中華人民共和国
日中外相会談
平成28年7月25日


ASEAN関連外相会議への出席のためにラオス・ビエンチャンを訪問中の岸田外務大臣は、7月25日14時40分頃(日本時間16時40分頃)から1時間強、王毅(おう・き)中国外交部長との間で日中外相会談を行ったところ、概要は以下のとおり(日本側:金杉アジア大洋州局長他、中国側:劉振民・外交部副部長、肖千・同アジア司長他同席)。
1.冒頭発言
- 王毅部長より、4月末の岸田大臣の訪中に言及しつつ、日中関係の改善の勢いを大事にしていきたい旨述べたのに対し、岸田大臣より、以下のとおり述べた。
- (1)北京での前回会談以降、モンゴルでの首脳会談、先週の杉山次官の訪中等、ハイレベルの対話や往来が続いていることを歓迎。更なる関係改善に向けて共に努力したい。
- (2)本日の会談では、自分が訪中に当たって示した「新しい時代にふさわしい日中関係」の考え方に基づき、(1)経済分野等の協力を拡大して両国関係の肯定的な側面を増やす、(2)懸案につき率直な意見交換を行って適切に対処する、(3)国民間の相互理解と信頼を育む、との観点から、建設的な意見交換を行いたい。
- (3)特に、海洋の問題に関し、最近の動きを踏まえ、我々外相間でも率直な意見交換を行うべき。
- (4)9月のG20杭州サミットには、安倍総理も出席予定。日本としても、これを成功させたいと考えており、積極的に協力していく考え。
2.日中関係全般/共通課題への対応
- (1)続いて岸田大臣より、日中関係や共通課題への対応につき、以下のとおり述べた。
- 今後の一連の外交日程を活用し、G20サミットでの首脳会談、日中韓サミットの早期実現に向け、具体的成果を準備していきたい。
- 例えば、自分の訪中の際に示した「5つの協力分野」(注)での具体的な取組につき、双方でスピード感を持って検討していきたい。日中ハイレベル経済対話も早期に開催したい。
- 各種交流の中にも成果となり得るものがある。国民感情の改善にも資する青少年交流拡充、映画交流等につき、議論を進めたい。
- テロ対策について、具体的な連携・協力を進めたい。
- 挑発行動を繰り返す北朝鮮に対し、自制を強く求めるとともに、安保理での対応等を通じて北朝鮮の核・ミサイル開発を容認しないとの姿勢を示すべく、中国と連携したい。
- (注)「5つの協力分野」:(1)マクロ経済・財務・金融,(2)省エネ・環境,(3)少子高齢化,(4)観光,(5)防災
- (2)これに対し、王部長より、以下のような発言があった。
- G20サミットの成功に向けて協力するとの日本側の発言を多とする。また、同サミットの際の安倍総理の訪中を歓迎する。
- 日中韓の外相会議、首脳会議については、引き続き日程調整していきたい。
- 岸田大臣が訪中の際に提案された環境、高齢化対策等の「5つの協力分野」は重要であり、日中双方に裨益するので、具体化を進めていきたい。また、青少年交流や映画交流についても進めていくことができる。
- テロは国際社会が直面する共通の課題であり、日中間の協力を強化したい。
- 北朝鮮への対応については、中国として、安保理決議第2270号を厳格に実施していく。朝鮮半島の非核化に向け、六者会合の議長として、日本を含む各国と努力したい。
3.東シナ海
- (1)岸田大臣より、東シナ海、特に尖閣諸島周辺の海空域の状況について日本が有している強い懸念と危機感を深刻に受け止めるべき、東シナ海資源開発の問題について「2008年合意」に基づく協議を早期に開催すべき、防衛当局間の海空連絡メカニズムを早期に運用開始したい旨述べた。
- (2)これに対し、王部長からは、尖閣諸島に関する独自の主張に基づく発言のほか、東シナ海資源開発の問題については引き続き意見交換したい、海空連絡メカニズムの運用開始を実現したい旨の発言があった。
4.南シナ海
- (1)岸田大臣より、南シナ海をめぐる問題は地域の平和と安定に直結し、日本を含む国際社会共通の関心事項である、先日示された仲裁裁判所の判断は、国連海洋法条約に明記されているとおり最終的なものであり、紛争当事国を法的に拘束する等、比中仲裁判断を含む南シナ海問題に関する日本の立場を率直に伝えた上、全ての当事国は、この地域の緊張をこれ以上高めるような行動を控えるべきと述べた。
- (2)これに対し、王部長からは、従来からの中国の立場に基づく発言があった。
5.結語
- (1)最後に岸田大臣より、率直な対話ができて良かった、前向きな話だけでなく、難しい課題についても議論ができてこそ、真の友だと考える、日中が地域及び国際社会の平和と繁栄のために協力できる分野は数多くある、「戦略的互恵関係」の原点に立ち、様々な前向きな協力・交流に力を注いでいきたい、今後とも対話を積み重ね、更なる関係改善に弾みをつけたい旨述べた。
- (2)これに対し、王部長より、岸田大臣の発言を前向きに受け止める旨述べた。