平成19年8月
平成19年7月20日(金曜日)外務省において平成19年度「外務省セミナー『学生と語る』」を開催し、200名を超える参加を頂きました。
当日のプログラム内容とその様子について、アンケートにご協力頂いた参加者の感想を引用しつつ、紹介します。
全参加者が国際会議場に一堂に会し、全体講演が行われました。
国内広報課 弦本英一課長より開会挨拶がありました。
最初の講演は、総合外交政策局 総務課 兼原信克課長による「国際情勢」についての講演でした。
兼原課長は、歴史、地理、文化、民族等、多岐に渡る分野に言及しながら、日本をとりまく現代の国際情勢について自らの考えを述べました。また、日本外交を考える際、普遍的価値観、日本のアイデンティティー、日本の国力を理解することの重要性についても説明しました。
<参加者の感想>
続いて、大臣官房 人事課 小野健課長補佐 から、在外及び国内勤務の経験談に加え、採用及び研修制度について説明しました。その後、韓国からの要人訪日の際の業務を例に、外務省員がどのように外交政策を準備し、実施していくかについて、参加者の皆さんとシュミレーションを行いました。また、I種職員と専門職職員の違い、外務省が求める人物像等についても、詳しく説明しました。
<参加者の感想>
全体講演終了後、6つの会場に分かれて分科会が行われました。各分科会テーマについての外務省員によるプレゼンテーション、質疑応答ないしディスカッションが行われました。
「アジア外交」の分科会では、急速な経済成長を遂げ、また中国とインドが同時に大国として台頭しているアジアにおいて、日本はいかなる視点からアジア外交を進めているかについて、講師からの説明及びこれを受けた質疑応答が行われました。特に、将来「東アジア共同体」を形成するという目標が東アジアで語られるようになっている中で、東アジアの地域協力を通じて、開放的で、共通の価値基盤に立脚した地域の形成に貢献していくという日本外交の基本的立場について、様々な意見が出されました。さらに、歴史的・長期的観点から見た場合、今後日本はアジアでいかなる役割を果たすべきであるのか、欧州との比較も踏まえ、東アジアにおける地域統合はいかなる形で進んでいくのかといった点についても、参加者から様々な提案がありました。
<参加者の感想>
「対米外交」に関する分科会では、まず、歴史的な視点から、政治、経済、社会各分野における日米関係の発展を俯瞰した上で、日米関係の現状と今後の課題について、1)二国間関係、2)国際社会の諸課題への対応、3)日米間のチャネルの強化・拡充といった観点から説明を行いました。
その後、1)日本の視点から見て望ましい日米関係の姿とは何か、2)米国の視点から見て現在米国が直面する主要外交課題とは何か、3)日米の短期的・長期的課題とは何か、また、課題の克服のために何をすべきか、といったポイントを中心にして、自由な討論を行いました。参加者は、一般論としての議論のみならず、日米安保や経済面での協力といった二国間の課題及び中国、北朝鮮、イラク、イラン等の国際社会にとっての諸課題等の個別事例について、具体的な意見の交換を積極的に行いました。
<参加者の感想>
国連と加盟国との関係を通じた国際社会における国連の位置付け、国連における安全保障理事会(安保理)の役割について紹介がされました。その上で、21世紀の国際環境の下、安保理を改革する必要性が生じていること、日本も常任理事国となって貢献したいと考えていることについて説明がありました。その上で、安保理改革を巡る各国の立場は、各地域内の関係や国益を反映して多岐に及ぶことを体感するため、各参加者が主要国の「国連大使」を演じる「安保理改革に関する模擬討論」を行い、各国がどのような主張をするか予想をしながら議論を行いました。
<参加者の感想>
「人間の安全保障」に関するプレゼンテーションの後、質疑応答を行いました。まず、プレゼンテーションでは、人間の安全保障の概念、概念が登場した国際社会の背景及び概念の外交政策への適用について説明がありました。これを受けて、「人間の安全保障基金は従来から存在する開発や人道支援と何が違うのか」「人間の安全保障と人権の違いは何か」といった人間の安全保障に関する質問や、「平和構築委員会の議長となった日本はどのような役割を果たしていくのか」といった最近の動きに関する質問が出されました。
<参加者の感想>
日本が主導するアフリカ開発会議(TICAD)プロセスの意義並びにこれまでの日本の対アフリカ経済協力の概要につき説明がありました。
分科会の参加者からは、来年日本で開催予定のTICADIVとの関連で「もっとアフリカ支援の国内広報をすべき」といった意見が出されるなど、活発な議論が行われました。
<参加者の感想>
分科会では、軍縮・不拡散に関する様々な国際制度を概観した後、特に、国際的な核軍縮・不拡散体制の中心である核兵器不拡散条約(NPT)について説明があり、続いて、日本と核の関わりについて、1)唯一の被爆国であること、2)厳しい安全保障環境にあること、3)原子力エネルギーに大きく依存していること、が指摘され、最後に、日本の基本的な核政策・原子力政策について説明がありました。
その後、核軍縮・核廃絶に向けた取り組み、核抑止力の意義、核兵器の役割、弾頭ミサイル防衛、濃縮・再処理技術の国際管理、原子力平和利用への国際的な関心の高まり等、幅広いテーマについて質疑応答・意見交換が行われました。
<参加者の感想>
分科会後に行われた懇親会には、谷口外務副報道官をはじめ幹部省員から入省1年目の若手省員まで、70名以上の外務省員が参加しました。ソフトドリンクを片手に、参加者の質問や意見に対し、外務省員が真剣に答えている姿が会場の随所に見られました。特に、若手省員と懇談している参加者は、外務省入省試験のことから将来の希望に至るまで、熱心に問いかけていました。
その様子については、下記の写真をご覧下さい。
今回の「外務省セミナー『学生と語る』」には、260通以上の応募がありました。会場の都合等により、ご参加頂けなかった方々に改めてお詫び申し上げます。
なお、今回は補助椅子を出して参加人数を増やす、職場の様子を知りたいとの声に応えて待ち時間に外務省の紹介ビデオを上映する等、新たな取り組みを試みました。その結果、本事業について期待以上だったという意見から不満足だったという意見まで、数多くの意見が寄せられました。頂いたご意見を参考に、事業進行から分科会内容に至るまで本事業を改めて見直し、今後の本事業を充実・発展させていきたいと思います。
外務省で仕事をしたいという方はもちろん、外交の現場を覗いてみたい方、同年代の学生と語り合いたい方など、様々な思いを持った皆様のご参加をお待ちしています。
末筆ながら、今回本事業の広報活動にご協力頂きました各大学、大学院、予備校等の教育機関の教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。遠路から、またテスト期間にも関わらず参加してくれた学生の皆様、本当にありがとうございました。
なお、平成19年度第2回「外務省セミナー『学生と語る』」は、12月頃京都で開催する予定です。募集案内は追って掲載します。どうぞお楽しみに。