世界の医療事情

南スーダン

平成28年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 南スーダン共和国(国際電話国番号211)

2 公館の住所・電話番号

在南スーダン日本国大使館 (毎週金曜午後,土日休館)
住所:Embassy of Japan in South Sudan, Plot No.514, Block 3-K, Tong Ping, Juba, Republic of South Sudan
電話:(870)7725-43222(インマルサット)
ホームページ:http://www.ss.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

(注)金土日以外の休館日は暦年ごとにホームページにて案内していますので,ご覧ください。

4 衛生・医療事情一般

(1)地誌

 南スーダンはスーダンから2011年7月9日に独立した新しい国です。長く内戦状態が続いていたため,インフラ整備が非常に遅れています。

 加えて,2013年12月15日に発生した首都ジュバ市内の騒擾を発端とする現地情勢の悪化に伴い,南スーダン全土において169万人の国内避難民と71万人の国外避難民(WHO発表)が避難生活を強いられていました。さらに,2016年7月8日,首都ジュバにおいて,大統領警護隊と第一副大統領警護隊による衝突が発生しました。その結果,国外避難民の数が100万人(UNHCR発表)を超えるという深刻な人道危機の状態にあります。

 2016年7月11日付で,日本国外務省は首都ジュバ市を含む南スーダン全土に退避勧告を発出しています。渡航を計画される際は,最新情報をご確認ください。
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_301.html#ad-image-0別ウィンドウで開く

(2)気候

 サバナ気候(サバンナ気候)のため,年中高温で乾期と雨期に分けられます。一般に乾期(11月から3月)は最高気温が40度まで上昇し,極度に乾燥します。雨期(4月から10月)は最高気温がやや下がり,時々スコールのような大雨が降ります。雨期には,場所によって,未舗装の道路はぬかるみになり,陸路での通行が困難になります。

(3)医療水準・病院受診時のアドバイス

 南スーダン人の平均寿命は男性55歳・女性57歳,妊産婦死亡率730人(10万出生あたり)です。(2013年のWHOデータ)(日本は妊産婦死亡率6人(10万出生あたり))

 長年の内戦の影響で医療制度の整備が遅れているため,日本人が十分な医療を受けることができる医療施設は全土において存在しません。軽症であれば後述の私立病院・診療所を受診することも可能ですが(8 病気になった場合(医療機関)参照),病状が中等度もしくは重症の場合には,必ず国外への緊急移送が必要となります。移送費は大変高額になりますので,当地に入国される前に必ず海外旅行傷害保険に加入されることをお勧めします。また加入に際し,南スーダン国内での疾病・事故を担保しているかどうかの確認を行ってください。

 当国の医療機関では医療費の支払いにクレジットカードを使うことはできません。全て現金前払い(現地通貨払い)となります。日頃から一定の金額の現金を手元に置いておくことが必要です。

(4)水質

 当国は上・下水道ともに全く整備されていません。都市給水はナイル川の河川水を汲み上げて単純濾過,もしくはそのままの河川水を給水車が巡回して配布しています。そのため細菌・ウイルス・寄生虫に汚染されている可能性が高く,飲用には全く適しません。ホテル等の宿泊施設には独自の井戸からの簡易給水システムを有しているところもありますが,こちらも同様の理由で飲用には適しません。飲用水は必ず市販のミネラルウォーターを使用してください。また,レストラン等で飲用水をオーダーされる時は,ボトルが未開封であることを確認してください。氷は汚染された水で作られていることもあるため,使用は避けた方が無難です。

(5)食品衛生

 基本的なことですが,食べる前に手を洗い,食事中にあちこち触らないようにすることが重要です。

 市場やスーパーマーケットなどで購入した果物や野菜は,細菌・寄生虫・ウイルスなどで汚染されていたり,農薬が残っている可能性があります。きれいな水で良く洗ってから調理してください。果物は自分で皮をむいて食べるようにしたほうが安心です(他人が皮をむいて皿に盛った果物は安心できません)。

