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平成23年度第1回「外務省セミナー『学生と語る』」
~結果報告~

平成23年10月

 平成23年9月27日(火曜日),外務省において平成23年度第1回「外務省セミナー『学生と語る』」を開催いたしました。

 全体講演および分科会の内容について,アンケートにご協力をいただいた参加者の感想を引用しつつ,紹介します。

1.全体講演

開会挨拶(大臣官房 国内広報課 佐久間研二課長)

(写真)開会挨拶 大臣官房 国内広報課 佐久間研二課長

 「学生と語る」開催趣旨の説明に続き,学生を主な対象とした外務省主催事業「外交講座」「大学生国際問題討論会」の他,外務省ホームページ掲載コーナー「わかる!国際情勢」も紹介し,加えて ,昨年度から創刊された外交専門論壇誌「外交」第8号および9月末に発売予定の第9号の内容について紹介した。

基調講演
「震災後の外務省の取組 ~『開かれた復興』と経済外交/海外広報の取組~」
(13時35分~14時40分)
(広報文化交流部 総合計画課 小野日子課長)

(写真)基調講演「震災後の外務省の取組 ~『開かれた復興』と経済外交/海外広報の取組~」(広報文化交流部 総合計画課 小野日子課長)

 はじめに,広報文化交流とは,いわゆるパブリック・ディプロマシーといわれる分野であり,国家間の伝統的な外交と相互補完的なものであること,経済力や軍事力に基づくハード・パワーではなく,芸術文化や価値観,魅力といったソフト・パワーを通じて各国社会・国民に直接的に働きかけていくものとして,近年重要性を増していることを説明した。

 続いて,今日,このパブリック・ディプロマシーと,資源獲得や投資拡大に関わる経済外交とが密接に関連するようになったと説明した。つまり,わが国は人口減少,少子高齢化,財政赤字など非常に困難な課題に直面している中で,資源獲得や投資拡大等,経済分野での国力を高めるための経済外交を推進することが重要であり,加えて,東日本大震災後,風評被害や観光客の減少等が続く中,こうした状況を改善し,開かれた復興を果たしていくためにも,日本の魅力をいかに発信していくか,という広報文化が果たす役割が大変重要になっていると語った。

 さらに,今回の震災では,講師が国際協力(ODA)等で担当したアフガニスタン,ハイチといった厳しい状況にある国々を含め150カ国近い国々から支援や連帯の表明があったことを紹介し,これは,日本がこれまで地道に国際協力に取り組んできたこととともに,日本が世界とつながっている,世界とともにあるということを改めて教えてくれるものであったと語った。だからこそ復興プロセスにおいても「開かれた復興」が重要だと強調した。

 続いて震災後の風評被害対策の基本方針・姿勢について解説。原発事故の状況や出荷制限などわが国が行っている措置等について正確かつタイムリーな発信を心がけたこと,さらに日本企業のサプライチェーンの復旧,インフラの復旧,復興を積極的に発信し,日本が復興しつつあると同時に再生を果たすこともアピールしていると強調した。併せて日本産品の規制や渡航への厳しい措置に対しては正確な情報を提供する中で緩和・撤廃を粘り強く働きかけていくと語った。そんな日本の取組について,米国クリントン国務長官の「Japan is open for business and travel」というコメントを紹介した。

 さらに海外広報の取組について説明し,震災直後の危機管理広報から,風評被害,観光客の激減などに対処するための能動的な広報戦略に重点が移ってきた,と説明。ニューヨークのタイムズ・スクエアでの謝意表明メッセージの放映,東北地方で開催された六魂祭における駐日大使の視察及び被災地視察,被災地での国際会議開催の誘致,といった具体例を挙げて説明した。今後の取組として,世界各国の日本大使館や総領事館から日本の復興を様々な形で発信するため,観光・物産展への出店や,復興写真展の開催,実際に復旧復興活動に携わったNGOの方や有識者の方の派遣,各国から様々な方を招いて被災地の復興の現状を見ていただく,また日本の地方の魅力や復興についてのコマーシャルや番組の作成といったことを企画していると説明した。

 最後に,聴衆の学生に対して,震災で自分はどうしたのか,どう感じ,何を考えたのかといった思いを一つの原点として忘れないでほしい,また,内向き・消極思考に陥ることなく,積極的に世界に関わっていってほしいとの言葉で講演を終えた。

