寄稿・インタビュー

(2018年10月16日放映)

平成30年10月18日

【ナレーション】日本の安倍晋三総理大臣は12日,東京の首相官邸で香港フェニックス・テレビの単独インタビューを受けた。
 安倍総理は,新たな地平に向かって,日中関係を新たな段階に引き上げたいと述べるとともに,「一帯一路」構想で中国と協力していきたい,日中両国の経済は切っても切れない関係にある,中国の発展は日本にも発展をもたらす,米朝関係に関しては北朝鮮との相互不信の殻を破りたい,金正恩委員長と直接会談を行いたい旨述べた。

【インタビュアー】まず,安倍総理閣下,ご多忙の中,インタビューをお受け頂き感謝申し上げる。総理の今月の訪中は,総理の正式訪問として約7年ぶりの訪問になる。10月23日で日中平和友好条約締結40周年を迎える。総理は,今回の訪中で中国側とどのような議論をしたいか,1972年以来,日中は今までに「4つの文書」に署名してきたが,今回の訪中で新たな文書に署名するお考えはあるのか,またそれによって日中関係を新たな発展の段階に引き上げるお考えがあるのか,お聞かせ頂きたい。

【安倍総理大臣】本年は日中平和友好条約締結40周年という節目の年であるが,本年,まさに日中関係が大きく前進していくことを嬉しく思う。この40年間で日中関係は大きく飛躍をした。例えば,人の交流においては,40年前は4万人に過ぎなかった交流が,今や約1000万人となり,これはまさに日中関係の大きな土台になっていると思う。この日中平和友好条約締結40周年という節目の年に,訪中できることを大変嬉しく思う。
 今回の訪中については,日中関係の更なる拡大に加えて,北朝鮮問題や貿易問題等について,胸襟を開いて率直な議論を行いたいと考える。「4つの文書」については,両国関係のまさに土台である。その土台を確認し合うというのは当然のことであるが,その土台の上に,更にあらゆる分野において両国関係を発展させていきたいと思う。例えば,第三国の民間の経済協力,イノベーションや知財保護についての協力も,そうなのだろうと思う。40年前とは違い,日中両国は,この地域の平和と繁栄,また世界の平和と繁栄に共に責任を有している。その意味において,地域の様々な課題,あるいは国際的な課題について,共に協力して取り組んでいく,そのための議論をしたい。
 先般,李克強首相に5月に訪日をして頂き,米の中国への輸出について,燻蒸施設,精米施設等を増設するということについて合意したところであるが,今後,日本と中国との貿易が更に発展していくことを期待している。
 この5月の李克強首相の訪日,そしてこの度の私の訪中,更に来年には習近平主席に訪日をして頂き,ハイレベルの交流を進め,そして両国の関係を新たな時代にふさわしい形へ引き上げていきたいと考えている。

【インタビュアー】地域の問題として,朝鮮半島問題と東アジア情勢についてお伺いする。本年は南北首脳会談,米朝首脳会談があった。朝鮮半島情勢が緊張緩和に向かいつつある。また日中関係も改善している。総理は今後,北東アジア地域の平和と安定のために,どういう構想と期待をお持ちなのか,また,日本の北東アジアにおける安全保障メカニズムについてのお考えを伺いたい。

