令和6年10月1日
1 国名・都市名(国際電話番号)
リベリア共和国(国際電話番号231)
2 公館の住所・電話番号
- 在ガーナ日本国大使館(兼轄国)
- Embassy of Japan in Ghana, Dr.Noguchi Hideyo Street, West Cantonments, Accra, Ghana(金曜日午後、土曜日、日曜日休館)
- 電話:+233(0)302765060、+233(0)302765061
3 医務官駐在公館
在ガーナ日本国大使館医務官が兼轄
4 衛生・医療事情一般
リベリアの気候は平均気温25.1度と高温で多湿の熱帯性の気候です。5月から10月の雨季と11月から4月の乾季があります。電気は停電が多く、発電機を備えている住居が多いです。改善された水供給(上水)へのアクセス率は4.3%、改善された衛生施設(下水)へのアクセス率は37.7%と衛生水準は低くなっています。衛生水準が低いため当国では腸チフスなど食べ物や飲み物を介した感染症が例年多くみられ、死亡原因の69%が感染症とされています。リベリアの平均寿命は64.4歳(2020年)であり、死亡原因は肺炎、エイズ、マラリアと続きます。マラリアは病院を受診する理由の中で最も多く一年中流行しており、治療が遅れれば死亡する熱帯熱マラリアです。したがって、当国に滞在し生活するためには感染症に対して予防接種や予防薬等の対策が不可欠です。前述の腸チフス、そしてA型肝炎、髄膜炎菌に対する予防接種も必要です。狂犬病に対しても受傷後にワクチンを当地で入手することが困難な可能性があるため渡航前の狂犬病予防接種も忘れないようにしましょう。
当国は内戦やエボラ熱流行により依然として医療水準が極端に低い状況にあるので滞在する際には国外での緊急医療が受けられるよう準備が必要です。医療従事者は極端に不足しており、例えば医師数は当国内で90人であり、対人口10万人あたりでリベリア1.7人、日本239.7人となっています。一般に公立の医療施設は老朽化し医療機器の維持や整備も十分に出来ていません。現在は初期医療や緊急医療に利用できる私立の医療施設がいくつかあります。ただし、高度医療は期待できませんので、軽症であっても国外での治療が必要になるケースが多いです。この為、海外への移送費用の受けられる旅行傷害保険に加入して下さい。ワクチンについても常に必要なものが病院に保管されているとは限らないため、必ず日本もしくは医療先進国で接種してから渡航するようにして下さい。
5 かかり易い病気・怪我
(1)感染性下痢症
食べ物等を介して感染するサルモネラ、大腸菌、コレラ、腸チフス等多くの経口感染症がみられます。ウイルス性の胃腸炎も多く、発熱や嘔吐することもあります。ホテル内を含むレストラン等で食事をする場合は十分加熱した物を食べ、生野菜やカットフルーツも注意してください。飲料水は蓋のされたミネラルウォータを使い水道水や氷等は避けてください。渡航前に腸チフスワクチンの接種を勧めます。また、整腸剤等については、日本で多めに入手してからの渡航を検討してください。
(2)マラリア
最も注意すべき病気です。年間約2万人前後が罹患しています。一年を通じて感染者は発生しており、首都モンロビアでも感染する可能性はあります。当国のマラリアは致命率の高い熱帯熱マラリアであり、予防として、ハマダラ蚊が活動する夕方から明け方の外出を控え、外出するときはなるべく長袖・長ズボンを着用し、虫除けスプレー等蚊の忌避剤の使用を推奨します。近年、日本においても蚊よけ成分であるDEET30%の皮膚用の忌避剤が市販されており、持参を推奨します(リベリアのスーパーや薬局では入手困難です)。さらに室内への蚊の侵入を防ぐために、窓に網戸を張り、窓を閉めてエアコンを使用してください。蚊取り線香、電気式蚊取り器や蚊帳も有効です。38度以上の発熱があれば、マラリアを疑い最寄りの医療機関を遅滞なく受診してください。受診時に検査が行われますが、簡易キットだけで無く、顕微鏡下での血液検査を依頼してください。1度目の検査で陰性とされても、症状が継続する限り、数日後2回目の検査をする必要があります。また、リベリアでの滞在の期間や形態を勘案し、予防薬服用の要否とその種類を日本国内の渡航医学専門医師に相談してください。予防薬は当国内の薬局でも購入することができますが、偽薬の報道もあり信頼の出来る薬局で購入して下さい。また、日本への帰国後に発熱があった時はマラリアも考慮し、感染症専門医のいる病院、もしくは地域の基幹病院を受診し西アフリカへの渡航歴があることを伝えることが重要です。
(3)交通事故
