外務省関連報道に対する見解

債務救済無償資金協力に関する記事について

平成19年5月15日(再掲)
平成19年4月27日

 一部報道において、平成14年度まで実施されていた債務救済無償資金協力について、供与した国からの使途報告書が我が国に未提出である旨報じられているところ、外務省の見解如何。

  1. 我が国の債務救済無償資金協力の趣旨は、深刻な債務問題を抱える途上国の債務を救済することにあり、過去に我が国が円借款を供与した国について、債務の返済が困難となった場合に、当該国より我が国に対する債務を一旦返済させた後に、基本的に同額を無償資金協力として供与するという債務救済方式を採用していたものである。我が国が供与した資金は、途上国内で巡り巡って、当該国の我が国に対する債務の返済に充当されており、我が国が供与した税金が、どこかに消えてなくなったということでは全くない。
  2. 他方で、被援助国は、本件無償資金協力を使用した後及び我が国政府より要求された場合に使途報告書を提出することが義務づけられているが、2002年度に供与した20カ国の内、19カ国については、未だ使途報告書が提出されていないのは事実である。
  3. また、こうした報告書の提出は、2002年度以前においても、必ずしも我が国が期待する通りに行われていないのが実態である。この点は既に会計検査院よりも指摘を受けているところである(平成11年度会計検査院報告書)。この背景には、我が国より供与された資金が、途上国側において複数年度にまたがり使用されていること、さらに、途上国側の行政能力の低さ等といった事情もあると考えられるが、いずれにせよ、こうした事態は残念に思っている。
  4. 外務省としては、これまでも我が国債務救済支援無償資金協力を受けた途上国に対して、使途報告書の提出を求めているが、今後一層提出を働きかけていきたいと考えている。

〈参考〉

1.そもそも債務救済無償とは何か

(1)深刻な重債務問題を抱える開発途上国に対して、国際社会は国際的な合意に基づき債務救済を図ってきた。

(2)我が国は、債務は約定どおり返済されるべきであるとの基本的考え方から、債務救済を行うに際し、相手国に一旦は約定どおり返済を求めた上で、確認された返済額に相当する金額を無償で供与するという債務救済無償資金協力の方式を1978年度より採用した(1978年の国連貿易開発会議(UNCTAD)第9回貿易開発理事会(TDB)決議に基づく措置)。また、我が国は、途上国に対して、我が国が供与した資金を最終的にどのような用途に使ったかを報告するよう求めてきた。

(3)この方式は我が国独自のものであり、他の債権国の措置を比較し、途上国にとっては厳しい要求であったと思われる。なぜなら、途上国側は、厳しい外貨事情の中、必死で外貨を調達し、我が国に債務を一旦返済しなければならず、さらに、我が国から供与された資金の使途についても報告が義務付けられていたためである。こうした厳しい方式を我が国が採用した背景には、自らの戦後発展の苦労の中から我が国自身が学んだ、「自助努力」の考え方を途上国にも育みたいという気持ちがあった。

(4)なお、その後、債務問題への国際的な取り組みが進む中、債務問題のより早期の解決、債務国の負担の軽減、貧困削減戦略ペーパー(PRSP)に基づく債務国の適切な経済政策運営や貧困削減の社会開発の努力の成果が出始めたことなどを総合的に勘案した結果、平成15(2003)年度より、我が国も、国際社会の一般的な方式を考慮し、旧来の債務救済無償の方式を廃止し、我が国の債権を放棄する方式に切り替えた経緯がある。

2.使途報告書の提出状況について

 現時点(平成19年4月現在)で被援助国から使途報告書については、最後の供与となった平成14年度において20ヶ国中1ヶ国、平成13年度は18ヶ国中4ヶ国、平成12年度は15ヶ国中13ヶ国、平成11年度は18ヶ国中13ヶ国、平成10年度は16ヶ国中14ヶ国から提出されている(直近5年間)。
 なお、昭和53年度(1978年度)から平成14年度(2002年度)までの407案件(供与総額約4,676億円)のうち、中間報告を含め使途の報告提出が一切されていない案件は61案件(15.0%)(総額687億円(約14.7%))である。

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