世界の医療事情

南スーダン

令和6年10月1日

1 国名・都市名(国際電話番号)

 南スーダン共和国(国際電話番号211)

2 公館の住所・電話番号

在南スーダン日本国大使館 (毎週金曜午後、土曜日、日曜日休館)
住所:Embassy of Japan in South Sudan, Plot No.514, Block 3-K, Tong Ping, Juba, Republic of South Sudan
電話:事務所代表:+211-922-671-514、+211-922-671-511
  緊急時:+211-922-671-504、+211-922-671-506
インサルマット:(870)7725-43222
ホームページ:在南スーダン日本国大使館別ウィンドウで開く

(注)上記以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので、ご覧ください。

4 衛生・医療事情一般

(1)概況

 2018年に結ばれた対立グループ間の衝突解決合意以降、大きな衝突なく2020年2月に暫定政権が発足しました。一方、地方部においては家畜の奪い合いのような小競り合いが部族間対立に発展し、大規模な衝突が頻繁に発生して、市民生活に影響を及ぼしています。2024年12月に予定されていた選挙は2年間延長されました。

 南スーダン保健衛生当局はWHOや国際NGOとの協力をすすめ、公衆衛生上の問題解決にあたっています。ジュバの国立医学教育病院(Teaching Hospital)、小児病院(Al-Sabah Children’s Hospital)を中心として、地方都市においても病院、保健施設が整備されつつありますが、外国からの支援に資金、人材の多くを頼っています。

(2)気候

 南スーダンはアフリカ東部の内陸に位置し、南北をナイル川が貫いています。国土の全体が雨期と乾期に分けられるサバナ気候(Aw)に区分されます。近年は気候変動の影響を受け雨量が増加し、洪水被害が頻繁に発生しています。毎年広大な地域が被災し避難民が発生、感染症の流行や野生動物(毒蛇等)被害など公衆衛生上の危機をもたらしています。2024年も同様に洪水の被害があり、今後の感染症の発生が懸念されています。

(3)生活・治安・安全

 ジュバ市内の施設で供給される水の多くは井戸水を利用しています。殺菌のため塩素剤は使用されていますが、金属や有機化合物に汚染されている可能性があるため飲用は避け、ペットボトル水を利用してください。

 ジュバでは2020年に新しい火力発電所の稼働と、市内送電網での電力供給が始まりましたが医療機関等も含め十分な電力が供給されていません。上下水道もほとんど整備されていません。国内の道路整備は遅れており、主要幹線道路においても各地の武装勢力や犯罪グループによる襲撃事件や誘拐事件が発生しています。そのため、都市間の移動は主に航空機を利用する者も多くいます。

 首都では、これまでも家屋侵入や窃盗のような犯罪は日常的に発生していますが、昨今の経済状況の悪化を受け、若者グループや犯罪組織による強盗などの事案も発生しています。2024年10月現在、日本国外務省は、ジュバに渡航中止勧告、首都ジュバを除く地域に退避を勧告しています。

(4)公衆衛生・保健・医療水準

 ジュバには英国やアメリカでトレーニングを積んだ医師がおり、外国人が主に利用するクリニックがあります。地方ではNGOが運営するクリニックがありますが、治安状況の悪化を受けて医療活動を中止するところも出てきています。一般的な内科疾患や軽度の外傷であればそれらのクリニックで対応できますが、重篤な内科疾患、外傷であれば国外に移送をする必要があります。外国人向けのクリニックは設立当初より海外搬送に備えたサービスを提供していますが、移送には時間がかかることから医療搬送は最終手段と考え、何らかの異常が発生したときには商用機で早めに国外へ移動する必要があります。医療搬送の場合の移送費用は非常に高額であるため、充分な額の保険に加入して頂く必要があります。

 医療機関での支払いはクレジットカードの利用が可能な施設があります。現金であればアメリカドルが要求されますので、受診時にまとまった金額を持参する必要があります。また海外医療保険に加入している場合、治療に当たってはその加入証の提示が求められます。クリニックでは英語が通用します。