【安倍総理大臣】北東アジアの平和と繁栄のためには,北朝鮮問題は避けて通れない問題,課題である。先般,ウラジオストクにおいて習近平主席と首脳会談を行ったが,その際,日中共通の目標である朝鮮半島の非核化について,緊密に連携していくということ,そして,北朝鮮に対して安保理の決議を完全に履行することを求めていくことが大切であるという点で一致した。
 6月に歴史的な米朝首脳会談が行われた。まさにこの首脳会談において,両首脳が約束した朝鮮半島の非核化に向けて,我々も後押しをしていくことが大切だろうと思っている。第2回目の米朝首脳会談が,今,日程等の調整を含めて,米朝において調整をしていると承知しているが,そこで朝鮮半島の非核化に向けて大きな成果が出ることを期待している。そして,それと同時に,より広い意味において,朝鮮半島の平和と安定をどのように確保していくかについては,六者会合の可能性も含めて,我が国をはじめ,関係国が議論していくことが大切であろうと思う。
 日本としては,拉致,核・ミサイルの問題を解決し,そして不幸な過去を清算し,日朝の国交正常化をはかるという,平壌宣言における基本方針にいささかも変わりない。
 6月の米朝首脳会談において新たな流れができた訳だが,その中で,私も金正恩委員長との間において,相互不信の殻を破り,金正恩委員長と向き合わなければならないと考えている。その中において,まさに拉致問題を解決する,その解決に資する会談にしていきたいと考える。
 引き続き,中国とも連携を深めながら,米国や韓国としっかりと協力し,そして国際社会と連携して,この北朝鮮問題の解決に取り組んでいきたいと思っている。

【インタビュアー】中国は貿易保護主義に反対している。日本も反対する立場を表明していると思うが,日本と中国は共にどのように対処していくべきだろうか。
 そしてもう一つ,日本としては,もちろん最も重視しているのは米国との関係だと思うが,中国が今掲げている「一帯一路」構想について総理はどのようにお考えで,そして,今回の訪中の際にどのようなことを中国に提案したいとお考えか。

【安倍総理大臣】日本は,貿易制限措置の応酬はどの国の利益にもならない,そして,日本はWTOを重視しており,様々な措置もWTOと整合的でなければならないという考えを,ずっと一貫して訴えてきた。同時に,中国側に対しても,過剰生産の問題や知的財産の問題等,国際社会の関心事項について,積極的に対応することを強く期待をしているところである。
 日中関係というのは,お互いに切っても切れない関係であり,日本にとって中国は最大の貿易相手国であり,貿易総額は3000億ドルとなっている。また,日本の企業は中国に投資をし,或いはモノを生産し,輸出して大きな利益を得ているが,同時に,日本の投資によって中国で雇用も作っており,本当に切っても切れない関係であり,中国が発展していくことは,まさに日本の経済にとって,大きなチャンスにつながっていく,日本の成長につながっていくという考え方を持っている。
 アジアはまさに世界経済の成長センターであることは間違いない訳である。旺盛なインフラ需要がある。この需要に応えていくという意味において,中国の「一帯一路」構想があるのだと思うが,そこで国際社会の共通の考え方が十分に反映されることを望んでいるし,その中で,透明性が確保され,債務国の持続可能性,債務健全性等が確保されていく必要があるという国際社会共通の考え方があるが,そういう中においては,日本もそういうプロジェクトについて協力をしていきたいと考えている。そのことが地域の発展にもつながっていくと考えている。また,日本が掲げている自由で開かれたインド太平洋という考え方も,まさに「一帯一路」構想を掲げる中国とも協力できると考えている。この点についても生産的な議論をしていきたいと思っている。

【インタビュアー】最後に総理からメッセージがあればお伺いしたい。中国の視聴者に対して,何かメッセージがあればお願いしたい。

【安倍総理大臣】私が再び総理に就任して,6年が経過しようとしているが,日中関係には様々な出来事があった。確かに隣国であるため,様々な困難な課題があることは事実であるが,同時にそうした課題をコントロールしていくことも求められている訳である。それは何よりも,この日中両国は地域の繁栄,安定と平和に大きな責任を共有しているからである。その責任感の下,そうした問題をコントロールしながら,両国関係を発展させていきたいと思っている。日中関係はまだまだ発展していく余地があり,その新たな地平に向かって,この日中関係を新たな段階に引き上げていきたい,そういう訪中にしていきたいと思っている。

映像こちらのリンク(中国語)別ウィンドウで開くからご覧頂けます。


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