナイジェリアは、約2.2億人の人口と4,000億ドルを超えるGDPを擁するアフリカ最大の経済大国かつ民主主義国、いわばアフリカの巨人として、西部アフリカのみならずアフリカ全体を牽引する存在になっています。
私の今回のナイジェリア訪問の目的は三つあります。
第一の目的は、経済面での二国間関係の更なる強化です。ナイジェリアは。厚い若年層を背景に潜在力が極めて高く、ゴールドマン・サックスの「2075年への道筋」は、条件が整えば、ナイジェリアは2075年に世界第5位の経済大国になり得るとの見通しを示しています。日本企業も51社がナイジェリアに進出しています。双日は工場向けガス小売事業に参入し、日揮は浮体式LNG生産プロジェクトに参画しています。また、大塚製薬は、オグン州において、スポーツ飲料「ポカリスエット」のアフリカ初の生産拠点となる工場の建設を進めています。日本企業の製品・技術を通じてナイジェリア経済のダイナミックな発展に貢献することを期待しています。
また、ナイジェリアでは、デジタルテクノロジーに精通した若者が、社会課題を解決するためのスタートアップを立ち上げるなど、活気にあふれています。複数の日本のVCが地場のパートナーと協力し、イノベーションとスタートアップ経済システムの推進に貢献しています。JICAとJETROは、日本企業とナイジェリアのスタートアップ企業をマッチングさせる取組を行うなどしています。こうした協業から、アフリカと世界を変えるイノベーションが生まれることは夢ではないと確信しています。
第二の目的は、ナイジェリアを始めとするギニア湾沿岸諸国の政治的・経済的な安定を後押しすることです。岸田総理大臣が昨年5月のアフリカ訪問中に言及したとおり、日本はサヘル及びギニア湾沿岸諸国の平和と安定を重視しています。ECOWAS議長国としてのナイジェリアの強いリーダーシップに敬意を表するとともに、ECOWAS及びAUと関係国が対話によって解決策を見いだすことを期待しています。
また、日本は、ナイジェリアの北東部の安定化に向け、国際機関と連携しながら、国内避難民への食料・生計支援、保健サービスの提供等を実施しています。日本は、WPSの分野で、ナイジェリアとの連携を一層強化したいと考えています。私自身、今回の訪問の際に、我が国が協力している北東部支援プロジェクトを実施する関係国連機関の女性リーダーや女性避難民の生の声を聞き、今後のグローバルなWPS政策に生かしていきたいと思います。
第三の目的は、アフリカのリーダーたるナイジェリアとアフリカやグローバルな課題での連携強化を確認することです。国際社会におけるアフリカの声の重要性が高まる中、私の今回の訪問では、国連安保理改革等のグローバル・ガバナンスの強化やアフリカ及びグローバルな課題において、民主主義や法の支配を重視するナイジェリアと協力の強化を議論できることを楽しみにしています。例えば、核軍縮に関しては、日本は唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」に向け、現実的で実践的な取組を継続・強化しています。「核兵器のない世界」という共通の目標を持つナイジェリアが、核兵器の材料である核分裂性物質の生産禁止により、兵器の量的向上に制限をかけるFMCTに対する政治的関心の向上と支持拡大を目的とし、我が国が取りまとめる形で立ち上げを表明したFMCTフレンズにアフリカから加わったことは大変素晴らしいことです。
本年8月には私が主宰するTICAD閣僚会合が東京で開催され、来年8月には横浜市でTICAD9が開催されます。日本は、両会合を通じて、アフリカの経済成長、未来の主役の若者の育成などにつながる革新的な課題解決策をアフリカ諸国と共創し、世界に展開する機会とすべく、ナイジェリアとも議論を深めていきます。