掲載日
8日付
紙面(国名)
フランクフルター・アルゲマイネ紙(独)
リスク・ポリシー
執筆者・掲載欄・発信地
ペーター・シュトゥルム政治部論説委員
少なくとも日本側の語気は幾分弱まった。だが,これは中国と日本の間の領土を巡る摩擦が戦争に発展しないことの保証とはならない。両国が力による「解決」を望まないことは事実であろう。それでも,国粋主義的な動きが完全に止められないかぎり,危険は依然として解消されない。ひどく疲れた将校が海上で相手国の作戦行動やサインを読み違えるだけで,「熱い」衝突が加速する。日本は自ら厳しい状況を作った。摩擦の対象となる島々のいくつかを国有化するという措置は沈静化を目的とした行為だった。中国はこれを別の意味で理解することを望み,摩擦を激化させた。中国政府は日本に対して常に,そして残念ながら正当にも,未だに過去の悪行を多数抱えこんでいると指摘できることで得をしている。中国は多くの摩擦で実証済みの戦術を用いる。すなわち,厚かましい方が最後には勝るという戦術だ。だが,本件にはリスクがあまりにも大き過ぎる。
掲載日
6日付
紙面(国名)
バンクーバー・サン紙(ポストメディア・ネットワーク社傘下,カナダ)
チューダー王朝によるリチャード3世への非難は,長年の間,自信のない指導者たちの大きな嘘の手本となっている
執筆者・掲載欄・発信地
ジョナサン・マンソープ論説委員
今日,世界中で生じている多くの紛争や今にも起こりそうな戦争は,1485年のボズワース・フィールドの戦いで,チューダー王朝によりリチャード3世が殺害されたのと同様,国が吹き込んだ大きな嘘のプロパガンダや人々の洗脳を根源としている。世界は,古ぼけた想像による人々への危害や不正を声高に怒鳴り散らすことで,自らの失政から人々の注意を逸らせようとする自信のない指導者たちで溢れかえっている。東シナ海の五つの岩の露頭の領有権を巡る中日の争いは,日々,深刻な軍事紛争に近づいている。同諸島は,百年以上も日本により有効に支配されているが,中国は「神聖なる領土」の一部と主張している。中国の主張は,南シナ海の諸島における彼らの主張と同様,実のところ,ほとんど中身がない。しかし,手に負えない国内の政治・社会問題から人々の注意を逸らせるための中国政府によるプロパガンダが猛烈なナショナリズムの炎を煽っており,何かの間違いで重大な紛争が起こる可能性が現実的となっている。そして5日,中国のフリゲート艦が日本の駆逐艦に対艦ミサイルの射撃管制用レーダーを照射した旨を日本政府が発表した時,その可能性が一層近づいた。
掲載日
2日付
紙面(国名)
オーストラリアン紙(豪州)
アジアの『バルカン化』- 海上の火薬箱
執筆者・掲載欄・発信地
ケビン・ラッド豪州前首相 『フォーリン・ポリシー』誌への投稿を転載
中国が日本及びベトナムとの間に抱えている緊張は,迅速に和らげられるべきである。東シナ海及び南シナ海における領有権を巡る緊張によって,この地域は徐々に100年前のバルカンに似た様相になってきている。両国は徐々に,そして相互に,海上及び航空配備を削減することが必要であり,そのために交渉する必要がある。日本は尖閣諸島に建造物を設けたり,人員を配置したりすべきではない。それを行うと中国からの更なる報復行為が避けられなくなり,危機がさらに高まるであろう。歴史家のクリストファー・クラークは近著において,列強各国の政治と誤ったリーダーシップが生み出したバルカンの些細な愛国主義がいかに燃え上がり第一次世界大戦へつながったかを詳説している。それは今よりも経済のグローバル化が浸透していた時代であり,欧州各国も汎ヨーロッパ戦争は不合理で起こり得ないと考えていた。自分(ラッド前首相)も汎アジア戦争は起こりそうもないと信じている。ヨーロッパでの話は熟慮するに値する話である
(注1)本件要約及び仮訳は外務省が作成したものであり,ニュース・リミテッド社の見解を一語一語訳したものではありません。
(注2)リンク先は有料サイトです。
掲載日
1日付
紙面(国名)
フランクフルター・アルゲマイネ紙(独)
西側の憲法理解とのお別れ?
