3月3日,外務省は,「『アジア太平洋の時代』と日本外交―内外メディアの視点」というテーマの下,「ジャーナリスト会議2011」を開催し,「メディアから見た日本の対アジア太平洋外交」及び「アジア太平洋から世界へ グローバルイシューへの挑戦」の2つのセッションで活発な議論が行われました。会議の概要は以下のとおりです。
1.全般
- (1)開催日時:2011年3月3日(木曜日)13時~17時
- (2)開催場所:日本プレスセンタービル10階ホール
- (3)会議形式:公開シンポジウム(聴衆約160名)
- (4)会議テーマ:「アジア太平洋の時代」と日本外交―内外メディアの視点
- (5)議長及びパネリスト(8名)
- 議長:
- 布施 広・毎日新聞社論説室 専門編集委員
- パネリスト:
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- オーストラリア:リック・ウォレス・オーストラリアン紙東京支局長
- 中国:李淼・香港鳳凰衛視(フェニックステレビ)東京支局長
- 韓国:朴素瀅・中央日報駐日特派員
- 米国:サム・ジェームソン・元ロサンゼルス・タイムズ紙東京支局長
- ベトナム:ダオ・タイン・トゥン・ベトナム通信社東京支局長
- 日本:大野 正美・朝日新聞社論説委員
- 日本:坂元 隆・読売新聞社論説委員
2.会議概要
(1)佐藤外務報道官による開会挨拶
会議冒頭,主催者の外務省を代表して佐藤外務報道官より,日本の外交政策に関する内外メディアの報道を見ると,日本メディアと海外メディア,更に言えば,それぞれの国によっても報道の切り口が大きく異なることが少なくない,今回のシンポジウムでは,メディアに携わる人々が各国の報道振りや報道の切り口の違いをそれぞれにどう見ているのか,また,メディアが果たすべき役割とは何かにつき,アジア太平洋と日本外交を題材に,刺激的かつ有益な議論が展開されることを期待している旨,開会の挨拶を行いました。
(2)第1セッション「メディアから見た日本の対アジア太平洋外交」
- サム・ジェームソン氏(冒頭発言)
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自分が日本に滞在していた50年間における日本の外交政策は自己中心的なものから崇高なものまで様々であった。自分は記者として沖縄返還交渉が終結した際の歓喜の場にいた。米国は大西洋憲章が締結された際の「第二次大戦は領土拡張の為の戦争にあらず」という約束を,沖縄返還によって果たした。これに対し,米国に対する日本の妥協の方程式は「足して4で割り3を取る」であった。米国製自動車に対する,かつての日本の関税率の高さがその象徴であったが,田中総理の下で米国の貿易赤字は削減された。また,日本外交では,米国の核兵器の持ち込みに関する密約問題の例に見られるように,利益のためには真実を覆い隠すという戦略が取られた。
その一方で,日本は戦後65年以上も戦争を行わなかったことや世界一の援助国となることで,世界から尊敬の念を獲得した。クラスター爆弾の使用禁止に向けた軍事大国との交渉においても,日本が果たした役割は大きかった。 - 布施議長:
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菅政権は,経済外交を推進している。経済外交には複数の柱があるが,その一つである自由な貿易体制を築くための取り組みとして,環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉への参加が検討されている。日本メディアは一様に賛同しているが,このことに関しパネリストの意見を伺いたい。
- (ア)坂元隆氏
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日本のTPP協定交渉への参加を読売新聞は支持している。日本のような通商国家にとって,貿易や投資の自由化は死活的に重要だと考えるからだ。また,これは私見だが,米国やオーストラリアまでを含めた,環太平洋の広大な自由貿易圏を構築することによって,台頭する中国を今後取り込んでいくこともできるのではないか。
- (イ)リック・ウォレス氏
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オーストラリアの農家と政府は日本に是非参加してほしいと考えている。TPPへの参加には他国との貿易関係の発展など良い面がある。また,貿易の自由化は食品価格の低下に結びつく。
- (ウ)ダオ・タイン・トゥン氏
