演説

第67回国連総会第3委員会における
鷲見政府代表顧問ステートメント(和文仮訳)
(議題:66(a)「先住問題」及び(b)「第2次国際先住民の10年」)

平成24年10月22日
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議長,

 2007年9月に国連総会において「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択されて以降,先住民族の人権の保護・促進については,国内外を問わず極めて高い関心を集めてきました。本日は,我が国の「先住問題」に関する進展を中心に述べさせていただきます。

 我が国は,アイヌの人々の人権を尊重するため,総合的な施策の確立を図っています。国連宣言を受け,2008年,国会は,政府に対し,アイヌの人々を先住民族として認識し,総合的な施策を構築することを求める決議を全会一致で採択しました。同決議の採択を受け,我が国は,アイヌの人々が日本列島北部周辺,とりわけ北海道に先住し,独自の言語,宗教や文化の独自性を有する先住民族であるとの認識を示しました。

 日本政府は,その後,アイヌの代表も参加するハイレベルの有識者懇談会を設置しました。国連宣言を参照しつつ行われた1年間の審議の後,2009年7月,懇談会は,教育やアイヌ文化の振興,産業振興を含む今後のアイヌ政策に関する基本的原則及び広範な施策を提言する報告書を取りまとめました。

 報告書に基づき,2009年12月,日本政府は,内閣官房長官が主催するアイヌ政策推進会議を設置しました。同会議の設置は,公式な政策決定プロセスに女性を含む数名のアイヌ代表の積極的な参加を仰ぐ,我が国最初の試みでした。同会議は,有識者懇談会からの数々の提言を実現するため,アイヌの人々に対する総合的かつ効果的な政策の在り方を議論しています。

 有識者懇談会の提言のうち, 2つの主要プロジェクトについてアイヌ政策推進会議の作業部会から報告されました。第1は,「民族共生の象徴となる空間」の整備です。これは,アイヌの人々の生活・文化を尊重し復興するためのナショナルセンターを確立しようとするプロジェクトです。象徴空間には,豊かな自然環境に囲まれた博物館,伝統的家屋群,工房が備えられ,アイヌ文化の教育・研究・展示に関する国内的・国際的な拠点としての機能を有することが期待されています。特に,アイヌの人々の文化的所産を次の世代に伝えるのに,象徴空間は大きく貢献すると期待されています。日本政府は,今年の7月に象徴空間基本構想を決定したところであり,今後この象徴空間という,共生社会に向けた取組の実現に向けて全力を尽くす所存です。

 第2のプロジェクトは,北海道外に住むアイヌの人々の生活実態調査です。我が国がこのような全国的な調査を行うのは初めてのことでした。調査結果によると,一般国民と比較して,生活,教育等の面でなお格差が存在することが明らかになりました。日本政府は,現在,この問題に対処するための効果的な施策を検討しております。

議長,

 このように,我が国は,あらゆる人々の多様性が尊重される社会の達成を目指して,有識者懇談会から提言された,我が国及びアイヌの人々の実情に応じた多様な政策に,「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を参照しつつ,アイヌの人々と共に,取り組んでおり,また今後も取り組んでまいります。我が国は今後とも,国連をはじめとする国際社会と協力・連携しながら,世界の先住民族の人々が直面する諸問題の解決について取り組んでいく所存です。

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