中華人民共和国
日中外相会談
平成27年8月7日


ASEAN関連外相会議への出席のためにマレーシア・クアラルンプールを訪問中の岸田外務大臣は,現地時間8月6日(木曜日)14時30分頃から約1時間,王毅(おうき)中国外交部長との間で日中外相会談を行ったところ,概要は以下のとおり。
1 日中関係総論
- 岸田大臣より,1年前のネーピードーでの会談以来,王部長との意見交換は5回目となる,この間,2度の首脳会談を経て,日中関係は改善の方向へと転換した,王部長と協力して日中関係の更なる改善を進めていきたい旨発言。
- さらに,日中関係は改善の方向とは言え,安全保障分野を始め,互いへの不信感が残っている,中国国内には,日本国内の動きに懐疑的な見方があるようだが,日中間の4つの基本文書を重視し,「戦略的互恵関係」に基づき両国関係を発展させていきたいとの日本の対中基本方針は何ら変わっていない,重要なことは,互いに一方的な行為を慎み,対話を積み重ねる中で,相互信頼を回復していくことであり,我々も努力するが,中国側にも同様に努力してほしい,特に,両国政府ができる限り前向きな発信を心がけることが重要である旨発言。
- これに対し,王部長より,岸田大臣の積極的な発言を評価する旨応答。
- 以下のやりとりの後,両外相は,東シナ海の資源開発問題を含む日中間の課題につき様々なレベルで協議を続けていくことが必要であるとの認識で一致した。
2 東シナ海資源開発
- 岸田大臣より,東シナ海資源開発の問題については「2008年6月の合意」がある,まずは中国側が一方的な開発行為を控え,「2008年6月の合意」の実施のための交渉再開に向け,速やかに対話のテーブルにつくよう求める,条件を付けずに,合意の実施のための交渉再開に向けた対話を継続すべきであると発言。
- これに対し,王部長よりは,「2008年6月の合意」の解釈に関する中国側の独自の立場を述べた。
- これに対し,岸田大臣より,改めて強く日本側の立場を説明の上,「2008年6月の合意」について双方の理解には相違があるが,だからこそ双方が話し合うことが重要であり,こうした対話を継続していきたいと発言。
3 南シナ海情勢
- 王部長より,日本が南シナ海情勢等について中国を殊更に批判するのは止めるべき旨発言があったため,岸田大臣より,日本が中国を殊更に批判しているというのは全くの誤解であり,自分はかねがね中国の平和的発展はチャンスであると述べてきた,他方,南シナ海情勢については,一方的な現状変更の試みや国際法に基づかない主張・行為は決して国際社会から認められない,これは中国のみについて言っているものではなく,日本が重視する一般的な原則である旨述べた。
- これに対し,王部長より,改めて南シナ海情勢に関する中国の従来からの立場に基づく発言があった。
4 歴史認識
- 王部長より,日本には歴史に対して責任ある態度で真剣に向き合ってほしいとして,戦後70年談話を含む歴史認識の問題に関する中国側の立場を述べた。
- これに対し,岸田大臣からは,総理談話の内容は最終的には安倍総理ご自身が判断するが,総理はこれまでにも先の大戦への反省や戦後に日本の平和国家としての歩みは今後も不変であること等を何度も表明していると述べた上で,安倍内閣の歴史認識についての基本的立場を改めて説明した。
5 我が国の平和安全法制
- 王部長より,日本の国家としての発展の方向性との関係で,平和安全法制に関する議論に注目している旨述べた。
- これに対し,岸田大臣より,平和安全法制は,平和国家や専守防衛といった日本の基本的な安全保障政策を変えるものではない,いずれにせよ引き続き透明性をもって各国に丁寧に説明していく旨応答。