イベント・募集案内

世界文明フォーラム2005(概要と評価)

平成17年7月22日

1. 概要

(1) 日程及び主な出席者

 7月21日(非公開セッション)、22日(公開セッション)

 なお、21日は外国招待者による総理表敬が行われた他、町村外相による歓迎夕食会が実施された。

(2) 会議の概要

 2日間にわたり「グローバル化する世界における正義・公正・平等のためのパートナーシップ」、「潜在能力の拡大としての開発:正義・自由・福祉へのさまざまな道」、「グローバル化時代の芸術」の3つのテーマの下で個別にセッションを実施し、参加者は3班に分かれて意見交換を行った。21日は参加者を中心とした非公開セッションを行い、22日の公開フォーラムでは小泉総理が冒頭演説で、文明間対話の重要性と本フォーラムに対する期待を述べた。各セッションの要旨以下のとおり。

(イ) 第1セッション(テーマ:グローバル化する世界における正義・公正・平等のためのパートナーシップ)

 グローバル化の下で、多くの異なる文明に共有される国際的な正義を確立するにはどうすべきかが議論の中心。特にテロの根源的原因は貧困ではなく、現在のシステムからの疎外感や恥辱感であることが強調された。その解決のための国家や国連等の公的機関の役割の重要性と限界につき、多様な意見が出た。
 国家等に期待する立場からは、いわゆる破綻国家の扱いや国連改革、公的機関の限界を認識する立場からは、NGO等非公的組織の強化による世界統治(グローバルガバナンス)の能力の向上の必要性が唱えられた。また、国際的な税(エネルギーや航空運賃に対するもの)の導入を提唱するものもあった。

(ロ) 第2セッション(テーマ:潜在能力の拡大としての開発:正義・自由・福祉へのさまざまな道)

 正義実現のために必要な経済開発が、いかにして人間の潜在能力を高める方向で実行できるか、そのためにいわゆる市場メカニズムの力をどのように活用すべきか、またその欠陥を補うためにいかなるシステム(社会的安全網を含む)を構築すべきかが議論された。いわゆる西欧型の市場主義の非人間的な側面への批判的意見が出された。

(ハ) 第3セッション(テーマ:グローバル化時代の芸術)

 芸術は政治、経済の枠を越えて、人の心に直接的に訴える力を持つが、近年、芸術はグローバル化の多大な影響を受け、インターネットに代表されるIT革命は、芸術の表現方法、鑑賞面において、大きな進展を遂げ、新たな可能性をもたらした。また、グローバル化の台頭は国を越えた芸術の多様化を創出し、伝統芸術とポップアートを含む現代芸術の相互交流、ひいては融合を可能せしめ、芸術の大衆化に拍車をかけることとなった。
 他方、グローバル化が主流になるにつれ、芸術面でもデジタルディバイドが進み、国内でも芸術の恩恵に与れない層が出ていること、また国際的にも、芸術が特定の国や企業の支配によって伏する懸念、市場原理によって、小国の文化が淘汰される危険性についても議論された。
 芸術の持つ潜在力を生かす上で、国家間、人と人の文化交流をさらに促進させることができれば、限定的とはいえ、国際的な緊張を緩和にむけて、役割を果たすことが可能となろうとの意見が大宗を占めた。

2. 評価

(1) 本フォーラムは、4月のアジア・アフリカ首脳会議において、小泉総理が世界の平和と繁栄に向けてその開催の意志を述べたもの。本フォーラムのメインテーマである「文明間対話の推進」は、7月11日、総理に提出された「文化外交推進のための懇談会」提言に盛り込まれた文化外交に関する重要課題であり、本フォーラムはこの提言の具体的なフォローアップとしても位置づけられるもの。

(2) また、我が国は、従来より、イスラム世界との文明間対話セミナー、日アラブ対話フォーラムの開催、対中東文化交流・対話ミッションの派遣等、文明間対話に関する様々な取り組みを実施してきているが、本フォーラムの特徴は、特定の宗教グループや民族を対象とせず、内容も政治、経済、文化と多岐にわたり議論したこと、更に、20-30歳台若手(外務省の招待プラグラムで滞在中のグループ)からのインプットを得たことである。我が国が21世紀の新たな文明形成に向けて強いリーダーシップを内外に示したものとなった。

(3) 本フォーラムでは、参加者間で終始積極的な意見交換が執り行われ、各参加者からは早々に我が国による次期開催を望む声が上がるなど、我が国のリーダーシップに対して、強い期待が示された。

(4) 更に、最終日のレセプションに森元総理の出席の下、「アフリカ絵画展」(外務省とユニセフの共催)の入賞者の表彰式を行ったことも、世代を超えた「対話」の必要性を象徴するものとして評価された。

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