アジア

令和6年5月27日
壇上で握手する岸田総理大臣、尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領、李強(り・きょう)中国国務院総理 日中韓サミット記念撮影 (写真提供:内閣広報室)
首脳会議において発言する岸田総理大臣 日中韓サミットに出席する岸田総理 (写真提供:内閣広報室)
記者会見において、議長の尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領、李強(り・きょう)中国国務院総理を前に発言する岸田総理大臣 共同記者発表 (写真提供:内閣広報室)

 現地時間5月27日午前10時(日本時間同じ)から約75分間、韓国・ソウルにおいて、第9回日中韓サミットが開催されたところ、概要は以下のとおりです(出席者:岸田文雄内閣総理大臣、尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領(議長)、李強(り・きょう)中国国務院総理)。なお、会議終了後、共同宣言及び付属文書(3か国知的財産協力の10年ビジョンに関する共同声明、将来のパンデミックの予防、備え、対応に関する共同声明)(別添)が発出されました。

1 総論

 3首脳は、日中韓3か国協力25周年を祝し、日中韓プロセスの再活性化を歓迎しました。その上で、3首脳は、これまで広範な分野で進められてきた未来志向の実務協力の推進で一致するとともに、日本の議長下においても、各国が連携していくことで一致しました。
 また、3首脳は、今後の3か国協力や、地域・国際情勢について、意見交換を行いました。
 岸田総理大臣は、会議冒頭に、北朝鮮が人工衛星の打ち上げを予告したことについて、仮に発射を強行すれば、国連安保理決議に違反するものであり、強く中止を求める旨を述べました。

2 日中韓協力

 3首脳は、3か国協力の今日的意義を改めて確認した上で、議長国の韓国が提案した優先分野における協力を推進することで一致しました。また、3首脳から、日中韓協力事務局(TCS)がこれまで果たしてきた役割を評価する旨の発言がありました。
 岸田総理大臣からは、3か国協力を拡大し、国際社会を分断と対立ではなく協調に導くため互いに知恵を出すべき旨述べた上、日本として、日中韓協力の今日的意義を踏まえ、人的交流、持続可能な社会、ASEANとの協力の3つの分野での取組についての考えを以下のとおり述べました。

  1. 人的交流
    1. 将来を担う若者を中心とした重層的な人的交流こそが、日中韓の未来に向けた相互理解と信頼を育む礎であり、困難な時期においても課題の解決に向けた新たな発想を生む力となるとの認識に基づき、日中韓3か国間で始まった大学間交流プログラムであり、今や東南アジアに拡大している「キャンパス・アジア」をはじめとするプログラムの推進を引き続き後押ししていく。また、観光を通じた人的交流を一層促進する。
    2. 2025年及び2026年を「日中韓文化交流年」とするとの韓国の提案を支持し、日本議長の下で迎える文化交流年を充実させていく。
  2. 持続可能な社会
     共通の社会的・経済的な課題やグローバルな課題に取り組むことで、持続可能な社会のモデルを東アジアから示すことは、国際社会にとっても有益であり、パンデミック対策に関する共同宣言等を踏まえた連携、少子高齢化対策における世界の課題先進国たる日中韓での知見の共有等を進め、課題をチャンスに変えていく。
  3. ASEANとの協力
     ASEANは、地域の安定と繁栄に中心的な役割を担っており、ASEAN側も日中韓プロセスの再活性化を歓迎している。そのような日中韓にとってのASEANとの間で、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」の主流化に向けて、日中韓が協力していくことは、地域に安定と繁栄をもたらす上で益々重要。ASEAN+3の下で、災害時等に迅速に発動できる緊急融資ファシリティ創設等の地域金融協力の強化、持続可能な開発促進のためのスタートアップ支援、防災等の分野におけるWPS(女性・平和・安全保障)の視点の活用といった実務協力をさらに具体化させるべく連携していく。

3 地域・国際情勢

 岸田総理大臣から、国際社会が歴史的な転換点を迎えていることを指摘しつつ、世界を協調に導き、地域及び国際社会の平和と繁栄を確保するためには、人間の尊厳が守られ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化が不可欠であるとの認識を述べた上で、北朝鮮情勢、ロシアによるウクライナ侵略、中東情勢、地域及び国際的な経済面での協力について、以下のとおり我が国の考えを説明しました。

  1. 北朝鮮情勢
     岸田総理大臣から、北朝鮮の核・ミサイル活動や露朝軍事協力の進展に対する深刻な懸念を表明し、北朝鮮の非核化と朝鮮半島の安定が日中韓3か国の共通の利益であることを改めて確認しました。その上で、関連安保理決議に基づいて、北朝鮮に核・弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めていくべき旨述べました。
     また、岸田総理大臣から、拉致問題の即時解決に向けた両首脳の引き続きの支援を求め、理解を得ました。
  2. ロシアによるウクライナ侵略
     岸田総理大臣から、世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは決して認められるものではなく、公正かつ永続的な平和の実現が重要である旨述べました。その上で、我が国として、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援を継続する旨述べました。
  3. 中東情勢
     岸田総理大臣から、ガザ地区の危機的な人道状況に対する深刻な懸念を表明するとともに、日本として、状況改善に向けた外交努力を行ってきていること、これまで1億ドル以上のパレスチナ支援を実施していること等を説明しました。3首脳は、持続可能な停戦の実現、そして「二国家解決」の支持の重要性を共有しつつ、中東和平問題の解決に向けて取り組んでいくことで一致するとともに、中東地域全体の平和と安定が共通の利益であることを確認しました。
  4. 地域及び国際的な経済面での協力
     3首脳は、世界のGDPの2割超を占める日中韓が、地域の持続的かつ包摂的な経済成長の確保のために、役割を果たしていくことが重要であるという点、そして、本日のサミットにおいて採択された知財協力に関する共同声明を踏まえ、3か国協力を進めていくことが重要との点で一致しました。
     また、岸田総理大臣から、自由で公正な国際経済秩序の維持・強化の重要性を指摘した上で、貿易・投資双方で深い繋がりのある日中韓3か国の間でRCEP協定プラスを目指し、ハイレベルな規律を含め、未来志向の日中韓FTAの在り方について、率直な意見交換を行いたいと述べました。
     加えて、岸田総理大臣から、AIソウル・サミット等の開催に関する韓国のイニシアティブを歓迎した上で、広島AIプロセス等を通じた、安全、安心で信頼できるAIの実現に向けた日本の取組を説明しました。
     さらに、岸田総理大臣から、来年韓国で開催されるAPEC、日本で開催される大阪・関西万博について、成功裏の実施に向けて日中韓で協力していきたい旨述べました。

(参考)別添

アジアへ戻る