交通渋滞が慢性化し、運転マナーが悪いことに加え夜間街灯も少ない状態です。停電等で信号機が消えていることも多いので交通事故に注意してください。特に、バイクは交通ルールを無視する傾向があるため注意が必要です。唯一の公共交通機関である乗り合いバスや値段交渉式タクシーは整備不良車が多く安全面に難があります。自家用車もしくは運転手付レンタカーの利用を検討してください。
交通事故における軽度の外傷を負った場合、整形外科、脳神経外科、一般外科の専門医に最初から受診できるのは一般的ではなく、総合診療医による診療となります。この為、専門外による見逃しや十分な初期治療がなされない場合が多々あります。加えて、複数部位の外傷の場合は、当国内では対応ができないのが現状であり、国外への緊急移送が必要となります。
(4)外傷
前述した医師不足に伴う指導医不足により軽微な骨折等を当地整形外科専門医であっても見逃され易い傾向がありますので注意が必要です。また、道路インフラが整備されていない場所では転倒等のリスクが伴います。出血を伴う外傷を負った場合は破傷風等のリスクもある為、渡航前に破傷風予防接種を推奨します。
(5)精神の不調
当国の生活環境や国民性の違い、マラリア感染や下痢症への不安、ストレスを発散できるレジャーが少ないことなどが原因として挙げられます。また、不眠症や自律神経失調症に罹患する事も散見されます。対応する睡眠導入剤や精神安定剤は、入手できる種類が限られているため、渡航前に日本の医院等での入手を検討してください。
(6)アレルギー疾患
通年高温多湿の環境のため、室内にカビが生えやすい状況です。その為、喘息等アレルギー体質をお持ちの方は日当たりの悪い部屋を避ける必要があります。またホテルやアパートメントでは小型タンク式のボイラーが多いため、シャワーを使用する際はゴミや細菌で汚染されている可能性があるため一旦排水することを推奨します。加えて、12月から3月頃まではハマターンと呼ばれるサハラ砂漠からの砂を含んだ季節風により大気汚染が悪化します。咳き込みや目の痒みの症状が多くなります。喘息体質の方は渡航前に内服薬を準備するか、発作時に受診する病院について事前に確認する必要があります。
(7)熱中症
当地では、体感する以上に発汗し脱水に陥ることが多いです。特に、炎天下での作業やスポーツは気付かないうちに脱水や熱中症に陥る危険性があります。外出時や運動をする際は、帽子や長袖等の日焼け対策、水分補給をしてください。
6 健康上心がけること
- 初めて当国に渡航する場合は、慣れない環境から精神的また肉体的な負担が、強いられますので疾病にかかるリスクは高くなりす。また、当地の医療水準は日本と比べて大きく異なるため、疾病の予防に重点をおくことが重要です。
- 当地では公共交通機関が未発達のため、自動車での移動が多くなります。この為、運動不足による肥満となりやすい為、日常的な運動を心懸ける必要があります。
- 当地での出産は勧められません。出産直後に新生児の心疾患、呼吸障害、代謝異常が発症しても日本と同等で適切な対応は期待できません。母体に関しても慢性的な産科医師、麻酔科医師不足のため妊婦の緊急手術、及び手術後の管理は困難が伴うこともあると考えます。妊娠して安定期に入ったら帰国することを推奨します。
- 具体的な対応
- 渡航前に十分な体調管理、予防治療、予防接種を行う
- 渡航後は、十分な睡眠、休養、適度な運動を心がける
- 食事は、価格よりも衛生状態に配慮する(特に粗悪な油を大量に使用したローカルフードに注意する)
- 一時帰国時等に健康診断(人間ドック、脳ドック含む)を受診する
- 頻度は低いものの生活上留意すべき病気
- 黄熱
当国は黄熱の汚染地域となっており、散発的に報告されています。シマ蚊類が媒介し、初期症状は激しい頭痛、腰痛と発熱で始まる死亡率の高い病気です。 - 狂犬病
狂犬病はウイルス疾患で主に犬、コウモリ、山羊、ネズミ等の動物が媒介します。当国では動物に咬まれたり、引っ掻かれたりすると感染する危険があるので動物と一定の距離をおいてください。感染すると1から2か月の潜伏期間を経て感冒様症状から発症して行きます。一旦発症すると致死率は100%といわれていますので、応急処置、予防接種が必要です。当地にて咬傷となった場合は、遅滞なく近医クリニックで狂犬病予防接種含めた応急処置を受けて下さい。しかし、当国内には信頼できるワクチンが無いため、近隣国での接種を検討してください。 - A型肝炎
A型肝炎はウイルスが人から人あるいは食べ物や飲み物を介して経口的に感染し、稀に劇症化します。不衛生な環境では感染する危険があるので、渡航前の予防接種を推奨します。 - 髄膜炎