(写真)基調講演「震災後の外務省の取組 ~『開かれた復興』と経済外交/海外広報の取組~」

 その後の質疑応答では,海外メディアの震災報道に対する見解,海外広報を展開していく上で心がけていることについて講師の見解が求められたほか,来年以降の震災復興に関する広報のスタンスやテーマについての質問のほか,震災後のODAに関する方針等について次々と質問が出され,それぞれ丁寧に解説された。

<参加者の感想>

「省員による体験談」(14時40分~15時25分)
(大臣官房人事課 村上学課長補佐)

(写真)「省員による体験談」(大臣官房人事課 村上学課長補佐)

 はじめに,学生時代には,後悔しない人生を送ること,何のために働くのかといったことを真剣に考えていたことを紹介しつつ,外務省入省後のキャリアアップや,入省後10年を振り返っての思いを語った。続いて,入省直後に自身が担当した外相会談のアレンジ等を例に挙げつつ,外務省における業務を具体的かつ詳しく説明し,入省直後から外交の最前線に立って活躍することができると語った。また,自身が勤務したスペイン大使館での経験に関し,通訳,領事,広報文化等の業務について具体例を挙げて説明し,在外における外交の最前線はアイデアと人間力が求められるとのメッセージを伝えた。

 最後に,外交官は熱い「心」と冷静な「頭」が求められる職業であり,是非とも学生時代を有意義に過ごし,外務省の門を叩いて欲しい旨語り,講演を締めくくった。

<参加者の感想>

2.分科会(15時40分~17時40分)

 全体講演終了後,6つの会場に分かれて分科会が開催され,各分科会では,外務省員によるプレゼンテーション,質疑応答,参加者によるディスカッション等活発な意見交換が行われた。

「対中国外交」
(アジア大洋州局 中国・モンゴル課 福田高幹課長補佐)

(写真)「対中国外交」(アジア大洋州局 中国・モンゴル課 福田高幹課長補佐)

 本分科会においては,中国と日本の違いはどこにあるのか,それが我々の対中国政策(或いは中国側の対日政策)にどのような影響を及ぼすのか,といった基本的な問題意識を念頭に置きつつ,講師の側より,主に中国の政治システム,とりわけ中国共産党を中心とする同国の統治の仕組みや同党が現在抱えている問題について説明を行うことによって,対中国政策を考えていく上での幾つかの視点を提供した。これに基づきつつ,参加者の側から,中国の状況や日中関係に関する様々な質疑応答が行われた。より具体的には,中国の政治システムの特質と昨今よく指摘されるところの中国の国防費の増大や海洋進出とはどのような関係があると考えるべきなのか,中国における対日感情の現状をどのように分析し対策を練るべきなのか,来年行われるとされる中国の指導者の世代交代がその後の対日政策にどのような影響を与えると思われるか,といった点について議論がなされた。

<参加者の感想>

「核軍縮・不拡散」
(軍縮不拡散・科学部 軍備管理軍縮課 澤田修孝課長補佐)

(写真)「核軍縮・不拡散」(軍縮不拡散・科学部 軍備管理軍縮課 澤田修孝課長補佐)

 本分科会においては,核軍縮・不拡散を巡る国際社会の現状と課題について概要を説明し,ジュネーブ軍縮会議や国連等における我が国の取組について紹介した。その後,シミュレーション・ケースを使って参加者による議論を行った。議論では,参加者から,長期的な核軍縮の進展と目前の安全保障の確保との両立の難しさや,利害が対立する複数のアクターの間で交渉の落としどころをどのように探るかといった点について意見が出された。

<参加者の感想>

「平和維持・平和構築」
(総合外交政策局 国連政策課 高木徹夫事務官)

(写真)「平和維持・平和構築」(総合外交政策局 国連政策課 高木徹夫事務官)

 本分科会では,国連平和維持活動(PKO)及び平和構築の取組につき,基本概念,経緯,冷戦前後の特徴,規模・展開状況,日本の参加実績,過去の教訓や現在の課題等につき概観し,スーダン・南スーダンの例を用い,ミッション設立過程や国連の日本に対する期待等につき紹介した。参加者からは,日本の参加実績に対する国際的評価,要員派遣の検討過程,民間企業やODA等他の手段も組み合わせた平和構築取組につき質疑が行われた。討論では,我が国のPKO参加が憲法と合致する必要性,他の平和構築取組と併せ行う利点の他,より「危険」とされるPKO(及び国連枠外の平和・安定化支援活動等)への参加の是非についても,法的正統性,我が国に対するパーセプションとの関係,過去の歴史の類推の適否等,異なる角度からの見解が表明された。

