中華人民共和国
日中共同記者発表における李克強総理発言
記者の友人の皆さん,御来場の皆さん,皆様にお会いできうれしく思う。まず,安倍総理や日本政府を始めとする日本側の,私及び中国側代表団の訪日のための丹念な準備と周到なアレンジに感謝申し上げる。
そして,メディアの皆様による今回の訪問のための御苦労にも感謝したい。ここだけではなく,東京の途中でも時々に皆様の姿が見られた。
安倍総理がおっしゃったように,30年以上前に私は訪日した。当時の安倍総理と多くの日本側の友人や青年の皆様と会い,今や我々の顔は変わったが,その記憶は変わりなく頭の中に残っている。その後も度々,日本を訪問してきたが,最後に訪日してから既に26年間が経ち,また今回は国務院総理として8年ぶりの訪日である。その時間は確かに長かった。
この一時期,日中関係は回り道を歩んできたことは否定できない。しかし,近来,日中関係には改善の兆しが現れ始め,そして持続的に安定し,前向きな体制になっている。私が今回訪日することは,日中関係を再び正常な軌道に戻し,そして日中関係の長期的・安定的な発展を維持し,また,大きな逆戻りが現れないようにするためであり,日本側と共に努力してまいりたい。
先ほどまで安倍総理と会談し,二国間関係及び地域・国際問題を含む共に関心を有する問題について幅広く率直に意見交換し,また,幅広い共通認識もできた。
日中関係の改善と発展は両国人民の利益であり,アジア,ひいては世界の平和と発展にもつながると双方が認識を一つにしている。また,中国側としては,今年の日中平和友好条約締結40周年に当たり,この条約の精神を噛みしめて,歴史を鑑とし,未来に向かうべきだと認識している。
双方は,日中の4つの基本文書の基本原則を遵守し,また,歴史や台湾などの問題に関する双方の共通認識を遵守して,実際の行動をもって,互いに協力のパートナーであり,互いに脅威とならないことを確認し,両国関係の政治的基礎を守る上で,両国関係の新たな発展を求めていくことを確認した。それによって,両国人民や国際社会に日中関係に対する,より安定的・前向きな動きを与えることについても確認できた。
両国指導者の相互訪問は,両国関係にとって非常に重要である。先ほど安倍総理からもお話があったように,私(李総理)が繰り返して申し上げると,中国側としては,安倍総理が適切な時期に中国を公式訪問することを招請したい。
双方は,政治的相互信頼を強化するだけでなく,実務協力を展開する必要もある。双方は,経済面で高度に相互補完的な関係にあり,イノベーション分野において対話・協力することができると確認した。それによって,技術の進歩や研究開発分野だけでなく,知的財産保護についても議論することができる。
金融協力の安定と発展は,双方向の投資の拡大や,サービス貿易の協力の増進にとって重要な役割を果たしている。中国側と日本側が協議した上で,両国の通貨スワップ協定の調印を決定し,今や関連の案文の協議を加速させようと関係機関に指示をしているところである。また,中国側から日本側に対し,2千億人民元のRQFII(人民元適格国外機関投資家)枠を付与することを表明し,それによって日本側の対中投資の更なる増進にもつながると考える。また,双方は,日本で人民元のクリアリング銀行の設立についても検討し,日中の経済貿易協力は,新たな段階に押し上げられようとしている。
そして中国側としては,日本側と第三国で協力を行う用意もある。そのためにも,双方がしかるべきメカニズムを設立することに合意した。その中には,ハイエンドの産業が含まれるだけでなく,中国と日本が相互補完的な経済分野において,また,産業チェーンの異なる立場から,第三国市場に対する力強い競争力も生まれると認識している。
そして,双方は,人的・文化交流の更なる拡大でも合意した。双方で,国民の友好感情の増進や,相互理解の増進につながることをより多くすることを約束した。我々としても,今年,平和友好条約締結40周年の際に,多様な記念行事を開催し,また,今後数年間に予定される東京五輪,北京冬季五輪というチャンスを活かして,日本側と文化,教育,スポーツ,地方,青少年交流や観光交流など,様々な分野において協力を行い,両国民の心の距離を縮めていきたいと考えている。
さらに,中国人民の日本人民に対する友好感情を表すべく,今回我々からは新たに2羽のトキの個体を提供することを表明する。このような両国人民にも愛される動物を活かして,また,日本側のトキの養育の改善にもつながることを楽しみにしている。
安倍総理がおっしゃったように,明日には共に北海道を訪問する。そこで一つの重要な行事というのが,日中知事省長フォーラムに出席することである。このような地方交流は両国の上下の意思疎通において重要な一環である。
また,日中は,世界の主要な経済大国であり,多国間貿易体系やや経済グローバル化の受益者として,共に国際貿易の自由化を守り,経済グローバル化の発展を推進することに合意した。また,その自由貿易を土台にし,日中の経済協力,そして他国との協力の発展もより一層増進させ,日中韓FTAの交渉やRCEP協定の交渉プロセスを推進し,地域経済一体化のプロセスを積極的に推進することで合意した。
最近,朝鮮半島情勢には前向きな変化が現れた。南北首脳会談の成功を歓迎し,また,米朝首脳会談にも期待しており,さらに,日朝の首脳会談を歓迎し,それによって日本側の関心の関連の問題の解決を歓迎したい。中国側としては,引き続き建設的な役割を果たし,朝鮮半島の非核化の推進や,この問題の政治的解決の実現を加速させていくよう,引き続き各国とともに努力していきたい。
私(李総理)が昨日,日本に到着しようとしている時,飛行機の降下中はまだ雨が降っていたが,本日,安倍総理から歓迎式を催していただいた時には,既に雨がやんでいた。中国の言い方で言うと,良い雨は時節を知って,春に当たって発生する,という。それもまた,既に両国関係の雨風が過ぎ,我々にはより良い未来が待っているということを意味しているかもしれない。日中関係がこれからも,平和,友好,協力の旅で再出航するよう,また,日中関係の健全的な,長期的・安定的な発展を祈念したい。