寄稿・インタビュー
ASEAN関連外相会議に際した林外務大臣の寄稿(令和5年7月13日)
ジャカルタポスト紙(インドネシア)
昨日から、私はASEAN関連外相会議出席のため、ジャカルタを訪問しています。日本の外務大臣として、日ASEAN友好協力50周年、日・インドネシア外交関係開設65周年の記念すべき年に、本年のASEAN議長国インドネシアの首都ジャカルタを訪問できることを非常に嬉しく思います。
ASEAN関連外相会議は、ASEAN加盟国のみならず対話国からも外務大臣が一堂に会して地域及び世界の喫緊の課題を議論する場として極めて重要です。これらの会議を成功裏に開催するために尽力されているインドネシア政府に敬意を表します。また、私どもを歓迎いただいたインドネシア国民の皆さまのおもてなしに感謝いたします。
まだASEANが設立間もない1973年、日本は、世界で初めてASEANとの対話を開始しました。それから半世紀、日本は、東南アジアの国々が平和と繁栄のために互いの違いを乗り越えて協力するというASEANの挑戦と努力に心から共鳴し、日本のアジア外交の中心にASEANを据えてきました。そして、日本とASEANは、幅広い国民間の交流を通じて、主要な貿易・投資のパートナーとしてのみならず、「心と心」の繋がる真の友人としての関係を構築してきました。
先週このジャカルタでASEAN各国の元日本留学生会の評議会(ASCOJA)の総会が開かれましたが、10か国の協会会員の総数は5万人を超えます。
また、ジェネシスという青年交流プログラムでは、2007年からこれまでに、対面、オンラインをあわせて約4万7千人の派遣と招へいを行ってきました。
さらに、国際交流基金は「文化のWA」プロジェクトの下で、2014年からこれまでに、合計約2,700名の日本語パートナーズを東南アジア等に派遣し、日本語教育や青年交流に貢献し、また、芸術・文化の分野においても約2,500件の事業を実施し、日本とASEANの人々の交流促進に貢献してきました。
我々の緊密な関係の基盤である「心と心」のパートナーを次世代につなげていくためにも、これらのような魅力ある文化・人的・知的交流の取組を、更に推進していきたいと思います。
また日本とASEANは、アジア通貨危機、インド洋大津波、東日本大震災、新型コロナのパンデミックなど、大きな困難を乗り越えるために、互いに手を差し伸べ合い、地域の平和と安定、繁栄のために協力してきました。
長年にわたる、試練に耐えた相互の理解と信頼に基づくパートナー、それが日本とASEANのパートナーシップの特徴です。
ASEAN諸国の飛躍的な経済発展にも後押しされ、今や我々の地域は、世界経済を力強く牽引しています。インドネシアが本年のASEAN議長国として、「Epicentrum of Growth」をテーマに掲げたのは、時宜を得たものと考えます。
しかしながら、我々の地域と世界は、ロシアによるウクライナ侵略、東・南シナ海における力による一方的な現状変更の試み、北朝鮮による核・ミサイル開発、ミャンマー情勢といった様々な試練に直面しています。これらの問題は地域及び世界を不安定化させるのみならず、食料・エネルギー価格の高騰など、人々の生活に直接的な悪影響を及ぼしています。
この地域が平和で安定した「Epicentrum of Growth」であり続けるためには、世界を分断や対立ではなく、協調に導くとの共通の目標に向けて取り組む必要があります。そのための鍵となるのが、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化です。ASEANの掲げるインド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)と日本の進める自由で開かれたインド太平洋(FOIP)は、開放性、透明性、包摂性、国際法の尊重といった本質的な原則を共有しており、これらに関連する取組を推進することが、自由で開かれた国際秩序の維持・強化のために非常に重要です。
併せて、ハード・ソフト両面の連結性強化の取組を推進する包括的な日ASEAN連結性イニシアティブを刷新すると表明しました。
日本はASEANの皆さんと手を取り合い、地域の平和と繁栄のため、また、我々が共通して抱える、気候変動、公衆衛生危機、デジタル化、AIガバナンスといった今日的な課題も含め、共に取り組んでいきたいと思います。
昨年の日ASEAN外相会議で、私はASEAN諸国の外相の皆さんと共に、50周年の公式ロゴマークとキャッチフレーズ「輝ける友情、輝ける機会」を発表しました。
本年は長きにわたる日本とASEANの「輝ける友情」を次世代につなぎ、新たな時代を共に創るべく、更に関係を強化する「輝ける機会」です。
日本ASEAN友好協力50周年の締め括りに、本年12月に日本は特別首脳会議を開催し、ASEAN諸国の首脳と、将来の日ASEAN関係と協力の大きな方向性を示すビジョンを共同で発出します。
本日からの関連外相会議では、この特別首脳会議に向けて、ASEAN諸国と緊密な協力を確認したいと思います。
また、今回の滞在中に、お会いする方々との親交を深めることを心から楽しみにしています。