1.外務省は,南太平洋大学(USP)の協力を得て,「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流(キズナ強化プロジェクト)」として,太平洋島嶼国・地域からの短期招へい事業を実施しています。
10月19日(金曜日)から30日(火曜日)の日程で,ツバル及びキリバスから43名の高校生・大学生(USPからの引率者2名を含む)が来日し,福島県いわき市を訪問して被災状況や復興状況を視察するとともに,学校訪問,地元の方々との交流,復興活動体験等を行いました。10月26日(金曜日)の外務省報告会において,各国代表者が,撮影した写真等を紹介しつつ,以下の報告(要旨)を行いました。涙を流しながら被災地の人々との交流の様子を報告している参加者の姿が印象的でした。
(1) ツバル
被災地を訪問し,東日本大震災の被害の規模と復興の早さに驚いた。被災者の方々の現状や日本の復興策,先端技術が果たす役割,放射能漏れに関する風評被害対策等について学ぶことができたので,帰国後は積極的に日本に関する情報発信を行いたい。
(2)キリバス
東日本大震災の報道をキリバスで見ていたが,実際に訪問した被災地においては家屋の再建等,復興が予想以上に進んでいた。いわき市の農家を訪問して放射能漏れの風評被害について知り,政府による被災者に対する仮設住宅や緊急食料の配布等の支援は非常に有益であると感じた。
各参加者からは,帰国後,日本での体験や復興状況,防災対策の重要性を家族や友人に伝達し,政府や学校等に報告するとともに,日本に関する情報発信を行うサークルの立ち上げ,セミナーやワークショップ等を行う提案や,新聞・テレビ等のメディアやインターネット等を通じても情報発信していきたい旨発言がありました。
2.寺澤アジア大洋州局大洋州課地域調整官より,各国代表者による日本に関する情報発信計画に感謝しつつ,復興状況や風評被害への理解促進,コミュニティレベルでの避難訓練等の重要性についても,ぜひ情報共有を期待すると講評しました。本年5月の第6回太平洋・島サミット(PALM6)では,日本の防災や復興の経験を太平洋島嶼国と共有することが決まったので,本国で関連行事等が行われる際は,本プログラム経験者の参加を希望する等コメントしました。
(参考1)キズナ強化プロジェクト
キズナ強化プロジェクトは,アジア大洋州地域及び北米地域の41か国・地域から青少年を我が国に招へいし,交流プログラムや被災地視察,ボランティア活動等を実施するとともに,被災地の青少年をそれぞれの地域へ派遣することを通じて,日本再生に関する外国の理解増進及び風評被害に対する効果的な情報発信を目的としており,平成25年3月末までに,招へい,派遣を合わせ,1万人以上の交流を予定。
(参考2)南太平洋大学(USP:University of the South Pacific)
太平洋に点在する太平洋島嶼国は人口が数万人程度しかない小規模国家が多く,経済的にも余裕がないため,単独での高等教育機関設立が不可能であったことを背景に,1968年,太平洋島嶼国・地域の政府が共同出資して設立した高等教育機関。加盟国は,クック諸島,フィジー,キリバス,ナウル,ニウエ,サモア,ソロモン諸島,トケラウ諸島,トンガ,ツバル,バヌアツ,マーシャル諸島の12ヵ国・地域。本部及びメインキャンパスはフィジーの首都スバに置かれている。サモアに農学部キャンパス,バヌアツに法学部キャンパスが設置されている他,各地にはサテライト・キャンパスが置かれ,衛星通信を利用した遠隔地通信教育が行われている。学生数は2万人に上り,各加盟国・地域の国家元首等が持ち回りで学長に就任。
(参考3)第6回太平洋・島サミット(Sixth Pacific Islands Leaders Meeting: PALM6)
本年5月25日,26日,沖縄県名護市の万国津梁館において野田総理とプナ・クック諸島首相の共同議長の下開催。サミットには日本を含め17カ国・地域の首脳等が参加。サミットでは,「We are Islanders:広げよう太平洋のキズナ」というキャッチフレーズの下,今後3年間に向け,(1)自然災害への対応,(2)環境・気候変動,(3)持続可能な開発と人間の安全保障,(4)人的交流,(5)海洋問題という協力の5本柱を策定し,「沖縄キズナ宣言」を採択。野田総理から,上記の5本柱に沿って協力を進めるため,今後3年間で最大5億ドルの援助を行うべく最大限努力する旨表明。