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日本経済は成熟しており,この先高い成長率は期待できない。これまでにない手法で国の発展を目指す必要があり,自由貿易の推進は重要だろう。また,日本の農業分野での関税率は突出して高い。先進国である日本もTPPに参加して,農業分野での対外投資を促進していくべき。
- (エ)大野正美氏
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朝日の論説もTPPを支持している。WTO加盟,FTA・EPA締結の促進そして今回のTPP協定交渉と,トピックの取り上げられるインターバルが短い。各トピックの検証を十分にしていないのではないかとの疑念がある。世界の多極化の方向性の中で東アジア共同体構想が行き詰まっており,TPPの枠組みが日本に合うかどうかについて,自分は懸念を抱いている。
- (オ)李淼氏
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TPPに対する中国での関心は高い。中国では,菅政権がTPP参加に興味を示した背景事情に関心がある。裏に米国の存在があり,中国を牽制する狙いがあるのではないか。日本の総理が代わる度に外交スローガンも変わるが,外交自体に大きな進展はないと感じている。背景に日米関係を重視するあまり,独自の外交を展開することが難しいという事情があるのではないか。
- (カ)朴素瀅氏
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菅政権になり,東アジア共同体の構築に向けた外交路線ではなくなった。これにより,韓国メディアからは東アジア共同体の意義について疑問の声が上がった。経済構造が似ている日本がTPPを推進すれば,韓国政府もTPPに積極的に取り組むだろう。
- (キ)サム・ジェームソン氏
- 日本の国連安全保障理事会常任理事国入りを検討すべき。アジアでは中国が国連安保理の拒否権を持つ唯一の常任理事国であり,アジアでの政策が中国一国により拒否される可能性があるからだ。
- 布施議長:
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尖閣諸島問題・北方領土問題といった視点から東アジアの安定について議論したい。
- (ア)大野正美氏
- 国後島をメドヴェージェフ・ロシア大統領が訪問して以来,日本には厳しい外交となっている。振り返ってみるとやや騒ぎ過ぎと感じている。北方四島の軍備増強の話もあったが,実際にはソ連崩壊時の9000人が2000人に減っているし,択捉島での軍事演習に使われた武器もほとんどが1950年代60年代のものである。「クリル」の兵力を部分的に削減とも言っている。北方四島で進んでいるのは展開能力である。これは中国を念頭に置きつつ東アジア全体を考えた動きではないか。アジア太平洋の中の日露関係を考えるべきだったかもしれない。
- (イ)朴素瀅氏
- 韓国の中央日報は大きい写真を掲載して,メドヴェージェフ大統領の国後島訪問を一面で報じた。日韓間には竹島問題があるため,韓国国内では領土問題に対する関心は高い。また,日本の学習指導要領解説書での竹島の表記に対しても国内の関心が集まっている。
- (ウ)ダオ・タイン・トゥン氏
- 領土問題が発生するのは,中国の経済力が日本を上回り,日本と近隣諸国の経済力のバランスが崩れてきていること,また日本の国内政治が非常に不安定であることが原因ではないだろうか。ベトナムは過去の経験から学び,多角的に友好関係を結ぶ方針を取っている。
- (エ)リック・ウォレス氏
- 領土問題に関して日本が懸念を持つのは当然であり,日本メディアが感情的な報道をしているとは思わない。沖縄の基地問題,日米の軍事協力などもその背景にあるが,報道が偏っているとは思わない。
- (オ)李淼氏
- 尖閣沖での漁船衝突事件に中国国内で注目が集まり,尖閣問題に対する日本の姿勢が強硬化したのではないかという見方がインターネット上で広がった。北方四島に関しても,軍備増強や中韓企業の参入など国内の関心は高いが,中国としては基本的に日露の問題という認識。日本のメディアは北方四島に関する色々な見方を報道していない。日本のメディアは,外交問題に関しては,原則論のみしか報道せず,相手国の考え方,利害などは報道しない極めて硬直的な報道姿勢だと感じる。日本外交の行き詰まりの一因は報道にあるのかもしれない。日本の外交報道は,政治報道に比べて少ないし内容も浅い。
- (カ)坂元隆氏