当地はアフリカ髄膜炎流行ベルト地帯に位置し、北部を中心に乾季に流行します。特に集団生活での感染が多く、感染者と接触すると感染する危険があります。予防として予防接種が有効です。地方に長期滞在する方は接種を考慮してください。当地では四価(A、C、W、Y)ワクチンの接種を推奨しています。 - 住血吸虫症
住血吸虫症は淡水から寄生虫が直接皮膚に侵入することで感染する疾患です。当国全土がビルハルツ住血吸虫の流行地に指定されています。ビルハルツ住血吸虫の感染は河川や湖沼等で水浴中に皮膚より感染し、素足やサンダル等での入水は感染の機会となります。ビルハルツ住血吸虫症は膀胱壁の障害に基づく血尿、排尿障害、腎尿路系の二次感染などが主症状で、さらに慢性期には膀胱癌をともなうことが問題となっています。また、マンソン住血吸虫も全土の河川に分布しており皮膚より感染するため、安易に河川に入ることは避けるべきです。 - デング熱
汚れた水でも増殖するネッタイシマ蚊が媒介し日中に活動するので旅行者が感染する可能性があります。症状は急性の頭痛、関節痛、筋肉痛を伴う発熱で発疹をみることもあります。急性症状は10日程続き、回復には2から4週間程かかります。出血傾向を示すものはデング出血熱と呼ばれ重症です。疑わしい症状が出現した場合は、クリニックの受診を推奨します。 - HIV/AIDS、B型肝炎、C型肝炎
国民(15歳から49歳)の1.1%(2021年)がHIV感染者と報告されています。HIV、B型肝炎、C型肝炎は主に血液、体液を介して感染します。当国では肝炎を多く認めますので、輸血を要する事態が発生すればこの点に十分な注意が必要となります。B型肝炎ワクチンは渡航前に、血液検査での抗体の有無を確認のうえ予防接種を勧めます。 - 結核
人口10万人あたり16,265人(日本12人)の罹患数となっています。依然として結核蔓延国であることに変わりはなく、職員・運転手・メイドなど雇用する際には健康に留意する必要があります。感染者と接触してもすぐに感染することはありませんが、密閉した空間で感染者と長時間滞在していると罹患する可能性が高くなります。 - ラッサ熱
ネズミ等齧歯類が媒介する死亡率の高いウイルス病です。患者からのヒトからヒトへの感染もあります。大流行はありませんが、ネズミを見かけるような不潔な住環境を避けることが必要です。また、近隣で患者発生の情報があれば体調の悪い人と接しないようにしてください。 - エボラウイルス感染症
エボラウイルスが引き起こす、致命率が非常に高い感染症です。2014年に当国で大流行しました。以前はエボラ出血熱と呼ばれていましたが、必ずしも出血の症状を伴わないためエボラウイルス感染症と呼ばれるようになりました。自然宿主はフルーツコウモリと考えられており、コウモリから直接あるいはチンパンジーや小動物を介し人間に感染するとされています。ヒトからヒトへの感染は患者やご遺体の血液、分泌物、排泄物などの直接接触を介し、皮膚の傷口や粘膜などからウイルスが侵入することで感染します。また、患者のいる家庭や医療施設での感染率が高いとされています。潜伏期が2から21日と幅が広く、初期には発熱、頭痛、嘔吐、下痢など他の感染症の症状と見分けがつかないことが多いとされています。感染予防のためには頻回に石けんと流水で手洗いを行うとともに、エボラを疑う患者やご遺体の血液・体液・嘔吐物や野生動物の死体に直接触れないようにすることが重要です。消毒用エタノール、70%イソプロパノールを含む手指消毒剤や0.05%次亜塩素酸ナトリウムでの清拭もウイルス感染予防に有効です。 - 脳卒中及び脳神経外科疾患
脳神経外科専門医数(2022年)は、当国に1人(2022年)、日本7,927人となっております。この為、脳神経外科的な治療が必要になった場合は、国外への飛行機移送が必要となります。しかし、緊急かつ安静を要するような疾患(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞、重症頭部外傷)の場合は、飛行機での移送も困難となり、また、移送準備までの日数(通常5から7日)により治療可能となる時期を逸する可能性が高いです。この為、これらの疾患の原因(外傷以外)となる生活習慣病(高血圧、脂質代謝異常症、糖代謝異常症等)に対しての十分な治療や脳ドック等での検査を当国への渡航前に検討してください。 - 急性冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)
