中華人民共和国
日中共同記者発表における安倍総理発言
李克強総理の来日を,日本国民を代表し心から歓迎する。李総理の最初の来日は20代の頃。中国青年代表団の副団長として訪日。当時,外務大臣を務めていた私の父が主催した食事会には,秘書官であった私も同席した。あの頃は,私も30歳の若々しい青年であった。
30年以上の時を経て,日中両国の首脳として,こうして並んで立つことは,当時は思いもよらなかった。お互い年齢を重ね,外見は少々変わったが,気持ちは当時と変わらぬ若々しさで,日中関係改善への強い意欲と共に,今ここに立っている。
昨年秋,フィリピンのマニラにおいて李克強総理と首脳会談を実施し,「新たなスタート」を切って以来,日中関係の改善に向けた勢いはどんどん増している。そうした中,今回の李総理の公式訪問を機に,先ほどの首脳会談において私たちは数多くの具体的な成果について合意した。
海や空での偶発的衝突を防ぐための連絡メカニズムを設置する。緊張を緩和し,相互の信頼を醸成することで,東シナ海を「平和・協力・友好の海」とする。今まさに両国の防衛当局の代表者が覚書に署名したが,10年越しの課題に結果を出すことができた。
社会保障協定は日中両国間の経済交流を加速するもの。3.4兆円規模の投資枠を日本向けに設ける金融協力でも合意した。日本のおいしいお米を中国の皆さんにもっと食べてもらう。コメの輸出拡大に向けた措置も実現。映画共同製作協定によって大きなビジネスチャンスが生まれるとともに,両国民の文化面での相互理解が一層深まることが期待される。
首脳同士が直接,率直に語り合うことで,これだけの具体的な成果を挙げることができる。北京と東京は飛行機に乗ればわずか3時間余りの距離。李総理の今次訪問は中国国務院総理として8年ぶりの公式訪問となったが,日中平和友好条約締結40周年の本年,首脳同士が容易に往来できる関係を構築したいと考える。
今回,私の訪中について李総理からお招きをいただいた。感謝申し上げるとともに,今後,適切な時期に訪中できることを楽しみにしている。
首脳レベルの頻繁な往来を通じて,この日中関係改善の流れを次なる段階へと押し上げていきたいと考えている。
競争から協調へ。日中関係を大きく発展させていくことによって,地域,更には世界の様々な課題に,共に手を携えて大きな責任を果たしていくことができる。
毎年1.7兆ドルとも言われるアジアの旺盛なインフラ需要に,日本と中国が力を合わせて応えていくことができる。
今回,日中ハイレベル経済対話の下,省庁横断的な官民委員会を新たに設けるとともに,第三国において日中民間企業によるインフラ協力を具体的に進めていくため,官民が一堂に集う新たなフォーラムを,私と李克強総理のリーダーシップの下,設立することで合意した。
来るべき私の訪中の際に第一回のフォーラムを開催し,具体的な日中協力プロジェクトをどんどん展開することで,アジア各国の期待に応えていく考えである。
今週,金正恩委員長が再び訪中する等,北朝鮮情勢が大きく動く中,北朝鮮問題について時間をかけて話し合った。北朝鮮には豊富な資源があり,勤勉な労働力がある。北朝鮮が正しい道を歩むのであれば,経済発展をすることもできる。そのために累次の安保理決議をしっかりと履行し,日中が協調して行動していくことで,李総理と一致した。
拉致,核・ミサイルの諸懸案の包括的な解決に向けて行動していく。北東アジアの平和と安定に,今後とも日中両国がしっかりと責任を果たしていく,その決意である。
昨年は延べ700万人を超える中国人観光客の方々が日本にお越しになった。李総理が長年尽力されてきた青少年交流も広がりを見せている。
こうした両国民の交流を今回の李総理の訪日を機に,あらゆる分野で一層拡大していきたい。明日は李総理と共に北海道を訪れる予定であるが,我が国が誇る美しい北国の春を,地元の人々とのふれ合いも含め,李総理にどうか満喫していただきたいと考えている。