 生や加熱不十分の肉・卵類は感染性胃腸炎やA型肝炎,各種寄生虫症の原因となります。これらを予防するために,中心部まで火が良く通っていることを確認してください。

(6)医薬品

 現在,南スーダン国内では全ての医薬品が品薄・入手困難な上,有効期限が過ぎたものや偽薬が混ざっている可能性があります。常用薬や基本的な薬(風邪薬等)は日本から持参されることをお勧めします。

5 かかり易い病気・怪我

(1)マラリア

 全土においてマラリア感染の危険があります。マラリアはマラリア原虫を保有するハマダラカ(蚊)に吸血されることにより,マラリア原虫が体内に入って発症する原虫感染症です。通常,吸血後1~2週間の潜伏期間を経て症状があらわれます。マラリアには熱帯熱マラリア・三日熱マラリア・四日熱マラリア・卵形マラリアの4種類がありますが,当地で蔓延しているのは熱帯熱マラリア(悪性マラリア)です。熱帯熱マラリアは発症早期に治療を開始するかが生死の分かれ目となります。発熱が始まってから5日目までに治療が開始されないと50%の確率で死亡するという報告もあります。マラリアによる死亡例のほとんどは迅速かつ正確な診断の欠如によりますので,発熱時にはマラリア感染の可能性を考えて,速やかに最寄りの医療機関を受診してください。

 症状は高熱・悪寒・頭痛・筋肉痛・全身倦怠感等です。治療が遅れると脳性マラリアを発症して昏睡状態に陥ります。

 感染予防には蚊(ハマダラカ)対策が必須です。ハマダラカは日没から夜明けを中心に活動しますので,夜間の蚊対策が特に重要です(後述「6.健康上心掛けること」参照)。マラリア予防薬については,当地では基本的に予防薬内服をお勧めします。当地での滞在が長期間に及ぶ場合には,当地へ入国される前に最寄りの医療機関(病院の渡航外来やトラベルクリニックなど)に御相談の上,長期連用に関する薬剤安全性を考慮に入れながら服用の是非を検討してください。南スーダン国内では全ての医薬品が品薄・入手困難です。よって予防薬も日本から持参することをお勧めします。

(2)経口感染症(急性胃腸炎・下痢症)

 コレラ,腸チフス,アメーバ赤痢,A型肝炎が発生しています。特にコレラは毎年雨期に流行しています。いずれの病気も生水,氷,生野菜,加熱調理されていない食品など,原因菌で汚染された食品を経口摂取することにより感染します。手指の洗浄や身体の基本的衛生,食品衛生を心がけてください。

(3)髄膜炎菌性髄膜炎

 髄膜炎菌性髄膜炎は髄膜炎菌(Neisseria Meningitidis)による感染症です。当地では髄膜炎菌性髄膜炎の流行が4~5年サイクルでみられます。血清型(菌の種類)は13種類ありますが,流行を起こすものとしてA, C, Y, W135の4種類が知られています。感染経路は飛沫感染により気道を介して感染するため,ヒトからヒトへ伝染します。

 症状は,3~7日の潜伏期間を経て,風邪様症状から始まり,その後急激に悪寒を伴う高熱,意識混濁,頭痛,嘔吐が発症します。

 治療については抗生物質の投与を行い,早期治療が大切です。治療を開始するまでに時間がかかると神経系に後遺症を残すことがあるため,疑わしい症状を自覚したら,すぐに最寄りの医療機関を受診してください。

 予防法としてはワクチンの接種と流行地で人混みを避けることです。髄膜炎菌ワクチンには菌の種類によって,いくつかの種類があります。流行に対しては,流行している血清型をカバーしているワクチンが必要になりますので,可能な限り,広範囲をカバーしている4価ワクチンACYW135を接種されることをお勧めします。Hibワクチンはインフルエンザ桿菌b型による髄膜炎に対するワクチンですので,混同しないように気をつけてください。

(4)住血吸虫症

 川や池などの淡水に触れた際(水泳・水遊び等)に幼虫が皮膚から直接侵入して感染します。尿道・膀胱周囲などに寄生して血尿や腎不全,寄生状態が長期間続くと膀胱癌を発症する原因にもなります。治療法としては抗寄生虫薬の内服で駆虫が可能です。予防のポイントとしてナイル川水系で泳がない,水に素足を曝したりしないことが重要です。