当国内で、カテーテル治療及び心臓血管手術は行っていません。この為、国外への医療移送となりますが、移送準備の日数(5-7日)がかかることから治療可能となる時期を逸する可能性が高いです。この為、これらの疾患の原因となる生活習慣病(高血圧、脂質代謝異常症、糖代謝異常症等)に対しての十分な治療や人間ドック等での検査を当国への渡航前に検討してください。
- 黄熱
7 予防接種(ワクチン接種機関含む)
現地での信頼できるワクチン接種医療機関はありません。このため、渡航前の予防接種をお勧めします。
(1)赴任者に必要な予防接種
- 成人:黄熱、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、腸チフス、髄膜炎菌性髄膜炎、狂犬病
- 小児:日本の定期接種、黄熱、A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、髄膜炎菌性髄膜炎、狂犬病
(2)現地の小児定期予防接種
十分な情報がありません。ガーナの情報を参考にしてください。
(3)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
十分な情報がありません。ガーナの情報を参考にしてください。
8 病気になった場合(医療機関等)
いずれの施設においても日本語は通じません。英語でのコミュニケーションとなります。通常、初診医は総合診療医(GP)となります。総合診療医の判断で、専門外来へと紹介となります。支払いは、現金、クレジットカード、デビットカード、モバイルマネー等が可能ですが、施設によって異なるため事前に確認が必要です。また、電話での問い合わせは不通となることが多いため、直接予約無しで病院を受診することも検討して下さい。
(首都)モンロビア
- (1)A.M.I. clinic
- 所在地:Corner of 16th St and Russell Avenue, Sinkor, Monrovianext to Exclusive Supermarket
- 電話:+231(0)770029511、+231(0)770911911
- HP:A.M.I. clinic(英語)
- 診療時間:平日8時から17時30分、土曜日8時から13時、日曜日・祝日休診
- 医療設備:救急外来、手術室、ICU、検査室、レントゲン室、腹部・心・経膣エコー、ドップラー、眼検査、薬局、個室、救急車
- コメント:リベリア内にて初期対応の可能な入院設備を整えたクリニックであり、国外移送に対応している。
- (2)Jahmale Medical Solutions
- 所在地:ELWA Junction, Monrovia, Liberia
- 電話:231(0)776603000
- HP:Jahmale Medical Solutions(英語)
- 診療時間:平日7時30分から19時30分、土曜日7時30分から14時、日曜日・祝日休診
- 診療科:総合診療科
- 医療設備:CT、MRI、各種エコー、X線検査、各種血液検査、入院設備無し
- コメント:従来は検査のみ行っていたが、日中のみ外来診療を行っている。当国内唯一のMRIを有している施設です。
- (3)John F. Kennedy Memorial Medical Center
- 所在地:21st Street, Tubman Blvd, Sinkor, Monrovia
- 電話:+231(0)880792571
- 診療時間:平日8時から16時、土曜日・日曜日・祝日は救急外来で対応
- 診療科:一般内科、一般外科、小児科、産婦人科、救急医療、循環器内科、脳神経外科、整形外科、麻酔科、泌尿器科、眼科
- 医療設備:一般病床250床、手術室、ICU、CT、X線検査、超音波、一般検査が可能
- コメント:国内唯一の総合病院でありますが、慢性的な停電、電力不足により医療機器は使用が限られているのが現状です。邦人の許容は困難と考えられます。
- (4)B-Kay Pharmacy Inc.(薬局)
- 住所:Mr. Sanjay Khurana, Management Director,Monrovia, Liberia
- 電話:+231(0)886512090、+231(0)886510775
- コメント:マラリアの抗原検査キットや治療薬が手に入ります。医療物資を現地の医療施設に卸しているので、現地医療情報や連絡の取り次ぎ等を介助してくれます。
9 その他の詳細情報入手先
10 一口メモ(もしもの時の医療英語)
公用語は英語です。医療機関を受診する際は英語が通じます。「世界の医療事情」冒頭ページの一口メモ(英語)を参照願います。