執筆者・掲載欄・発信地
ヴィリー・ヴィマー元防衛担当国務大臣(元キリスト教民主党所属連邦議会議員)寄稿
自民党の一部も含まれる日本の右派は,憲法改正を通じて根本的な変更を目指している。日本は近隣諸国,特に中国と韓国において,侵略戦争と第二次世界大戦中及びそれ以前の時期の残酷な圧政により,依然として恐れられている。日本のナショナリズムに対するこれらの国々の反応は,それだけに激しいものとなっている。まして自民党が,日本の戦争責任と「国民の自虐的傾向」を仄めかす記述全てを日本の教科書から削除することを努めているのだからなおのことである。中韓におけるこのような敏感な反応にもかかわらず,安倍氏は選挙戦において,「自衛隊」を「武装した軍隊」に変える意思を明らかにしていた。
掲載日
7日付
紙面(国名)
ニューヨーク・タイムズ紙(米)
日本の捕鯨補助金に異議
執筆者・掲載欄・発信地
田淵広子記者(東京発)
自然保護団体の国際動物福祉基金(IFAW)が6日発表した調査によると、日本での鯨肉消費が落ち込んでいるにもかかわらず、日本政府は近年、捕鯨産業を支えるために税金を約4億ドルも投入して、補助金を増額している。同団体がまとめた報告書は、捕鯨は日本の消費者に広範な支持を得ている伝統であるとの日本政府の主張に挑戦するものだ。報告書中の日本政府の統計は、1000人以下が従事し、補助金に依存する苦境にある産業を描いており、2011年の震災に対する復興予算も含め捕鯨が政府支援に依存していることを示している。
掲載日
10日付
紙面(国名)
ボストン・グローブ紙(米)
ボストンの地下鉄乗客は東京の乗客から学ぶべき
執筆者・掲載欄・発信地
ジェフ・ジャコビー・ボストン・グローブ紙コラムニスト(FPCJ先進国記者招聘記者)
1月に10日間滞在した日本での出来事を思い出した。東京の全ての乗客がそうだと言うつもりはないが,私が滞在中に見たところ,礼儀と他者への気配りは社会にしっかりと根付いている。10日間に地下鉄・バス・電車などに50回以上は乗ったが,携帯の呼び出し音が車内で鳴ったのは皆無,車内で携帯で話している人を見たのは一度だけだった。座席3人分を占めて座っている人もおらず,サンドウィッチの包み紙やコーヒーの紙コップを後に残していく人もいない。通勤時間帯の駅の混雑ぶりはすごいものなのに,降りる人を待たずに乗り込もうとする人による押し合いへしあいも起こらない。マサチューセッツ湾岸交通局のある職員は「礼儀というものは強制できない。提案するぐらいしかできない。人々に良いマナーを強制するメカニズムは米国にはない」と言う。しかし,そのようなメカニズムがあるところにはあるのだ。それは,利用者数が世界一ながら驚くべき効率の良さをもって日々運営されている東京の地下鉄網だ。そしてそのメカニズムは社会の強い圧力である。日本の通勤者は,周囲に礼儀・気配り・静粛などを当然のこととして求める。結果として日本の乗客は,礼儀正しく,気配りがあり,静かだ。礼儀正しさは,啓蒙ポスターなどなくても,日本のように人から人へ伝染していくものだ。しかしここでは逆もまた然りで,礼儀のなさも人から人へ伝染していく。いくらマナー向上のポスターがあったとしても。