- 外交問題に対する日本メディアの報道姿勢は,各論になりがちであり,大きな絵を描く報道は外国メディアに比べて少ない。政治部,経済部,外報部等が他の分野をカバーしない体制が日本メディアの課題ではないか。日米同盟の揺らぎと今回の尖閣・北方領土問題は無関係ではないだろう。メディアは日米同盟の揺らぎの影響を,ワールドワイドな視点で取り上げるべきであった。
- 布施議長:
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日本のメディアは内向きだと思うか。
- サム・ジェームソン氏
- 日本メディアの特徴として,記者クラブ制度がある。記者クラブに登録していないと会見に参加出来ないシステムにより,自分自身も記者クラブから排除されたことがあった。以前よりも状況は改善されたが,記者クラブ制度は日本での平等な取材を困難にしていると感じる。
(3)第2セッション「アジア太平洋から世界へ グローバルイシューへの挑戦」
- 朴素瀅氏(冒頭発言)
- 2009年4月のプラハ演説で,オバマ米大統領は,「核兵器なき世界」を提唱しており,その1年後,ロシアのメドヴェージェフ大統領と,両国の保有する戦略核兵器を7年以内に1550発まで削減する条約に調印した。しかし,世界の核軍縮の流れに逆行する要素としては,北朝鮮とイランが考えられる。北朝鮮は,2006年,2009年と2回の核実験を行い,3回目の実験もあり得る。北朝鮮からイラン,シリアなど第三国への関連兵器,技術輸出なども疑われる。また,韓国延坪(ヨンピョン)島への砲撃を機に,日韓の一部保守派からは核武装の議論が持ち上がった。イランは,ウラン濃縮を行っており,軍事利用はないと述べているものの,場合によっては,中東全体に核武装の流れが波及する可能性がある。
気候変動問題については,2012年末に失効する京都議定書後の枠組みが未だに策定されていない。日本は,米国,インド,中国に削減目標が課されていない京都議定書の単純延長を拒否して,COP16でその存在感を示した。日本は,二酸化炭素を2020年までに1990年比で25%削減するという目標を掲げ,環境の分野でリーダーシップを発揮している。このような中,COP17へ向けての各国の準備状況や気候変動問題に関してマスコミの果たせる役割は何かが今後の議論の課題と考える。
【核軍縮・不拡散】
- 布施議長:
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核軍縮に関するテーマとしては,世界の核軍縮と地域的な問題,つまり北朝鮮の問題が挙げられる。
- 坂元隆氏
- 米クリントン政権下のオルブライト国務長官訪朝時に,自分と布施議長も平壌入りした。ブッシュ政権時にも北朝鮮を取材したが,過去20年間状況は良くなっていない。拉致問題は,日本国民にとって非常に重要な問題だが,外国メディアからは十分な理解を得難く,日本のメディアとしては,歯がゆさを感じている。
- 布施議長:
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キューバ危機で米国が置かれた状況と,我々が置かれている状況を比較することがあるが,それは唐突なことか。
- サム・ジェームソン氏
- そうは思わない。北朝鮮のミサイルの方が深刻だろう。核関連施設は地下にある疑いがあるが,核施設を特定できないので査察をすることは不可能。六者会合では,北朝鮮に影響力のある中国に焦点を合わせた交渉をすべき。
- 布施議長:
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北朝鮮の核,ミサイル,拉致問題についての日本の新聞・テレビ報道をどう思うか。
- リック・ウォレス氏
- 日本のメディアが,拉致問題等について取り上げる姿勢は理解できる。拉致被害者とその家族にとって非常に深刻な,また解決の糸口が見えにくい非常に難しい問題と認識。
- 布施議長:
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中国の代表が毎年,軍縮会議で東アジアの情勢をイラクやアフガニスタンのような状況に悪化させないことが大事との趣旨の発言をしている。果たして中国は北朝鮮を説得できるのかという点に関し,中国国内では,どのように報道されているか。
- 李淼氏
- 北朝鮮の核に対する中国の姿勢は明確で,反対である。ただし,北朝鮮に関連した報道はほとんどない。また,日本を含め,他国からは北朝鮮問題における中国の役割が期待されているが,ネット上では,核の問題があるにも関わらず日本は拉致問題にこだわりすぎているという意見もある。
