世界が報じた日本

海外主要メディアの日本関連報道
(6月4日~6月11日)

平成25年6月11日

 最近の海外主要メディアにおける日本関連報道の中からいくつか紹介いたします。(メディア側から予め同意が得られたものの中から選んで、その要約を掲載しています。)転載・複製を禁じます。詳細はリンクから原文にあたって下さい。

掲載日

9日付

紙面(国名)

ニューヨーク・タイムズ紙電子版(米国)

執筆者・掲載欄・発信地

ジョセフ・スティグリッツ コロンビア大学教授

 1989年のバブル崩壊後,20年間にわたる芳しくない日本経済の成長は,財政危機に対して何をなすべきでないかという典型的な教訓の対象となっていたが,アベノミクスは間違いなく経済回復への正しい方向に向けた大きな第一歩である。日本経済の見通しが良いということを理解するには,安倍総理の経済政策のみならず,日本経済停滞に関する大衆向けの語り口を見直す必要がある。2010年の日本の労働年齢人口は2001年から5.5%減少したことで,もっと緩やかなGDP成長が予測されていたにもかかわらず,労働力1人についての日本の実質経済生産高は,アベノミクスの前でさえ米・独・英・豪のそれによりも早い速度で成長していた。経済成長を測定する範囲を広げれば,20年間の低迷後にもかかわらず,日本の業績は米国のそれに比べてはるかに優れていることが分かる。例えば,社会における所得分配の不平等さを測る尺度の一つであるジニ係数は,今日の日本が0.33%である一方,米国は0.38%となっている。また,日本は米国に比して,一国の将来にとって重要な意味合いがある子供の貧困率(日本14.9%,米国23.1%)に上手く対処しており,その他日本の強さを示すものとして高い寿命と大学就学率,および低い失業率がある。過去20年間,日本の業績が紛れもない失敗だと見なしている者は,経済的成功の概念が狭い。多くの側面-所得の均等,長い寿命,低い失業率,子供の教育と健康に対する投資,労働力の規模に対しての生産性-からみれば,日本は米国よりも上手くやっている。もしアベノミクスが支援者が望むよりも半分程度しか成功していなくても,まだ我々に教えてくれることがある。

掲載日

8-9日付

紙面(国名)

ル・フィガロ紙(フランス)

執筆者・掲載欄・発信地

フランソワ=グザビエ・ブルモー記者(東京発)

オランド大統領は「フランスの夢」を日本で見つけた。国賓訪問中,大統領は,日本の失業率がこの15年間以上にわたり5%を超えたことがほとんどないこと,治安の問題がないこと,国がまとまっていることなどを知った。しかし特に彼の心を引きつけたのは,安倍総理が昨年末に就任してすぐ「アベノミクス」と呼ばれる経済再生政策を打ち出し,その3つの「矢」の1つが円安誘導に向けた金融政策であったことだ。数年間デフレと低成長に苦しんできた日本経済は回復を始めた。「安倍政権誕生後,日本政府はいくつもの政策を実施してきた。これは日本国民の選択であり,私が善し悪しを判断することではない。」とオランド大統領は述べた。欧州や米国に「通貨戦争」につながりかねないとして厳しい批判を受けた円安政策により,日本は輸出改善により経済成長を取り戻しつつある。しかも,このことは,対GDP比で250%以上に達している国債の水準を減らすことにもつながる。しかし,この政策は欧州中央銀行の規約により堅く禁止されているため,欧州すなわちフランスにおいては,EU法を改正しないかぎり実現不可能だ。オランド大統領は欧州委員会の抑制を残念に思い,日本を羨んでいるようだ。共同記者会見で,独自に金融政策を決められる日本とユーロ圏に属するフランスとの違いについて触れた上で,間接的に,欧州委員会と欧州中央銀行に物申したのだ。「私の知る限り,日本の財政赤字状況を監視するアジアの委員会は存在しない」と述べた上に,欧州中央銀行については「現実の経済に注意を払うべきだ」と言い切った。しかしながら,大統領側近は,これを相対化する。「重要なのは,日本政府の手法を理解すること,そして日本の政策が生み出した信頼感をどのようにしてフランスでも実現できるかを考えることだ」と大統領補佐官は含みをもたせる。とはいえ,ユーロ高を目指すという考え方は徐々に浸透してきている。問題なのは,これと同時に,安倍総理の政策への疑念が生まれ始めているということだ。

