新聞・雑誌等への寄稿・投稿

総領事館ほっとライン 第27回 エディンバラ
テロの可能性含め安全確保のため連携を

在エディンバラ総領事
高橋 周平

 在エディンバラ総領事館は、英国北部のスコットランド、北イングランドを管轄しています。主な都市は、スコットランドのエディンバラ、グラスゴー、北東イングランドのニューカッスルで、在留邦人も大半がこれらの都市またはその近隣地域に在住しています。在留邦人の数はスコットランドに約1000人、北イングランドに約600人、主に企業関係者(大半が電機、重機関連の製造業)、大学の研究者・学生、永住者で占められています。

 また、総領事館のあるエディンバラでは、毎年の夏、世界中から数多くの芸術家などが集まり様々なパフォーマンスが繰り広げられるエディンバラ・フェスティバルというお祭りがあり、日本や世界各地から多くの観光客が訪れ、町の人口は約2倍に膨れ上がります。

 スコットランドの治安は全般的に比較的良好と言われていますが、2003年の犯罪統計によれば、事件として届け出があっただけでも約41万件の犯罪が発生しています。犯罪の発生件数自体は、対前年比で5%減となっていますが、決して治安が良いとは言えない状況です。日本人の犯罪被害については、短期滞在者に限らず、当地に慣れている長期滞在者が窃盗・空き巣などに巻き込まれるケースも少なくありません。被害状況は、悪質なものは別として比較的類型化されており、日頃から注意して対策を考えておけばかなり予防し得るものがほとんどです。

 とかく日本人は、海外における安全意識が欠如(無防備・無警戒・無認識)していると指摘されています。経済大国日本のイメージが今なお世界中に浸透していることもあり、ただでさえ犯罪発生率の高い外国において、日本人は犯罪の格好の標的となっている可能性があります。海外で犯罪に遭わないためには当局の防犯対策にのみ依存することなく、一人ひとりが日頃から防犯意識を持って行動することが何よりも必要です。

グレンイーグルズ・サミット

 今年7月6日から8日にかけて、エディンバラから車で北西に1時間ほどのグレンイーグルズで主要8カ国(G8)による首脳会合(サミット)が開催されました。サミット開催期間およびその前後、エディンバラおよび周辺ではG8サミット関連の抗議活動が頻繁に行われ、この期間、会場となったグレンイーグルズはもとより、エディンバラ、グラスゴーをはじめとする近隣地域は、警察による特別警備体制が敷かれ、普段にはない緊張感に包まれました。

 当館では、サミット数カ月前から、警察当局と連絡を取りながら関連情報の入手に努め、当館ホームページを通じて日本人観光客へ抗議活動に関する注意を呼び掛けるとともに、在留邦人の方々にも同様に、緊急メール、緊急ファクスなどを利用して最新情報の提供に努めました。また、サミット期間中に邦人が巻き込まれる事件、事故が万が一発生した場合に備えて、必要な対応が迅速に取れるようできるだけの準備をして臨みました。

 サミット前の7月2日にはエディンバラにおいてアフリカ支援を訴える22万5000人のデモ行進が行われ、白いリストバンドを腕に着けたデモ隊が街の中心部を埋め尽くしました。

 サミット初日のグレンイーグルズでは、サミット会場防護棚の外で多数のデモ隊と警察の機動隊、騎馬隊が小競り合いを繰り返し、一時はかなり緊迫した状況にもなりました。

 また、ロンドンで起きた爆破テロ事件直後には、エディンバラ市内中心部でも、バスの中に不審物らしき物が発見(後に悪質ないたずらであることが判明)され、市民が避難を余儀なくされるなど一時的に混乱状態となりました。

 警察当局に対しては、邦人が事件・事故に巻き込まれた場合には、直ちに当館へ連絡するよう要請していましたが、外国人の逮捕者やけが人も出た中、幸い日本人の方は一人も巻き込まれなかったことに正直ほっとしました。

在留邦人との連携

 サミットが終わった後のスコットランドの夏は、いつもと同じように多くの観光客であふれました。一方、ロンドンでは2度目の爆破テロ事件が起きるなど、まだまだ予断を許さない状況にあります。当館管轄であるスコットランド、北イングランドにおいてもロンドンより脅威は少ないかもしれませんが、テロの可能性を含め今後起き得る事態に備え、在留邦人をはじめとする邦人の安全確保に努めていく必要があります。

 当地在留邦人のうち、企業関係者は、日本企業会、補習校を通じて横のつながりが確保されており比較的連絡が取りやすいのですが、所属する組織のない永住者、研究者・学生の連絡体制をいかに整備していくかを今後検討する必要があると考えています。今年2月グラスゴーにおいて永住者を中心に初めての日本人会が設立され、今夏地元プロサッカーチームに移籍してきた日本人選手の活躍もあって、日本人会の活動も徐々に盛り上がりを見せています。当館としても、日本人会と行事・催し物などを通じてコミュニケーションを深めながら、お互い連携しつつ日本人同士の横のつながりを広めていくとともに、何かあった時には速やかに情報の伝達、安否確認ができるよう連絡体制の確立に努めていきたいと考えています。

ワンポイント・アドバイス

在エディンバラ総領事館

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