<参加者の感想>

「経済外交」
(経済局 国際貿易課 時田裕士課長補佐)

(写真)「経済外交」(経済局 国際貿易課 時田裕士課長補佐)

 本分科会においては,日本外交の柱の1つである経済外交について,講師が世界貿易機関(WTO)において経験した交渉の現場の様子を織り交ぜつつ,我が国がこれまで自由貿易体制によって恩恵を受けてきたこと,戦後関税引下げ交渉において我が国が自由貿易に果たしてきた役割等について説明した。また,東日本大震災発生直後から外務省として取り組んでいる風評被害対策等にも説明した。参加者からは,各国とのEPAやTPPなど最近の経済連携に関する動き等について関心が示され,質問も活発になされた。特に,今後の我が国の経済のあり方を考えていく上では,「日本ブランド」を大切にすべきとの意見や我が国の企業支援をより積極的に行っていくべきではないか等の意見が寄せられた。

<参加者の感想>

「日米外交」
(北米局 北米第一課 北川伸太郎課長補佐)

(写真)「日米外交」(北米局 北米第一課 北川伸太郎課長補佐)

 本分科においては,なぜ日米同盟が日本外交の基軸となっているのかという「そもそも論」について,参加者ひとり一人が考えるための一助とするために,冒頭,講師から各参加者に対して,(1)個人的にアメリカは好きか嫌いか(その理由も含めて),(2)日米同盟は今後も日本外交の基軸としていくべきと考えるかという2つの質問を行い,各参加者からの答えを踏まえて議論を行った。参加者からは賛否両論,様々な意見が出されたが,概して東アジアの安全保障環境を考えると,少なくとも当面の間は日米同盟を維持・発展させていくことが必要であるとの意見が体勢を占めた。また,後半では,先月の国連総会の際に行われた日米首脳会談を例として,日程や議題の調整を含めて,事務方が具体的にいかなる準備作業を行い,結果としてどのような会談になったのかを,具体的に説明し,参加者からは議題はどう決まるのか,事前に米国とどの程度調整しているのかなど活発な質問がなされた。

<参加者の感想>

「資源外交」
(経済局 経済安全保障課 原琴乃事務官)

(写真)「資源外交」(経済局 経済安全保障課 原琴乃事務官)

 本分科会においては,エネルギー・鉱物資源・食料を巡る国内外の情勢を概観した後,資源外交に限られない重層的な外交関係の強化や世界全体の資源問題の解決が,ひいては我が国の資源の安定供給確保に繋がるということを,具体的な外交的取組を例示しつつ説明した。その上で,資源量の逼迫や,新興国による積極的な資源獲得を受けて,今後「日本らしい」資源の安定供給確保はどうあるべきか等について活発な意見交換を行った。更に,特に参加者の関心の高かった我が国の今後のエネルギー政策について,国際的な諸課題への貢献という外交的な観点も考慮しながら,グループ毎に政策立案シミュレーションに取組み,各グループが発表した多様な政策案をもとに活発な議論が行われた。

<参加者の感想>

3.懇親会(18時10分~19時40分)

 分科会終了後に行われた懇親会には,参加者に加え,横井裕外務報道官をはじめ全体会・分科会講師,入省1年目の省員など40名近くの外務省員が参加し,参加学生と外務省員が熱心に語り合う姿が会場の随所に見られました。 その模様の一部については下記の写真をご覧下さい。

  • (写真)懇親会1
  • (写真)懇親会2
  • (写真)懇親会3
  • (写真)懇親会4
  • (写真)懇親会5

最後に

 今回の「外務省セミナー『学生と語る』」には250名を超える応募がありました。会場の都合により残念ながらご参加頂けなかった方々には深くお詫び申し上げます。

 ご参加頂いた方々のアンケートでは,参加して良かったという感想をはじめ分科会テーマ,議論の進め方などについて様々なご意見,ご提案をいただきました。アンケートに寄せられたご意見,ご提案を参考に本事業をさらに充実・発展させて参ります。

 今回,本事業の広報活動にご協力いただきました各大学,大学院,予備校等の教育機関の教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。

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