(5)ギニアワーム

 淡水に住むケンミジンコを含んだ水を経口摂取することにより感染します。感染すると皮下や関節に細いミミズのような白い虫が寄生します。寄生された皮膚局所には水疱や潰瘍の形成が認められ,重症の場合には壊疽を起こすことがあります。虫が関節内に入り込むと関節炎等を引き起こします。治療は抗寄生虫薬の内服です。生水の飲用や貯水池での水浴びをしなければ感染の危険性はなくなります。2015年,南スーダンにおける患者発生数は5例と少ないです。

(6)交通事故

 全土において道路事情は悪く,ほとんどが未舗装です。さらに交通標識や信号もわずかしか存在しませんので,路上ではしばしば交通事故を見かけます。南スーダン国内の医療機関では重症の外傷(特に頭部)には対処できませんので,くれぐれも交通事故を起こさないよう,巻き込まれないように気をつけてください。

6 健康上心がける事

(1)感染経路を考えた予防対策

 十分な睡眠とバランスの良い食事を摂取すること,適度な運動をすること,煙草やアルコールを控えることはどこで生活するにせよ,大切なことですが,これに加えて熱帯特有の感染症・風土病の予防,各種ワクチンの接種,性行為感染症の予防,精神的ストレスをうまくコントロールすること,交通事故から身を守る対策などが必要と考えます。

 感染性疾患を予防する上で重要なことは,感染経路を考えた予防対策です。主な疾患の感染経路は以下の5経路で,それぞれの感染経路に対して自己防衛することが重要です。

主な疾患の感染経路
感染経路 主な感染症
吸血虫を媒介して感染(蚊など) マラリア,黄熱,デング熱,フィラリア症
経口感染(飲食物など) 腸管感染症(大腸菌,細菌性赤痢,アメーバ赤痢,コレラ,腸チフス),A型肝炎
空気感染(呼吸による感染) 髄膜炎菌性髄膜炎,結核
経皮感染(皮膚からの直接感染) 住血吸虫症(淡水),レプトスピラ症(淡水),破傷風,砂ノミ症(砂地),蝿幼虫症,狂犬病
性行為感染症 HIV/AIDS, 梅毒,淋病,B型肝炎,毛ジラミ

 すなわち,吸血虫に対する対策,食事・水に対する食品衛生対策,手洗いなどによる身体衛生対策,河川や湖などの淡水に素足で入らない,不特定多数との性行為を避けるなどの行動対策をとることにより感染症を予防することができます。また,ワクチンで予防できる疾患に関しては,できる限り接種しておくことをお勧めします。ただし,ワクチンは一度接種すれば永続的に効果が持続するわけではありませんので,有効期間を考慮して必要に応じて追加接種をすることが大切です。

(2)具体的な対策

(ア)蚊対策

 蚊に刺されないことが,蚊を媒介する感染症の予防になります。マラリアを媒介するハマダラカ(蚊)は主に日没から夜明けにかけて活動しますので,夜間の外出を避ける,長袖・長ズボンを着る,蚊帳,昆虫忌避剤,蚊取り線香を使用する,家屋の窓に網戸を張るなどで予防をすることができます。水たまり等のよどんだ水は蚊の発生場所となるため,できる限り排水することが大切です。その他,デング熱やフィラリア症などの感染症も蚊を媒介して感染します。

(イ)食事・水に対する対策

 前述4 衛生・医療事情一般(4)水質,(5)食品衛生の項を参照してください。

(ウ)熱中症,発熱,下痢時の対策(水分補給)

 南スーダンはサバナ気候(サバンナ気候)ですので,熱中症対策が一年中必要です。熱中症は高温多湿の環境下での作業時に起きます。日中,外出する際は帽子やサングラスを着用し,こまめに水分補給(+塩分補給)することをお勧めします。熱中症は必ずしも日なたでの活動中にのみ発症するわけではありません。体内の余分な熱を放散できないために発症するので,日陰で活動していても十分発症する可能性があります。

