報道発表

我が国漁船の拿捕事案の国際海洋法裁判所への提訴

平成19年7月6日

  1. カムチャッカ半島沖のロシア200海里水域で、ロシア当局により、6月初めに拿捕された「第88豊進丸(ほうしんまる)」の乗組員及び船体、並びに、昨年11月初めに拿捕された「第53富丸(とみまる)」の船体は、現在に至るまで釈放されていない。
  2. 国連海洋法条約は、排他的経済水域において拿捕された船舶及び乗組員を「合理的な保証金の支払い」により「早期に釈放する義務」を定めている。政府は、6日、ロシアによる国際法上の義務の履行を求めて、「第88豊進丸」及び「第53富丸」の事案をドイツ・ハンブルクに所在する国際海洋法裁判所に付託した。
  3. 今回の付託により、拿捕された我が国漁船の長期抑留という最近の傾向に歯止めがかかり、再発を抑止する効果が期待される。
  4. なお、早期釈放に関する国際海洋法裁判所への提訴は、拿捕された漁船及び乗組員を合理的な保証金の支払いを条件に早期に釈放するという手続の履行を求めるものであり、ロシア当局による違法操業の取締りや拿捕自体を問題にするものではない。

    我が国漁船の拿捕事件の防止のためには、そもそも違法操業が行われないようにすることが重要であり、この点については、政府より関係漁業者に対し、引き続き指導を徹底していく考えである。

【参考】

  1. 国連海洋法条約の関連規定

    第73条2  拿捕された船舶及びその乗組員は、合理的な保証金の支払又は合理的な他の保証の提供の後に速やかに釈放される。

    第292条1 締約国の当局が他の締約国を旗国とする船舶を抑留した場合において、合理的な保証金の支払又は合理的な他の金銭上の保証の提供の後に船舶及びその乗組員を速やかに釈放するというこの条約の規定を抑留した国が遵守しなかったと主張されているときは、釈放の問題については、紛争当事者が合意する裁判所に付託することができる。抑留の時から10日以内に紛争当事者が合意しない場合には、釈放の問題については、紛争当事者が別段の合意をしない限り、抑留した国が第287条の規定によって受け入れている裁判所又は国際海洋法裁判所に付託することができる。

    3  裁判所は、遅滞なく釈放に係る申立てを取り扱うものとし、釈放の問題のみを取り扱う。ただし、適当な国内の裁判所に係属する船舶又はその所有者若しくは乗組員に対する事件の本案には、影響を及ぼさない。抑留した国の当局は、船舶又はその乗組員をいつでも釈放することができる。

  2. 国際海洋法裁判所(International Tribunal for the Law of the Sea)

    国連海洋法条約に基づき1996年に設立。本部は独ハンブルク。選挙で選ばれた全21名の裁判官により構成される。

  3. 拿捕・抑留事案の概要

    (1)「第88豊進丸」

    (株式会社「池田水産」(富山県入善町)所有、中型さけ・ます流し網漁船(173トン)、乗組員17名(全員日本人))

    2007年 6月 1日以降 ロシア側の臨検を受ける(カムチャッカ半島東方沖)

    6月 3日     違法漁獲等の嫌疑で拿捕

    6月 5日    カムチャッカの港に到着

    6月 7日    漁獲物の陸揚げ検査開始

    6月26日    船長に対する刑事捜査の開始を決定

    (2)「第53富丸」

    (株式会社「金井漁業」(北海道釧路市)所有、底引き網漁船(279トン)、乗組員21名(うち日本人14名、全員帰還済み))

    2006年10月31日以降 ロシア側の臨検を受け、要請に応じてカムチャッカの港へ

    11月 2日   カムチャッカの港に到着

    11月 5日   漁獲物の陸揚げ検査開始

    12月28日   船主に対する行政法違反事件に関する裁判(第1審)

                (船体没収及び罰金の判決)

    2007年1月24日   行政法違反事件の控訴審(第1審の判決支持)

    2月 8日   一部乗組員が帰国

    3月29日   船長を除く乗組員帰国

    5月15日   船長に対する刑事事件に関する裁判(罰金等の判決)

    5月31日   船長帰国

    (船主は、船体没収の判決を不服として上告中)

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