- 布施議長:
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ベトナムは長い戦争を経験しているが,北朝鮮の脅威と,それに対する日本の報道,反応をベトナム人記者としてどう見るか。
- ダオ・タイン・トゥン氏
- 日本の若い世代は,戦争に対する関心が低いのではないか。メディアの啓蒙活動に期待する。現在,ベトナムは以前の敵対国とも友好関係を築いている。これは,将来に目を向けて努力をしてきた結果。日本の率先した核兵器廃絶に向けた努力を評価している。
- 布施議長:
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六者会合で,核の問題や拉致問題は解決できるのか。決して武力行使を是とするわけではないが,軍事的圧力がないと北朝鮮は動かないのではないか。
- 大野正美氏
- 北朝鮮問題は,東アジアの安全保障に大きく関わる問題。暴発するようなことがないよう,長期的に関与していくことが必要。東欧の民主化や,ソ連崩壊,中東で起きたレジームチェンジのように,永続的なシステムというものはない。問題は,それがなくなった時にどう対処すべきかを考えていかなくてはならないということ。
- 布施議長:
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日本のメディアは,拉致問題を取り上げすぎか。
- 朴素瀅氏
- YesかNoでいうとYes。一方,韓国国民の間では,拉致被害者が400人に上ると言われているのに,なぜ韓国政府は,面と向って北朝鮮を批判しないのかという声もある。
- 布施議長:
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話を拡げて,インド,パキスタンの核兵器など,世界における核の脅威について話したい。
- 坂元隆氏
- 秩序が変わってきている。米印原子力協定が結ばれたことは,日本にとってもショックであった。日印原子力協定についても日本のメディアの論調は,釘はさすが,真っ向から反対しない傾向が強い。現在日本は,核保有国に囲まれているが,核拡散の可能性等,読者に核の脅威をどう伝えていくかが課題である。読者の反応としては,核よりもミサイルの脅威に関するものが多い。核兵器そのものの恐怖を我々メディアは示していく努力が必要。
- 布施議長:
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非核三原則を掲げながら核の傘に依存するのは,日本の矛盾か。
- サム・ジェームソン氏
- テポドンが列島上空を通過した年から日本は防衛費を削減している。もし米国の核の傘に入らないのであれば,「日本のどこに核兵器若しくは核武装した原子力艦隊を配備するのか」といった具体的事項やコストについて議論すべきであるが,そのような議論をしていない。
- 布施議長:
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核武装論についてどう思うか。
- (ア)李淼氏
- 日本が唯一の被爆国として,国連総会に17年連続で核軍縮決議案を提出していることは評価している。ただし,日本が中国に求めている核軍縮については,批判的である。というのは,中国は,非核保有国に対する核の不使用を掲げているが,米国は,他国に対し攻撃目的で核を使用する可能性がある。この部分について,米国への指摘なしに中国を批判するのは,不公平だと思われる。
- (イ)大野正美氏
- 最近,パキスタンのザルダリ大統領が訪日した際,パキスタンはインドと同様の原子力協定の交渉を求めた。これは,南アジア全体の核戦略の巨大化というものを睨んだ場合に,日本がどう関与するのかという観点から非常に重要な問題だったが,中東情勢の影響で報道されなかった。このことから,世界の中で起きていることについて,問題意識を持って紙面を作っていくということが,まだまだ弱いと感じている。また,外務省からはザルダリ大統領の訪日に関し,事前のみで事後のブリーフィングがなかったが,外務省の中でも,今回のザルダリ大統領訪日の位置づけはそれほど高くなかったのではないか。メディアと外務省の両方に問題があったということではないか。また,ゲームの理論が変わったとは言え,インドへの原子力技術支援によって,パキスタン側が感じるであろう焦燥感等,別の角度からも検証する必要がある。
- 布施議長:
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北朝鮮の軍事的脅威があるが,日本にいて安全に思うか。
