掲載日
16日付
紙面(国名)
ニューヨーク・タイムズ紙(米)
日本,TPP交渉参加へ
執筆者・掲載欄・発信地
田淵広子記者(東京)
安倍総理は,より開かれた経済導入の衝撃を弱めるため,コメなど一部の農産物をTPP交渉の対象外とするという,米国からの曖昧な支持を取り付けている。しかし,これらの例外を主張することで,海外市場における日本製品の参入拡大などの面で日本の交渉力を弱めるという懸念がある。また加盟国の一部には,日本の要求が交渉を遅らすと懸念する声もある。日本にとってTPP協定への加盟は,韓国等のライバルに追いつく手段でもある。また日本は,TPPにおいて指導的役割を担うことは,中国の台頭によって失われたアジア地域における中心的な立場へと返り咲く方法であると見なしている。米国にとってのTPP協定は,米国の輸出増加というオバマ大統領の公約の重要な一部であり,また,米国の外交政策の重点をアジアに移す手段でもある。それでもなお,日米間の貿易協定を困難にしてきた多くの問題が,再びここでより広範な協定の障害となる可能性がある。
掲載日
13日付
紙面(国名)
レ・ゼコー紙(仏)
米のアジア重視政策の根源と策略
執筆者・掲載欄・発信地
ジャック・ユベール・ロディエ論説委員による社説
米の外交,国防,経済の政策における重点が中国に移ってきているが,これは,東シナ海・南シナ海周辺の米同盟国各国にとって脅威となっている中国の軍事力拡大に対応するためと言える。この米のアジア太平洋地域への方向転換は二つの柱に基づくものであり,第一に,経済・貿易の観点でアジアとの繋がりを強めることである。米国はTTPの枠組みで自由貿易協定を締結したい意向を表明している。第二は,軍事的な拠点の再編成の動きである。米は,軍艦をシンガポールの沿岸地帯に停泊させるなど,アジア太平洋諸国との関係性を強めている。その目的は,日韓の基地への依存を減らし,アジア太平洋地域における兵力の循環の柔軟性を高めることである。しかしこの政策転換には,アジア太平洋地域の安定を保ち,同地域との連携を深め,日本をはじめとする同盟国を支えるという目的と逆行するおそれもある。
掲載日
14日付
紙面(国名)
BBC電子版(英)
日本の歴史授業が省略すること
執筆者・掲載欄・発信地
大井真理子記者
日本の歴史の授業は週3時間,年間105時間である。日本の教科書では満州事変が1ページ,南京大虐殺は脚注に1行,慰安婦についても同じく脚注に1行だけであった。これに対し,中国の子供たちは日本の戦争犯罪について多くを学ぶ。韓国の教育システムも現代史に重点を置いている。これらの議論を知らずして,最近の領有権争いに対して中国や韓国がなぜ感情的な反応を示すのか理解するのは非常に困難である。一方,少なくとも日本の歴史教育は,何がいつどのような順序で起こったかという包括的な理解を得られる面では利点がある。安倍総理は,次世代が日本の過去を誇れるように日本の歴史教育を変更し,また,1993年の慰安婦問題に関する謝罪の見直しを検討している。もしそうなれば,間違いなくアジア近隣諸国の感情を刺激し,他方で多くの日本人はなぜそのような大ごとになるのか理解できないのであろう。
掲載日
13日付
紙面(国名)
バンクーバー・サン紙(ポストメディア・ネットワーク社傘下,カナダ)
執筆者・掲載欄・発信地
カナディアン・プレス転電
日本政府は,2011年の津波によりブリティッシュ・コロンビア(BC)州沿岸に漂着したがれきを清掃するために100万ドルを供与する。岡田在バンクーバー総領事は,この資金は支援頂いた国への善意の証であると述べた。連邦政府はこの資金を沿岸清掃のためにBC州に譲渡する。BC州政府レイク環境大臣は,これまでのところ,50万ドルまでの経費が,連邦政府,BC州政府及び地方自治体政府の既存予算で賄われてきたと述べた。
掲載日
12日付
紙面(国名)
南ドイツ新聞(独)
安倍氏と原子
執筆者・掲載欄・発信地
クリストフ・ナイトハート在京特派員 論説
安倍総理の「新しい」国造りの方法はそれほど心地よく響かない。なぜなら,安倍氏はかつてのエネルギー政策を土台として国造りを進める方針だからだ。しかし,このような態度は,原発事故後に始まったエネルギー政策転換にブレーキをかけ,刷新が必要であるという電力業界への圧力を和らげるため,致命的だ。
掲載日
11日付
紙面(国名)
ボストン・グロ-ブ紙電子版(米)
安全をとるか復興をとるか
執筆者・掲載欄・発信地
ジュリエット・カヤム氏 オピニオン
福島の原発事故以降,国内で52基の原発のうち2基だけが稼働しているという状況にある日本に,原発再稼働の動きが出てきている。島国の日本は電気需要を原子力発電に頼ることなくしては賄うことができない。安倍総理が言うように,原発再稼働に伴う新安全基準に妥協があっては決してならないが,既に賽は投げられたのであり,日本は原子力立国に戻ることになる。この日本の決断は,米国が9.11の後に再び航空機を空に戻した以上に危険なものではない。
掲載日
15日付
紙面(国名)
ニューヨーク・タイムズ紙(米)
記憶の中の色で洗われる日常生活
執筆者・掲載欄・発信地
A. O. スコット記者
スタジオ・ジブリの『コクリコ坂から』は,1963年の横浜を女子高校生の視点から描く,優しい郷愁に満ちた作品だ。世界の映画界でおそらく最も優れた現存するファンタジー作家の宮崎駿氏の企画と脚本によるもので(監督は息子の宮崎吾朗氏),日本のアニメの現実主義的な傾向を表す好例となっている。作品に見られる視覚的な魔法は,絵画のように描かれた葉や雲,建築や水などで表現され,情動効果は,日常生活が様々な色をした記憶の中で流されることによってもたらされている。若い主人公の海と俊は東京オリンピックの開催を心待ちにしているが,彼らの生活には依然として戦争の負の遺産という暗い影が漂っている。この作品の背景にある悲劇は,子供を動揺させることなく感動を与えるものだろう。そして大人は,若い男女の恋物語に引きつけられると同時に,完全に忘れ去られてはいないが過ぎ去った時代の繊細な表現に魅せられることだろう。
掲載日
12日付
紙面(国名)
バンクーバー・サン紙(ポストメディア・ネットワーク社傘下,カナダ)
日本の災害復興は重い課題:世界中で最も備えがある国の一つにさえ,地震と津波は,肉体的にも精神的にも大きな傷跡を残した
執筆者・掲載欄・発信地
ドン・ケイオ記者 (平成23年度FPC先進国記者招聘プログラム招聘記者)
ブリティッシュ・コロンビア州民は,原発を持たないことに心地よさを感じる前に,多くの命を奪う自然の力を心に留めなければならない。悲劇を生んだ地震発生のかなり前から,日本は,不測の事態にいかに対処するか,世界中で最も備えができている国であった。また同国では,復興に向けて市民やビジネス界,そして特に政府が,多大な努力を傾注しており,今年,同政府は復興予算を25兆円まで増額した。しかし,人々のいら立ちが拡がっていることは,驚くに当たらない。長期間にわたり生活が混乱し,落ち着かない日々が続くことが予想されている。また,多くの人々にとって,精神的な傷跡は,決して癒えることがないであろう。