平成19年1月26日(金曜日)、京都リサーチパークにおいて平成18年度第3回「タウンミーティング『学生と語る』」を開催し、100名を超える参加を頂きました。
当日のプログラムとその様子について、アンケートにご協力頂いた参加者の感想を引用しつつ、ご紹介します。
全参加者が国際会議場に一堂に会し、全体講演が行われました。
国内広報課 平下文康課長より開会挨拶がありました。
最初の講演は、国際協力局 高橋礼一郎参事官による「国際情勢」についてでした。
高橋参事官は、通信・交通の発達に伴う外交のあり方の変化や、情報収集の重要性を中心に、外務省の仕事の概要と外交について論じました。外交官が交渉する時代から、総理や大臣が直接交渉する時代になる中で、現代における外務省の仕事とは情報を収集し、分析し、適切に伝達し、さらにそれに基づいて政策の選択肢を提示することであると説明しました。また、満州事変に関する配付資料に触れながら、有田駐オーストリア公使(当時)があくまでも「国際協調主義」の下に「断然たる」態度で事変の拡大を阻止するよう幣原喜重郎外相(当時)に意見具申していたことを例示し、軍部が独走する中、限界があったものの外交の役割について正論を語るべく、最後まで努力していた先輩がいたことを知って頂きたいと、参加者の方々に訴えました。
<参加者の感想>
経済局 政策課 堀智宣事務官より、「外務公務員の実情」についての説明がありました。
実体験に基づき、外務公務員の国内外での仕事の実態や、研修について講演しました。失敗談を交えた具体的な業務内容の説明のほか、海外での研修期間中に貴重な人脈を築いた経験を紹介しました。続いて、外務省の仕事の甲斐性について実際の現場の空気が伝わってくるようなエピソードを交えて語りました。
<参加者の感想>
休憩の後、大臣官房 人事課 杉尾透事務官による採用及び研修制度についての説明がありました。
国家I種、外務専門職等の試験の違いと入省後のキャリアパス、外交官に必要な資質(使命感、責任感、柔軟性・適応力)について説明しました。また、研修制度として実務研修と語学研修制度を紹介し、実務研修中においても週2回の語学研修があり、仕事をしながら語学を習得し、同僚と切磋琢磨する新入省員の生活を説明しました。
<参加者の感想>
全体講演終了後、5つの会場に分かれて分科会が行われました。各分科会テーマについての外務省員によるプレゼンテーション、質疑応答ないしディスカッションが行われました。
「アジア外交」の分科会では、いかなる視点から日本がアジア外交を進めているかについて、日米同盟とアジア諸国との関係、対中関係等に言及しながら、説明と質疑応答が行われました。特に講師から「東アジア共同体」について、欧州の地域統合に比べ、東アジアでは経済実態面での統合や個々の課題に対処する分野別協力が進展していること、地域がより多様性に富んでいることを説明しました。真の意味での共同体を作っていく上では、経済的域内相互依存の深化、共通の挑戦への共同対応を通じた一体感の醸成、サブカルチャーの共有化などが、欧州のような歴史的・文化的同質性に代替していくがどうかが課題となることが提起されました。
<参加者の感想>
「中東和平」の分科会では、まず「なぜ日本にとって中東和平は大切なのか」という疑問を取り上げ、西欧キリスト教文明とユダヤ人問題、パレスチナ紛争の起源等の背景に言及し、その問題の深さと拡がりを説明しました。次いで、四次にわたる中東戦争が残した和平の課題として、難民、領土・国境、入植地、エルサレム、安全保障措置を取り上げて論じました。さらに「日本はどのように中東和平にかかわることができるのか」という基本的な問いについて、これまで日本がとってきた和平政策の具体例を示して説明を行い、和平への展望を述べました。質疑応答では、参加者から「アラブ・イスラエル対立の本質」、「目指すべき和平解決の態様」、「ハマスについて」、「中東における民主主義の必要性」、「原理主義、穏健派等中東記事で使われる用語の妥当性」等日頃の疑問について活発な質問が寄せられました。
<参加者の感想>
「国連」の分科会では、国際社会における国連の位置付けについて、発足から現在に至るまでの国連と加盟国との関係の変遷を紹介し、各加盟国が国連をどう利用してきたかを説明しました。また国連と我が国との関係では、国連の場においていかなる貢献(財政的貢献、人的貢献、哲学の貢献等)をなし得るかについて問題提起をしながら、安保理をはじめ国連において我が国がふさわしい代表性を確保する必要性について論じました。その後、参加者全員が「模擬安保理討論」を行い、加盟国の議論の「場」である国連において各国の国益や思惑が絡み合う複雑な意志決定のプロセスを体感しました。
<参加者の感想>
「日本の安全保障」の分科会では、日本の安全保障政策の基本についてのプレゼンテーション、意見交換及びイラクへの自衛隊派遣を題材とした政策判断のシミュレーションを行いました。
我が国の安全保障政策について、適切な防衛力の整備、日米安保体制の堅持、国際平和のための努力を含む国際環境への働きかけといった、基本事項を確認しました。
その後の質疑応答では、外務省と防衛省の連携の実情や、具体的政策判断を行うに当たって考慮すべき要素など、参加された学生の方々から様々な意見や質問が提示されました。
続いて、「イラクへの自衛隊派遣は正しい決断であったか否か」という設問について、参加者の間で意見を述べ合い、実際に我が国の安全保障についての外交政策に携わる講師にとっても非常に示唆に富む意見交換が出来ました。
<参加者の感想>
「文化外交」の分科会では、講師のベトナム勤務経験を交えながら、文化外交が現代日本外交において果たしている役割と今後の意義について話がありました。はじめに、国際社会の変化により、現代の外交においては各国市民に対して発信すること(いわゆる「パブリック・ディプロマシー」)がより重要となってきていることが指摘されました。次に、日本のポップカルチャーが、海外において大変な人気である現状を踏まえ、現在の人気を文化外交に活用し、ポップカルチャーへの関心を日本そのものへの関心につなげていくかが検討すべき課題であると提起されました。質疑応答では、参加者から「我が国の発信力を高める観点からはテレビ国際放送の実施は重要である」、「ポップカルチャーも大事だが、やはり伝統文化も大事ではないか」等の意見が出されました。
<参加者の感想>
本年度最後の「タウンミーティング『学生と語る』」を京都で開催し、100名の参加を頂きました。
これまでのアンケートによりご要望の多かった本事業の関西地域での開催を今後も続けていきたいと考えています。外務省で仕事をしたいという方はもちろん、外務省員に直接質問して日頃の疑問を解決したい方、同年代の学生と語り合いたい方など、様々な思いを持った皆様のご参加をお待ちしています。
末筆ながら、今回本事業の広報活動にご協力頂きました各大学、大学院、予備校等の教育機関の教職員の皆様に厚く御礼申し上げます。テスト期間にも関わらず参加してくれた学生の皆様、本当にありがとうございました。