掲載日

7日付

紙面(国名)

AFP通信(フランス)
タイトル

日仏関係:食を通じた外交

執筆者・掲載欄・発信地

ジャック・リュイルリー記者(横浜発)

日本人はどんな機会も逃さない。オランド大統領訪日の機会に打ち立てられた日仏両国の「特別なパートナー関係」を称えるため,7日,総理主催の公式昼食会において,日本は特別なメニューを用意した。肉料理では,日本人シェフが,神戸牛とリムーザン牛を使った料理を用意した。日本筋によるとこれは「大統領への特別な配慮」である。さらに日本側は,この機会を無駄にせぬよう,これは「最近の仏産牛肉の輸入に関する規制緩和を受けた,大きな意味を持つもてなし」であると強調する。魚料理では,両首脳は,安倍総理の故郷である山口県産の「マナガツオ」を,オランド大統領の故郷であるノルマンディーの伝統的な手法「ヴァレドージュ」の調理法で楽しんだ。さらに,デザートワインは,両首脳の生まれ年である1954年産のものである。政治・経済面の関係に加え,両首脳は,「美食の国たる日仏は,ガストロノミー分野における協力を強化していくべきだ」とまさに謳ったところであった。前6日には,安倍総理は,AFPに対し,「日本人はフランス人と同じように高い美意識を持っており,食文化を大変重要視している。」と語っていた。

掲載日

6日付

紙面(国名)

AFP通信(フランス)
タイトル

安倍総理インタビュー:「アベノミクス」は日本経済立て直しのための「唯一の解決策」

執筆者・掲載欄・発信地

ジャック・リュイルリー記者(東京発)

 安倍総理は,6日,AFPの取材を受け,「アベノミクス」が日本経済の立て直しを可能にする「唯一の解決策」であると語った。総理は,日本経済の立て直しを世界経済の回復の「エンジン」にしたいと考えている。日本の景気回復は,景気後退が続く多くの国の羨望の的となっている。安倍総理は,日本経済の回復は「世界経済の成長,発展途上国にも大きく寄与していくことになる」と述べ,意図的に為替を誘導しているという見方を否定した。IMFは,「アベノミクス」の「相当なリスク」を指摘して構造改革の実施を促したが,総理自身も「日本には累積債務の問題があるが,デフレから脱却しない限り,いずれにせよ解決しない」と認めた。デフレを終わらせるため,安倍総理は,機動的な財政政策,大規模な金融緩和,成長戦略を入念に組み合わせた。5日,安倍総理は,経済界に対して,経済再生のカギは民間セクターにあると述べ,規制緩和を進めていく意向を表明した。これらの点は,オランド大統領との首脳会談で取り上げられると見られる。安倍総理は,オランド大統領と「信頼関係を築きたい」と述べ,日本の国連安保理常任理事国入りへの支持に感謝を示しつつフランスの「太平洋地域での大国」としての側面を指摘し,日仏は「太平洋地域の安全保障状況が変わっていく中で互いに協力していく必要がある」と述べた。

掲載日

6日付

紙面(国名)

ボストン・グローブ紙(米国)

執筆者・掲載欄・発信地

社説

 近頃の東京は1989年の再来だ。20年間の慢性的な不況を経て,今年の日本のバランスシートは回復した。シックなレストランも百貨店も自動車ショールームも活況。報道によればフェラーリの売上げは40%増加した。これはアベノミクス,すなわち通貨安,超低金利,規制緩和,インフレ目標という安倍晋三総理の大胆な経済政策の賜物。これまでのところ功を奏している。5兆ドルの日本経済は第1四半期に3.5%の成長を遂げ,重要なことにこの成長は個人消費により牽引された。日本の今年の成長は中国以外の主要国の水準を越えるとの予測もある。これが継続するかはまだわからない。今年世界で一番活況を呈していた日経平均は,中国経済の減速を受け5月下旬に急落した。また回復は富裕層に限定されている。長期的には国の債務削減のための課税ベースの拡大も課題。企業は収益を設備投資や賃上げを通じて再分配する必要がある。回復が継続すれば安倍政権は日本のみならず世界に新たな道を示すことになる。米国や欧州の政策担当者は緊縮政策の再考を迫られる。

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