 国内では公的な救急搬送サービスはないため、直接クリニックに出向くか、クリニックに連絡して救急車両を送ってもらうことになります。

 輸血用血液センターがあり、緊急事態において輸血は可能な場合もありますが、当該血液の管理状況が適切に行われていない可能性もあるため、真にやむを得ないケースでの利用と考えてください。

(5)医薬品

 ジュバ市内には薬局が多数あります。降圧薬やインスリン製剤といった基本的な医薬品のほか、衛生用品、消耗品の取り扱いもあります。薬局では医薬品の保存方法が適切ではないことが多く、基本的にはクリニック付属の薬局もしくは、輸入代理店に依頼して医薬品を購入します。常用薬については当地で同規格のものを購入できない可能性が高く、十分な量を本邦から持参する必要があります。医薬品を日本から当国に配送することは可能です。マスクやアルコール消毒薬は現地で購入できます。

5 かかり易い病気・怪我

(1)蚊が媒介する病気

 マラリア:首都ジュバを含め全土でマラリア感染のリスクがあります。熱帯熱マラリアに罹患する可能性が高く、当国では死因の第一位となっています。感染を疑ったら直ちに検査をし、治療を始める必要があります。マラリア検査キット、マラリア治療薬ともに安価に購入できますが、クリニック受診が最善です。防蚊対策は必須で、蚊帳や虫除けを使用し蚊に刺されないよう注意してください。防虫剤、駆虫剤は市内で購入できます。長期滞在する場合はマラリア予防薬の使用をおすすめします。当地での治療には経口、注射薬ともにアルテミシニン系の薬物が使用されています。

 黄熱:2023年12月にはWestern Equatria州での発生が報告され死亡例も出ています。また、当国入国時イエローカードの携帯が必要でもあるので、事前に必ず黄熱ワクチンを接種してから渡航してください。

(2)E型肝炎

 保健省は2023年3月にWestern Bahr El Ghazal州で、9月にJonglei州でE型肝炎の流行を宣言しました。国内の他の地域でもE型肝炎の患者、死者が報告されています。E型肝炎はウイルスによる感染で、汚染された水や氷、野菜や果物、肉類を生で食べる事によって感染しますので、ご注意下さい。

(3)腸管感染症、急性胃腸炎

 当国で胃腸炎、下痢をはじめとする消化管疾患はありふれています。水様性の下痢症だけでなく、出血を伴う下痢症も多く報告されています。原因はわからないことが多く、たいていは対処療法となります。一方腸チフス、A型肝炎といったワクチンで予防可能な疾患もありますので渡航前に予防接種を検討してください。

 2022年5月以来、Unity州Bentiuの避難民キャンプでコレラの流行が続いています。また2023年4月の隣国スーダン内戦により多数の避難民が南スーダン国内に流入しており、その避難民キャンプでもたびたびコレラが流行しています。

(4)髄膜炎

 当国は髄膜炎の高リスク国で、2022年初頭よりNorthern Bahr El Ghazal州Aveilで流行しています。276人が罹患し、23人が死亡しています。

(5)寄生虫疾患(ギニアワーム、住血吸虫、オンコセルカ、トラコーマなど)

 国内ではギニアワームの発生が多く報告されています。寄生虫疾患は経皮、経口で感染するので、川や水たまりなどには侵入しないよう注意してください。

 またトラコーマも流行しており、特にJonglei州やUnity州では50%以上の罹患率があり、首都JubaのあるCentaral Equatoria州でも30%以上の高罹患率です。

(6)麻疹

 2022年7月よりJubaにて断続的に流行しています。2024年4月より沈静化していますが、当国では小児に対する予防接種が不十分でいつ流行が再発してもおかしくない状況です。日本では、通常2回の予防接種がされていますが、年代によっては未接種の方がいます。該当する場合は滞在前に追加接種をおすすめします。

(7)その他感染症

 新生児に対するB型肝炎ワクチンの接種が十分に行われておらず、感染が広くみられています。渡航前にB型肝炎ワクチンの接種を検討してください。HIV、結核の新規感染者が増加しています。WHOの発表では2022年の南スーダン全体での結核患者は約25,000人です。

