演説

平成26年4月12日

於広島市内ホテル

マイヤー・アジアリンク会長,白石政策研究大学院大学学長を始め学識者の皆様,関係の皆様,ご列席の皆様,
 
本日は,アジアリンク対話広島会合にお招きいただき,ありがとうございます。この会合が私の出身地である広島で開催されたことを心からうれしく思います。ここに御出席の皆様の広島訪問を心より歓迎申し上げます。この交流対話を通じて,ここ広島からASEANとオーストラリアに向けて力強いメッセージが発せられることを期待します。
私が外務大臣に就任して以来,1年4か月がたちました。日本は様々な難しい問題を抱えていますが,私は広島出身として,「核兵器のない世界」,核軍縮の実現に特に強い思いをもって取り組んできました。

最近では,今週月曜日にアボット・オーストラリア首相が公賓として日本を訪問され,安倍総理と首脳会談を行い,まだ名前は決まっていませんが,日豪の「戦略的パートナー関係」を新たな,特別な段階に引き上げることを確認しました。また,昨日は,このアジアリンク対話でも基調講演を行われたビショップ豪外相とも会談し,じっくりと意見交換をさせていただきました。

この2つの会談を通じて,軍縮・不拡散問題について日本とオーストラリアが国際社会の平和と安定のために緊密に協力していくことを改めて確認いたしました。
また,私は,就任以来,多くのASEAN諸国を訪問してきておりますが,その際にも軍縮・不拡散の重要性を各国と確認してきております。

先ほどここ広島で第8回軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)外相会合を終えたばかりです。NPDIは,2010年に日本とオーストラリアが中心となって立ち上げた核兵器を持たない地域横断的な国の集まりです。核軍縮・不拡散の取組に関する現実的かつ具体的な提案を打ち出し,「核兵器のない世界」の実現を目指しています。

今回の外相会合にはASEANの諸国を含め,NPDIに参加する12か国中7か国の閣僚が参加しましたが,これほど多くの閣僚が集まるのは初めてのことです。また,今回の外相会合には,ゲスト・スピーカーとして3名を招待し,核兵器国から米国のゴッテメラー国務次官,包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議議長国であるインドネシアのマルティ・ナタレガワ外務大臣,そして今月末に開催される2015年NPT運用検討会議第3回準備委員会で議長を務めるロマン・モレイ駐ポルトガル・ペルー大使が初めてゲスト・スピーカーとして参加しました。

本日の外相会合では,今月末に予定される2015年核不拡散条約(NPT)運用検討会議第3回準備委員会に向け,核軍縮,「核兵器のない世界」を実現するための方途について,実りある議論を行いました。ここでの議論の結果,「核兵器のない世界」に向けて現実的かつ実践的な措置を盛り込んだ「NPDI外相会合広島宣言」を発出しました。宣言はお手元にお配りしてあるとおりです。また,併せて6つの作業文書をとりまとめることができました。これまでNPDIでは10の作業文書をNPT運用検討会議の準備委員会に提出していますが,今回の6つの文書とあわせて16の作業の提案文書を提出することとなります。

今回,CTBT発効促進会議の共同議長であるインドネシアの外相,米国の国務次官,NPT運用検討会議第3回準備委員会議長という3名の外部の方から評価,期待を語ってもらい,とても刺激的なものとなりました。最も特徴的だったのは,はじめて日本で開催され,また被爆地広島で開催されたことです。参加された代表は,原爆慰霊碑参拝,平和記念資料館の視察,被爆者の証言を聞く場を設けましたが,参加者に大きなインパクトがありました。参加者からは,「大きな衝撃を受けた」,「大変心を動かされた」との話がありました。このように参加された代表が被爆の実相に触れたことはこの外相会合に影響を与えたと思います。今後,「核兵器のない世界」の実現のために国際的に活躍される方々が,広島を訪問した経験をもとに,情報を発信することはとても有意義なことであると考えます。

広島,長崎への原爆投下から70年となる2015年に,5年に1度開催されるNPT運用検討会議に向け,我が国は,NPDIグループの主導国として核軍縮・不拡散の取組を精力的に推進し,NPDIの政治的推進力を一層高めてまいります。

昨年12月,我が国は初めて外交・安全保障に関する基本的な方針となる「国家安全保障戦略」をまとめ,国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から,国際社会の平和と安定,そして繁栄に今まで以上に積極的に貢献していく考えを明記しました。

この「国家安全保障戦略」の中にも,日本は,世界で唯一の戦争被爆国として,軍縮・不拡散にも積極的に取り組み,国際社会の取組を主導していく方針が明記されています。

是非,「核兵器のない世界」という大きな目標に向けた大きな第一歩に繋がるよう,オーストラリアやASEANを始めとする国々とも協力しながら,引き続きあらゆる努力をしていくことをお誓いし,私の御挨拶とさせていただきます。是非,アジアリンクの皆様にも御理解と御協力をお願い申し上げます。

ありがとうございました。

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