 症状としては高体温,意識の混濁,全身倦怠感,筋肉のけいれんが起こります。治療の遅れは生命にかかわります。

 熱中症・脱水予防は,身体から失われる水分と塩分を補うことですので,こまめに水分と塩分を摂取する習慣をつけましょう。汗をたくさんかいてから飲水するのでなく,汗をかく前に補給しておくことが大切です。

 下痢の場合は,排便によって体内から失われる水分と無機塩類(ミネラル)の量が,発汗で失われるものよりはるかに多いので,補充しなければならない水分やミネラルの量も多くなります。この目的で使用されるのが経口補液剤(Oral Rehydration Solution; 以下ORS)です。ORSは薬局で入手でき,粉末であれば水に溶解して飲みます。

(エ)毒蛇

 南スーダンの藪には毒蛇が生息しています。藪の中に立ち入らないようにしてください。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

 成人についてのみ記載します。小児を連れての渡航はお控えください。

(1)赴任者に必要な予防接種

 黄熱,A型肝炎,B型肝炎,狂犬病,破傷風,髄膜炎菌,腸チフス,(ポリオ)

(2)ワクチン接種が可能な医療機関

 本稿8 病気になった場合(医療機関)の項目を参照ください。医療機関によって取り扱っているワクチンの種類が異なります。ワクチン接種を希望される場合は,あらかじめ医療機関に電話で確認した方がよいでしょう。

注意:2016年10月現在,入国時にイエローカード(黄熱ワクチン接種証明書)の提示は求められていませんが,近いうちに必要となることが保健省より発表されています。また当国から他国を訪問する際にイエローカードの提示を求められることがありますので,必ず携行してください。

8 病気になった場合(医療機関等)

 長年の内戦の影響で医療制度の整備が遅れているため,日本人が十分な医療を受けることができる医療施設は全土において存在しません。よって当地滞在中はくれぐれも平時以上にご自身の健康管理に気を配ってください。

 その上で病気になった場合には,軽症であれば以下の私立病院・診療所を受診することが可能です。ただし,病状が中等度もしくは重症の場合には当地の医療機関では対応できませんので,国外への緊急移送が必要になります。移送費は大変高額になりますので,当地に入国する前に必ず海外旅行傷害保険に加入することを強くお勧めいたします。また加入に際し,南スーダン国内での疾病・事故を担保しているかどうかの確認を行ってください。

 当国の医療機関では医療費の支払いにクレジットカードを使うことはできません。全て現金前払い(現地通貨払い)となります。日頃から一定の金額の現金を手元に置いておくことが必要です。

 なお,南スーダンには固定電話は存在しません。電話は全て携帯電話となります。

首都ジュバ

(1)Juba Medical Complex
所在地:Juba Teaching Hospital正門前の通り沿い,南へ50メートル下る
電話:0955 523 371
概要:診療科は内科,外科,眼科,耳鼻咽喉科,産婦人科,歯科。予約不要。
夜間救急は22時まで。入院施設あり。
(2)Care Plus International Medical Centre
所在地:ジュバ空港通り沿いのKaide restaurantの角を右折。Marie Stopes隣り。
電話:0977 315 100
概要:内科。予約不要。24時間受付。入院施設あり。
(3)International Medical Centre(通称:IMC)
所在地:Hai Malakal
電話:0977 108 500
概要:内科。予約不要。診療時間:平日午前8時-午後8時,土・日曜日午前9時-午後4時
(4)Airport Road Diagnostic Centre
所在地:Airport Road沿い。Feniciaスーパーマーケットの次の交差点右手。
電話:0955 154 154
概要:内科。予約不要。平日 午前9時-午後5時

9 その他の詳細情報入手先

(1)在南スーダン日本国大使館 ホームページ:
http://www.ss.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html別ウィンドウで開く

10 現地語・一口メモ

 医療機関では英語もしくはアラビア語が通じます。日本語医療通訳は存在しません。英語に関しては,「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(もしもの時の医療英語)を参照願います。


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