(8)狂犬病、動物咬傷、蛇咬症

 2024年1月には北Bahr El Ghazal州Aweil北郡で狂犬病の患者、死者が発生しています。同州では2023年中に700名の患者が発生しています。当国では、他の地域でも野生の犬、猫が多く、潜在的なリスクはかなり高いと考えます。クリニックでは狂犬病ワクチン、およびグロブリン製剤の扱いがあります。ほ乳類による動物咬傷の際は遅くとも翌日には受診し、狂犬病ワクチンの暴露後投与の相談をしてください。地方では特に雨期にはヘビ、サソリ咬傷による死亡が多く報告されています。

(9)外傷(交通事故、転落、爆発、火傷)

 当国で期待できるのは外傷に対する初期対応までです。根本的な検査、治療のためには国外に移動する必要があります。軽症であっても、早期の治療が受けられない場合も多く、状況が悪化する可能性もあるのでできるだけ外傷を受けないことを心がけてください。

6 健康上心がけること

 伝染性疾患は、水や食物を通した経口感染や虫を媒介にした感染が多く、日常的な感染防御対策が重要です。当地において未加熱食材や生水の摂取はお勧めできません。飲料水、調理用水には開封されていない市販のミネラルウオーターか、浄水器を設置した水道水を煮沸したものを使用して下さい。こまめな手洗い、手指消毒液の利用、防虫剤の使用、屋外での動植物、水の接触を避けることが大切です。

 疾病に対する免疫力を向上するために、十分な休養、睡眠を心がけてください。可能な限り屋内や住居敷地内で運動をすることもおすすめします。

 年間を通して気温が高く、やむを得ず外出する必要がある場合は熱中症対策、紫外線対策が必要です。

7 予防接種(ワクチン接種機関含む)

  • 赴任者に必要な予防接種(成人、小児ともに)
     黄熱
  • 赴任者及び小児を含めた家族に推奨する予防接種
     A型肝炎、B型肝炎、髄膜炎菌、腸チフス、破傷風、狂犬病
  • 現地の小児定期予防接種
     定期予防接種の仕組みはありません。
  • 小児が現地校に入学する際に必要な予防接種
     なし

8 病気になった場合(医療機関等)

首都ジュバ

(1)MRDC international
WEB:MRDC international(英語)別ウィンドウで開く
住所:公開されていない(Nimra Talata地区)
電話:+211(0)917088333
当地外交団やJICA、国際企業を会員に持つクリニックで、日本人にとって唯一安心して最低限の診療を受けられる医療機関。会員制(個人の会員申請は不可)であり、受診できるのは会員企業、団体の所属者のみ。一般的な内科、外科、救急対応。国内搬送、国外移送サービスあり。X線診断装置、エコー、CT診断装置、手術室をもつ。入院施設、感染症に対する隔離施設あり。南スーダンに長期間、複数人を滞在させる予定がある団体は、会員になることを検討してください。
(2)AMI South Sudan Clinic(AMISS)
住所:Thongping, Plot 386, Block 3K South, Juba
電話:+211(0)916097531
E-mail:reception.ss@ami.health
Aspen medicalから改名されました。内科、外科、救急に対応とされているが、手術室やCTはない。国内搬送(救急車)、グループ企業による国外移送手配ありとされているが、実例は僅少で、国外での治療に間に合うように移送されるかは不明。入院施設あり。
(3)Juba Medical Complex
住所:Unity Avenue. Near Teaching Hospital
電話:Dr.Ronald Woroの個人番号、+211(0)925-523-371
内科、外科、産科、小児科。非常勤で皮膚科、眼科も対応。手術、入院に対応とあるも、CTとMRIはあるが、ICU、NICU、血管造影室など建設途中であり、様々な治療ができるようになるまでにはかなりの時間を要する模様。
(4)Care Plus International Medical Centre
住所:Airport Road, Tong piny, near Marie Stopes International Juba, South Sudan
電話:+211(0)925371599
E-mail careplusinternational@gmail.com
内科、歯科。
概要:内科。予約不要。平日9時から17時

10 一口メモ

 医療機関では英語もしくはアラビア語が通じます。日本語医療通訳は存在しません。英語に関しては、「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照願います。

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