- リック・ウォレス氏
- 軍事的脅威という意味では,少なくとも東京は,ソウルよりは安全と思う。
- 布施議長:
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北朝鮮からミャンマーに核技術が拡散していると言われているが,ベトナム人記者としてどのような考えを持っているか。
- (ア)ダオ・タイン・トゥン氏
- ミャンマーに核開発施設があるという報道は承知している。ベトナムは,核兵器不拡散条約を支持している。
- (イ)朴素瀅氏
- 日本にいてよく聞かれるのは,北朝鮮は本当に核を持っているのかという質問と,韓国は本当に統一を目指しているのかという質問である。一つ目の質問に対する答えは「ある」。二つ目に関しては,まずは,北朝鮮を対話のテーブルに呼び戻すしかないということだと思う。それからのことは,それからである。
- (ウ)ジェームソン氏
- 韓国は,核を持つ北朝鮮を統一したいのか。
- (エ)朴素瀅氏
- 自分は政府の人間ではないので,正確には答えられない。北朝鮮が,核を放棄することが先決。
- (オ)坂元 隆氏
- 北朝鮮問題によって日米韓の連携が強まった。単にチャレンジではなくオポチュニティーでもある。周辺国にとっては,日本が米国に依存せず自主防衛に転じることの方をより避けたいのではないか。
【気候変動問題】
- 布施議長:
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気候変動問題は,日本がかなり力を入れている政策で,2012年末までの途上国支援が,官民合わせて1兆7500億円(概ね150億ドル)。日本のメディアとしては,日本だけでは気候問題への対策はできないという論調になりつつある。各パネリストに,京都議定書や,COP16に関する日本メディアの報道について伺っていきたい。
- リック・ウォレス氏
- 金融危機や,中東の問題,他の問題が山積し,徐々に気候変動問題に関する報道は,少なくなってきている。
- 布施議長:
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中国に排出量削減を求める報道についてはどうか。
- (ア)李淼氏
- 日本政府の掲げる25%削減の目標は評価している。日本の省エネ技術など,技術移転を歓迎している中で,日本の対中ODAが削減されるのはどうかと思う。
- (イ)朴素瀅氏
- 2013年から韓国も削減義務国になるが,義務国になる前に掲げた目標は韓国国内企業の反対により実現不可能。中国,インドなども同様に国内事情により簡単にはいかない。
- (ウ)サム・ジェームソン氏
- ある専門家によれば,日本はGDPを1%上げるのに,米国の半分,中国の1/8のエネルギーで可能という。日本のエネルギー効率は,非常に高い。
- (エ)ダオ・タイン・トゥン氏
- 日本の目標は非常に野心的で,削減努力は評価できる。日本の環境技術をぜひ途上国でも役立ててほしい。
- 布施議長:
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大野氏,坂元氏には,地球温暖化防止対策におけるメディアの役割について一言ずつお願いしたい。
- (ア)大野正美氏
- メディアの役割というと答えづらいので,どう悩んでいるかを述べたい。朝日新聞は,低炭素社会への流れは変わらないので,それに対応するためにも,外交的にも,25%削減目標の看板は下ろさなくて良いという方針。目標の達成ができなくなった場合は,その時に対処するべき。
- (イ)坂元隆氏
- COP16で日本政府が京都議定書の単純延長に反対した姿勢は十分に理解できる。日本が,25%という削減目標を掲げたときに,社会部系と,経済部系の記者の間で激論があった。また,省庁によってもその影響の試算について差があった。目標を掲げた当時は,世界から非常に好意的に受け入れられたが,提案時と状況は変わっている。今の状況を踏まえて,再検討する必要があると感じている。
(4)議長総括
国際社会全体を見ても,主要各国のリーダーが交代する2012年問題や最近の中東における激動があり,変化の途上にある。意識の変革は世界中に広がる可能性もある。アジア太平洋地域も,安定,平和からはまだ遠い。一つ言えることは,今の世の中はひとつの価値観では成り立ないということ。多くの価値観が存在することを認め合い,議論するのが望ましい姿。これからメディアに求められる役割は,本日の会議のように,様々な国籍で,様々な意見を戦わせることではないか。