平成25年1月
平成24年12月21日(金曜日),外務省において平成24年度第2回「外務省セミナー『学生と語る』」を開催いたしました。
全体講演および分科会の内容について,アンケートにご協力をいただいた参加者の感想を引用しつつ,紹介します。
『学生と語る』開催趣旨の説明を行いました。
座談会では,省員の自己紹介に続き人事課・村上課長補佐の進行で,参加学生からあらかじめ質問事項を記入した質問票から,学生の興味,関心のある事項を中心に質疑応答が繰り広げられました。さらに進行役の村上補佐が学生目線でさらに掘り下げて質問するなど,参加した学生に分かりやすい内容の座談会となりました。質問は外務省を志望した動機,入省前の外務省のイメージと入省後の現実とのギャップはあったか,専門職と総合職で求められる人材像と職務の内容で異なる点は何かなどリクルートに関する質問から,インドと日本の経済関係,インドとパキスタンの関係,日米安全保障条約の解釈,意義など若手省員が業務で担当する国,分野に関する質問,さらには国際社会における日本のプレゼンスをどう思うかなど幅広い質問が取り上げられました。
全体講演終了後,7つの会場に分かれて分科会が開催され,各分科会では,外務省員によるプレゼンテーション,質疑応答,参加者によるディスカッション等活発な意見交換が行われました。
本分科会においては,安全保障に関する基本的な考え方を押さえつつ,我が国を取り巻く安全保障環境,それを踏まえた日米安保体制の重要性について説明した上で,在日米軍再編をはじめとする最近の取り組みについて説明しました。また,東日本大震災を受けた米軍のトモダチ作戦についても紹介しました。
ディスカッションでは,集団的自衛権のあり方や,在日米軍の諸問題への対応などについて参加者から鋭い質問が出されました。また,新興国の台頭を含む30年後の地域情勢・国際情勢を見据えた日米安保体制のあり方,その中で日本の果たすべき役割などについて活発な意見交換が行われました。
本分科会では,まず,日本を取り巻く安全保障環境につき言及しつつ,それに対処するための安全保障政策について概観しました。その上で,架空の危機事例を設定し,日本政府としてどのように対処すべきかについて,グループに分かれて議論した後に,参加者全体に対して発表を行いました。
発表においては,情報が限られた中で事態に対処するため,事態のエスカレートを防ぐための抑止や意思疎通の重要性,現場における自衛隊や海上保安庁の対処や外交面での対応について,様々な意見が出されました。また,分科会の最後の質疑応答では,参加者から,安全保障上の危機に対処する上での時間的制約等について,鋭い質問や意見が寄せられました。
本分科会においては,国連の役割や機能の変遷,及び現在のグローバルな課題に対して国連がどのように対処しようとしているのかについて解説するとともに,日本と国連の関係,国連を通じた日本の活動,国際機関における日本人職員の増強に向けた取り組みなどについて説明を行いました。出席者からは,安保理改革に向けた日本の取り組みや国連PKO活動への日本の参加,日本外交における国連の位置づけなどについて質問が出されるなど活発なやりとりが行われました。
本分科会においては,尖閣諸島の取得・保有以降の日中関係と今後の見通しに関して意見交換を行いました。はじめに,尖閣諸島に関する基本的立場と事実関係,日本政府による尖閣諸島の取得・保有以降の情勢を中心とする近年の日中関係の動向について説明しつつ,今後の日中関係を考える上では,日中両国がともに大局的観点から戦略的互恵関係を深化・具体化することが重要である点について説明しました。参加者からは,尖閣諸島をめぐる歴史的経緯,日本政府の基本的立場,尖閣諸島をめぐる日本政府の対応等について質問が出され,今後の日本の対中政策を検 討する上では,対アジア政策全般を踏まえる必要がある等の意見が出されました。
本分科会では,近年のアフリカがめざましい経済成長を遂げ,「躍動するアフリカ」として国際社会の注目を集めている反面,未だ多くの課題を抱えていることを説明しました。また,明年6月1日~3日,横浜で開催される第5回アフリカ開発会議(TICADV)に関連し,TICADの歴史と意義や,TICADVのコンセプト,我が国の取組の検討状況等について紹介しました。参加者からは,他国のアフリカ関係フォーラムとの関係や,人間の安全保障の実現等について鋭い質問がなされました。
後半は「日本はTICADVに際してアフリカ支援を拡大すべきである」を論題としたディベートを行いました。参加者は肯定側,否定側に分かれ,「投資先としてのアフリカの比較優位とは何か」や,「質の高い支援とは何か」といった重要な論点について,参加者同士で活発な意見が交わされました。
本分科会では,WTOを中心とする多角的貿易体制がある中で各国がFTA・EPAを積極的に進める背景や,FTA・EPAの締結が具体的にどのようなメリットをもたらすのか等について概観しつつ,自由貿易の推進を経済外交の柱として掲げる我が国がFTA・EPAを推進する上で,高いレベルの経済連携を目指す意義やその際直面する課題等について一緒に考えました。国内で関心の高いTPPについても自由に意見交換を行い,参加者からは,TPPの意義,守るべき国益とは何か,日本にとって望ましいルールとは何か等といった点について鋭い意見や質問が寄せられました。
後半の全員参加型のFTA交渉シミュレーションでは,様々な条件や時間的制約の中で,自国の国益に沿った形で交渉を妥結に導くため,活発な議論が行われました。
本分科会においては,日本外交において重要性の高まっている広報文化外交について,基本的な概念や考え方の枠組みを説明しながら,アフリカにおける広報文化の実態や,最先端の政府,外務省の取り組みについても言及し,その後,実際の業務で取り組んでいることを題材に一緒にシュミレーションを通じて議論を行いました。参加者からは,例えばアメリカやEUに対する広報戦略の違い,外交実務における広報活動等について質問が出され,実務における実際の議論もシェアしながら,一緒に広報文化外交の考えを深めました。
特に,領土保全について,参加者からは,我が国の国内,国外の広報の取り組みについて,様々な観点から鋭い意見が出されるとともに,そのうえで,どのような角度から議論を行っていったらよいかについて多くの参加者から積極的な意見が出されました。
分科会終了後に行われた懇親会には,参加者に加え,山下国内広報室長はじめ全体会・分科会講師,入省1年目の省員など40余名の外務省員が参加し,参加学生と外務省員が熱心に語り合う姿が会場の随所に見られました。その模様の一部については下記の写真をご覧下さい。
今回の「外務省セミナー『学生と語る』」には定員を大きく超える応募があり,会場の都合により残念ながらご参加頂けなかった方々には深くお詫び申し上げます。
ご参加頂いた方々のアンケートでは,参加して良かったという感想をはじめ分科会テーマ,議論の進め方などについて様々なご意見,ご提案をいただきました。アンケートに寄せられたご意見,ご提案を参考に本事業をさらに充実・発展させて参ります。
今回,本事業の広報活動にご協力いただきました各大学,大学院,予備校等の教育機関の教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。