1.外務省は,南太平洋大学(USP)の協力を得て,「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流(キズナ強化プロジェクト)」として,太平洋島嶼国・地域からの短期招へい事業を実施しています。
9月16日(日曜日)から29日(土曜日)の日程で,ミクロネシア連邦,マーシャル諸島,クック諸島,ニウエから約90名の高校生・大学生が来日し,宮城県気仙沼大島を訪問し,被災状況や復興状況を視察するとともに,学校訪問,地元のかたがたとの交流,復興活動体験等を行いました。9月28日(金曜日)の外務省報告会において,各国代表者が,自らが撮影した写真等を見せながら,以下の報告(要旨)を行いました(以下,発表順)。
(1)クック諸島
気仙沼大島を訪れた際,約18か月前に大津波がこの場所で発生したという事実に改めて驚いた。被災地の方々は生活を立て直すため,笑顔と強さを持ち頑張っている印象を受けた。被災により多くのものを失ったにも関わらず漁業を続ける方々から漁業体験指導をしてもらえたことは,貴重かつ光栄な経験だと感じた。
(2)ニウエ
気仙沼大島に20mにも及ぶ津波が押し寄せたこと,被災地では震災後,家族に会うことが出来なかった方も多くいたことは想像を超えるものだった。ニウエも数年前に自然災害の被害を受け,多くの犠牲者を出した。復興活動体験を通じて,国籍の異なる者同士でも友情や絆を深められることを学んだ。
(3)ミクロネシア連邦
気仙沼大島の亀山に登った際,津波が発生時に人々が避難した場所であったことを知った。日本の生活様式,食事,気候を学ぶ中で,被災地の方々の団結力,復興に対する力強い姿勢と笑顔を忘れることができない。
(4)マーシャル諸島
被災地の方々は苦しく悲しい想いをしたにも拘わらず,非常に明るく親切に接してくれた。被災地の方々にはマーシャル語の「Yawe」という言葉を贈りたい。この言葉には「愛」や「虹」という意味もあり,虹のように日本とマーシャルを繋ぎたいというメッセージを伝えたい。帰国後は,今回の訪問で学んだ72時間キット(緊急時のサバイバルセット)を参考に災害に備えたい。
各国参加者からは,帰国後,日本での体験や復興状況を家族や友人に伝達し,政府や学校等に報告するとともに,新聞・テレビ等のメディアやインターネットを通じて情報発信していきたい旨発言がありました。
2.寺澤大洋州課地域調整官より,東日本大震災後に太平洋島嶼国・地域各国からお見舞いの言葉等をいただいたことに謝意を表明しつつ,被災地を訪問した経験から日本の復興状況を自国で伝えていただきたい,また,被災地で行った復興活動体験は参加者と被災地の方々とを繋ぐ象徴となるだろうと述べました。さらに,どの国でも自然災害は発生する可能性があり,太平洋島嶼国も自国での危機管理や防災対策が重要なので,今回の訪日で学んだ防災に関する知識を活用していって欲しいと講評しました。
- (参考1)アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流(キズナ強化プロジェクト)
キズナ強化プロジェクトは,アジア大洋州地域及び北米地域の41か国・地域から青少年を我が国に招へいし,交流プログラムや被災地視察,ボランティア活動等を実施するとともに,被災地の青少年をそれぞれの地域へ派遣することを通じて,日本再生に関する外国の理解増進及び風評被害に対する効果的な情報発信を目的としており,平成25年3月末までに,招へい,派遣を合わせ,1万人以上の交流を予定。
- (参考2)南太平洋大学(USP: University of the South Pacific)
太平洋に点在する太平洋島嶼国は人口が数万人程度しかない小規模国家が多く,経済的にも余裕がないため,単独での高等教育機関設立が不可能であったことを背景に,1968年に,太平洋島嶼国・地域の政府が共同出資して設立した高等教育機関。加盟国は,クック諸島,フィジー,キリバス,ナウル,ニウエ,サモア,ソロモン諸島,トケラウ諸島,トンガ,ツバル,バヌアツ,マーシャル諸島の12ヵ国・地域。本部及びメインキャンパスはフィジーの首都スバに置かれている。サモアに農学部キャンパス,バヌアツに法学部キャンパスが設置されている他,各地にはサテライト・キャンパスが置かれ,衛星通信を利用した遠隔地通信教育が行われている。学生数は2万人に上り,各加盟国の国家元首等が持ち回りで学長に就任。