寄稿・インタビュー

「太平洋で結ばれた大切な友人、太平洋島嶼国と日本」

令和6年2月13日

Ni sa bula vinaka!(フィジー語で「こんにちは!」)

 このたび、初めての太平洋の島国への訪問として、フィジーを訪問します。
 フィジーは、「世界で一番幸せになれる国」の名にふさわしく、美しいオーラにあふれ、豊かな自然や海に包まれています。フィジーを訪れた日本人は誰しも、笑顔で「ブラ!」と挨拶を交わすフィジーの人々のおもてなしに感激すると聞きます。今回の滞在中、私もきっとフィジーに魅了されてしまうでしょう。私の訪問に際し、フィジー政府に敬意を表するともに、温かく受け入れてくださるフィジーの皆様に感謝を申し上げます。

 今年、日本は、第10回太平洋・島サミット(PALM10)を開催します。これに先立ち、スバにおいてPALM中間閣僚会合が行われます。私は、PALMプロセスの継続と発展を強調したいと思います。

 1997年、日本は世界に先駆けてPIFメンバーとの対話を始めました。3年に1回開催するPALMを通じて、日本と太平洋島嶼国は、率直な議論の中で友好のキズナを育みつつ、緊密な協力関係を築いてきました。日本と太平洋島嶼国は、経済社会開発の問題から自然災害や気候変動に至るまで、共通の課題について幅広い議論を行ってきました。2021年のPALM9では、(1)新型コロナへの対応と回復、(2)法の支配に基づく持続可能な海洋、(3)気候変動・防災、(4)持続可能で強靱な経済発展の基盤強化、(5)人的交流・人材育成を優先課題の柱とし、着実に取組を進めてきています。

 太平洋島嶼国を巡る国際環境が大きく変化する中、PALMプロセスも変化を続けています。私が中間閣僚会合に臨む上で、特に重視したい分野について4点述べたいと思います。

 まず1点目は、法の支配です。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は、今なお続くロシアのウクライナ侵略に象徴されるように、重大な挑戦にさらされています。全ての人が平和と繁栄を享受できるよう、太平洋を法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の場とし、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念に基づき、「人間の尊厳」が守られる地域を共に目指すことを提唱したいと思います。

 2点目は、水や我々を取り巻く海洋です。水は、生態系、環境や経済活動に恵みをもたらすものである一方、日本も太平洋島嶼国も、気候変動によって近年ますます深刻化している台風や洪水、高波被害といった水害の脅威にさらされています。PIFメンバーと共に議論を深めていきたいと思います。

 3点目は、人的交流の促進です。太平洋で結ばれた日本と太平洋島嶼国の友好関係の基盤は、人と人との交流です。日本から太平洋地域との間には、古くは1900年代から往来がありました。50年以上前からJICA海外協力隊の太平洋地域への派遣が行われ、約4千名が、保健や栄養を始めとする様々な分野での社会改善を目指し、太平洋の人々と生活を共にしてきました。高校生などの教育交流は次世代の友好関係の更なる発展のために重要です。日本の地方自治体も太平洋島嶼国との人的交流に貢献しています。

 4点目は、女性・平和・安全保障(WPS)です。私は外務大臣就任以来、WPSの主流化を推進してきました。気候変動により起こり得るものを含む自然災害と防災・減災において、WPSの視点を取り入れることが重要と考えており、PIFメンバーとも積極的に議論していきたいと思っています。

 日本は、PIFリーダーが2022年に発表した「2050年戦略」の取組と地域の一体性を強力に支持し、島嶼国のニーズに寄り添いながら、これからもこの地域の信頼できるパートナーであり続けたいとの強い思いを持っています。
 こうした信頼関係の上に、ALPS処理水の海洋放出について、科学的根拠に基づいた丁寧で透明性の高い説明を続け、安心を高めていくことに日本がコミットし、IAEAとも緊密に協力を続けていくことを改めて申し上げたいと思います。

 日本と太平洋島嶼国が共有する価値や原則に基づく信頼関係とキズナの中で紡がれてきた友好関係を時代の変遷に対応させながらも、次世代につないでいくこと。これは外交の役割の一つであると考えます。私は、この機会に島嶼国の友人達と様々な課題について率直に議論を重ね、私たちの未来に向けたメッセージを一緒に考えていきます。

 日本とフィジー、日本と太平洋島嶼国の関係を一層飛躍させたい。今回の訪問を通じて、その可能性が無限にあることを再確認し、日本の外務大臣として、私たちの友好関係の発展のために力を尽くしていきたいと思います。


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