中華人民共和国
G20サミットの際の日中首脳会談
平成30年11月30日


G20サミット出席のためアルゼンチン・ブエノスアイレスを訪問中の安倍総理は,現地時間11月30日15時20分頃(日本時間12月1日午前3時20分頃)から約35分間(同時通訳),同サミット会場内において,習近平・中国国家主席との間で日中首脳会談を行ったところ,概要は以下のとおり(日本側:世耕経産大臣,野上内閣官房副長官,長谷川総理補佐官,兼原官房副長官補ほか,中国側:丁薛祥・党中央弁公室主任,楊潔篪・党中央政治局委員,王毅・国務委員兼外交部長ほか同席。)。
1 冒頭
(1)冒頭,習主席から,概要以下のとおり述べた。
- ア このような遠い所まで来て再会でき嬉しい。
- イ 先般の総理訪中では率直な意見交換と深い交流を通じ多くの共通認識を達成できた。
- ウ これらの共有認識は徐々に実行に移され,日中関係には新たなモメンタムが生まれている。また,新たな状況の下,共通利益が増え,日中関係発展のために良い条件を作る上で有利な状況になっている。
- エ 自分は両国の将来に自信があり,安倍総理と共に日中関係発展のため政治的指導力を発揮し,新たなエネルギーを注いでいきたい。
(2)続いて,安倍総理から,先般の訪中に対する謝意を述べつつ,概要以下のとおり述べた。
- ア 訪中では,新たな段階に入った日中関係の進むべき道筋につき,習主席と大所高所から建設的な議論を行うことができた。
- イ 来年は習主席を日本にお招きし,首脳同士の間断のない相互往来を通じて,政治,経済,文化,国民交流など,あらゆる分野の交流・協力を一層発展させていきたい。
- ウ そのことが両国国民,そして世界の人々に対し,大きな安心感を与え,日中両国が世界の平和と繁栄のために共に責任を果たしていく姿を示すことにつながると確信。
2 日中関係・北朝鮮情勢
(1)安倍総理から,先般の訪中では,経済貿易分野における実務協力や国民交流の促進等,日中関係を取り巻く幅広い議題について習主席との間で大きな方向性を打ち出すことができたとしつつ,今後は,第三国市場協力や青少年交流等,達成した成果を着実に実施するとともに,残された課題についても正面から取り組むことが必要である旨を指摘した。
(2)その上で,日本側が特に重視する問題として,ア 日本産食品の輸入規制,イ 北朝鮮による「瀬取り」等の対策,ウ 東シナ海の3点を提起した。
- ア 日本産食品の輸入規制については,安倍総理から,11月28日に発表された新潟県の精米の輸入停止解除を歓迎した上で,残された規制について,科学的根拠に基づく解除の早期実現を要請した。また,青果物,日本酒,日本産牛肉等の輸出再開についても要請した。これに対し,習主席からは,科学的根拠に基づき適切に対応していきたいとの反応があった。
- イ 北朝鮮情勢については,日中両国の共通の目標である朝鮮半島の非核化に向けて,関連安保理決議の完全な履行の重要性を改めて確認した上で,「瀬取り」対策の重要性について一致した。
- ウ 東シナ海については,両首脳は,「東シナ海の安定なくして日中関係の真の安定なし」,東シナ海を「平和・協力・友好の海」とするとの認識を改めて確認した。安倍総理からは,尖閣諸島をめぐる状況の改善や「2008年合意」の交渉の早期再開の重要性を改めて指摘した。特に,「2008年合意」については,交渉の早期再開に向け意思疎通を更に強化していくことで改めて一致した。
(3)また,習主席から大阪万博の誘致成功に祝意が表明され,今後,オリンピックや万博の機会を活用し,両国の国民交流を更に促進していくことで一致した。
3 世界経済・米中関係
(1)世界経済
- ア 両首脳は,先般の安倍総理訪中の際に,自由で公正な貿易を発展させていくことで一致したことを踏まえ,G20での協力を含め,世界経済について時間を割いて議論を行った。
- イ 安倍総理からは,日本はWTO体制を一貫して重視しており,自由貿易体制の維持・強化に尽力してきている旨を述べ,日本が主導してきたTPP11が12月30日に発効することは,この観点から大きな成果であることを紹介した。
- ウ その上で,RCEP交渉について,世界に誇れる質の高い協定の早期妥結を目指し,日中で連携していくことの重要性を確認した。また,日中韓FTAについても,交渉を加速していくことで一致した。
(2)米中関係
- ア 両首脳は,最近の米中関係を念頭に,米国との関係について意見交換を行った。
- イ 安倍総理からは,今回の米中首脳会談では,貿易・投資をめぐる問題を含め,習主席とトランプ大統領との間で有益な議論が行われること,その上で,両国が,G20全体の議論に建設的に貢献することを期待している旨を述べた。
- ウ その上で,安倍総理からは,問題の根本的な解決のためには,産業補助金,知的財産,強制技術移転等について中国が具体的な措置を講じることが重要であることを指摘した。
- エ さらに,安倍総理からは,インフラ開発のあり方についても,習主席が先般のAPECで,高い質で進めていく旨強調していたことを踏まえ,国際スタンダードに沿うことの重要性を改めて指摘し,日中間でも意思疎通を強化していくことで一致した。
4 結語
両首脳は,来年の大阪G20サミットを含め,引き続きこうした大局的な観点からの意見交換を行っていくことで一致した。