中華人民共和国

平成30年5月10日

安倍晋三総理,榊原経団連会長,御友人の皆様,

 本日御出席の皆様の多くは,同時通訳レシーバーのイヤホンを付けていらっしゃらないようですが,皆様が中国語をお分かりになること,あるいは,少なくとも分かろうととしてくださることを,嬉しく思います。

 まず,中国政府を代表し,本日開催されている記念行事及び中日平和友好条約締結40周年に対して,熱烈な祝賀を申し上げたいと思います。

 この記念レセプションに出席する前に,中日平和友好条約の締結に直接参加した,あるいは,その父親たちが締結に参加された御友人の皆様と会談しました。このレセプションの会場に入場したときも,舞台のそばで多くの旧い友人の方々の顔が見られました。彼らは皆,多少なりとも中日平和友好条約締結のプロセスに参加された方々です。そして,その後も,この中日平和友好条約を含む中日の4つの政治文書の達成のためにも御協力をいただきました。私のスピーチが終わりましたら,ぜひ皆様と握手をしたいと思います。

 本日,これほど大きな規模のレセプションが開催され,中日の間には,意思疎通ができる感情が存在し,交流ができるルートが存在し,そして,幅広い共通利益が存在すると,深く感じております。

 中日友好条約締結40周年に際し,我々は,中日平和友好条約が40年来果たしてきた安定器としての役割を振り返る必要があると思います。この40年来,正に,中日平和友好条約の精神と原則の下で,中日関係は長足の発展を遂げ,多くの実りを得ました。とはいえ,もちろん,その期間中に,少なからず波風が立ち,ひいては回り道もあったことも否定できません。しかし,正に,中日平和友好条約,そして,これを含む4つの政治文書があり,その基本的な精神や原則があったからこそ,それをよりどころとして,中日関係を再び正常な軌道に戻すことができました。

 中日平和友好条約は,国交正常化に次いで,両国関係における重要な一里塚であり,法律の形で中日共同声明の諸原則を確認しました。その中には,もちろん,日本側が戦争の責任を深く反省し,そして,一つの中国を堅持するという重要な意思表示も含まれております。そして,条約の中で中日両国の世代友好が明確に宣言されるなど,中日の平和と友好という大きな方向を決めるものでありました。

 今回の訪日は,中日関係が改善の勢い,そして,継続的な改善を見せている上で実現できたわけでありまして,私が安倍総理の招きに応じて日本を訪問し,安倍総理との間で率直かつ突っ込んだ,そして友好的な話し合いを行いました。そして,基本的な合意も達成いたしました。さらに,具体的な協力においても,20項目にも及ぶ協力の合意ができました。それらについて,この場で一つ一つ発表することはいたしませんが,先ほど安倍総理がおっしゃったように,中日関係はこれから新しい出発点に立って,正常な軌道に戻るという基礎の上で,新たな発展を遂げ,そして,長期的に安定した発展を実現させなければなりません。これが,この中日平和友好条約に対する最高の記念になるかと思います。政治的には,歴史を鑑とし,未来に向かってハイレベルの交流を維持してまいります。

 先ほど,40周年にゆかりのある方々との懇談会に出席したときに,日本側から,今回は中国総理による8年ぶりの訪日で,その時間はあまりにも長かったと言われました。そして,今回の訪問の滞在時間はもっと長い方がよいのではないかとも言われました。私の方からは,今回の訪問の時間は,私が総理になって以来,外遊の中でも比較的長いものだと答えました。また,これからもより多くの時間を割いて日本を訪問し,また,それほど長くは待たせないということを表明しています。そして,安倍総理も適切な時期に訪中することを調整しています。両国の指導者が定期的に交流することは,両国の関係発展のための良好な条件を整えることにつながると思っています。

 我々としては,日本側と,それぞれの発展戦略をつなぎ合わせ,実務協力も進化させていきます。中国の「一帯一路」イニシアチブが,日本側の成長戦略ともつながり,イノベーション分野や先端分野の製造業においても相互補完的な優位性を生かすことができます。さらに,金融分野においても協力ができ,双方の相互投資のために,より良い便益を図っていきたいと思います。

 また,民間の交流も強化し,世代友好を促進し,40周年を契機に様々な行事を開催していきます。もちろん,今後,東京でオリンピックが開催され,北京でもオリンピックが開催されますが,それをも契機に,教育,人文,スポーツなど,多岐にわたる交流を,観光も含めて実現できることと思います。それによって,両国国民間の更なる意思疎通と理解,感情の増進を目指して,中国と日本の関係発展の民意的基礎を強固にし,中日関係の発展を推進する様々な力を強くしていきたいと思っています。

 それと同時に,時代の責任を担っていかなければなりません。中国も日本も,世界の主要経済大国であり,北東アジアの重要な国であります。現在,世界経済が得難い回復の兆しを見せている中,また,保護主義の声が高まっている中で,我々には,多国間貿易体系を護り,自由貿易を護る,そして保護主義に反対する,それによって貿易の自由化や利便性を促進し,現在の世界経済の構図を護る責任が一層あるように思います。

 朝鮮半島情勢に緩和と前向きな変化が現れている現在,日本や関連諸国と共に努力して,北朝鮮の核問題の政治的解決及び非核化の実現を推進していきたいと思います。さらに,我々として,日本側の関心事項に理解を表明し,各国の対話が展開されることを歓迎し,最終的に,朝鮮半島の非核化が実現し,東アジアの平和と安全が守られることを期待しています。

 中日の間には幅広い共通利益があるといえます。重要な近隣である日中両国間の協力及び発展のプロセスにおいて,各種の食い違いや摩擦が生じることはまぬがれませんが,中日友好という大きな方向性を堅持し,中日平和友好条約の基本的精神を堅持しさえすれば,共に美しい未来を切り開くことができます。指導者も民間も,強い責任感を持って,将来を見据えて勇気と知恵を出すことができれば,中日関係は,平和・友好・協力的に発展し,長期的に継続できると確信しています。

 中日の平和・友好・協力の船ができるだけ遠くまで航行できることを希望するとともに,必ずやそうなることと信じています。

 中国には,「道あるところに心あり。」ということわざがあります。本日このレセプションに御出席の方々に私の話す中国語を完全に御理解いただくことはできないかもしれませんが,皆様は中日友好を推進するという信念をお持ちであると思います。そのような信念さえあれば,将来起こり得る,あるいは予期できない矛盾や困難を乗り越えることができると思います。なぜなら,中日関係の主旋律は平和と発展であり,これこそが共通のテーマであるとともに,国際社会からも期待されているところである。

 レセプションという場の慣例に基づき,私も気持ちを表すために乾杯を御提案させていただきたいと思います。見たところ,本日御出席の皆様方の多くは,杯を挙げるのではなく,携帯を掲げて写真を撮っておられます。ぜひ,写真を撮って,このレセプションの様子を世界に発信いただければと思います。そうすることによる貢献は,杯を挙げて乾杯することよりも大きいと思います。

 では,皆様,杯又は携帯を挙げてください。
 乾杯!共に友好のメッセージを伝えましょう!

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